09
2016

[No.367] ヘイトフル・エイト(The Hateful Eight) <68点>

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キャッチコピー:『見破っても、見破られるな ―』

 ヘイト・フル・ヌード。

三文あらすじ:南北戦争終結から数年後の冬。ワイオミング州の山中にある“ミニーの紳士服飾店”に8人の男女が集まってくる。猛吹雪をやり過ごすため偶然集ったかに見えた8人だったが、彼らは全員がそれぞれの思惑を胸に秘めたワケありのクセものたちだった・・・


~*~*~*~


 クエンティン・タランティーノ監督の最新作にして劇場公開の長編作品としては通算8作目にあたる本作『ヘイトフル・エイト』。8作目というのは、つまり、『レザボア・ドッグス』『パルプ・フィクション』『ジャッキー・ブラウン』『キル・ビル vol.1&2』『デス・プルーフ』『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』に次ぐ8番目の作品ということだ。『キル・ビル』を1、2合わせて1本とカウントするところがミソである。

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 日本公開初日である2016年2月27日に鑑賞した筆者は当然後日知ったわけだが、本作は、第88回アカデミー賞でノミネートされた3部門、すなわち、作曲賞、助演女優賞、撮影賞の内、結局作曲賞のみの受賞に終わった(作品賞、監督賞こそ獲れなかったものの、筆者が密かに2015年のNo.1としていた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が6部門の最多受賞を成し遂げたことは、非常に喜ばしい。)。

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 実に35年ぶりに西部劇の作曲を手掛け、そして、見事受賞に輝いたエンニオ・モリコーネはやはり素晴らしき巨匠中の巨匠だが、そもそもタランティーノの最新作が作品賞や脚本賞、あるいは、監督賞にノミネートすらされていないという事態に対しては、本来ならファンとして憤慨すべきであろう。

 しかし、タランティーノの熱烈なファンである筆者は、正直、別に怒っていない。タランティーノ作品はもともとアカデミー賞にそぐわない作風である、という側面ももちろんあるのだが、何よりも、彼のこの最新作が個人的にはピンとこなかったからである。

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 まず、これは極めて主観的な苦情である。タランティーノよ、時代もん何回やるねん。ここ最近、6作目の『イングロリアス・バスターズ』、7作目の『ジャンゴ 繋がれざる者』に続き、またしても非現代劇。タランティーノが西部劇好きなことは知っているし、彼が西部劇を撮りたいのは分かるのだけれども、筆者としては、『レザボア・ドッグス』であったり、『パルプ・フィクション』、あるいは、『ジャッキー・ブラウン』のような“タランティーノの現代劇”が観たいのである。

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 とはいえ、本作は形式的に西部劇でありながら、その実態はいわゆる“密室ミステリー”である。クセもの8人が集った閉鎖空間で繰り広げられる緊迫した密室劇。そういった意味においては、本作は『レザボア・ドッグス』に似通った作品だとも言えそうだ。

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 ところが、この“密室ミステリー”がよろしくない。予告編の煽り方も極めてまずい。本作の予告編は、近年稀にみる“ウソ予告”と言ってかまわないだろう。“そこで起きた密室殺人”という文句も的外れなら、「あの黒人も賞金首だ!」という抜粋の仕方も不適切。「そして繋がる8人の過去。」というナレーションに至っては、ほとんど真っ赤なウソである。

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 要は、本作は、ミステリーなんかじゃない、ということだ。誰が彼を殺したんだ?!なんていう謎解き展開は終ぞ訪れないし(じじいは、みんなが見ている前でおもいっきりサミュエル・L・ジャクソンに殺される。)、誰がコーヒーに毒を入れたんだろう…?というくだりも、ミステリー的な“引き”は全くない。それどころか、真の黒幕が終盤で突如床下から登場するなんてのは、あろうことかノックスの十戒の第一条に真っ向から反する大罪だ(まぁ、“中国人を登場させてはならない”なんていう条項を含んだ当該ルールにジョーク以上の信ぴょう性を求めるなら、であるが。)。

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 まぁ、これを“タランティーノ風ミステリー”と呼ぶことは十分可能ではあろう。『イングロリアス・バスターズ』で歴史ものにトライしたタランティーノは、作中でヒトラーをぶっ殺し、ものの見事に史実をぶっ壊したという前例がある。したがって、推理小説のルールをあえて逸脱する粋な展開こそが、タランティーノ流の“正統派ミステリー”なのだ、と言ってもいいかもしれない。

 でもなぁ、なんだか中途半端なんだよな。確かに、黒幕たるチャニング・テイタムを突然登場させるなんて趣向は、タランティーノお得意の“スカし”である。彼は、この点において本当に天才的だ。ミアのオーバードーズであったり、キドーの娘お披露目であったり、丁寧に紡いで慎重に煽ってきたストーリーを、その絶頂で一瞬にして別方向へスライドさせる。しかも、それらの“スカし”たちは決して“悪ふざけ”にはならなかった。スカすまでのストリーテリングがしっかりしており、なおかつ、スカした先が絶妙だったからである。

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 しかし、本作の“スカし”はどこか“悪ふざけ”に見えてならない。我思うに、真犯人を終盤で突然登場させる、という“スカし”をやるなら、それまでをもっと“ちゃんとしたミステリー”として描いておかなければいけなかったんじゃないだろうか。それは、前述のような“タランティーノ風ミステリー”ではなく、歴とした“正統派ミステリー”として、ということである。

 急接近するギャングの構成員とそのボスの妻との関係が最高潮に盛り上がったとき、妻はクスリのやり過ぎでぶっ倒れ、そこからは彼女を救命するためのドタバタ劇がスタートする。妊娠中にリンチの末銃撃された元殺し屋が延々と復讐の旅路を行き、いざ最後の標的と対面するというとき、実は生きていた娘が登場し、そこからはほのぼのムードの展開が始まる。タランティーノの“スカし”とは、というか、“スカし”というものの本質は、“常軌からの逸脱”に他ならない。だからこそ、一歩間違えば“常軌を逸した”描写になりかねず、成功させるには並大抵ではない才能が要求されるのだが、とにかく、タランティーノがこれまでの作品で行ってきた“スカし”は、概ねそれまでの正統的な展開から推測される因果律をあえて外すものだった。

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 しかし、本作では、チャニング・テイタムが登場するまでの“常軌”、すなわち、ミステリーとしてのストーリーが極めて弱い。謎解き要素なんてほとんど皆無なのにジェリービーンズを意味深に描写してみたり、コーヒーに誰かが毒を盛ったという事実をいきなりのナレーションで無理矢理ぶち込んでみたり。ミステリー部分をしっかりミステリーとして描いていないから、チャニング・テイタム登場が唐突な“悪ふざけ”に見えるのである。つまり、オチに対するフリがきちんとできていない、ということだ。

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 それから、“悪ふざけ”という意味では、サミュエル・L・ジャクソンがじじいに対して語る“チンコ丸出し雪上拷問”のシークエンスも、イチモツならざる…ではなくて、一抹ならざる疑問をいだく部分。本作はR18指定の児童禁制作品なのだが、その決定的な理由は、フルヌードのシーンが出てくるからである(まぁ、暴力描写も相変わらずの絶好調ではあるが。)。詳細を知らず、ただ“残酷描写やフルヌードシーンがあることから18禁での公開となった”という事実のみ聞き入れていた筆者などは、あぁ、じゃあジェニファー・ジェイソン・リーのヌードシーンがあるのだな、タランティーノ作品にエロは求めていないけれど、“フルヌード”となれば少し楽しみだ、などと延ばさなくてもいい鼻の下を迂闊に伸ばして鑑賞に臨んだ。そして、度肝を抜かれた。まさか、おっさんのチンコ丸出しだったとは…。

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 この展開をどう捉えるかは、タランティーノファンの間でも賛否分かれるところではないだろうか。普通ならストーリーテリング上全く必要などないおっさんのフルヌード。しかも、そのせいでレイティングはマックスまで上がっている。映画ファンならレイティングの上下が観客動員にどれほど深刻な影響を与えるかは当然知っているから、なんというバカげた趣向だ、天晴れだぜタランティーノ!という感想も、もちろんありうるだろう。

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 しかしながら、筆者は個人的に、本作のチンコ丸出しをそこまで賞賛する気になれなかった。やっぱり、まずは先述のようにしっかりとミステリーを描きつつ最後にスカすという枠組みを整えてから、その中で行うべきジョークだったように思う。要は、やることやってからチンコ出せ、と感じたわけである。

点数:68/100点
 タランティーノ好きにとって、観る価値の無い作品では決してない。サミュエル・L・ジャクソンを始め、ティム・ロスやマイケル・マドセンといった常連であったり、『デス・プルーフ』でスタントマン・マイクを演じたカート・ラッセル、さらには、『ジャンゴ 繋がれざる者』に出ていたウォルトン・ゴギンズなんかも出演している。しかし、筆者としてはどうしても、“チンコ出してる暇あったら早く『キル・ビル vol.3』撮ってくれよ、頼むから!”と思ってしまったのであった。

(鑑賞日[初]:2016.2.27)
(劇場:大阪ステーションシネマ)










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Tag:劇場鑑賞作品 バカ映画 アカデミー賞 サミュエル・L・ジャクソン 変態紳士

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