[No.310] L3.0 <75点>

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キャッチコピー:not found.

 ただ、無垢なるがゆえ。

三文あらすじ:人類が死滅した未来のパリ。高性能人型ロボット“L3.0”は、一人孤独な日々を送っていた。彼にとっては、たまに出会う生き物だけが唯一の“友達”なのである・・・

<本編(4分39秒)>


~*~*~*~


 久しぶりにショートフィルムの感想を書く。

 本作は、なんでも“Isart Digital”なるフランスの3Dとゲームの専門学校の生徒が作った作品らしい。専門学生が作ったショートフィルムはYoutubeで簡単に鑑賞でき、かつ、良作が多いのであるが、本作もそんなご多分に漏れず、極めて上質かつ簡潔な作品に仕上がっている。

 舞台は(おそらく)近未来のパリである。『アイ・アム・レジェンド』とか新しい『猿の惑星』みたいな、終末感溢れる佇まい。なぜだかはもはや分からないが、人類は既に全滅している様子である。人類死滅の原因が後々ストーリーに絡んできたりするのかな、と思いを巡らせる冒頭。しかし、そんな“邪推”は直ぐに霧散する。

 本作の主人公“L3.0”は非常にキュートで、それでいて、すこぶる孤独なロボット。テディーベアを相方にテレビ鑑賞やモノポリーに興じてみるものの、物言わぬ小熊からのリアクションは無い。L3.0もテディーベアも両方とも大づかみで言えば“傀儡”なのであるが、かたや知性を持った最新鋭高性能ロボット、かたや伝統的な英国人形。他者より秀ですぎた者の孤独である。

 可哀想なL3.0。彼への哀れみを加速させるのは、やはり彼の可愛らしいビジュアルであろう。あの眉毛部分には、機能的な必然性があるのだろうか?ロボット工学に疎い筆者にはとてもそうは思えないので、あれは感情の起伏を人間に伝えることで人間社会に溶け込みやすくするためのいわば“造形美”なのだと考えることにした。つまり、L3.0は、重労働や高度な施術を行うロボットではなく、主に“人とのコミュニケーション”に主眼を置いた“友達ロボット”なのであろう。

 午後4時になると、“僕はL3.0です。誰かいませんか-?”みたいなことを綴った紙を紙飛行機にして、眼下に広がる荒涼とした廃墟に飛ばす憐れなロボット。誰でもいい。一緒にテレビを観て欲しい。モノポリーをして欲しい。彼が欲しているのは、友達だ。まるで、700年もの間、主を失った地球で独り孤独に苛まれていたWALL・Eのようではないか。しかし、この世界にEVEはいない。そんな都合の良い話がホイホイあってたまるか。L3.0は、孤独なのである。

 そんな彼の前に、一匹のが現れる。なんと、待望の“友達”ではないか。少しそそくさと、大変ウキウキと新たなる友達を自宅に招く“L3.0”。蝶を瓶に入れ、いつ飽きるともなく眺め続ける。子供にとってはありがちなミスだ。おそらくどんな大人だって、子供の頃にお気に入りの昆虫を捕まえてきてまるで“オモチャ”のようにいじくり倒した経験があるだろう。その結果、こちらには悪気など全くないのに、昆虫を絶命させてしまうのである。

 せっかくの友達を悲しげにごみ箱へと投入する孤独なロボット。手には折り紙の蝶が握りしめられている。なるほど。早計な自称“映画好き”はこの物語のテーマを既に把握している。これは、機械仕掛けのハートを持つがゆえ決して他者と分かり合えない者の苦悩を描いているのだな。

 カメラは、室内へと戻っていった“L3.0”を追いかけ、そのまま居室の壁をパンする。飾られているのは、さきほどの蝶の折り紙、そして、クモ、バッタなどの昆虫たちの折り紙だ。あぁ…彼は今までもやっと友達を見つけては、同じように、悪気もなく、純粋無垢なまま、その友達たちを殺してきたのだろう。苦悩ではないか。テーマとしてはありがちだけど、染みるね。

 なんてことを考えている内にもカメラは進んでいく。

 鶏…犬…そして…

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 ・・・!!!

 このロボットは“友達ロボット”なんかじゃない。友達を欲していたわけでも、孤独に悩んでいたわけでもない。では、命ある者の殺害に意味を見いだしているのだろうか?いや、違う。たぶん、こいつは、何も考えていない…。

 これは“純粋な悪”とは違う。“悪”とはその主体の性質や行為を形容する言葉であり、また、そこには少なからず“責任論”の要素が介在するわけであるが、“L3.0”は全くの無垢。いや、無垢というよりは“真っ白”である。本作で描かれる世にもおぞましい行為主体には、一点の疑問の余地も無く“責任”が存在しない。彼には“命”がインプットされていないのだ。

 敢えて本作を概念で捉えようとするのなら、“純粋な恐怖”と言うべきであろう。

点数:75/100点
 世界に一人残されたロボットの孤独な日常を描くことで、何ら説明に時間を割かずとも鑑賞者を物語に引きずり込む構成。誰しもが一目で驚愕する簡潔なオチ。一切の無駄を排し、純粋に観る者を驚かせる極めて秀逸なショートフィルムである。

(鑑賞日[初]:2014.10.5)

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