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2015

[No.324] ランダム 存在の確率(Coherence) <79点>

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キャッチコピー:『あなたの脳はついてこられるか?』

 きっと、星のせいじゃない。

三文あらすじ:ミラー彗星が地球に最も接近する夜、エム(エミリー・バルドーニ)とケヴィン(モーリー・スターリング)のカップルは、友人が自宅で開くパーティーに招待される。男女8人で楽しい時間を過ごそうとした矢先、突如として停電が起きて部屋は暗闇に包まれる。不安に駆られた彼らは部屋を飛び出して外の様子を見に行くが、そこで自分たちとうり二つの人間が全く同じ家で生活している様を目の当たりにする・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 今回は、極めて秀逸なSFサスペンス作品『ランダム 存在の確率』のお話。監督は、ジェームズ・ウォード・バーキットなる人物。一体誰なんだ。まったく分からん。しかし、いや、だからこそ、本作はまさに新進気鋭、新鋭新星の秀作に仕上がっているのである。

 まず、作品全体の雰囲気が非常にお洒落。当ブログでもこれまでいくつかの“お洒落SF”を紹介してきたが、本作のイメージは、なんとなく『プライマー』に近いと思う。特に、どこか“無機質”な、あるいは、ややドキュメンタリータッチの語り口が同作に似ている。

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 内容についてざっくり言うなら、まず、無数のパラレルワールドが交差する、というのが、本作の基本設定。その中で、登場人物が右往左往し、紆余曲折を経た結果、8人の誰が“本来の仲間”か分からなくなる、というのが、サスペンス上の縦糸になっていく。中盤~終盤あたりにかけてのこの緊迫した展開は、筆者のオールタイムベスト、『遊星からの物体X』とも共通する仕掛けだ。

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 しかしながら、本作は、終盤以降、物語の軌道をグイッと曲げる。

 主人公である聡明な美女エムが違う世界の自分を殺害し、のうのうとそこで暮らす、というのが、本作が提示するクライマックス。まぁ、軌道を曲げた、なんて言ったけれど、別に唐突な展開というわけではない。彼氏とのすれ違いであったり、互いの疑心暗鬼によってわちゃわちゃになってしまう友人関係であったりをしっかり前フリとして描いているので、エムの行動も心情としてはすんなり理解出来るものになっている。

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 “幸せ世界”での自分をバスルームで殴り倒し、もみ合いで無くした指輪を見つける暇(いとま)も満足でない中、とりあえずバスタブに横たわる“自分”の指輪を奪って取り繕うエム。ところが、なんとか平静を装いリビングに戻った刹那、疲弊からか興奮からか、その場で卒倒してしまう。でも、大丈夫なはずだ。彗星によって引き起こされている今回の奇妙な出来事は、全て“物質依存”の平行世界移動なのだから。つまり、前提とされるべきルールは、同じ世界に同じ人・物は一つだけ、という真理。本来的にはストレンジャーたるエムであっても、もう一人の自分を殺してしまえば、その世界での“唯一のエム”になることができる。彗星が通り過ぎればその効力も無くなり、バスタブの死体もきれいさっぱり消え失せるに違いないのである。

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 翌朝目覚めたエムと我々は、この仮説を確信する。“幸せ世界”の友達は皆、バスタブでドッペルゲンガーの死体を発見したにしては、あまりにも普通の日常を送っている。指輪もちゃんとある。きっと昨晩無くした“自分の指輪”は、過ぎゆく彗星さながらの冴えたスピードで消失してしまったことだろう。ひとまずの安堵の中、彼女は外の様子を見がてら散歩する。そして、彼氏に出会う。本来の世界では、東南アジア(だったよな、確か。)への長期出張を巡ってもめたり、元カノとの怪しき関係を訝しんだりとどうも上手くいっていなかったエムと彼の関係も、この世界ではすこぶる良好。彗星が与えてくれた奇跡を逃さず、エムは自分の手で幸せをつかみ取ったのである。

 しかし、二言三言会話した後、彼氏が発した衝撃の一言に、エムと我々は戦慄する。

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「バスルームに君の指輪が落ちていたよ、ほら。」


 彼が差し出したその指輪は、エムの全てを崩壊させる一石。指輪は今まさに自分がしている。しかし、同じ物が目の前にもある。そんなはずがないのである。このパラレルワールドは、“物質依存”だったはずだ。だが、真実はそうではない。疑うべきは、常に“理由”であって“結果”ではない。指輪が2つ存在している以上、パラレルワールドが“空間依存”だったという結論を導かざるを得ないのである。つまり…

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「おかしいな、“君”から着信だ。」


 狐につままれたような彼だが、我々は、既にその狐の正体を知っている。存在する人や物が全て唯一無二の“物質依存世界”では、こんなことは起こらない。この世界の真の姿は、いったん移動してしまえば同一の物質も複数存在しうる空間。そうすると、“本来の自分”と彼女を撲殺した自分は、同時に存在できる。きちんと息の根を止めれば確かに生きているエムは自分だけになるが、それでもその死体は残り続ける。しかし、友人達の反応を見るに、死体は発見されていない。そして、今、目の前の彼氏が“エムからの着信”を受けている…。つまり…!

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ということなのである。

 極めて上手くまとまったオチだ。結局、なんやかんやと繰り広げられた一連の事態は、彗星のせいなんかじゃない。彼はただ静かな夜空を一直線に進むだけ。小さな惑星の些細ないざこざなどまるで意に介すことなく。真に恐ろしいのは、人間の暗部。友情を壊したのも、幸せを台無しにしたのも、全部、自分のせいなのである。

点数:79/100点
 近年は本作のような“小品だけどお洒落なSF”が流行っているみたいだ。確かに、予算を抑えた上で多くの観客を惹き付けるには、ちょうど良い趣向なのかもしれない。個人的にこういったSFは大好きなので、今後も同様の作品が出てくることを楽しみに待ちたいと思う。

(鑑賞日[初]:2015.2.7)






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