[No.325] アイアン・ドアーズ(Iron Doors) <52点>

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キャッチコピー:『「キューブ」「SAW」に続く、ソリッド・シチュエーション・ スリラー』

 過去と未来を鉄の扉で閉ざせ。
 今日この一日の枠の中で生きよ。

三文あらすじ:投資銀行員のマーク(アクセル・ヴェーデキント)が目覚めると、そこは鉄のドア(Iron Doors)で閉ざされた金庫室だった。室内にあるのは、鍵のかかった鋼鉄製のロッカー、ハエとウジ虫、そして、ネズミの死骸だけ。誰によって何のために閉じ込められたのかも分からないまま、マークは脱出を試みるのだが・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 鑑賞後、いくつかの映画ブログを読んでみたけど、本作の評価は概ね芳(かんば)しくない。というか、より率直に言うのなら、かなり多くの映画ファンたちが、本作を“駄作”と公言してはばかり無い様子である。

 価値観や趣味思考なんて人それぞれなんだから、映画の感想なんて基本的に千差万別だ。筆者が愛して止まない映画たち、例えば『ID4』とか『パシフィック・リム』みたいな作品がやり玉に挙げられていて激しい憤りを覚えたりすることもある。逆に、個人的にはそこまでピンと来ない映画たち、例えば『ショーシャンクの空に』みたいな作品が異常に持て囃されていて不満を持つこともしばしば。しかし、本作に限っては、世間の低評価も至極納得と筆者も大きく首肯した。

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 まず、観客の期待感を煽りすぎ。本作は、そのキャッチコピーで『SAW』『CUBE』というソリッド・シチュエーション・スリラー界の二大巨匠を列挙している。まぁ、これだけなら良くある過剰宣伝として聞き流すこともできようが、本作のあらすじを読んでみれば、その設定は全く以て両作と共通しているではないか。しかも、その上で、どうやらいくつもの映画賞を受賞しているようである。事ここに至って、我々健全な映画鑑賞者たちは、ほほう、では過去の傑作に真っ向から剥くだけの牙を備えた作品なのだな、と、そういう眼で本作を観ることになる。

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 では、果たして本作は、以上のような観客の期待に沿う新規かつ上質のストーリーを提供できたか、というと、答えは当然NO!だ。

 序盤~中盤にかけては、主人公マークが脱出のため一生懸命コンクリの壁を掘削していく、という一貫した展開。閉ざされたロッカーの鍵が実は頭上の蛍光灯に隠されていたりして、雰囲気は丸々『SAW』みたい。この辺りは、まだ普通におもしろく鑑賞出来る。というか、この段階で既につまらないソリッド・シチュエーション・スリラーというのも、逆に珍しいだろう。

 本作で最初の転機は、中盤辺りで訪れる。やっとの思いで厚い壁に穴を空け、部屋の外へと出たマークが見たものは、今まで自分が居たのと全く同じ金庫室。つまり、マークが閉じ込められている金庫室は、『CUBE』における殺人立方体と同様、いくつもの部屋が連なった構造をしているようだ。一縷の希望を追いかけて頑張っていた主人公が、中盤辺りで振り出しに戻される、というのは、この手の作品の常套。

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 本作における“転機”は、どちらかと言えば、隣の部屋に女性が閉じ込められていた、という点だろう。まぁ、過去のソリッド・シチュエーション・スリラーを見ても、たいていは同じように閉じ込められた被害者が複数人いるから、別に画期的な点というわけではない。とはいえ、本作でマークの相棒となるべきその女性には、(たしか)アフリカのどこかの国の人なので全く言葉が通じない、という一応の独自性がある。

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 で、中盤から先は、当然、両者が悪態をついたり喧嘩したり、でもやっぱり協力し合ったりしながら、脱出を目指していくことになる。まともな鑑賞者が目を丸くするのは、物語も終盤に差し掛かったときである。何日もの間、自分のおしっこを飲み、ウジ虫を食べながら穴掘りに従事してきたマークは、遂に意識朦朧、倒れてしまう。女性はマークより(おそらく)3日ほど後で監禁されているので、まだ元気なものだ。そうしたら、なんとその女性は、突如マークに馬乗り、彼とセックスを始めてしまうのである…!

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 …はぁ?!ちょっと待って!? この展開は、本当に唐突だ。2人がセックスに至るまでの過程では、別に両者の恋なんか微塵も前フリされていなかったし、むしろアフリカ女性は結婚式の前夜か当日に攫われた、というキャラクターだったはず。しかも、彼女は非常に信心深い人物であることが度々描写されてきた。もちろん、数多の唐突な展開と同様、このセックスシーンに関しても聖書だとかその辺を紐解けば得心もいくのかもしれないが、通常の、特に日本の鑑賞者からすれば、全く以て意味不明なただの“ふしだらシーン”でしかない。

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 一生懸命穴を掘り続ける両者をこれまで応援してきたというのに、これでは我々もアンチ・スパイラルさながらに激高するしかない。彼らは、決意もなく、覚悟もなく、道理もなく、己の欲望のままに螺旋の力を使い、その力に溺れたのだから。こんな不届きな奴らは、地球を追放し、アンチ・スパイラルの母星に幽閉するしかなかろう。

 なんて、憤りながらも鑑賞を続ける我々に、本作はトドメの一撃をお見舞いする。コトが終わり彼らが眠っていると、重い金庫室の扉がまた少しずつ開き始める。これはこれまでにもあったことで、普段は固くて回せない扉の“とって”が突然回り始めるのである。しかし、何故かマークらが見ていると止まってしまうので、彼らは後ろを向いたまま後ずさり、そのまま扉から出て次の部屋に進む。扉の向こうには誰もおらず、じゃあ、誰が何のためにどうやって扉を開けたの?という謎が一つの引っ張りにもなっていたのである。

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 しかし、今回は、これまでとは違う。後ずさりしながら進む両者は、なんとそのまま外の世界への脱出に成功するのである。そこで彼らが見たものとは…地球ではない惑星の景色だった…!

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 …はぁ?!ちょ!ちょ!ちょっと待って!?この展開もすこぶる唐突。ただ、百歩譲れば、一応微細な前フリを認めることはできる。掘削作業中、マークがジョークまじりに何度も言っていた「俺たちは見せ物として宇宙人に攫われたに違いないぜ。」というのがそれだ。でも、だからってさ。まさか本当に別惑星オチを持ってくるとは思わないよ。っていうか、それをやっちゃあ全部台無しではないか。

 ソリッド・シチュエーション・スリラーの“サスペンス的本質”というのは、“誰が何のために”という部分にある。個人的にはその他にも“エンターテイメント的本質”と“ドラマ的本質”があって、3つの本質でソリッド・シチュエーション・スリラーは成り立っていると思うのだが、その中でも“サスペンス的本質”は他の要素に直接影響を与える、あるいは、他の要素から論理的に導かれるべき最重要のファクターだ。

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 しかし、本作のオチは、この“誰が何のために”という部分を脱出速度で丸投げしてしまう本当に“トンデモ系”なものである。なぜか置かれていたロッカー、なぜか蛍光灯に隠されていたロッカーの鍵、なぜかロッカーの中に入っていた掘削道具、なぜか第3の部屋に既に彫られていた墓穴、なぜか見ていないときだけ開く扉。それらすべての“謎”は、ラストで“誰が何のために”を明かすことで始めて意味のある演出になる。

 もちろん、犯人の正体や目的を明示する必要は必ずしもない。犯人の正体も目的も、『SAW』では両方とも明確だったのに対し、『CUBE』では両方ともあやふやだったが、両作ともやはり傑作である。要は、犯人や目的を明示しないのなら、そういう描き方をしておかなければならない、という話なのである。

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 だからこそ、本作のオチは、本当にダメ。作中に散りばめられた謎も唐突なセックスも、全てを投げ出して安易な“宇宙人オチ”に逃げたとしか思えない。したがって、本作を観る限りにおいて、本作の製作者は、決意もなく、覚悟もなく、道理もなく、己の欲望のままにフィルムを無駄遣いする、とんでもない映画人だと言わざるを得ないだろう。

点数:52/100点
 まぁ、本文でちらっと書いた通り、筆者が本作の持つ真のメッセージを見逃しているだけの可能性はある。聖書だったり政治だったり、その辺の真意がもしあるのなら、是非ご指摘いただきたいところである。

(鑑賞日[初]:2015.2.7)

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これはインフィニティ・ビッグバン・ストーム

  • Mr. Alan Smithee
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Re: タイトルなし

断じて否あぁぁぁ!!!

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