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2016

[No.363] 傷物語 ~Ⅰ 鉄血編 ~ <50点>

CATEGORYアニメ




キャッチコピー:『ようこそ、夜の世界へ ―』

 僕はお前を許さないし、お前は僕を許さない。

三文あらすじ:私立直江津高校に通う阿良々木暦(声:神谷浩史)は、高校2年生から3年生に変わる春休みのある日、同級生である羽川翼(声:堀江由衣)のパンチラを目撃したことがきっかけで彼女の友達になる。その日の夜、暦は、両手両足を失い瀕死の状態にある女吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(声:坂本真綾)に遭遇。恐れ慄く暦に対し、キスショットは助命を請うのだが・・・


~*~*~*~


 シリーズファンが待望し、切望し、しかしあまりにも長い月日が経ち、いつしか希望、願望、あるいは望郷のような心境にすらなり始めたとき、やっと制作されたのが、本作『傷物語』である。端的に言えば、『化物語』シリーズのプリクエル。凡庸で愚かな少年、阿良々木暦が、いかにして怪異の王の命を救い、いかにして羽川さんを慕うようになり、いかにして忍野さんとの腐れ縁を構築し、そして、いかにして半妖の身体を手に入れたのか、という、アニメシリーズでは未だ語られていない物語を紡いでいく。

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 筆者もアニメシリーズの一ファンとして、しっかり公開初日に鑑賞してきたのだが、一言で言って本作は“コレジャナイ映画”の骨頂のような作品だ。敢えて二言目を付け加えるなら、「金返せ!」と激昂したい。

 もちろん、筆者のようなおっさんは、物語シリーズの原作を知らない。おっさんは、ライトノベルを読まないのである。したがって、本作が、その実、極めて原作に近接した世界観の構築に成功している可能性はあるだろう。だが、少なくとも、アニメシリーズを期待したファンは、残らずガッカリするはずだ。

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 まずは、この“キショクワルイ作画”が気に入らない。『AKIRA』とか『GHOST IN THE SHELL』のような一見して「うわ、俺この画嫌いやわ。」と思わせる画風(もちろん、作品自体としては『AKIRA』も『GHOST~』も大好きだが。)。まぁ、筆者は正直アニメ制作に疎いから、本作の作画が誰で、アニメシリーズの作画がどうで、といったところは、あまり分からない。しかし、少なくとも、アニメシリーズの作画に“キモチワルサ”は無かったように思う。

 そして、そのような一種の“作画崩壊”は、そのまま“物語全体の崩壊”を招来しているように感じる。つまり、画がグロいもんだから、グロい展開があまりにもグロすぎ、ポップな展開が全く笑えない、という事態に陥っているのである。

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 特に、地下鉄のホームでキスショットが阿良々木くんに命乞いをするシーンの“グロさ”は、筆舌に尽くしがたい。『AKIRA』の鉄雄暴走シーンのようにストーリーテリング上の強靭な必然性があればまだ良いが、本作の当該シーンにそこまでのものはないだろう。まぁ、敢えて赤ちゃんの泣き声を被せているところからして、このシーンで製作者はわざと観客の精神を揺さぶりにかかっているのであろうが。

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 それから、序盤の羽川・阿良々木邂逅シーン。ここでは、羽川さんの萌え描写をこれでもかと堪能できる。強風により露わになる白いレースのパンティ。髪を束ねている最中だったため両の手が使えず、ただただなすすべもなく赤面する羽川さんが強烈に可愛い。その後の阿良々木くんへの人懐っこさ、勝手に自分の連絡先を阿良々木くんの携帯に入力する強引さ、去り際に見せるバイバイのおかわり。こんなもん、もう、好きだ

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 ただ、このシークエンスも、アニメシリーズを知る者からすれば、あるいは、アニメシリーズしか知らない者からすれば、極めてアンバランスな印象を受ける。すなわち、キショクワルイ作画とあからさまな萌え描写にギャップが生じているのである。まぁ、萌え描写があまりにもあからさまなことを勘案すると、制作人がわざとそういう風に作っているような気もするのだが。それにしても、羽川さんのおっぱいは、いくらなんでも大きすぎる。

 その他、作中いくつか登場するギャグシーンも、作画とのギャップが顕著である。妙にリアルなキャラが妙にシリアスで漫然とした展開を延々と続け、その合間に突然ギャグシーンが訪れる。アニメシリーズでは、登場人物が織りなす矢継早の会話の中に数々のギャグシーンが織り交ぜられており、もちろんくだらないものも多くあったとはいえ、大勢としては絶妙かつ絶品であった。しかし、本作では、まず以て会話のテンポが悪く、その上キャラが妙にリアルなもんだから、ギャグシーンがおもいっきり浮いてしまっているのである。

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 また、本作では、アニメシリーズの(あるいは、原作の)魅力であった“病的なまでに屁理屈的な会話”がほとんど見られない。アニメシリーズにおいて登場人物が織りなす会話というのは、言ってみれば“アクション”だった。言葉という銃弾を使用した激しい銃撃戦だったのである。だからこそ、1話がまるまる会話に終始し動的な展開が全くないというエピソードであっても、筆者は満足し、そして、製作者を許していた。ほとんど静止画ではないのかと思うような描写だけで30分をやり過ごすことはアニメクリエーターの怠慢にも思えるが、その分、会話の内容に、その理屈部分に注力することで、立派な“エンターテイメント”が構築されていたのである。“屁”が付いていても理屈は理屈だ。聞く者を説得し、納得させ、動的で端的なエンターテイメント性に成り代わることができる。

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 しかし、本作にはそれが無い。その上、ヴァンパイアハンター3名との戦闘もほぼ皆無に等しいレベルなのだから、全体としてまずエンターテイメントとしては失格と言わざるを得ない。

 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のレビューでもちらっと書いたけれど、いくら続きものだと言っても、作品単体のエンターテイメント性を蔑ろにしていいわけではない。エピソード1は、エピソード2の予告編ではないのである。別に続編へと続く尻切れトンボな終わり方をしてもいいが、当該作品内での満足を観客に与える責務が、製作者にはあるんじゃないか。

 まぁ、本当のところ、製作者が何を意図して、本作をどのように位置付けているのかは、筆者には分からない。もしかしたら、筆者が言うところの“エンターテイメント性”は続くⅡとⅢにも無く、この劇場版は全体として本作のような雰囲気で完成された作品になるのかもしれない。まぁ、仮にそうだったのなら、それはそれで筆者は激高するだろうが。つまるところ、“エンターテイメント性”なんていうあやふやな概念は人それぞれであり、結局は、僕はお前を許さないし、お前は僕を許さない、ということになるのかもしれない。

点数:50/100点
 本作は、1本の映画としては失格だと思う。また、『化物語』として、少なくとも、アニメシリーズの“劇場版”と仮定するのなら、これまた失格ではないかと思う。とはいえ、本作が全3部作の1作目であることもまた、目を背けられぬ事実であるから、今はおとなしく、夏を待とうと思う。

(鑑賞日[初]:2016.1.8)
(劇場:TOHOシネマズ伊丹)










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