[No.44] ピッチ・ブラック(Pitch Black) <74点>

Pitch Black



キャッチコピー:『暗闇に何が見える』

 真の強さとは恐怖や苦しみに抗う心を言うのではなく、闇すらも包み込み、打ち消す安らかな心を言うのだな。

三文あらすじ:40名の乗客を乗せた定期宇宙船が流星群の直撃を受け未知の惑星に不時着、凶悪殺人犯リディック(ヴィン・ディーゼル)、彼を護送するウィリアム・ジョーンズ(コール・ハウザー)、宇宙船の飛行士キャロリン・フライ(ラダ・ミッチェル)ら9人が生き残る。そこは、3つの太陽を有する灼熱の星であり、同時に光を嫌い暗闇でのみ生息する謎のクリーチャーによって地表の生物が全て死滅した死の星でもあった。フライらが惑星脱出に奮闘する中、折しも22年に一度の日食の期間が始まり、地表を真っ暗な闇(Pitch Black)が覆う・・・


~*~*~*~

 
 B級SF映画として、中々の高評価を得ている本作『ピッチ・ブラック』。本作が良質の佳作に仕上がった一番の要因は、設定の素晴らしさにあると言えるだろう。まずは、舞台設定が良くできている。リディックらが不時着した惑星は、定期便の航路の中でもかなり辺境にある未知の星。3つの太陽を有し、地表はほとんど砂と石ばかりの砂漠である。また、太陽が赤や青など違う色を持っているというのも、未知の惑星の雰囲気を盛り上げている。そして、そんな夜の無い灼熱の惑星が、22年に一度だけ、長期間日食による完全な夜に包まれる。

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 その夜の期間のみ地表で活動するクリーチャーの設定も大変良い。小型のドラゴンといった感じのビジュアルだが、決してありきたりではなく、十字型のカウルのような頭部のデザインがグッド。普段は地下の暗闇に潜んでいる何万匹ものクリーチャーが、日食が始まると一斉に飛び出してくる様は迫力満点だ。もっとも、ずっと地下暮らしなのに羽を持っていて空を飛べるというのは、よく分からない進化の仕方ではある。

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 彼らは暗闇でしか生息できず、光に当たると火傷してしまう。したがって、本作における人間側の主な武器は、銃ではなく、懐中電灯や松明から発せられる”光”である。なかなか斬新な設定。これが、本作のクリーチャーに課せられた制約だ。人が襲われるストーリーにおいては、襲う側にも何らかの制約が無ければ話が盛り上がらない。何の制約も無くモンスターが暴れまわる『死霊のはらわた』シリーズは、希有な例外である。

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 また、水を求めて地表を散策するフライらは、巨大な生物の骨格を何体分も発見する。こんなに巨大な生物を全滅させる”何か”がこの星にはいる…!という超ワクワクの展開である。そして一行は、人間の集落のような場所を発見するのだが、そこも何故かもぬけの殻。これもまた、彼らは”何か”から逃げようとして失敗したんだ…!という超ワクワク展開である。

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 この良くできた舞台に放り込まれる登場人物像も良く設定されている。まず、主人公リディックは、凶悪な殺人犯かつ脱獄囚。そして、彼は暗闇でも見える特殊な眼球を持っている。これは格好いい。まさに本作の主人公にピッタリだ。暗闇でも見える代償として、彼は強い光にめっぽう弱く、普段は黒いゴーグルをはめているのだが、これがまたマッチョにスキンヘッドのヴィン・ディーゼルの風貌に妙にマッチングしている。

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 本作のヒロインであるフライも一癖ある良キャラ。彼女は飛行士でありながら、不時着時に宇宙船の体制維持を図るため、コールドスリープした旅客が乗る区画を切り離そうとした。機械の故障で結局切り離すことができず、なんとか不時着に成功したのだが、彼女は罪悪感にさいなまれることになる。さらに、リディックを護送中の刑事だと思われていたジョーンズが、実はただの賞金稼ぎで、しかもヤク中であることが発覚したり、男の子だと思っていたジャック(リアンナ・グリフィス)が、実は女の子で、血の匂いに寄ってくるクリーチャーが彼女の生理に反応するという展開もおもしろい。他にも、敬虔なイスラム教徒イマーム(キース・デイヴィッド)や高飛車だが臆病な骨董商パリス(ルイス・フィッツジェラルド)など、この手の映画には必須とも言えるベタな脇役も揃っている。

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 ここまでしっかりと設定を詰めたのだから、本作は世紀の傑作SFアクションホラーになっていてもおかしくなかったのだが、残念ながら本作の展開にはいささか納得しかねる点がいくつかある。まず、クリーチャーが光を嫌う設定とはいえ、いくらなんでもあんな小さい光で防ぐことができるというのは不自然だ。主人公一行は、真っ暗闇の中、不時着した宇宙船から集落までの移動を余儀なくされるのだが、その際の装備は、懐中電灯が数本と夜店で売っているボーっと光る棒ぐらいの明るさのチューブ、そしてウィスキーの瓶で作った松明くらいである。いくら光に当たったら火傷するからって、そんな間接照明ぐらいの明るさにビビるか?22年間待ちに待った食料なのだから、少々の火傷など気にせず食らいつくのがクリーチャー魂というものではないだろうか。まぁ、別に、それぐらいの光でも一切近づけない設定なんです!という姿勢を固持するのなら、それでもいいのだが、後半で一行は光源を手にしているにもかかわらずイマームの連れが襲われたりするので、やはり納得がいかない。

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 また、ご都合主義的な展開が目立つ。まぁ、この手の映画にご都合主義的展開は付きもので、観客としてもだいたい生き残りそうな者が誰かは分かっている。しかし、それでも作品の世界観の中での納得がいくフォローは必要だ。ウザい骨董商パリスが、パニクって一行から離れ、その際に夜店のチューブを引っ張って行き、本体を破損してしまったことで皆が持っていたチューブの全てが光を失うという展開がある。この時の絶望感は尋常ではなく、なかなか良いのだが、いかんせん何故パリスが一行を離れわざわざクリーチャーだらけの真っ暗闇の中へ逃げていくのかが分からない。これはいくらなんでも不合理すぎるだろう。他にも、終盤、洞穴と集落の往復がスッと行き過ぎ。時間・予算・話のテンポ上、ここは難なく済ますというのは良い判断と言えるが、それならばせめて集落から洞穴へ戻る際には、大きな光源を見つけて持って行くぐらいのことはすべきだ。

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 そして、やっぱりラストでフライが殺される展開が納得いかない。確かに、彼女が旅客を見殺しにしようとしたという”罪”を背負ったキャラであるということが作中強調されていて、最後に死ぬフラグが立っていた。しかし、死ぬ必要があっただろうか。彼女を罪人と言うのなら、リディックの方がよっぽど極悪人では無いだろうか。リディックはクリーチャーから皆を救ったというのなら、フライもジャックとイマームを見捨てず助けたのだから、そこは公平に2人とも助けてあげるべきだ。どうしてもフライを殺すなら、リディックが実は無実の罪で投獄されていたというような設定がないと不公平だろう。それに、フライが死んだ後、リディックが「俺のために・・・俺のためにーーー!!」と絶叫するのもなんだか白ける。『トリプルX』でもそうだったが、やっぱりヴィン・ディーゼルが演じるヒールは、悪人に徹しきれていない。

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 その他にも、神の存在を確信していながら無情にも連れを次々に殺されるイマームや、強くありたい一心で家出し、男性、特にリディックに並々ならぬ憧れを抱くジャックなど、掘り下げればいいドラマを描けそうなキャラが皆消化不良。総じて、設定の持ち腐れといった印象を抱いてしまうのである。まぁ、突っ込みどころあってこそのB級映画だという側面も確かにある。しかし、好感の持てるB級映画というものは、もっと突き抜けた突っ込みどころが無いといけない。その点”完全なB級SF”というには、本作は良く出来過ぎている。要は、中途半端なのである。

点数:74/100点
 色々苦言を呈したが、本作は、普通にしっかり楽しめるSFアクションホラーである。鑑賞しても決して損ではない。ただ、もうちょっとキチッと作り込めば、もっと素晴らしい傑作になり得ただけに、残念で仕方がない。なお、続編『リディック』は、とんでもない駄作なので鑑賞しないことをオススメする。

(鑑賞日:2012.2.24)

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