[No.35] キック・アス(Kick-Ass) <90点>

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キャッチコピー:『特殊能力ゼロ、モテ度ゼロ、体力微妙 ─ なりきりヒーローが世界を救う』

 私は行動に偉大であった者を英雄とは言わない。
 その心において偉大であった者を英雄と呼ぶ。

三文あらすじ:スーパーヒーローに憧れるオタク高校生デイヴ・リゼウスキ(アーロン・ジョンソン)は、ネットで購入した安物スーツに身を包み、スーパーヒーロー”キック・アス(Kick Ass)”としての活動を開始する。始めの内こそチンピラにやられっぱなしだったキック・アスは、ある日3人の暴漢から男を救う様子がYouTubeに配信されたことで一躍有名ヒーローに。そんな中、ギャングのボス、フランク・ダミコ(マーク・ストロング)を狙うビッグ・ダディ(ニコラス・ケイジ)とヒット・ガール(クロエ・グレース・モレッツ)の親子やダミコの息子レッド・ミスト(クリストファー・ミンツ=プラッセ)ら他のスーパーヒーローたちと出会ったキック・アスは、ひょんなことからダミコに目を付けられ、命を狙われることになる・・・


~*~*~*~

 
 とにかく、まずは予告編が最高。何の取り柄もない高校生がヒーローになろうとし、なんやかんやで”本当のヒーロー”へと成長する。

 ”特別な力は無くても、正義を愛する心があれば、スーパーヒーローになれる!”

 これに燃えないのはウソだろう。

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 まぁ、とにかくおもしろい。崇高でお行儀の良い主義・主張は無いが、とにかくヒット・ガールが格好良く、ビッグ・ダディが渋く、レッド・ミストがおかしく、キック・アスが愛らしい。そんな愛すべき物語の立役者は、もちろん監督であるマシュー・ボーン。聞いたことないなぁなんて思っていたけれど、なんと彼は、ガイ・リッチーのあの名作『ロック・ストック&トゥー・スモーキン・バレルズ』や『スナッチ』を制作した人らしい。どうりでスーパーヒーローのオマージュ・コメディにしては、シビアな描写が多いわけだ。

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 ヘナチョコのくせにスーパーヒーローを始めたキック・アス、その初仕事は、以前カツアゲされたチンピラ退治。怯えながらも勇気を振り絞り、彼らの車泥棒を止める姿がまず愛らしい。隠していた棍棒で勇敢に戦うが、当然すぐボコボコに。まぁ最初はそんなもんだろうと思っていたし、これから強くなって次頑張ろうよ。と、思ったのも束の間、なんとキック・アスはチンピラの一人にナイフで腹を刺されてしまうのである。ちょっと…そこまでせんでも…。と、思ったのも束の間、ヨロヨロ歩いていたキック・アスは、今度はなんと走ってきた車にはねられてしまう。まるで『ホームアローン』の泥棒がマコーレ・カルキンを本気で銃で撃ってしまったかのような衝撃だ。しかし、長い入院生活を過ごしたデイブは、体中に金属を埋め込み、感覚の麻痺したボロボロヒーローとして復活する。まるで薬物に溺れたマコーレ・カルキンが不屈の精神で銀幕に返り咲くかのような感動である。

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 このように、まずキック・アスが痛々しい制裁を受けることで、本作はただのお気楽コメディを越えた上質のヒーロードラマに昇華されているのだと思う。何の能力も持たない"リアル"なヒーローは、スパイダーマンのように軽快に飛び回って泥棒を捕まえたりはできないし、その苦難はスパイダーマンのように「ヒーローとプライベートの両立が図れない」なんていうオチャラケけたものではない。この現実世界で"ヒーロー"になるっていうのは、もっとシビアで残酷なものなんだ。

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 また、本作の真のヒロインであり、その伸びしろも考慮するとおそらく最強のヒーロー、ヒット・ガールのバックボーンもなかなかシビアである。ダミコにはめられ投獄されたあげく妻に自殺された父ビッグ・ダディに洗脳されて、完全な戦闘マシーンとして育てられている彼女は、誕生日にバタフライ・ナイフをリクエストし、ボウリングやアイスクリームと引き換えに我が身を父が撃つ実弾に晒す。娘に発砲するときに火薬の量を減らしたというのは、普通愛情とは言わんぞ、ニコラス。しかし、この常軌を逸した親子関係も児童虐待とは感じないよう上手く描写されている。期待の新星クロエ・グレース・モレッツの好演も手伝って、ヒット・ガールは心から武器とそして何より父を愛しているということが伝わるからだ。いかなるお節介もこの2人を引き裂くことは許されない。キック・アスとビッグ・ダディがダミコの部下に捕らえられ拷問されるシークエンスで、ヒット・ガールが死に行くビッグ・ダディの教えを思い出しながら敵を次々倒していく展開では、2人の紛れもない親子愛に思わず涙してしまうだろう。ちなみに、このシークエンスでビッグ・ダディがヒット・ガールに指示する”クリプトナイト”とは、スーパーマンの唯一の弱点である鉱石の名前である。また”ロビンの逆襲”とは『バットマン&ロビン Mr. フリーズの逆襲』から来ていると思われる。

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 このように本作では、スーパーヒーローへのオマージュの数々も観客を楽しませてくれる。まず、スーパーマンからは、オープニングの映像や前述のクリプトナイトが挙げられる。ビッグ・ダディのコスチュームはもろバットマンだし、デイブはオタク仲間とブルース・ウェインについて話したりする。そして、ダミコ一味による拷問で肉体的に傷つき、自分のせいでビッグ・ダディが死んでしまったという事実に精神的にもボロボロのキック・アスが、最後の戦いに臨むヒット・ガールを助けに行くシーン。彼は「大いなる力を持たない者には責任がないのか?」と自問し、自分を奮い立たせる。これは『スパイダーマン』において主人公ピーター・パーカーの叔父ベンが遺した「大いなる力には大いなる責任が伴う (With great power comes great responsibility.)」という名言のパロディだ。命題の”裏”は必ずしも真ではないぞ、とデイブに教えてあげたいが、形式ではなく実質こそが大切というのが本作のテーマ。特殊能力は何一つなくても、自分がしたことの責任は自分でとる。そんな当たり前とも思えることを臆さず実行できる者こそが、本当のヒーローなのである。パロディと本作のテーマを上手く融合した非常に上手いシーンだ。

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 スーパーヒーローのパロディ以外にも、例えば『スカーフェイス』においてアル・パチーノ演じるトニー・モンタナが発する名セリフ「俺の友達に挨拶しな!(Say hello to my little friend!)」など、映画ファンをニヤッとさせるオマージュも随所に見られる。総じて、本当に楽しい映画だ。

点数:90/100点
 本作は非常にエンターテイメント性の高い作品であるが、同時にシビアで残酷な描写も多い。したがって、この点がダメな人には受けないだろう。しかし”本当のヒーローとは、コミックのように甘いものではない”ということをデイブが思い知り成長する過程を描写する上で、シビアかつ残酷な描写が抜群の効果を発揮していることは間違いない。残酷描写が苦手な人は、それが物語上必要不可欠であることを肝に銘じて、逆に本作をお気楽コメディだと思っている人は、本作が素晴らしい真のヒーロードラマであることを肝に銘じて鑑賞して欲しい。本作は、そんな傑作である。

(鑑賞日:2012.2.11)

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Comment

  • ナイシトール
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クロエの戦闘シーン、威嚇の表情がかわいカッコイイで好きです。
ビッグダディが燃やされるシーンでの、次はロビンの逆襲だー、のやり取りも良いですよね。

  • Mr.Alan Smithee
  • URL
Re:

あのシークエンスは本当に最高です!僕は号泣しました!!

クロエ・グレース・モレッツは数居るハリウッド女優の中では、取り立てて美人という訳ではありませんが、何故か非常に魅力的で良い女優ですね。あの歳にして演技と役柄に幅があって素晴らしい。
今後の活躍が本当に楽しみです♪

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