[No.42] ヒート(HEAT) <98点>





キャッチコピー:『A Los Angeles Crime Saga.』

 マイケル・マンが放つ”男による男のための男のドラマ”決定版。

三文あらすじ:ニール・マッコリー(ロバート・デ・ニーロ)率いるプロの強盗チームは、いつも通り綿密な計画と巧みなチームワークで現金輸送車襲撃に成功するが、新参者のウェイングロー(ケビン・ゲイジ)が警備員を銃殺してしまう。一方、この事件を担当することになったロサンゼルス市警強盗殺人課の敏腕刑事ヴィンセント・ハナ(アル・パチーノ)は、徐々にマッコリーを追い詰める。マッコリー、ハナの他、強盗チームのクリス・シヘリス(ヴァル・キルマー)、マイケル・チェリト(トム・サイズモア)、トレヨ(ダニー・トレホ)、ドナルド・ブリーダン(デニス・ヘイスバート)ら男達の物語は、クライマックスに向け熱を帯びていく・・・


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 当ブログでも度々言及しているように、本作は”男のドラマ”である。大筋としては、強盗団を刑事が追い詰めていくというベタなクライムムービーのプロットだが、主題はあくまでも彼らの”生き様”であり”信念”、あるいは”男の性”である。

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 彼らが銀行強盗を犯すことは、実は本作の肝ではない。彼らが銀行強盗を行うシークエンスは少し脚本が雑で、マッコリーらの手際もいささか疑問が残るし、ハナが彼らの犯行に気付くのも単なる偶然の要素が強い。というか、そもそもマッコリーの強盗チームは、別に銀行強盗ばかりを行っている訳ではない。

 しかし、彼らが踏む最大のヤマは銀行強盗だし、アクション面での最大の見せ場である約12分間にも及ぶ市街地での銃撃戦も銀行強盗の際に発生する。また、彼らは基本的に4人のチームである。銀行強盗は4人でないといけない。2人では喧嘩になるし、ブッチとサンダンス、トムとジェリーのように2人組は縁起が悪い。一方、3人組は悪くはないが最適でもなく、三角形は逆さにするとアンバランスである。さらに、逃走車に目を向けてみると、その大半が4人乗りであり、5人組では窮屈である。以上、多少論理的でない部分や、どこかからの無断引用もあるが、とにかく銀行強盗は4人組でなくてはならず、4人組の強盗が銀行を襲えばそれは銀行強盗団と言って差し支えないのである。よって、筆者は、本作を”銀行強盗”のジャンルにカテゴライズした。

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 さて、内容であるが、本作では、男の”生き様”、”信念”、”性”が”女”との対比で描かれる。本作で描かれる主な女達は以下の通りだ。

 まず、マッコリーが愛する女イーディ(エイミー・ブレネマン)は、マッコリーを金属製品のセールスマンと信じており、彼の本当の姿を知らない。ハナが愛する女ジャスティン・ハナ(ダイアン・ヴェノーラ)は、夫の野性的な部分に引かれているが、家庭を顧みず捜査に没頭する点には嫌気がさしている。クリスが愛する女シャーリーン・シヘリス(アシュレイ・ジャッド)は、夫の子供っぽいところに飽き飽きし、他の男と関係を持つ。ドナルドが愛する女は、短気ゆえ出所後の仕事にも不安を抱える彼をそれでも誇りに思うと言い、彼の支えになる。

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 このように、女達は様々な性格で様々な行動をとるが、これに対して本作に登場する”男”は一種類しかいない。それは、愛する女のためであっても自分の生き方を変えることができない”不器用な男”である。女達の行動の違いは、男達のこの欠点に対する反応の仕方の違いにすぎない。

 そんな男達の例として、ここではやはりニール・マッコリーを取り上げたいと思う。彼の生き様が最もよく表れるのは、宿敵ヴィンセント・ハナとレストランでコーヒーを飲むシーンだ。ここでマッコリーは、ハナに対して次のように言い放つ。

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「あるヤツがこう言った。”30秒フラットで高飛びできるよう、面倒な関わりを持つな。”そういう男を捕まえようってヤツが結婚するのが間違ってる。」



 原語だと以下の通り。ここでタイトルである“heat”という言葉が出てくる。

 A guy told me one time, "Don't let yourself get attached to anything you are not willing to walk out on in 30 seconds flat if you feel the heat around the corner." Now, if you're on me and you gotta move when I move, how do you expect to keep a... a marriage?



 このセリフは、マッコリーのプロ意識、さらには彼の人生哲学をも表した本作屈指の名言である。実際、マッコリーは、住み処に一切の家具を置かず、特定の女を作らず、物理的・心理的にいつでも高飛びできるよう生きてきた。ハナに「俺の気配を近くに感じたら彼女を捨てて逃げる?別れも言わずに?」と聞かれたマッコリーは、こう応える。「自分への掟だ。」

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 そんな彼は、運命の女性イーディと出会い、彼女を連れて高飛びしようとする。自分の掟を曲げようとするほど愛する女性だ。しかし、ラスト、裏切り者のウェイングローを始末し、車に残したイーディの元へと戻るマッコリーは、雑踏の向こうから自分に迫るハナを発見する。そして、彼はイーディを見つめたまま彼女を残し去るのである。運命的に愛した女性さえも、彼の掟を変えることはできなかった。結局、マッコリーの最期を看取ったのは、宿命のライバルであり彼を撃った張本人でもあるハナだ。銃弾に倒れたマッコリーは手を差し出し、ハナがその手をしっかり握る。そして、マッコリーの人生と共に映画は幕を降ろすのである。

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 これぞ男の”生き様”であり”信念”であり”性”であろう。

 もちろん筆者は、本作で描かれる”男性像”を手放しで賞賛しない。本作に登場する男達は、女性から見れば皆ダメ男だろうし、男性から見ても好きな女を守れない無責任男である。女性が主導権を握り、世の男性の大半をベジタリアンにしてしまった現代ならなおさらだ。

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 しかし、男なら誰もが女性には分からない自分の”生き様”を貫きたいと思うもの。それは、趣味であったり職業であったり人によって様々だろうが、とにかく、”男には自分の世界がある”のである。例えるなら、空を駆ける一筋の流れ星だ。そう、本作のテーマは、スーパーヒーロー、ルパン三世のそれと共通している。また、ハリウッド映画で言うなら『007』だ。ジェームズ・ボンドは、世の男性、特にサラリーマンの願いを結晶させたスーパーマンだった。

 ルパン、ボンド、そしてマッコリー。彼らが追いかけるのは、まさに”男のロマン”。筆者の定義では”ロマン”とは「悪魔の証明への反抗」である。すなわち、誰も出来ないとは証明出来ないことを実現しようとする営為、それこそが”ロマン”だ。マッコリーやハナに代表される本作の男達は、結果的に自分の生き様を貫徹できたわけではなく、その点でルパンやボンドのような”ヒーロー”ではないが、彼らは皆自分の生き様を貫こうとする者達であり、その意味でロマンに生きる男達と言えるだろう。

点数:98/100点
 以上のように、本作は純度100%の男のドラマである。したがって、男性陣は、決して彼女と一緒に観てはいけない。そんなことをすれば、鑑賞後に必ず意見が衝突し喧嘩が始まってしまうこと請け合いである。もし、既に女性と鑑賞してしまったという人がいれば、次のように彼女に説明して欲しい。本作は男性版セックス・アンド・ザ・シティである、と。そして、4人のおばさんの2時間にも及ぶしょーもない話と無駄な買い物に男性が苦痛を覚えるのと同様、本作に対して女性が反感を覚えるのは当然のことなんだよ、と続けるのだ。男女の差はあれ、登場人物が一般人の憧れを体現する作品として両者は共通しており、この説明で女性にも一定の理解を得ることができるのではないだろうか。もし、このように説明しても納得しない彼女であれば、そんな女の下からは30秒フラットで逃げるべきだと言わざるを得ない。

(鑑賞日:2012.2.21)

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