05
2015

[No.354] アントマン(Ant-Man) <74点>

CATEGORYアメコミ




キャッチコピー:『映画史上最小にして、最大のアクション誕生!』

 五分の“ヒーロー魂”、アリます。

三文あらすじ:窃盗罪による3年間の刑期を終え出所したものの、その過去のせいでなかなか職に就くことができない中年男スコット・ラング(ポール・ラッド)。別れた妻が引き取った娘の養育費も用意することができず、人生の崖っぷちに立たされた彼のもとに舞い込んできたある仕事、それは、肉体をわずか1.5cmに縮小できる特殊なスーツを身にまとい、正義のヒーロー“アントマン(Ant-Man)”として活動するというものだった。最愛の娘に相応しい父になるため、彼は、ヒーローとしての過酷なトレーニングを重ねていくのだが・・・


~*~*~*~


 近年の映画界を席巻するアメコミ・ブーム。その仕掛人たるマーベルが昨今精力的に展開しているのが、俗に言うシネマティック・ユニバースである。つまり、別個独立した様々な作品の世界が全て繋がっている、という、まるでタランティーノ作品のような楽し気な構想(もっとも、タランティーノは自作品のそのような趣向について、「J・D・サリンジャーから着想を得た。」と話しているが。)。

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 マーベルの成功に追随して、DCコミックも『バットマン v スーパーマン』を皮切りに、『ジャスティス・リーグ』を念頭に置いた何らかのユニバース的展開を仕掛けるようだし、何やら『トランスフォーマー』も同様の構想に着手するようで、2015年~2025年までの10年間で映画作品2、3本プラス、アニメシリーズだったりドラマシリーズだったりを続々と輩出していく心づもりのようである。

 そんな今大人気のシネマティック・ユニバースであるが、本作『アントマン』は、マーベルが仕掛けるそれのいわゆる“フェーズ2”を締めくくる作品。「最近アメコミ多すぎて何から何までがフェーズ何なのか分からないよ!」という人のために、何から何までがフェーズ何なのかを下記しておこう。

◇フェーズ1(2008~2012年)
 『アイアンマン』(2008年)
 『インクレディブル・ハルク』(2008年)
 『アイアンマン2』(2010年)
 『マイティ・ソー』(2011年)
 『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年)
 『アベンジャーズ』(2012年)

◇フェーズ2(2013~2015年)
 『アイアンマン3』(2013年)
 『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013年)
 『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014年)
 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)
 『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)
 『アントマン』(2015年)

◇フェーズ3(2016年~2019年)
 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)
 『ドクター・ストレンジ』(2016年)
 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol. 2』(2017年)
 『スパイダーマン/ホームカミング』(2017年)
 『マイティ・ソー/ラグナロク』(2017年)
 『ブラックパンサー』(2018年)
 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー 』(2018年)
 『アントマン&ワスプ』(2018年)
 『キャプテン・マーベル』(2019年)
 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー PART2』(2019年)

◇フェーズ4(2019年~?)
 『インヒューマンズ』(未定)



 しかしまぁ、こう改めて並べてみると、やっぱり『インクレディブル・ハルク』の存在が解せないなぁ。『アベンジャーズ2』でハルクとウィドウは恋仲になったわけだが、『インクレディブル~』でリブ・タイラーが演じたベティは、一体全体どうなってしまったのだろうか。

 まぁ、とにもかくにも、本作『アントマン』を以て“フェーズ2”が終了し、今後は“フェーズ3”へと移行していくわけだ。正直、筆者はこのユニバース関係にあまり詳しくないのだけれど、とりあえず、マーベルの勢いはまだまだ陰りを知らぬようである。

 さて、本作の内容である。一言で言えば、極めてシンプルな作品であった。とにかく今回は、アントマンの出生登場人物の紹介に徹した、という印象すら受ける清々しい仕上がり。

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 とはいえ、物足りなかったということでは決してない。アントマンというヒーローの魅力は十二分に描けていたのではなかろうか。公開前には、主にネット上で悪口ばかり言われていた本作だが、いざ公開されるや否や絶賛されたのも頷ける。

 公開前の不評の元凶は、おそらくアントマンのビジュアル的ダサさにあったと思われる。少なくとも、アントマンのヴィジュアルが第一報として世に出たとき、筆者は「うわ、ださ。」と思った。

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 まぁ、映画観る前にこれだけ見せられたら、文句の一つも言いたくはなる。どう見ても仮面ライダーのパクりではないか。今どきこのコスチュームは…。

 しかし、いざ動き出すと、これが中々カッコいい。スパイダーマンなら糸を使って街中を疾走するグラインドシーン、アイアンマンなら鋼鉄の重厚感溢れるスーツ脱着シーンというように、ヒーローものにはそのヒーローを象徴する代名詞的なシーンがあるものだが、アントマンを象徴する“縮小・拡大シーン”は、思いの外悪くなかった。

 また、予告編でも大々的に扱われている“アリンコサイズでのバトル”。これも、公開前にその情報だけ漏れ聞くと、「なにを今さらそんな前世紀のコメディみたいな。」と感じたものだが、いざスクリーンで観てみると、なかなかどうして悪くない。

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 ギャグシーンも小気味良くて好感度大。「ここだよ!ここが笑いどころだよ!」と言わんばかりの押し付けがましい間はほとんど無く、極めて良いテンポでストーリーが進んでいく。ギャグシーンにしてもアクションシーンにしても、本作は総じてテンポがいいのである。

 ただ、その反面、脚本の雑さを若干ではあるが筆者は感じた。

 例えば、車中でスコットと本作のヒロインたるホープ・ヴァン・ダイン(エヴァンジェリン・リリー)が会話し和解するシーンから彼女とその父である博士が和解するシーン。ここの繋ぎ方が若干唐突である。

 また、本作のクライマックスたるピム・テックへの潜入計画。これが“ザル”だ。というか、主人公チームが当初どこまでを想定していたのかが謎。建物全体を爆破するのなら、そもそもイエロー・ジャケットを奪取する必要はないわけで、爆弾の設置と平行して従業員の社外への誘導のみに専心すればよい。まぁ、イエロー・ジャケットは簡単に持ち運びできるから、爆破に気づいたダレン・クロス(コリー・ストール)による持ち去りを警戒しての二重作戦だったのかもしれない。

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 もちろん、大勢として本作の脚本は良い。特に、スコットの娘に対する愛情に焦点を絞った展開運びにより、極めて説得的かつスムーズなストーリー進行が実現されている。現代のヒーローがなぜ身を粉にして日夜戦うのか。それは、一義的には世界平和などという曖昧な理想のためではない。自分の友人を、恋人を、そして、最愛の娘を。そんな特定の第三者を守るために戦うのが、現代風ヒーローの心意気。ダメ親父だって立派な父親になれるように、小さくたってアントマンは立派な“ヒーロー魂”をその胸に宿しているのである。

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 あとは、本作のスタッフ及びキャストについて言及しよう。

 まず、監督であるペイトン・リード。聞いたこともない。いったい誰なんだ。フィルモグラフィーを覗いてみてもピンと来る作品は、少なくとも筆者にはない。しかし、そう考えると本作は彼にとって初のブロックバスターへの起用だったわけで、しかも、その大役を十分にこなしたということだから、素直に賞賛の拍手を送っておくのが正しかろう。

 次に、脚本を務めるのは、以下の4人。エドガー・ライトジョー・コーニッシュアダム・マッケイ、そして、本作の主役を演じるポール・ラッド自身である。

 エドガー・ライトはもう改めて述べる必要もないだろう。『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『ホット・ファズ』などサイモン・ペグとの共著で名を挙げた男であり、筆者も最近鑑賞して感銘を受けたエイリアン侵略SF『アタック・ザ・ブロック』の製作総指揮を務めた映画人である。

 そして、その『アタック・ザ・ブロック』で監督を務めたのが、ジョー・コーニッシュ。同作についてはまたそのうち当ブログでも感想を書くけれど、極めて秀逸な良作である。また、同作で主役を演じた新人ジョン・ボイエガが『スターウォーズ』最新作『フォースの覚醒』で準主役に大抜擢されるなど、今改めて注目必至の作品でもある。

 このように、本作は、脚本がかなり豪華だ。アダム・マッケイについては正直あまりよく分からない。どうやら、ウィル・フェレル作品を多く手掛けているようである。

 では、本作の出役たちについて。

 まずは、アントマンを演じるポール・ラッド

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 90年代半ばから映画へのコンスタントな出演を続けている俳優。どちらかと言えばコメディ作品が多かったようである。また、テレビドラマシリーズ『フレンズ』の準レギュラーとして出演していたらしい。そんな彼も、本作で一気に世界的なスターダムにのし上がったわけだ。彼は既に次作として『キャプテン・アメリカ/シヴィル・ウォー』の出演契約を結んでいるから、今後もアベンジャーズの一員として末永く活躍していくことだろう。何事もコツコツ続けていればいいことがある。

 そして、ヒロインを演じるエヴァンジェリン・リリー

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 これはもう端的に可愛い!ちょっと、ちょ~っとだけゴリラっぽいのが気になるが、アメコミのヒロインにはそういうちょっとしたアクセントが必要不可欠なのである。エンドロール中盤でワスプのコスチュームを授かったことから、彼女も今後末永くアメコミシーンで活躍していくことになるのだろう。そういえば、ヒロイン自らコスチュームを身にまとって戦うというのは、近年のアメコミ映画では初めての快挙なのではないだろうか。

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 あとはまぁ、初代アントマンことハンク・ピムを演じるマイケル・ダグラスだろうか。

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 マイケル・ダグラスといえば、デヴィッド・ドゥカヴニー、タイガー・ウッズに並ぶ世界三大セックス依存症の内の1人。だと思っていたのだが、本作における老いた博士役はかなりハマっている。

 筆者の鑑賞後第一報として述べておきたいことは、概ね以上の通りであるが、最後に一点付言しておくなら、それは、アンソニーの安否である。

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 アンソニーは、アントマンと共にトレーニングに励み、彼に忠誠を尽くす“忠羽アリ”なのであるが、物語終盤、イエロー・ジャケットの凶弾に倒れてしまう。原作ではどうなっているのか知らないが、本作での描写を見る限り、アンソニーが撃たれた際、彼の落ちた片方の羽しか映し出されなかったから、きっと次作では機械の羽を得た“フルアーマード・アンソニー”として復活するものと筆者は信じている。人間だってアリだって、失敗してもどうにかなるもんである。

点数:74/100点
 マーベル・シネマティック・ユニバースのフェーズ2を締めくくる、壮大にしてこぢんまりした中々の良作。マーベルがいったいフェーズ何まで展開するつもりなのかは分からないが、フェーズ4、いやさ、フェーズ5くらいまではいきそうだな。まぁ、古来より“三度目の正直”なんて言われているけれど、人生には三度やってダメなこともよくある。それどころか、四度やったってやっぱりダメ、ということも多い。でも、別に何度やったっていいだろう。3回も4回も5回も、大して変わらない。3回目なら三分の、4回目なら四分の、そして、5回目なら五分の魂でそれなりにやればいいだけの話だ。それでまぁ、そのうちなんとかなる。アンソニーだってきっと復活する。もしかしたら、頑張って五分も馬力を出す必要すら、本当はないのかもしれない。そのときどきの自分の身の丈に合った魂で、これからものんべんだらりとやっていこうではないか。……アリ?なんの話だ。まぁとにかく、マーベル最新作『アントマン』に対する、筆者の鑑賞後第一報でした。

(鑑賞日[初]:2015.10.3)










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Tag:後天的ヒーロー

1 Comments

yaman  

No title

いつか我々の魂を熱くさせる"五分の魂"の物語が聞けるはずだよ。

2015/10/06 (Tue) 11:49 | EDIT | REPLY |   

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