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2012

[No.33] トレマーズ(Tremors) <93点>





キャッチコピー:『土煙をあげて、大地が裂けてゆく ─ 突然おこった地核変動の謎は?』

 砂漠、マルボロ、巨大モンスター。
 他に何がいる?

三文あらすじ:ネバダ州、砂漠のど真ん中にある人口14人の小さな町”パーフェクション(理想郷)”で便利屋をしているヴァル・ミッキー(ケビン・ベーコン)とアール・バセット(フレッド・ウォード)のコンビは、ある日、地質学を研究する大学院生ロンダ・ルベック(フィン・カーター)に出会い、数日前から地中で異常な震動(Tremors)が記録されていることを知らされる。時を同じくして、次々と謎の死を遂げていく住民たち。巨大地底生物の恐怖に震え(Tremors)ながら、住民達の生き残りを懸けた死闘が始まる・・・


~*~*~*~

 
 公開時”陸のジョーズ”という安易で安っぽい宣伝が展開された本作。『ジョーズ』以降、便乗犯的モンスター・パニック・ムービーが量産され続けていたから、当時の映画ファンは「またか・・・」とため息をついたことだろう。しかし本作は、そんな観客の落胆をバートお手製ダイナマイトでグラボイズもろとも吹き飛ばしてしまった。もちろん、同ジャンルの先駆者にして最高傑作である『ジョーズ』には及ばないものの、本作はそれとは違う方向性のモンスター・パニックとして間違いなく映画史に残る不朽の名作である。

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 モンスター・パニックには必ず”悪い奴”が登場する。それは他の者を不必要に殺して生きようとする”極悪人”であったり、恐怖のあまり自分だけ逃げようとする”臆病者”であったり、主人公たちの正当な主張に反対する”分からず屋”であったりするが、とにかくそのような広い意味での”悪い奴”は、モンスター以外での障害となって物語を盛り上げ、モンスターに食べられることでカタルシスを生じさせる便利なキャラだ。

 しかし、本作には”悪い奴”が一人も登場しない。パーフェクションの住民はみな”気持ちの良い連中”である。とはいえ、モンスターが人を食べるシーンが無ければ“モンスター・パニック”ではないのだから、良い人だからといって怪物の毒牙から逃れられるわけではない。ここでも本作は秀逸。我々観客がどんより落ち込んでしまわないよう、親切な気配りが施されている。すなわち、本作でグラボイズの犠牲になるのは、良い人は良い人でも、”観客にとって愛着のない人”なのである。

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 鉄塔に4日間しがみついていたエドガーは登場シーンで既に死んでいたし、羊飼いのフレッド、道路工事夫のハワードとカーマイン、医者のジムとその妻ミーガンなどは、皆ほとんど初登場シークエンスで食べられる。唯一の例外は、雑貨屋の店主にしてグラボイズの名付け親ウォルター・チャンであるが、これがまた上手いことに、生理的にあまり好ましくないような顔をしているのである。この点を意識したキャスティングならスゴイ(欧米人にとってアジア人の死はあまりショックではない、という少し悲しめの理由なのかもしれないけれど。)。

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 そして、生き残った気持ちの良いメンバーたちが、一致団結して地底生物グラボイズに立ち向かうのである。こんなにゴキゲンなモンスター・パニックはあまり無い。彼らは決して互いを見捨てない。手に手を取って力を合わせ、知恵と勇気と愛で自分たちの町を襲う脅威に打ち勝つのである。そんな生き残りメンバーの中でも最高にゴキゲンなのは、やはりなんと言ってもヴァルアールの便利屋コンビである。

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 まず、オープニングが素晴らしい。砂漠に空色のピックアップトラックを止め休憩中の2人。荷台で寝ていてなかなか起きないアールに、ヴァルが「(牛たちの)暴走だ!!」といって起こすイタズラ(これが最後のグラボイズを倒す伏線になっているのもニクイ。)を仕掛ける。おちゃめなコンビだ。タバコを探してシャツのポケットを探るヴァル。ポイポイと空き箱を捨てて、しわくちゃになったマルボロ12mg(通称”赤マル”)ソフトケースを出し、タバコを分ける。筆者が赤マルソフトを愛好しているのは、彼らに影響されたという一面もある。タバコを吹かし、今日の朝飯当番はどちらかでもめる2人。話がまとまらず、どちらともなくジャンケンで決める。この”どちらともなく始まるジャンケン”はいいコンビの条件で、日本が世界に誇るあの名コンビ、ルパン三世と次元大介も『カリオストロの城』におけるパンク修理シーンで披露している。

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 ちなみに、ヴァルとアールの”どちらともなくジャンケン”はこの後何回か登場する。まず、鉄塔の上にいるエドガーを降ろしに行く場面では、ヴァルの負け。馬で隣町まで助けを呼びに行く際にどちらがいい銃を持つかという場面では、アールの負け。そして、グラボイズに襲われるリスクの中ダンプカー”キャット”を取りに行く場面では、どちらも俺が行くと言って譲らず、結局ヴァルが負けて、勝ったアールが行くことになる。しかし、気を付けろよと言って握手の手を差し延べたその瞬間、ヴァルはアールにボディーブローをお見舞いし自ら飛び出して行くのである。やっぱり、なんと気持ちの良い連中だろう。

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 オープニング後、車を走らせ町へ戻る途中に若い女(大学生のロンダ)を見つけるや否や道を逸れて砂漠を疾走するシーンも最高にゴキゲンだ。引いていくカメラに映し出される広大な砂漠、その中を一目散にひた走るスカイブルーのトラック。バックに流れる音楽がこれまたゴキゲンさを極限まで高めている。いいコンビの条件の2つ目は”美人を見つけたら車で追いかける”ということで、ルパン三世と次元大介もクラリスを見るなりフィアットを走らせていた。

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 このように、本作は単なるモンスター・パニックではなく、卓越した”バディムービー”でもある。さらに、珠玉の”青春ラブストーリー”だったりもする。

 前述したヴァルとアールがロンダを遠目に見つけ車を走らせるシーンで、ヴァルは”ブロンドの長い髪、グリーンの瞳、超デカパイ、むっちりしたケツ、すらっと伸びた長い足”などと自分の好みを並べ立てる。しかし、ロンダはそれとは正反対。美人だが真面目な感じで、ヴァルがトラックに写真を貼っているタミー・リーン・バクスター(架空のプレイ・メイト)のようなグラマー美人ではない。がっかりするヴァル。ロンダと別れた後アールがヴァルに”ストライクゾーンが狭すぎる”という旨のお節介を焼く。

 本作では、アールがヴァルとロンダをくっつけようとするこのお節介が大変良い。まず、ヴァル・アール・ロンダがグラボイズから逃げて岩山に登り、その上で一夜を明かすシーンでは、朝起きると寄り添うように寝ていたロンダに照れるヴァルとヴァルの上着を掛けてもらっていたことに気付き照れるロンダを、アールがニヤニヤ見つめる。そして、足を怪我したロンダをヴァルが消毒してあげるシーンでは、互いに目が合って照れる2人をニヤニヤ見つめ、ロンダに気付かれると上を向きポフポフとタバコの煙を吐き出してとぼけるのだ。正しいタバコの吹かし方がここにある。

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 さらに、ラストシーン、お別れを言いにきたロンダに気持ちを伝えられないヴァル。「バン!」とボンネットを強く閉める音に驚きふり返ると”何してるんだ!早く行ってこい!”という表情のアール。「どうせ彼女は俺のことなんて眼中にないさ」とブチブチ言いながら、ロンダを追い呼び止めるヴァル。「I Just Wanted To…(実は、その…)」 一拍の間の後、両者求めるようにキス!

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 やっと素直になって結ばれた2人をカメラは遠景に捉え、陽気なウェスタン調の音楽(リーバ・マッキンタイア『Why Not Tonight』。マッキンタイアは女優としても活動しており、ヘザー・ガンマーを演じた本作がデビュー作である。)をバックにスタッフロールが流れくる。そして、終幕。何度見ても本当に最高のキスシーンだ。少なくとも、モンスター・パニック史上最もステキなキスシーンと言っていいだろう。

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 まぁ正直、ヴァルとロンダの恋については、見ていて恥ずかしくなるような描写のオンパレードである。トレンディと言ってもいい。しかし、ネバダのど田舎の砂漠という舞台設定と田舎くさいが魅力的な登場人物が醸し出す”田舎感”に、この小恥ずかしくなるような青春描写が見事にマッチしており、全く違和感を感じない。むしろ観客は、2人のベタな恋の行く末を心の底から応援したくなるだろう。

点数:93/100点
 鑑賞後は、登場人物、風景、ストーリー、音楽など映画を構成する全てが愛おしく思える傑作。グラボイズでさえなんだか可愛く思えてくる。そんなとってもステキでゴキゲンなモンスター・パニックである。

(鑑賞日:2012.2.9)










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Tag:最高のキス 魂のバイブル 砂漠 紫煙をくゆらせて バディ・ムービー

2 Comments

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死ぬほどの思いをしているはず何だけど、なんとなく穏やかな空気を感じる。
グラボイズを一匹倒すごとにィヤッフー!!と歓喜する住民たち。いい奴らだね。
無計画かつちょっと下品に生きてみたくなる。

2012/03/15 (Thu) 01:13 | EDIT | REPLY |   

Mr.Alan Smithee  

Re:

こんなに愛おしいモンスターパニック映画は、他に例を見ない。
バルとアールの下品さも、自由な砂漠での生活に裏打ちされたものなので、全く嫌悪感を感じない。
最高!
やっぱりソフトケースがいいね。

2012/03/15 (Thu) 02:19 | EDIT | REPLY |   

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