[No.307] スケルトン・キー(The Skeleton Key) <79点>





キャッチコピー:not found

 じゃあ、聞くけどさ。
 アンタにとって、“本当”って…何…?

三文あらすじ:看護士のキャロライン(ケイト・ハドソン)は、老婦人のヴァイオレット(ジーナ・ローランズ)と脳梗塞で全く身動き出来ない夫のベン(ジョン・ハート)が住んでいる古い屋敷にベンの介護人として住み込みで働くことになった。働き始めて間もなく、バイオレットから全ての部屋を開けられる合鍵(The Skeleton Key)を預かるキャロライン。しかし、ある日、彼女はその鍵でも開けられない部屋を発見する・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~

 
 以前、ネットでホラー映画情報を漁っていたときに見つけたのが本作『スケルトン・キー』。まず、序盤は、純正サスペンスホラーという感じ。怪しげな屋敷とそれに輪を掛けて怪しげな老婆。何かに怯え、何かを訴えている言葉を持たぬ老人。どこにでも入れるはずの合い鍵でも入ることができない謎の部屋。

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 まぁ、ありきたりと言えばありきたりである。何でもないシーンなのにでっかい音でびっくりさせる“こけおどし演出”も陳腐である。しかも、本作のウリであったはずの“秘密の部屋”もけっこうあっさり入れたりする。だいたい入れなかったのは、鍵穴に金属片が詰まっていただけの話だ。

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 うーん、微妙だなぁ…。なんて思いながら、おざなりに鑑賞を続ける人も多いのではないだろうか。このそこはかとない失望と倦怠感は、物語のラスト付近まで続く。屋敷にまつわる忌まわしき過去話もありきたり。悪い金持ちが貧乏な黒人夫婦をこき使い、挙げ句の果てにそこの幼い子供2人に呪術を教えていたという理由でその黒人たちを焼き殺してしまった。今もその黒人たちの霊がこの屋敷にはいるのよ…。なんて、ベタベタもいいとこである。まぁ、納涼にはちょうどいいかな、程度の期待感で筆者は漫然と鑑賞を続行する。

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 物語が加速していく後半戦、そして、特にクライマックスは、ある意味で興味深い。信じた者にのみ効力を有する、という呪術の性質を前提として、主人公キャロラインは、黒幕ヴァイオレットと実は敵だったイケメン弁護士ルークに呪術バトルを仕掛けるのである。彼らは、なんと幼気な老人ベンを“いけにえ”にして彼の余命を奪おうとしている狂人たちだったのだ。

 このシークエンスは、一見オカルト的であるものの、実は極めて合理的。悪意ある者はレンガくずで線を引いた内側には入れない、という老婆たちの迷信に従い、キャロラインはせっせと粉をまく。もちろん、彼女は真っ当な現代の若者なので、呪術などを信じているわけではない。しかし、呪術に心酔している老婆たちには、ただのレンガくずが効力を有するのである。バカバカしい迷信だって、その力を信じている者にとっては、立派な“真実”だ。このシークエンスでは、レンガくずの線を見るや、おっと!みたいな感じで追跡の手を止めるルークがまた律儀で笑える。

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 呪術バトルもクライマックス。両足を折られたにも関わらず執拗な追跡を続けるヴァイオレットに対し、キャロラインは最強の防護呪文を展開する。チョークで結界を描き、自らの髪を切って撒き、掌を切って血の印を刻む。何と言っても、この呪文はまさにヴァイオレットの所有する秘伝書通りのものなのだから、これで敵はいっさい攻撃できないはずだ。呪術の“効力”をきちんと理解し、臨機応変に対応した現代っ子が、迷信狂いの狂人たちを打倒するのである。

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 …なんて、ヘラヘラと鑑賞していた筆者のような愚か者が驚愕するのは、ここから。

 勝ち誇るキャロラインにヴァイオレットが不敵な笑みを向ける。それは、防御の呪文ではない。今お前が行った儀式こそが、まさに“いけにえの儀式”なのだ。そして、お前にはその呪文が効く、と。

 いやいや、そんなバカな話あるわけがない。キャロラインは21世紀を生きる現代人だ。車はまだ空を飛んでいないけれど、呪術なんてとうの昔に死滅した。今は科学の時代なんだ。呪術だって、一種の催眠術、あるいは自己暗示として科学的に説明できる。呪術の効力を信じて疑わない老婆たちにとって呪術は“本当”だろうが、その効力を信じていないものからすれば、笑止千万の茶番でしかない。キャロラインが真剣にレンガくずをまいていたのも、己の血や髪を犠牲にして陣を描いたのも、全ては、老婆たちに効力があることを確信していたからにすぎない。そう、キャロラインは、呪術など信じてはいない。目の前の敵に打ち勝つため、呪術を利用しただけだ。老婆たちを退けることができるから、武器として使っただけだ。呪術は、この狂人たちに確かな効力を発揮するから…

 …あれ?

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 呪術は、それを信じた者にしか効果がない。逆に言えば、呪術の効力を信じている者には呪術が効く、のである。キャロラインは呪術を盲信するヴァイオレットらを敵として戦っている。呪術が彼らに効力を有すると確信した上で。そう、キャロラインは、既に呪術を信じているのである。

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 儀式発動、気絶するキャロラインとヴァイオレット。
 目覚めたキャロラインは、どこかで見たような不適な笑みを浮かべる。

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 そう、対象者の余命を奪う呪術とは、その者と自分の精神を入れ替える儀式だったのである…!追い打ちを掛けるように明かされるのは、ヴァイオレットとルークが昔話で無残な処刑を受けたあの黒人夫妻だった、という事実。

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 なんたるDDG(ドンデン返し)…!!

 目が覚め絶望するキャロライン(体はヴァイオレット)は、ベンも飲まされていた“喋れなくなる薬”を飲まされ、駆けつけた親友にも自分だと気付いてもらえないまま、病院へと搬送されていくのであった…。

 ということは、ベンの中の人は、本来のルークだった人だろう。彼が「ここから出してくれ」と必死で訴えていたのは、屋敷から逃がしてくれということでもあり、彼が呪術によって入れられた偽りの体から出してくれということでもあったと考えるとコワイ。

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 また、昔話をもう一度思い出してみるとゾッとする。黒人夫妻は、焼き殺されたあの夜、金持ちの子供に呪術を教えていた。つまり、その時に子供たちとすり替わったのである。黒人夫妻を嬉々として焼き殺した金持ちは、実は自らの子に無残な死を与えていたということになる。昔話の後日談では、金持ちが妻を撃ち殺し自らも自殺した、それは、黒人夫妻の霊の呪いによるものだろう、と語られる。しかし、実際は、おそらく真実に気付いてしまったがゆえの自殺であろう。自らの愛する子供を最も残酷な方法で殺してしまったという自責の念、そして、中身が憎き黒人夫妻だと分かっていても目の前の“愛する我が子”を殺せないという葛藤。そんな苦悩の内に金持ちは自殺したのだと推察される。

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 そして、タイトル“スケルトン・キー(合鍵)”の真の意味。それは、どの体にでも入ることのできる呪術ということである。

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 素晴らしい!アイデア自体は『マルコヴィッチの穴』であり、ギニュー隊長であるのだが、ストーリーテリングが上手い。またベタなサスペンスホラー始まったよ…。と早合点してしまった愚かな鑑賞者の心理を上手く突いている。

 何が“本当”かなんて、最後まで分からない。
 いや、最後に分かっただけ、筆者はまだ幸せなのだろうか。
 でも、もしかしたら…

点数:79/100点
 最後の最後に至るまではベタベタだが、ラストであっと驚く良作。ラストの種明かしによってそれまでの物語の意味が遡及的に明らかになる、極めて秀逸なDDGの傑作である。

(鑑賞日[初]:2014.8.14)

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