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2016

[No.368] キングスマン(Kingsman:The Secret Service) <82点>

CATEGORYアクション




キャッチコピー:『表の顔は、高級テーラー。しかしその実態は、世界最強のスパイ機関[キングスマン]。』

 女王陛下の“尻クレット・サービス”。

三文あらすじ:ロンドンはサヴィル・ロウに店を構える高級テーラー“キングスマン(Kingsman)”。その実態は、どの国家にも属さず正義を実行する同名秘密諜報組織の本拠だった。海兵隊を途中除隊し無為な日々を過ごす青年エグジー・アンウィン(タロン・エガートン)は、ある日、同組織のエース諜報員“ガラハッド”ことハリー・ハート(コリン・ファース)にスカウトされ、キングスマンとなるための過酷な選抜試験を受けることになるのだが・・・


~*~*~*~


 昨年2015年に公開され、全世界で爆発的なヒットを飛ばしたスパイ映画が、本作『キングスマン』。なるほど、過去作への敬意を表しながらも新規性を余すところなく取り入れた、申し分なき新時代のシークレット・サービスである。

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 監督はマシュー・ヴォーン。製作者としてガイ・リッチーと組み、傑作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』及び『スナッチ』を世に送り出した男である。また、近年では、新時代のヒーロー作品『キック・アス』を2作に渡って監督。その他、筆者はまだ観たことがないが、これまたヒーローものの『X-MEN』シリーズを2作(『ネクスト・ジェネレーション』、『フューチャー&パスト』)、監督として手掛けている。ここに至り“ヒーロー映画監督”とのイメージが定着した彼は、スパイ映画である本作で世界的な大ヒットを飛ばした後、アメリカが誇る老舗ヒーローチーム『ファンタスティック・フォー』のリメイク作を製作したが、これがとんでもない大沈没を喫し、Rotten Tomatoesでは9%という驚愕の低評価を叩き出してしまった。まぁ、そんな紆余曲折のある映画人ではあるが、とりあえず、本作はおもしろい。

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 本作を語る上で特筆すべきは、やはり“シビアな描写”であろう。“シビア”とはいくぶん多義的だが、本作に限っては、“グロさ”“下品さ”がポイントである。

 まず、“グロさ”についてであるが、本作はスパイ映画の中でもSF寄り、すなわち、“007タイプ”の作品であるにも関わらず、人体損壊描写が中々にハードだ。そして、そのハードな描写の大半を担っているのが、ソフィア・ブテラ演じる敵戦闘員ガゼルである。

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 この鋭利な義足と艶めかしい軟体を駆使した足技で、彼女は立ちはだかる敵をシャキンシャキンと切り刻んでいく。その結果、戦闘シーンの度に腕は飛ぶわ、首は飛ぶわ。あれ、俺いま『キル・ビル』観てたんやっけ?と途中で首をかしげたのは、きっと筆者だけではないはずだ。

 このように、SFまたはアニメチックな世界観にグロ描写を紛れ込ませる、という趣向は、マシュー・ヴォーンの持ち味と言っていいだろう。さすがに『X-MEN』でそんなことはしていないだろうが、『キック・アス』では、主人公のヒーロー活動初回での受傷だったり、我らがモレッツちゃんの敵殺害シーンだったりで、ウソみたいなグロ描写・展開が飛び出した。

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 また、中盤での一大アクションシークエンスたる“教会大虐殺”は、本当に開いた口が塞がらないほど残虐かつ素晴らしい仕上がり。筆者の浅はかな映画知識では果たしてどうやって撮影しているのか全く分からない斬新な映像で、3分強の間、正義のスパイであるはずのガラハッドがただただ一般人を殺害していく様をほとんど切れ目なく描いていく。確かに、ガラハッドは一時的に敵のマインドコントロール下にあったし、殺害される一般人も過激な人種差別主義者たちだったとはいえ、その償いの機会もないまま彼は直後にあっさりとサミュエルの手で殺されてしまうのだから、このシークエンスは、少しふざけすぎではあるだろう。とはいえ、それも後述のように、“悪ふざけ”ではないギリギリのラインで踏みとどまっているように思える。

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 もう一つのポイント、“下品さ”について、最も端的なのはラストにおける“女王陛下のアナル・ファック”のシーンである。確かに、007も四六時中女性を侍らせている。おまけに、すぐヤってはポイ捨てし、酷いときには彼がセックスしたせいでお相手を死に追いやってしまうこともあるほど。そういった意味においては、007シリーズも決して“清く美しい作品”とは言えないだろう。しかし、ジェームズ・ボンドの場合、その類稀なるエレガントな立ち居振る舞いによって、そういったいわば“ゲス”な行いの数々も、どこかしらスマートに描かれていた。まぁ、007シリーズはかなりファンタジーに寄ったアクションものだから、女性関係についても“夢物語”を描いていたわけである。

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 一方の本作は、同シリーズに比べ、女性関係においての“リアル”を追求している。まず、下町育ちの一般人エグジーが、超一流の秘密諜報部員になるための過酷なトライアルに挑んでいく、という序盤から中盤にかけての展開で、鑑賞者の大半がこう思うだろう。あぁ、これは最終的にロキシーとくっ付くんやな。

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 たぶん、観た者がそう思うよう、わざとベタな青春ものの描き方がされているのである。ウソみたいにエリート思考の強いいじめっ子のお坊ちゃんたち、ウソみたいに主人公に優しくしてくれる真面目な美女。当然、大ボスを打倒した後は、晴れて一人前のスパイになり、めでたく二人はお付き合いを始め、続編ではスパイ・カップルとして世界を股に掛けた大活躍を繰り広げるのだろう。と、そう思うようにできている。

 しかし、本作ラストはそうならない。我らがサミュエル・L・ジャクソンを倒した後、エグジーが駆けつけるのは、淫乱スウェーデン王女の監禁室。あぁ、やっぱり青春もののベタではなく“スパイ映画としてのベタ”に寄せてくるのか。と、本作に対する理解を起動修正した瞬間、エグジーのメガネ型カメラの目線で映し出される王女の美しい臀部に我々は腰を抜かすのである。まさか「世界を救えたらアナルでやってあげるわ!」という女王陛下の“ギャグ”をマジでやるとは…。

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 このあたりの二転、三転の切り返しは、まぁ、極めて“お下品な描写”とも評しうる半面、映画の構造を巧みに操った秀逸などんでん返しとも言えるかもしれない。

 以上のような本作の“シビアな描写”は、作品全体の雰囲気から確かに少し浮いている。しかし、前回感想を書いた『ヘイトフル・エイト』とは異なり、本作でのそれら“おふざけ”的な趣向は、決して“悪ふざけ”にはなっていないように思う。

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 これはひとえに、“おふざけ”を行う上での“前フリ”がきちんとできているからであろう。グロにしてもエロにしても、本作は大前提として先ほどから筆者も言及している“007シリーズ”を下敷きにして展開されている。007シリーズだったらこうなるだろうな、でもそこをそう外してきたか、というように逐一理解できるため、我々は、飛び交う手足や王女の美尻を安心して楽しむことができるのである。

 また、この007のテンプレートを補完しているのが、コリン・ファース演じる超一流キングスマン“ガラハッド”のキャラクターであろう。確かに、彼はジェームズ・ボンドのように軟派な男ではないけれど、完全無欠の超一流スパイがスーツを着て歩いているようなそのキャラクターの存在によって、スパイものとしてのベタが作品内で補完されているのである。

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 スパイものに限らず、先述の“いかにもな青春もののベタ”だったり、とにかく本作では色々なベタが正しくベタとして描かれている。その土台があるからこそ、あえてベタを外す試みが作品を彩るスパイスとなり、まさに“新時代のスパイ映画”と呼ぶにふさわしい秀逸な仕上がりになっているのである。要は、『ヘイトフル・エイト』とは違い、本作は、やることやってからケツを出している、というわけだ。

点数:82/100点
 ベタと斬新が見事に融合した極めて上質なスパイ映画。おそらくは世界に飛び出すであろう続編では、新米キングスマンが今度はどんな変態プレイに興じるのか、今から非常に楽しみである。

(鑑賞日[初]:2016.2.4)










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Tag:スパイ大作戦 変態紳士 サミュエル・L・ジャクソン

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