[No.345] ラバー(RUBBER) <45点>





キャッチコピー:『映画史上初の殺人タイヤムービー!』

 嗚呼、この護謨魂。

三文あらすじ:荒野のただ中でおもむろに起き上がり、独り転がるゴム(Rubber)でできた一本のタイヤ。警察の捜査も空しく続出する被害者。そして、その一連を“映画”として鑑賞する劇中観客たち・・・


~*~*~*~


 “モンスターパニック”というジャンルのすそ野は広い。筆者を含めたファンたちの“アイドル”であり、同ジャンルのある意味“主人公”でもあるモンスターたちには、膨大な種類が存在する。サメや恐竜、クマや蛇といったポピュラーな肉(雑)食系動物から、クモやカマキリ、ミミズやサソリのような虫類、あるいは、『エイリアン』シリーズのエイリアンや『グエムル』のアイツのような空想上の怪物などなど。一から挙げだせば週末がすぐ終わってしまう。

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 とはいえ、それらに共通する要素は、みな一様に“生物”である、という点である。作り手が神であろうと人であろうと、モンスターパニックにおけるモンスターは、基本的に生き物であることが多い。まぁ、ロボットが人を襲う映画というのも無数にあるが、この場合はやはり端的に“SF”と考えるべきではないだろうか。

 しかしながら、原則には例外が付き物なのであって、無生物によるモンスターパニックなど全く想定できないのである、と断じてしまうのは、思考停止であり愚の骨頂。本作は、タイヤという無生物のモンスターが罪なき一般市民を次々と血祭りにあげていく、れっきとした“モンスターパニック”である。

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 いや、でもそれやったらもう“モンスター”なんか何でもええやん!と悲痛な叫びをあげたあなたは、健全たるモンスター好きの魂を失っていないのである。実際に本作の製作者も“モンスターパニック”、あるいは、より広く“パニック映画”というジャンルに対するある種の分析的視点で以て本作を作っているようだ。

 確かに、そのような試みはなかなかに興味深いものであろう。詰まるところ、モンスターパニック好きがモンスターパニックに期待するものは、人外の化け物に人々が矢継早に殺されていく、というそのシンプルなプロットに集約されるのであって、煎じ詰めればモンスターの種類は副次的、二次的な要素にとどまる。いやいや…俺はゼノモーフの雄姿こそを楽しみにしているんだぜ、というあなたや、やれやれ…私はグラボイズが出なければ鑑賞する気すら失せるがね、と宣う貴殿は、“モンスターパニック・ファン”というよりはより狭く、“『エイリアン』ファン”であったり、“『トレマーズ』ファン”と呼ばれるべきなのである。

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 よって、本作の基本的な発想自体はおもしろい。ダメなのは、それを作中であからさまに説明してしまう、というところである。本作は、極めてメタフィクショナルな作品である。冒頭から観客に語り掛ける警察官、タイヤによる虐殺を“映画”として鑑賞する劇中観客たち。なんだかお洒落でどことなく崇高な雰囲気が醸し出されているが、そんなのはメタな展開を採用すれば必然そうなるだけの話であって、“モンスターパニック”としては完全に失格と言わざるをえない。

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 結局のところ、本作からは「映画の構造分析したぜ!」という製作者からの嬉々としたメッセージは感じられるものの、そのレベルに終始しているような気がする。分析の末、真におもしろい“モンスターパニック”を作ったんだな!お前たち!という感想を抱くことは、残念ながら筆者にはできなかった。本作の製作者たちには、モンスターパニック魂が決定的に欠落しているのではないだろうか。

点数:45/100点
 “タイヤが人を襲う”という発想自体はおもしろいんだよ。それなのに、人を殺傷する手段を『スキャナーズ』みたいな超能力に設定してしまうあたり、すごく残念だ。タイヤと砂漠、そんな無骨で愛おしいアイデアがあるのだから、殺傷方法は、タイヤがバリバリと変形し、グチグチと人々の肉を裂き、ボリボリとその骨を砕く、これしか考えられない。

(鑑賞日[初]:2015.6.8)

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