[No.369] クラウド・アトラス(Colud Atlas) <70点>





キャッチコピー:『いま、<人生の謎>が解けようとしている。』

 まわるまわるよ、時代はまわる。

三文あらすじ:隻眼の老人は語る。それは、1849年、南洋を航海するアメリカ人弁護士アダム・ユーイング(ジム・スタージェス)の波乱に満ちた物語、1931年、音楽を志すイギリス人の青年ロバート・フロビシャー(ベン・ウィショー)による名曲誕生秘話、1973年、原発の欠陥を告発するため奮闘するジャーナリスト、ルイサ・メイ(ハル・ベリー)の最初の事件、2012年、ある老編集者ティモシー・カベンディッシュ(ジム・ブロードベント)による老人介護施設からの大脱走、2144年、ネオソウルで給仕係に従事する複製種ソンミ451(ペ・ドゥナ)が挑む革命、そして、2321年、文明崩壊後の地球で羊飼いを営む村人ザックリー(トム・ハンクス)の生き残りをかけた戦い。時空を超えた6つの人生が、1つの物語を紡ぎだす・・・


~*~*~*~


 2012年のドイツ映画(といっていいだろう。)である本作『クラウド・アトラス』。公開当時話題になったのは、監督があの『マトリックス』のウォシャウスキー姉弟である、という点であった。まぁ、実際には、本作で綴られる6つの逸話の内、一番過去のものと未来のふたつの計3つ、すなわち、1849年のアメリカ人弁護士の話と2144年のクローン革命と2321年の終末後世界を監督したのが、ウォシャウスキー姉弟。残る3つの話(ゲイの音楽家、美人ジャーナリスト、ダメ編集者)は、『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァが監督している。

ca1.jpg


 本作の評価は、観る者によって結構分かれるのではないだろうか。映像はどれも美しいものの、バレット・タイムのような“斬新なアクションシーン”は無いといっていいから、まず、『マトリックス』を期待した観客は、いささかがっかりするかもしれない。また、オムニバスというか、マルチキャストというか、グランドホテル方式というか、とにかく、本作では6つもの小話が交錯しながら進行していくため、一つ一つの舞台やキャラ設定を覚えておかないと、いつしか訳が分からなくなる。しかも、同じ俳優が6話すべてに異なるキャラで登場していたりするので、あれ?これはさっきのキャラと関係ある人物なのかな?なんて逡巡している間に、どんどん置いて行かれる可能性もある。かくいう筆者も、当然途中から混乱しはじめ思わず匙を投げそうになったのだが、それも悔しいなと思い返し、その匙をガリガリとしがみながら一生懸命最後まで鑑賞を続けたのであった。

ca3.jpg


 そんな感じでストーリーとかキャラクターなどが複雑に入り組んでいる本作であるが、一つ一つのストーリーは、実はすごくベタだ。それぞれの物語の主人公たちは、みなそれぞれの悩みや困難と闘い、最終的にはハッピーエンドを迎える。まぁ、名曲誕生秘話のゲイとクローン革命の貧乳美女の最期を“ハッピーエンド”と言っていいかは分からないが、少なくとも自らの人生に満足を得て死んでいったことは間違いないだろう。

ca2.jpg


 ジャーナリストの話は本当にベタベタな社会派アクションだし、編集者が脱走する話は前世紀のコメディだ。クローン少女の革命にしたって、SF的ビジュアルの斬新さはほとんど無いと言ってよい。むしろ、170分という破格の上映時間を考慮するなら、本作中盤のくだりは、退屈と断じることもやぶさかではないかもしれない。

ca8.jpg


 でも、なんだかんだでラストはすごくよかった。6つ目のエピソードの後、トム・ハンクスがただ一人語るだけのシークエンスだから、別に、胸のすく爽快な展開があったとか、魂が完全燃焼する熱いくだりがあったとか、そういう訳ではない。しかし、かつては研究者とジャーナリストという違う"人生"で出会いながら、恋を成就できなかったトム・ハンクスとハル・ベリー(まぁ、あの時点ではまだハル・ベリーにそこまで明確な思いは無かっただろうが。)。そんな、今日は別れた恋人たちが晴れて添い遂げている場面を見せられては、やはり若干目頭が熱くなったし、大いにほっこりとせざるを得ない。

ca7.jpg


 最後に、極めて個人的なこじつけだが、筆者は本作を観て、伊坂幸太郎の小説っぽい話だなぁ、と感じた。まぁ、本作は彼の小説のようにそれぞれの逸話がしっかり連関してはいないのだが、なんかこう、ある時代のアイテムがその先の時代に影響を与える(与えない場合もあるけれど)、というところが、特に『フィッシュ・ストーリー』に似ている。

ca5.jpg


点数:70/100点
 ウォシャウスキー絡みの作品ということで斬新さを求めてしまうと、若干退屈かもしれない。しかしながら、“永劫回帰”というテーマが結実したラストは必見。心温まる秀逸なオムニバスである。

(鑑賞日[初]:2016.3.12)

クラウド アトラス [DVD]

新品価格
¥555から
(2016/3/12 22:02時点)


クラウド アトラス [Blu-ray]

新品価格
¥1,280から
(2016/3/12 22:02時点)


時代 ―Time goes around―

新品価格
¥6,000から
(2016/3/12 22:06時点)


フィッシュストーリー (新潮文庫)

新品価格
¥594から
(2016/3/12 22:06時点)


関連記事
スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply





管理者にだけ表示を許可する

Trackback