07
2012

[No.32] スプライス(Splice) <42点>

CATEGORYホラー




キャッチコピー:『禁断の実験で生まれた“美しき新生命体” ── 人類はその進化に後悔する。』

 ”後悔する”の部分には賛成だ。

三文あらすじ:クライヴ・ニコリ(エイドリアン・ブロディ)とエルサ・カスト(サラ・ポーリー)は、様々な動物の遺伝子を結合(Splice)させることで新たな生物を創造する研究を行っている。ある日、動物と人間の遺伝子結合に成功した2人は、禁忌と知りながらも新生物を生み出してしまう。誕生した生物に”ドレン”と名付け、人目に付かぬよう育てる2人だったが、ドレンはそんな彼らの予想を遙かに超えた成長を見せる・・・


~*~*~*~

 
 『CUBE』ヴィンチェンゾ・ナタリ最新作。サンダンス映画祭で披露された後、配給権を巡る各社の激しい争いが繰り広げられたというから、いやがおうにも期待が高まる。

 しかも”禁断の実験で生まれた未知の生物が、科学者も予想しない成長を遂げる”というコンセプトは、まさに王道パニックホラーのそれ。”人が怪物に襲われる”系の映画が大好きな筆者としては、鑑賞せずにはいられない。これは『CUBE』以上の傑作が誕生するかもしれないぞ!とワクワクしながら観たのだった。

 まず、科学者2人がドレンを生み出すまでの過程が描かれる。
 いわゆるマッド・サイエンティストが登場する作品では、倫理を逸脱した実験の善悪ということがテーマになり得る。本作でも一応その点の問題提起はされていると思うのだが、クライヴとエルサという2人の科学者を正当化しようとはしていない。完全に”愚かな科学者”として扱っている節がある。彼らが勤めるN.E.R.D. (Nucleic Exchange Research and Development)という部署(「NERD」は否定的なニュアンスを含んだ”オタク”という意味)にもそのことが表れていそうだ。部署の名前だけでなく、クライヴもエルサも一般的な科学者のイメージとは違う今時の服装で、クライヴはロックミュージックを、エルサはフリスクみたいなお菓子をこよなく愛していたりする。2人が同棲しているアパートの寝室にはなにやら日本のアニメの一コマが大きく引き延ばされて飾られていたり、クライヴの白衣はポップなアップリケがベタベタ貼られていたりもする。つまり、クライヴとエルサの2人は、倫理観が希薄あるいは欠如した”今時の若者”を象徴するようなキャラなのである。
 また、2人は人間的にも未熟な者として描かれている。エルサは「私は自分のやりたいようにやりますよ」という態度をとっているくせに、問題が起こると「どうにかしなさいよ!」とクライヴに切れる。悪い意味で典型的に”女性っぽい”キャラ。クライヴもクライヴで、そんなエルサにヘコヘコしっぱなしである。悪い意味で典型的な”草食系男子”。そんな2人に、観客は終始イライラするだろう。

 しかし、これは好ましい設定だ。説教臭いテーマを捨象して、クリーチャーが人を襲う描写に専念できる。と、序盤は興味深く鑑賞していたのだが、あれよあれよという間に物語はおかしな方向へ進んでいく。

 結論から言おう。

 クライヴはドレンとセックスし、エルサはドレンにレイプされる。

 なんじゃこの気持ち悪い展開は・・・。俺の度肝を返せ!

 とはいえ、よくよく注意して鑑賞していれば、このとんでもない展開への伏線が随所に散りばめられていたのであって、もっと早く気付くべきだったのだ。

 まず、様々な動物のDNAが組み込まれているはずなのに、成長するとどんどん人間の女性みたいになっていくドレン。あんな普通の歯では人を襲えない。唯一の武器である尻尾の毒針も迫力不足。そして、クライヴとエルサのセックスをのぞき見するドレン。なんだかクライヴに気がありそうなドレン。2人が冒頭で生み出した新生物ジンジャーとフレッドが性転換して男になるという展開。監督が単純なパニックホラーなど撮ってくれそうにないヴィンチェンゾ・ナタリであるということ。本作が変態映画祭として有名なサンダンスに出品されているということ。そして本作のタイトル「SPLICE」は”結合”という意味であること・・・。

 ドコ結合させてんねん。

 まぁ、直前まで気付かず問題のシーンで衝撃を受けたのは完全に筆者の過失であるが、それにしてもこの展開は悪趣味すぎる。クライヴとドレンの営みを目撃してしまったエルサにクライヴが謝罪するシーンも、なんだか「浮気するなんてサイテー!」「元はと言えば、お前がちゃんとしてないからだろ!」というようなカップルの痴話喧嘩を見せられている気分で不快。確かに筆者は突き抜けた悪役のマッド・サイエンティストを望んだが、そっち方向に行ってしまうマッドさはノーサンキューである。性癖まで”NERD”にしなくてもよかったのに・・・。

 ラストもやはり悪趣味。クライヴが変態趣味を爆発させる展開にビックリした筆者は、これはもしかしてエルサもいかれるのでは?と今度こそ驚かされないよう心構えをしていたところ、案の定、雌雄逆転した男ヴァージョンのドレンにエルサはレイプされてしまう。そして「『ザ・フライ』だけはやめて」と願う筆者の気持ちを無視して、エルサはドレンの子を身ごもってしまうのである。悪趣味だー。

 このように、王道パニックホラーのプロットからは激しく逸脱している本作であるが、映画自体の出来としてはかなり素晴らしい。
 前振りは全てきちんと回収されるし、恐怖シーンはゾクゾクするほどコワイ。シッチェス・カタロニア国際映画祭で特殊効果賞を受賞しているだけあって、ドレンの造形は不気味さの中にも美しさを感じる秀逸なものになっている。
 ただ、ビジュアル面で言うと、冒頭で登場するジンジャーとフレッドが完全に男性器である。H.R.ギーガーは上手くモチーフにしたが、本作はモロだ。ここもまた悪趣味だなぁと思っていたら、制作総指揮にあの悪趣味の権化ギレルモ・デル・トロが名を連ねていた。この点の確認を怠ったのも、完全に筆者の過失である。

点数:42/100点
 映画としては非常に良くできている。あくまでそれを前提にした上で、個人的には本作を友達に勧めたくないし、本作が最高に大好きだという人とは友達になりたくない。そんな作品である。

(鑑賞日[初]:2012.2.5)










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Tag:悪趣味映画 クソ女 ダメ男

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