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2015

[No.351] ミッション:インポッシブル / ローグ・ネイション(Mission: Impossible Rogue Nation) <83点>

CATEGORYアクション




キャッチコピー:『絶対不可能に挑め。』

 イギリスより愛をこめて。

三文あらすじ:アメリカの諜報機関I.M.F.のベテランエージェントであるイーサン・ハント(トム・クルーズ)は、謎の犯罪組織“シンジケート”の調査中、指令を受けるためI.M.F.のロンドン本部を訪れるが、敵の罠にかかり、囚われの身となる。正体不明の美女イルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)の手助けで脱出に成功したハントが知らされたのは、I.M.F.解体の決定だった。これまでのテロの元凶をハントであると断定し彼を追うCIAから身を隠しつつ、6ヶ月後、ハントは、ウィリアム・ブラント(ジェレミー・レナー)、ベンジー・ダン(サイモン・ペグ)、ルーサー・スティッケル(ヴィング・レイムス)らプロフェッショナルと再集結し、“シンジケート”を打倒するため、またしても“不可能な作戦(Mission Impossible)”に挑んでいく・・・


~*~*~*~


 2015年の夏を彩るハリウッドのブロックバスター群。個人的にそのトリを飾るのが、生真面目諜報部員イーサン・ハント5度目の活躍を描く本作、『ミッション:インポッシブル / ローグ・ネイション』である。

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 監督は、クリストファー・マッカリーという人物。基本的には、映画監督ではない。彼は、映画脚本家である。その輝かしい功績の中でも、やはり一番に特筆しておくべきは、『ユージュアル・サスペクツ』であろう。今や“どんでん返し”の金字塔として後世に語り継がれているこの大傑作の脚本を手掛けたのが、他ならぬマッカリー。当然、第68回アカデミー賞において、脚本賞を受賞している。

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 そんな人物が監督したのだから、本作は、ストーリー的にはすごくしっかりできている、のである。一方で、アクション面は少し物足りない

 まず、ストーリー面に関しては、端的に言って、『007 ロシアより愛をこめて』とほぼ同じである。アクション大作に初の大抜擢を受けた(まぁ、2014年の『ヘラクレス』にも一応出ていたが。)レベッカ・ファーガソン演じるイルサ・ファウスト(下記[上])は、英国諜報部員でありながら祖国に裏切られ、指令よりもイーサンへの“愛”を優先し、共闘する。これは、ダニエラ・ビアンキが演じたタチアナ・ロマノヴァ(下記[下])とほとんど同一のキャラクター造形と言って良い。

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 本作では、このようなスパイ映画の伝統的スキームと、本シリーズ伝統の“組織や国家から裏切り者の烙印を押されたイーサンが、逃げ回りながらも真の黒幕を暴く”というプロットを上手く合体させており、素晴らしい。そもそも、イーサン・ハントというスパイは、銀幕への初登場時から既に“はぐれ者の(Rogue)”諜報部員として、何の後ろ盾もない中、CIA本部に潜入したりしながら奮闘していたのだが、その伝統を踏襲しつつ、かつ、同じ境遇のヒロインを配置し、彼らを“ならず者の(Rogue)”の犯罪組織と戦わせている、というわけだ。シンプルなテーマと一貫した語り口は、生真面目スパイの最新作として申し分ない。

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 ちなみに、本作でI.M.F.解体を主張するCIA長官アラン・ハンリー(アレック・ボールドウィン)は、I.M.F.のやんちゃ具合を訴える際、「奴らは、私がCIAに入局した当時も、独断で本部に潜入して諜報員リストを盗み出した」と発言している。ハンリーが何歳で入局した設定なのかは知らないが、旧作ファンへのサービスがうれしく、時の移ろいを感じるナイスな台詞である。

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 一方のアクション面であるが、もちろん、一般的なアクション大作に我々が求めるスペクタクルを下回るようなものではない。とはいえ、本作がこの夏の“ブロックバスター超大作”であり、本年のライバルたち、すなわち、『アベンジャーズ2』『ターミネーター5』、または、『ジュラシック・ワールド』といった超ど級の大作たちと、“物量”という意味でも競い合わなければならないと考えるなら、やはり少しばかり物足りなさが漂う。

 アクション的な部分での本作の“目玉”は、次の2点だろう。どちらも“トム・クルーズが実際にスタントをこなした!”というところが“売り”である。

 一つは、公開前の予告編でもバンバン流れていた“上空1500mの機上でのスタント”である。これは、中々良かったと思う。

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 あれだけ大々的に宣伝していた見せ場にも関わらず、アヴァンタイトルでの登場。制作会社“バッド・ロボット”のロゴから草原のシーンが映し出され、“映画好き”を自称している我々は、すぐさま「ははーん、ロゴの草原からそのまま実写の草原を持ってくるっていう演出ね。『クリスタルスカル』の冒頭と似てるな。」などと生意気な分析を始める。しかし、刹那にしてそこがこれまでヤキモキしながら予告編で繰り返し見てきた、あの場面の舞台だと察知した我々は、「マジか!いきなり来るか!」と、制作陣への賞賛とも降参とも取れないワクワクの気持ちを抱くのである。

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 また、このアヴァンシークエンスからタイトルバックへの入り方も、非常にスマートでカッコよかった。後部ハッチの解放を不審に思いチェックしに来た“シンジケート”の末端構成員は、積荷に取り付くイーサン・ハントを目撃。驚く構成員に対し、ちょっととぼけた表情で首をかしげてみせるというお馴染みのポーズをするハント(2でアンブローズが言っていた“ニヤけ”とはまた別。)。パラシュートが展開された刹那、構成員は現状を把握するが、時すでに遅し。とっさに彼が発する「Wait!」。その瞬間、ティリリリリ・・・導火線!シンプルですごく良かった。

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 アクション面でのもう一つの“目玉”は、“6分を超える潜水スタント”である。御年53歳であるトム・クルーズが、かねてからやりたかったという水中でのガチンコ撮影のためにトレーニングを重ね、結果6分以上も息を止めていられるようになった、というニュースは、公開前、映画ファンを少しざわつかせた。

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 ただ、惜しむらくは、ガチンコ感があんまり伝わってこない、という部分。トム・クルーズがアームに吹っ飛ばされてからグルグル回るシーンなんかは当然CGであって、彼のガチンコの潜水シーンは意外とちょっとしかないのである。せっかく6分以上も息を止めていられるのなら、3~4分ぐらいずっとワン・ショットの長回しで見せればよかったのになぁ。

 というか、本作は、もっとこの潜水シークエンスを中心とした一連のくだりにアクション的“物量”を集中すべきだったように思う。当該シークエンスは、本シリーズでのお決まりである“要塞への潜入ミッション”。いつも通り念入りなブリーフィング、その最中にヒロインから提供される「It's Impossible.」という極上のフリもある。これを聞いたイーサンの「ん?“Impossible”・・・だって?」みたいな絶妙の間もある(劇場ではここで少しだけ笑いが生まれたほど。)。だったら、このシークエンスは、第1作でのラングレー潜入ミッションさながら、本作を象徴するものとして、もっとじっくり描いてよかったのではないかな。ブリーフィングが始まった時点で観客は「来た来た、コレコレ。」とすこぶるワクワクしているのに、肝心のミッション部分がその期待に満足を与えるほどのものではない、というところも、本作のアクション面を全体として物足りなく感じさせる一因であろう。

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 それから、これはそもそも論だが、上記飛行機上のシークエンスにしても潜水シークエンスにしても、今どき“本当にやったスタント”にいったいどれほどの“価値”があるのだろうか。もちろん、映画好きたちには一定の理解と興味を得られるだろう。しかし、そうでない人々にとっては、リアルなスタントとブルーバックでの合成との間に差異などないのではないだろうか。あるいは、その逆かもしれないが、事実、筆者は本作鑑賞後の喫煙室で、「いやぁ、ホンマにスタントやったって言われても、“だから?”って感じやんなぁwww」という、おっさんたちの会話を聞いた。

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 もちろん、今どきだからこそ、ガチンコで取り組んだ“質量あるアクション”は貴重だ。本シリーズに限っては、もう“おじいさん”になりつつあるトム・クルーズが、老体に鞭打ち頑張っているのだから、なおさらである。とはいえ、CGも黎明期をとっくに過ぎた今、その頑張りが果たして観客にどこまで伝わるかは、いささか疑問である。また、やっぱり、CGで描いたアクションシーンのような「うわ!すげぇ!」という瞬発的な驚きが無い分、夏のブロックバスターの中では、少し見劣りしてしまうような気がするのである。

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 最後に、本シリーズについての筆者なりの豆知識を一つ。それは、作品のおもしろさはトム・クルーズの髪の長短による、ということ。もちろん、大幅に個人的趣味嗜好が介在した評価ではあるが、これまで5作に渡って制作された本シリーズでおもしろかった作品は、第1作、第3作、そして、本作である。逆に言うと、第2作と第4作は、言ってしまえば駄作である。これを前提に思い返していただければ一目瞭然、おもしろかった1・3・5では、イーサン・ハントは短髪であるのに対し、駄作であった2・4では長髪なのである。

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 まぁ、並べてみると、今回は1や3に比べてそこまで劇的な短髪ではないな。それ故、どこか物足りなさがあったのかもしれない。それに、この話は、結局メルクマールとして何を優先させるか、ということでしかないのだけれど。連続した良作が無い以上、現状では、本シリーズは奇数の作品がおもしろく、おもしろい作品のイーサン・ハントは短髪である、とも言える。とにもかくにも、本国での公開前の時点で既に2016年夏から撮影開始予定との発表がなされた次作では、しっかりスッキリ短髪のトム・クルーズに極上のアクションを披露してもらいたいものである。

点数:83/100点
 一部アクション面での不満を述べたものの、非常に良く出来た良質の続編。老体に鞭打ち頑張るトム・クルーズの姿も、本当は、我々アクション映画ファンがCGより愛をこめて応援すべき、“古き良きアクションスター”の姿なのかもしれない。

(鑑賞日[初]:2015.8.12)
(劇場:TOHOシネマズ梅田)










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Tag:劇場鑑賞作品 スパイ大作戦 良い続編

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