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2014

[No.315] パラダイム(Prince of Darkness) <85点>

CATEGORYホラー




キャッチコピー:『決して解けない呪いがある』

 鏡もて見るごとく

三文あらすじ:ロサンゼルスのある教会で、老司祭(ドナルド・プレザンス)が緑色の液体が詰まった棺を発見する。彼は、超常現象の権威であるハワード・バイラック教授(ヴィクター・ウォン)に調査を依頼、物理学専攻のブライアン・マーシュ(ジェームソン・パーカー)、数学専攻のキャサリン・ダンフォース(リサ・ブロント)ら研究生を交えた専門家の混成チームが教会に泊まり込み、検証実験を開始する。非科学的な“何か”の実在に研究者たちが戸惑いを隠せない中、緑色の液体を浴びた一人に異変が生じ・・・

 
~*~*~*~


 秋だ。めっきり肌寒くなり、なんだか人恋しくなる季節。食通はサンマを食べ、読書家は本を読み、ホラー映画好きはホラー映画を観る。そんな季節である。というわけで、ハロウィンの興奮冷めやらぬ今回は、80年代の素晴らしき名作ホラー映画について感想を述べたいと思う。

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 まずは、本作のタイトルについて。これは、久々に目を見張る“ヘンテコ邦題”である。ただし、本作に限っては、いつもとは少し趣が違う。本作の『パラダイム』なる邦題が“ヘンテコ”なのは、あくまでも、原題とかけ離れている、という点においてのみだ。“パラダイム”という単語の意味は、次の通りである。

 “ある時代に支配的な物の考え方・認識の枠組み。規範。”

 本作を既鑑賞の方はお分かりだろう。これは、本作のテーマそのままだ。『Prince of Darkness』なんていう、どっかの安い三流ファンタジーみたいな原題より、よほど邦題のほうがいい。なかなか珍しい例である。

 さて、本作の内容であるが、個人的には大傑作だと感じた。“悪魔”という似たようなテーマを描く作品は世に数多あるが、それらとは違う、本作の独自性に胸打たれたのである。本作が、同じように“悪魔”、あるいは、“闇の住人”というオカルトチックなテーマを描く他の作品と一線を画しているのは、“悪魔”という非科学的・非論理的な存在に対し、科学的かつ論理的なアプローチを試みている、からである。

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 本作では、まず、老司祭が古から秘密裏に伝わってきた悪しき棺の異変に気付くのだが、彼はそこで勇敢なエクソシストに助けを求めるわけではない。敬虔な陰陽師に委託するわけでもなければ、金に目が眩んだゴーストスイーパーに依頼するわけでもない。老司祭が助けを求めるのは、大学教授なのである。つまり、“悪魔”というオカルト的問題を科学的な観点から解決しようとするわけだ。したがって、本作の主人公は、その大学教授の教え子、つまり、大学生ということになる。まぁ、“大学生”といっても、キャピキャピの学部生ではなくて、もっとおっさんの大学院生たちである。

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 あぁ、これが老司祭から助けを求められた大学教授か。と、思うのも無理からぬが、これは本作の主人公マーシュ。歴とした学生である。いや、こんなゴリゴリおっさんの学生なんかおらんやろ。と、思ったあなたは、既に浅はかなパラダイムに縛られている。往々にして真の理系大学院生とは、このような“心・技・体”揃ったおっさんだ。で、そんなおっさん学生たちが件の教会に泊まり込み、科学的視点から悪霊退治に奔走していくのである。

 当然、緻密で実際的な科学考証が展開されるはずはない。なんだか嘘っぽい器具をカチカチしたり、なにやら無意味そうな数字を並べ立てたりしながら、彼らは“悪魔”の解明に勤しむ。悪魔の棺が牙を剥いてからの展開は、まぁ言ってみれば“その辺によくあるティーン・ホラー”。つまり、若人たちが閉鎖空間で一人、また一人と餌食になっていくわけだ(当然、本作の監督が誰かを知っていれば、この平凡極まる展開が、その実、極めて胸高まる傑作に仕上がっている理由も自ずから明らかなのであるが、それは、後述。)。

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 で、筆者が感銘を受けたもう一つの点、すなわち、本作の論理性であるが、それは、教会が“悪魔”の存在をずっと秘匿してきた理由についてである。はるか昔から“悪魔”は存在した。本作は、イエス・キリストもその存在に警鐘を鳴らす一人の男であった、という観点を投げかける。しかし、教会は沈黙し、おぞましき異世界の邪悪をひた隠しにしてきた。なぜか。それは、“悪魔”の存在を証明する術が無かったから、なのである。

 まぁ、これだけ言うと、なんやそんなことかいなー、という感じであろうが、このきめ細やかさは、この手の映画ではなかなか珍しい趣向。胡散臭い教会が何千年も“悪魔”の存在をひた隠しにしてきた、というのは、ありきたりの設定だ。そして、通常、そこに理由はいらない。本作のように、一応封印状態にある“悪魔”ならなおさらである。悪しき存在は世間に知られぬよう隠しておくべきだ。この行動原理に説明はいらない。今まで何本もの映画が当然の理屈として用いてきた展開だ。

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 しかし、そうだろうか。よく考えれば、極めて非論理的ではなかろうか。封印状態の“悪魔”を隠してきた聖なる者は、その解放の危機に際して決まってこう言う。「やつの封印が解かれたら、人類に為す術は無いのじゃ!」 …おい、お前倒されへんのかい!と、賢明な鑑賞者は突っ込むのである。ならば敬虔なる聖者は、たまたまの封印状態に安住して何の策も講じてこなかったただの怠け者ではないか。

 では、か弱き人類が“悪魔”に対抗するためには、いったいどのような方法があるのだろうか。煌めく聖水ではなく、重厚な十字架でもなく、人類が持つ最強の武力は、科学力である。つまり、大勢でともに考える力、だ。“悪魔”が封印されている束の間を利用し、世間にその存在を暴露、一致団結してしらみ潰しに研究・検証し、彼が目覚めるころには万全の対抗策を用意して迎え撃てば、何の問題も起こらない。

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 ところが、そうするためには、まず、有象無象の大衆に“悪魔”なる不可解なものの存在を信じさせなければならない。そのための手段は、当然ながら“科学”ということになる。これまた当然のことながら、人類は“悪魔”を証明するほどの科学力を持っていない。だから、教会は“悪魔”を秘匿してきたのである。人類がその存在を立証できるほどの“力”を得る日まで。…と、このように考えて、筆者は、本作の設定が極めて合理的だ、と一人悦に入っていたのであるが、いざ文章にしてみれば、そこまでのこともなかったかもしれない。まぁ、真の(元)文系大学院生なんてのは、概ねこんなもんである。

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 さて、さきほどちらりと述べたが、本作を語る上で避けて通れないのは、監督である。彼の名は、ジョン・カーペンター。ホラー映画をちょっとでもかじった者なら誰でも知っている、真の変態映画監督である。『ハロウィン』シリーズ、『ザ・フォッグ』、『ニューヨーク1997』、『エスケープ・フロム・LA』、『光る眼』などなど…。代表作は枚挙に暇がないが、筆者が愛して止まないのは、もちろん、“漢”のエイリアン侵略SF『遊星からの物体X』である。凍り付くほど張り詰めた南極基地の緊迫感の中、氷を溶かすほどの熱い種族間バトルが繰り広げられるホラーSFの大傑作。

 同作では、シンセサイザーを用いた音楽が極めて印象的だったわけだが、本作でもそれは同様。しかも、本作ではカーペンター自らが音楽も担当しており、その甲斐あってか、本当に音楽が素晴らしい作品に仕上がっている。楽曲単体で素晴らしいというのではなく、シーンやシークエンスと絶妙にマッチした旋律がいちいち琴線を震わす。前述のように一見単調になりそうな中盤の展開も、抜群の演出力と絶妙の音楽がタッグを組むことで全く退屈さを感じない。総合芸術としての映画が、ここにある。

 それから、カーペンターといえば、やはり奇抜なグロ描写であろう(登場人物の中に寄生された者が紛れ込む、という趣向も『遊星~』に顕著だった彼の持ち味だが、今回は割愛。)。本作で最も印象的なのは、当然、これ。苦手な人にはお勧め出来ない。

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 これぞ本作の真の偶像女傑“スーザン・キャボット嬢(悪魔寄生後)”である。何の罪も因果もなく悪魔に寄生され、このような姿に成り果ててしまった可哀想な女性。しかして、本作終盤をこれ以上なく盛り上げる最高のギミックである。特に、これなんかものすごい。

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 これなんだよな。奇抜かつ戦慄。カーペンター節炸裂、である。まさに、おもわず吹き出してしまいそうな恐怖、といったところであろう。虚像と実像は紙一重であるが、笑いと恐れもまた紙一重であることを本作は教えてくれる。

点数:85/100点
 カーペンターの魅力を存分に堪能できる傑作ホラー。“未来から送信される夢”であったり“マーシュが鏡に触れるラスト”など、様々な考察・解釈を施す余地があるのも本作の楽しいところ。ナデシコ劇場版ほどではないにせよ、なかなか鬱なクライマックスも用意されていて、色んなホラー好きが楽しめる。ハロウィンは終わってしまったけれど、是非一度鑑賞してもらいたい作品である。

(鑑賞日[初]:2014.10.16)










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Tag:グロ注意 ヘンテコ邦題

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