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2015

[No.357] オール・ユー・ニード・イズ・キル(Edge of Tomorrow) <72点>

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キャッチコピー:『日本原作、トム・クルーズ主演。』

 ALL YOU NEED IS...

三文あらすじ:近未来の地球、宇宙からの侵略者の激しい攻撃に対し、人類は、“機動スーツ”と呼ばれる新兵器で応戦するも、敗北寸前の劣勢に置かれていた。将軍の命に背いたため、人類の命運を賭けた“大殲滅作戦”の前線に送られることになった戦闘経験ゼロの軍属報道官ウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)は、戦地に降り立つや否や呆気なく戦死してしまう。しかし、死の瞬間、作戦前日の朝に目を覚ましたケイジは、その後も戦闘と死を繰り返す内、特殊部隊の軍人であり“ヴェルダンの女神”と呼ばれる英雄リタ・ヴラタスキ(エミリー・ブラント)と出会い、共に人類が勝利する道を模索することになるのだが・・・


~*~*~*~


 昨年2014年に公開されたSF映画において、内容的にも興行的にもなかなかの大成功を収めたと言っても良いであろう大作が、本作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』。特に、桜坂洋なる日本人の小説が原作、加えて、その小説がいわゆる“ライト・ノベル”であったというところから、日本ではバンバン宣伝が打たれていた。

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 そのため、日ごろそこまでしげしげとは映画を観ないという人も、本作に関しては、けっこう劇場へと足を運んだようだ。実際、普段から周囲に対し映画好きを偉そうに公言している筆者などは、当時、友人たちから日々「『オール・~』を観たか?」「あれはどうだったんだ?」と詰め寄られていた。まぁ、“映画好き”と吹聴しておきながら本作の鑑賞を逃していた筆者は、その都度、「映画ってのは、誰のためでもない、自分自身の興味のために、観続けるのよ・・・。」と、明後日の方向を見ながら、はぐらかしていたのであった。

 さて、本作の内容であるが、大局としては、良くできていておもしろいSFだった、となるのではなかろうか。特に、本作の監督があのダグ・リーマンであることを考慮するなら、なかなかの良作だと評価できそうである。というのも、このダグ・リーマンという男が過去に監督した代表作は、例えば、『ボーン・アイデンティティー』だったり、例えば、『Mr.&Mrs. スミス』だったり、そんな“なんか微妙な作品”ばかり。いや、もちろんどっちも決しておもしろくなかった訳ではないのだが、なんか今一つ足りていないというか、なんかパンチに欠けるというか、個人的には両作とも総じて“微妙”だった。まぁ、彼も“映画製作”という繰り返しの因果の中で、自身のスキルをアップさせたということなのかもしれない。

 本作において、物議を醸すのは、やはり物語のラスト、すなわちオチの部分ではないだろうか。つまり、ケイジはなぜループできたのか、である。色々と自分なりに考えてみたのだけれど、結論として、筆者には「これ!」という一義的な解が導けなかった。一応、以下に可能性と選択肢だけ書き記しておく。

 まず、本作で登場するエイリアンの性質をきちんと押さえておく必要があるだろう。“ギタイ(Mimic)”と呼称される本作のエイリアンには、3種類が存在する。一つは、いわば“雑兵”とでも呼ぶべきノーマルな異星人。

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 こいつには、本作のタイム・ループを語る上での特筆すべき能力は無い。ただムネムネと蛸のように動き、シュルシュルと忍び寄り、シャキシャキと人間を血祭りにあげていく、殺人兵器である。

 もう一つの種類は、タイム・ループにおいて重要なキャラクターである。彼は、エイリアンの中でも、“アルファ”と呼ばれるタイプ。

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 ブルーに発光するこのナイスガイの特性は、タイム・ループ発動の切っ掛けになる、ということ。もっとも、彼の自由意志によってタイム・ループが実行されるわけではなく、“アルファ”の死がタイム・ループのトリガーになるのである。

 では、“アルファ”の死を切っ掛けにタイム・ループを発動している敵の親玉は、というと、それがこのイソギンチャクみたいなボス“オメガ”

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 まぁ、こいつもおそらくは任意のタイミングで時間を巻き戻せるというわけではなさそうだ。原作や本作の裏設定は知らないが、本作での描写を見る限り、“アルファ”が死ぬと自動的にタイム・ループが発動されているように見受けられる。

 で、初参戦時に“アルファ”の血液を浴びて絶命したトム・クルーズは、“アルファ”と神経同調してしまった。つまり、トム・クルーズは“アルファ”になってしまった、のである。したがって、彼が死ねば自動的にタイム・ループが発動し、毎回作戦前日の朝まで時間が巻き戻されることになる。

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 では、本作ラストでは、いったい何が起こったのか。中盤あたりで負傷の末輸血され、“アルファ”の能力を失ってしまったトム・クルーズは、死んだらそこで終わり、もう二度とタイム・ループできないはずだった。にも関わらず、彼は、また時間を逆行した。しかも、このラストのタイム・ループには、それまでとは違う点がある。

 それは、それまでとは違い、1日目の朝まで戻っている、ということ。もう一つは、それまでとは違い、1日目の時点でオメガが倒されている、ということである。拙いけれど、図にするとこんな感じだろうか。

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 この事態に対する解答として、最も可能性の高い選択肢は、やはり、ラストの爆発でオメガの血液を浴び絶命したためトム・クルーズは“オメガ”になった、という考えであろうか。序盤で“アルファ”と神経同調したときと同様に、ラストの“オメガ”爆殺時にも、血液を浴びたトム・クルーズの目が黒く染まっていく、という描写があったかと思うので、彼が“オメガ”と神経同調したことは間違いないと思える(一応、あのとき“アルファ”も同時に爆死しているだろうから、トム・クルーズは“アルファ”と再び神経同調したという可能性も無いではないが、出血量であったり、映画的な情緒という点から考えると、あまり説得的ではなさそうだ。)。

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 つまり、本作ラストでは、“オメガ”になったトム・クルーズの能力によってタイム・ループが発動した、と考えられる。問題は、なぜ“1日目の朝”まで戻ったの?という点。

 そもそも、トム・クルーズは、なぜこれまで毎回“2日目の朝”に戻っていたのだろうか。この疑問に関しては、本作のタイム・ループでは、“アルファ”が覚醒した時点でセーブポイントが形成される、と考えるのが比較的合理的かもしれない。“オメガ”がサーバで“アルファ”が端末だと例えるのなら、端末のいずれかがシャットダウンした場合、その再起動時にはサーバ側で自動的にバックアップが取られる、といったイメージだろうか。

 そして、タイム・ループを発動させる本体の“オメガ”側では、いくつかあるセーブポイントの内、任意の時点を選択できるのではないか。確かに、この仮定に寄って立つなら、作中何百回と繰り返されたループが全てトム・クルーズの2日目覚醒時である必然性はないのだが、特になんらかの意図や作戦が“オメガ”側に無い場合に“アルファ”が死ぬと、“オメガ”は直近のセーブポイントを選択する、と納得してもよさそうである。“オメガ”側からすれば、より遠い過去までタイム・ループすればするほど、人類側に歴史改変(反撃)の機会を与えることになるのだから、“オメガ”側による改変の必要がない場合はできるだけ近い過去を選択する、というのは、合理的であろう(もちろん、この説明は、タイム・ループの発動自体は“オメガ”の自由意志に寄らず、“アルファ”死亡と同時に強制的に実行されるものであり、“オメガ”は時間をどの時点まで遡行させるかにのみ任意性を有する、という仮説を前提にしている。)。

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 しかしここで、できるだけ近い過去を選択するのであれば、2日目就寝後、すなわち、3日目起床時こそが直近の覚醒時なのであり、やはり2日目朝まで時間遡行していたことは謎のままではないか!という疑問が発生する。確かにこれはその通りなのであるが、一応、次の2つの説明が想定されるだろう。

 まず一つは、セーブポイントは“アルファ”の“強制的なシャットダウン”時にのみ形成される、という説明。ギタイたちが“眠る”という概念を持っているのかは定かではないが、少なくともトム・クルーズの自由意志による睡眠からの覚醒時にはセーブポイントは形成されず、強制的に意識を喪失させられた後の覚醒、すなわち、2日目朝起床時にセーブポイントが作られたということである。“オメガ”が本体で“アルファ”はあくまでも端末である、というギタイの性質上、“オメガ”側でセーブポイントを作りたい場合は、きっと“アルファ”に対し強制的ななんらかの操作を施すだろうから、セーブポイントは外部からの強制的なシャットダウン時にのみ形成される、と考えることにも一定の合理性を見出せそうだ(ちなみに、この考えでの“アルファのシャットダウン”とは、“アルファの破壊”ではない。あくまでも“アルファ”を一時機能停止させることでセーブポイントを作り出す、ということであり、“オメガ”側でタイム・ループを発動させたい場合は、その後、“アルファ”を死亡させる=破壊する、という手順を踏むことになるだろう。)。

 もう一つは、トム・クルーズ2日目寝てない説、である。突然の降格と前線基地への投入、明日はまず間違いなく死ぬだろうとの恐怖から、彼の心境的に一夜くらいの徹夜はむしろ当然とも考えられるため、個人的にはこの説もありかなとは思っている。もっとも、この設定が製作者側にあるなら、床に就いたもののギンギンに目のさえたトム・クルーズがそのまま朝を迎える、というような描写があってもよさそうなものだ。

 まぁ、いずれにせよ、これら2説のどちらかにより、やはりトム・クルーズは毎回直近のセーブポイント、すなわち、2日目の朝にタイム・ループしていたのだ、と考えたい。

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 以上を鑑みれば、本作ラストのタイム・ループがそれまでとは違いなぜか1日目の朝まで戻っていた、ということも、一応説明できそうだ。ラストで“オメガ”と共に自爆したトム・クルーズは、その瞬間“オメガ”と神経同調し、“オメガ”の能力を有した。同時に“アルファ”も死亡していたためタイム・ループが発動し、セーブポイントの選択権を持つトム・クルーズは、2日目朝ではなく1日目朝を選択した、ということである。

 じゃあ、なぜトム・クルーズは敢えて1日目を選択したのか、言い換えれば、1日目朝まで時間遡行させるメリット、あるいは、2日目朝に時間遡行させるデメリットが、トム・クルーズにあるか、であるが、これは彼が“オメガ”死亡の遡及効を知っていたか否かで結論が変わってくるだろう。ここで、“オメガ”死亡の遡及効とは、“オメガ”が死亡したという事実が、時間遡行後の世界にも反映される、ということを指す。

 まず、トム・クルーズが遡及効を知っていたのなら、彼には2日目に遡行するデメリットがある、ということになる(正確には、2日目へ遡行するデメリットを認識できたので敢えて1日目まで遡行した、ということになる。)。つまり、2日目朝に遡行し、そこで“オメガ”が死んでいたとしても、結局トム・クルーズが1日目に脱走兵として高官の地位をはく奪された事実は翻らない。したがって、彼には、将軍と言い争う前の1日目朝へ遡行するメリットがあるのである(もっとも、これは、“オメガ”死亡の遡及効は時間遡行した時点までしか及ばない、との前提に立った場合である。遡行時点に関わらず、“オメガ”が死亡した以上、遥か“オメガ”の出生時にまで遡ってその事実が反映される、と考えるなら、トム・クルーズが敢えて1日目まで遡行する意味はないだろう。)。

 一方で、トム・クルーズが遡及効を知らなかった場合、彼が1日目まで遡行するメリットは皆無か、少なくとも極めて希薄であろう。まぁ、一応、1日目朝まで戻れば将軍との言い争いに再び臨むことができるから、そこで今ならかつてより上手くやれる、と考える可能性はある。確かに、トム・クルーズからすれば、それまで強制的に2日目朝へと戻されていたのに今回は自ら任意の地点を選択できる状態になったわけだから、遡及効を知っていなかったとしても、とりあえず1日目朝まで遡行してみよう!と考えることは、理にかなってるかもしれない。

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 トム・クルーズが1日目朝まで時間遡行した理由は以上のいずれかでいいとしても、なぜ“オメガ”の死は遡及効を有するのだろうか。

 まず、本作のタイム・ループは、時間旅行者を物理的に跳躍させるタイプ、つまり、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のようなパターンではない。本作で時間跳躍したトム・クルーズは、毎回軍服手錠の状態で覚醒しており、彼の物理的な身体は過去に転送されていないからだ。本作のタイム・ループは、『バタフライ・エフェクト』と同タイプ、すなわち、時間旅行者の意識のみを跳躍させるタイプなのである。

 そうだとするなら、一番分かりやすいのは、“オメガ”の意識は過去・現在・未来のどの時点のものも一体として共有されており、3日目の死亡の事実は過去・未来に渡って遡及される、という説明だろう。しかしながら、確か、ラストの1日目で“オメガ”死亡のニュースを伝えるテレビだったかのリポーターは、“オメガ”が謎の大爆発を起こした、と言っていたのではなかったか。“オメガ”の身体の爆散までが遡及されるとなると、先述の意識共有説では説明がつかないのである。こうなっては、もはや、“オメガ”は四次元生命体であり、意識だけでなくその肉体も時間という概念を超えて一つのものとして存在している、と考えるしかあるまい(また、併せて先述のように“オメガ”死亡の遡及効は時間跳躍者が選択したセーブポイントまでしか効力を有しない、と考える必要がある。)。

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 というのが、本作のラストの展開に関する筆者なりの考えである。なんだか論理が散り散りかつ穴だらけの説だが、ありうる可能性として容認できるところも部分的にはるのではなかろうか。

 では、最後に筆者なりの考えをもう一つ。それは、本作はもっとトム・クルーズからリタへの“愛”にフォーカスしてもいいのではないか、という提案である。これは、その方がよいではないか!という押し付けではなく、そういう展開も一方ではありじゃないかという着想である。

 本作中盤あたり、ビーチを脱してから後の展開は、実は、リタを死なせないためにトム・クルーズが何度も何度も繰り返していたものだった、ということが判明する。このくだりでは、タイム・ループというギミックにも慣れてきた観客が、新たな展開と束の間の小康状態にふと我に返り、ややメタな視点で物語を考えることができる(製作者の意図的にもそういう構成になっている気がする。気がするだけだが。)。その上、トム・クルーズが何やらちょっとだけ怪しげな感じなもんだから、リタが気づく前に上記真相に思い至ったという人はけっこう多いのではないだろうか。

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 いつもはボーっと鑑賞している筆者も今回ばかりはその一人だったわけだが、筆者はここでもっと先、というか、ちょっとズレた方向へと想像を巡らしてしまった。すなわち、トム・クルーズは本当はもうギタイを倒せるルートを知っているのに、それだとリタと結ばれないから敢えてループを繰り返している、という妄想である。そして、この場合、トム・クルーズが既に発見した“成功ルート”において、リタは死亡しない。リタも生き残り、人類もギタイに勝利するにも関わらず、そのルートではなんらかの理由でトム・クルーズはリタと結ばれない(例えば、リタは始めから最後までトム・クルーズのことを恋愛対象としては全く見ていなかったので普通にフラれる、とか。)。そこで、トム・クルーズは、無数のループを繰り返すのである。ただただ、一人の女性を我が物にするためだけに・・・。

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 まぁ、そう書くとものすごく独善的なお話に聞こえる。いわば「今度こそ、僕と君だけは幸せにしてみせるよ・・・。」とでも言おうか、トム・クルーズが半端なく我がままなストーカーみたいだ。しかし、上手いこと描けば、全世界を敵に回してでもトム・クルーズが純愛のために奮闘する、という素晴らしくピュアな恋愛SFものの様相を呈することも可能ではないだろうか。ちょっと違うかもしれないけれど、バトルテイストの『バタフライ・エフェクト』というか。で、終盤、全てが判明したところで、それまで「人類を守るため、己を殺し、敵を殺せ!」、つまり「All You Need Is Kill!」であった作品のテーマが、実は、「All You Need Is Love.」だったことが分かる、と・・・。

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 うん、まぁ、それは本作でやることでは全くないな。今回はなんだか独善的な持論ばかりをぶってしまって反省である。筆者に必要なのは、おそらく謙虚さであろう。

点数:72/100点
 非常にきちんと作られた素晴らしいSF作品。ラストでのタイム・ループについて今回は若干詳述したが、筆者が書いた説以外にも、実は“オメガ”は複数いる説、“オメガ”のさらに総元締めが衛星軌道上にいる説など、続編への妄想が膨らむ要素もてんこ盛りだ。ちなみに、毎度のことではあるが、筆者が横柄に述べたタイム・ループについての考えは、おそらく無数の見落としと数多の思い違いが混在しているだろう。映画鑑賞という繰り返しの因果の中でも、筆者はなかなか成長しないのである。よって、間違っているところとか見落としているところについては、ぜひご指摘いただきたいところである。

(鑑賞日[初]2015.9.6)










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Tag:タイムトラベル エイリアン侵略系SF

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