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2012

[No.39] コラテラル(Collateral) <94点>

CATEGORYドラマ




キャッチコピー:『その夜は、いつものように始まった。』

 音楽は終わってしまうと共に消え去ってしまい、二度とそれを取り戻すことはできない。

三文あらすじ:真面目なタクシードライバーのマックス(ジェイミー・フォックス)は、ある夜、ヴィンセント(トム・クルーズ)という客を拾う。高額の報酬に目がくらみ、朝までヴィンセントの運転手をすることになったマックスだが、実は殺し屋であるヴィンセントの仕事の巻き添え(Collateral)を食らったことに気付く。偶然にも交差した彼らの運命は、ジャズの即興演奏のように思わぬ結末を迎えることになる・・・


~*~*~*~

 
 本作は、一般にサスペンス映画だとかアクション映画というジャンルに分類されている。予告編もまるでアクション大作のようだし、公開前は、トム・クルーズ初の悪役を演じるということが話題になっていた。

 しかし、本作は紛れもない男と男のドラマである。
 本作の監督マイケル・マンは、登場人物の”人生”や”生き様”を描き出すことに長けていて、筆者のオールタイムベスト『ヒート』も同監督による渋い男のドラマである。しかし、同じ男のドラマでも同作が”女”という存在を通して男の生き様を浮き彫りにしたのに対して、本作では純粋に男対男の関係からそれぞれの人生が描写される。
 予告編や前評判からは、この点が伝わらなかったため、公開直後の本作の評価はあまり高くなかったように記憶している。筆者自身も、初回鑑賞時には本作をアクション映画だと思っていたので、なにやら拍子抜けした思い出がある。しかし、2回目の鑑賞で本作が渋い男のドラマであるということに気づき、3回目の鑑賞になる今回では、本作が『ヒート』に匹敵する男のドラマの傑作であると確信した。

 『ヒート』が銀行強盗一味とそれを追う捜査官という何人もの男をそれぞれの女との関係で描いたのに対し、本作ではマックスとヴィンセントという2人の男の生き様が象徴的に対比される。

 マックスは、真面目で平凡なタクシードライバー。リムジン会社を立ち上げるという夢を持っているものの、かれこれ12年もタクシードライバーを続けている彼は、そんな現在の生活に決して満足はしていないが、日々の暮らしに流され、現在の仕事はいつか会社を立ち上げるための繋ぎだと自分を誤魔化している。
 これに対して、6年間一度も失敗したことがないプロの殺し屋ヴィンセント。彼は、殺される人間は世界中の何億人のうちの1人にすぎないという確固たる信条と行動原理に基づき、自分の生き方に何の迷いも持たず、淡々と殺人をこなしていく。
 このように、2人の男は極めて対照的だ。

 そんな2人がドライバーと乗客という関係で偶然出会うことにより、互いに予想外の展開に巻き込まれていくのだ。

 本作は、この”本来出会うはずのない他人同士が出会う”というシチュエーション設定が上手い。
 そもそも、マイケル・マンという監督は、大都会の描写、特にロサンゼルス、しかも、特にその夜の描写が上手い。本作でも、ロサンゼルスでは膨大な数の人々が隣合って暮らしているにもかかわらず、そのほとんどが他人同士であるということが言及される。そして、このことを端的に表すエピソードとして、地下鉄構内のベンチで死亡した男が、6時間もの間死人だと気付かれなかったという話をヴィンセントが語る。これはラストシーンに繋がってもいる。
 そんな大都会L.A.で見知らぬ2人の男が出会うツールとして、マイケル・マンはタクシーを選択した。2人だけの会話からそれぞれの人生を描き出しつつ、一晩でロサンゼルスを回ることが出来るこの移動手段は、非常に効果的な舞台設定だ。
 また、大都会で他人同士の運命がひととき交差する場所として、もう一つ電車が登場する。これは先ほど言及した地下鉄の死人のエピソード及び、ヴィンセントが絶命するラストの銃撃戦の舞台となる。ヴィンセントは、電車内でマックスの銃弾を受けて座り込み、あの地下鉄のエピソードを再び口にしながら事切れるのだ。マックスは、ヴィンセントが絶命した”ロングビーチ駅”で降車し、死人となったヴィンセントはそのまま電車に運ばれていく。彼が乗客に死人と認識されるのは、いつのことだろうか。

 偶然の邂逅を果たした2人の男は、一晩の交流の中で互いの人生に“干渉”していく。

 マックスは、ヴィンセントに出会うことで、自分が夢を言い訳にしているという現実を突きつけられる。しかし、ヴィンセントとの関係を通して、彼はついに欠点であった行動力の無さを克服する。リムジン会社という自分の夢を言い訳にして日々の暮らしに安住していたマックスは、連絡先をもらった敏腕美人検察官アニー(ジェイダ・ピンケット=スミス)がヴィンセントの最後の標的と知り、彼女を救うため警察官から銃を奪ったり道行く人から携帯をパクったりという暴挙に出る。
 話が少し前後するが、冒頭で描かれるマックスとアニーの出会いシークエンスは非常にステキだ。彼らもまたドライバーと乗客という本来なら刹那的な関係。何分間かの2人のやり取りで、アニーとマックスのバックボーンを描き出す。そして、メローな音楽に乗せて、夜のロサンゼルスが実にしっとりと描かれるのである。

 一方、ヴィンセントは、マックスに出会うことで、父から愛されなかった過去という自身のトラウマと向き合う。そして、精神面だけでなく、完璧だった殺しの仕事もマックスの行動によって次々に狂いが生じていく。しかし、ヴィンセントはマックスを買っており、銃撃から救ったり精神面での後押しをしたりもする。孤高の殺し屋であるヴィンセントは、マックスに友情に近い感情を抱いていたのかもしれない。

 しかし、2人の関係は友情では決してない。
 『ヒート』におけるニール・マッコリーとヴィンセント・ハナは、銀行強盗と捜査官という相反する立場でありながら、互いをプロとして、そして男として認めており、最後には極めて友情に近い関係が生まれる。ラストでハナに追い詰められたマッコリーは、ハナが撃った銃弾に倒れるが、生涯を終える瞬間は彼の腕の中だ。
 一方、本作のマックスとヴィンセントは最後まで相容れることはなく、先ほど言及したようにラストはマックスの銃弾によってヴィンセントはその生涯を終える。そして、ヴィンセントは誰にも気付かれることなく、電車に運ばれていくのである。
 同じ”ヴィンセント”という名前でありながら、一方は捜査官で一方は殺し屋。この2人の対比もおもしろい。マイケル・マンは、男の生き様を渋く描きながらも、やはり犯罪者を手放しで賞賛はしていないようにも思える。

点数:94/100点
 冒頭でも述べたが、本作はあくまでも”男のドラマ”である。終盤のヴィンセントからアニーが逃げるシークエンスやヴィンセントとマックスの銃撃戦などのアクション映画的部分は、少しチープな演出で蛇足感が否めない。前半から中盤だけで十分な傑作である。鑑賞時には、ウイスキーを傾けつつ、自分の人生・生き様を思い返して欲しい。特に男性は必見である。そして、見終わったときには、彼のように一言”クール”と呟こう。

(鑑賞日:2012.2.14)










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