[No.339] オブリビオン(Oblivion) <72点>





キャッチコピー:『何故、彼は人類のいない地球に残されたのか・・・?』

 わたしが死んでも、代わりはいるもの。

三文あらすじ:西暦2077年、突如侵略を開始した異星人“スカヴ”の侵攻を食い止めたものの、その戦いによって半壊してから60年後の地球。生き残った人類がみな土星の衛星タイタンへと移住する中、ジャック・ハーパー(トム・クルーズ)は、パートナーであるヴィクトリア・オルセン(アンドレア・ライズボロー)とたった二人で地球に残り、衛星軌道上の宇宙ステーション“テット”からの指示の元、高度1,000mの上空からの地上監視任務に就いていた。そんなある日、パトロール中に宇宙船の墜落現場から謎の女性ジュリア・ルサコーヴァ(オルガ・キュリレンコ)を救出したことを切っ掛けに、ジャックは、自身と世界の真実に迫っていく・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 まず、本作のタイトル“オブリビオン(Oblivion)”ってなかなか聞き慣れない英単語だが、その意味は、“忘れ去られている状態”ということらしい。つまりは、人類がみな去ってしまってあたかも“忘れ去られた”ような状態にある地球とか、実は自分が宇宙人に拉致られてクローン化していたということを“忘れ去って”いたトム・クルーズだとかを表しているのだろう。そして、その中で、人類の魂を未だ“忘れていない”男モーガン・フリーマンだとか、かつての愛を決して“忘れない”女キュリレンコ姉さんだとかと関わりながら、クローンが自身の存在理由を見いだしていく作品なのだろうな、ということが想像できる。

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 なかなかいいじゃないか。ベタベタと言えばそうだが、しっかりしていて決して悪くはないテーマである。

 ちなみに、もう一つ、“オブリビオン”には、法律用語で“大赦”の意があるらしいが、こちらは本作とは直接関係あるまい。まぁ、憎めない友人などを許してやるときに、「わかったよ、今回だけはオブリビオンしてやるよ。」なんて戯れに使ってみるのもよかろう。

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 さて、本作は、たしかウィル・スミスが親バカ丸出しで主演したSF大作『アフター・アース』と同時期に公開された作品だったように記憶している。“ウィル・スミス主演のSF大作”というのは、なんともいただけない。それはひとえに伝説級の駄作『アイ・アム・レジェンド』のイメージが強いためである。

 また、一方で、“トム・クルーズ主演の大作”というのも、まぁなんと言うか、心の底から「観たい!」とはなかなか思い難いところがある。近年だと、『ワルキューレ』だとか『ナイト&デイ』だとかそのあたりは、大作ではあるのだろうけど別に貴重な時間を割いてまで必死こいて観るものでもないなぁ、という作品だった。

 以上の相乗効果、すなわち、『アフター・アース』への悪印象と“トム・クルーズ大作”への無関心がごったごったと一緒くたになって、個人的には、本作にあまり期待しないまま公開期間での鑑賞を逃したのであった。

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 しかしながら、いざ腰を据えて鑑賞してみると、本作はおもしろい。特にSF好きであるならば、一も二もなく楽しめるであろう。舞台設定も良い、ギミックも申し分ない、トム・クルーズの鼻につくニヤケも悪くないじゃないか。中盤以降は、この世界の謎に釘付け。モーガン・フリーマンは相変わらず節操なくどこにでも出演するなぁ、なんて思いながらも、非常に楽しく鑑賞を続けられる。もちろん、人類のためにエイリアンから地球を守る任務に就いていたと思っていたトム・クルーズが、実は当のエイリアンによって生み出された何千・何万体ものクローンの内の一人であり、逆に生き残ったわずかな人類を根絶やしにするための片棒を担いでいた、というカラクリはいささかありきたりではある。しかし、呆れかえったりはしない。ベタだが丁寧に描かれていて、好感が持てる。

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 本作の評価を急転直下の奈落へと突き落とすのは、大団円も大団円の大オチ部分である。

 端的に述べると、キュリレンコ姉さんは、地球を救って死んでしまったトム・クルーズの代わりに彼のクローンとくっつくのである。

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 もちろん、本作の主人公たるトム・クルーズは、既にオリジナルのトム・クルーズのクローンではある。しかし、そこには一応冒頭で述べたようなしっかりしたテーマがあったように思う。例えクローンであったとしても、彼は一人の人間として、確固たる“個人”として、キュリレンコ姉さんを愛し、未来を思い、勇気をかけて、命を賭した。出生こそ“まがいもの”であるが、彼は紛う事なき”主人公”であり、また、“ヒーロー”であったのである。

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 でもそれがさ、ラストでもう一匹のクローンとくっついてハッピーエンドと言われちゃったら、そりゃもう全部台無し。しかも、もう一匹のクローンが、なんか「ボクは彼(主人公だったトム・クルーズのこと)だ。だから彼女と再びめぐり逢うことができた。」みたいな悦に入った独白なんかする始末。

 そういうことだったの? 前述した筆者の解釈は、根底から根こそぎ覆されるわけである。確かに、まがいものが自身のインディビジュアルやアイデンティティーのようなものを確かめるというSFはありきたりだ。でも、だからって本作のように奇抜極まる“一妻多夫制”を提示するのは、少し未来に生きすぎじゃあないだろうか。

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 物語っていうのは、基本的に、主人公や主要人物が真っ直ぐな心根で以て自身のディスアドバンテージを克服するからおもしろいのである。清く美しい心を持ちながら地味で薄汚いシンデレラは煌びやかなお姫様へ変身し、逞しく勇敢な心を持ちながらチビでヨワい一寸法師は悪鬼を打倒する。クローンが主人公なら、当然その唯一無二性を提示してこそ、立派な物語になるんじゃなかろうか。綾波は綾波しかいないから、我々はあんなにも魂を完全燃焼させたわけである。そんなストーリーテリング上の原則を蔑ろにして、代替品に代替品を演じさせるような薄っぺらいハッピーエンドを描いた本作を、筆者はとてもじゃないがオブリビオンできない。

点数:72/100点
 終盤に至るまでは本当に楽しいSFだっただけに、大オチが惜しまれてならない。それがまかり通るなら、これから何人ものトム・クルーズがキュリレンコ姉さんのところに殺到するんじゃないの?なんていうちょっと企画もののAVみたいな後日談を妄想してしまうくらいだ。前回感想を書いた『ルーパー』とは対照的に、ここ2~3年では個人的“トンデモSF映画”のベスト10に入れてもいいような珍作であった。

(鑑賞日[初]:2015.4.18)

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Comment

  • yaman
  • URL
No title

そういっていただけて、父親のモーガンフリーマンも喜びます。

  • Mr. Alan Smithee
  • URL
Re: No title

やっぱり、トム・クルーズは映画史に残る傑作にばかり出演しますよね。ウソですけど。

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