[No.384] 10 クローバーフィールド・レーン(10 Cloverfield Lane) <68点>





キャッチコピー:『奴らはあらゆるフォームでやってくる。』

 白詰野通り10番地に隠された、サイエンス・フィクション迷走の予感。

三文あらすじ:目を覚ますと、シェルターの中にいた女性ミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)。何らかの攻撃により外は死の世界になってしまったと語るシェルターの持ち主ハワード(ジョン・グッドマン)に疑心暗鬼の中、自らシェルターに逃げてきた青年エメット(ジョン・ギャラガー・ジュニア)を含めた3人の共同生活が始まる。しかし、ハワードへの疑いは日に日に増していき、ミシェルは遂にシェルターからの脱出を決意するのだが・・・


~*~*~*~


 2008年に公開され、世界を、少なくとも“モンスターパニック好き”という人種を驚愕と興奮の絶頂に叩き込んだ傑作『クローバーフィールド』。本作は、その“続編”である。まぁ、一般にイメージされる"続編"とは少し違っていて、仕掛け人たるJ.J.エイブラムスの言葉を借りるなら、前作と“血の繋がった作品”ということになる。

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 前作で話題になったのことの一つに、謎めいた宣伝展開があった。端的に言えば、秘密主義だったのである。ずーっとタイトルすら伏せられたまま、しかし、何かしら怪しげなモンスター襲来動画がYoutubeに順次アップされたりして、我々モンスターパニック好きはその都度エクスタシーを感じていた。もちろん、前作の“血縁”にある本作にも、この点は受け継がれている。元々、“映画ポッドキャスター”という良く分からない肩書のダン・トラッチェンバーグなる男をJ.J.エイブラムスが監督に抜擢し、『ヴァレンシア』(本来は『ザ・セラー』という脚本だったかも。)という終末系SFを作っていたのだが、今年2016年の年明け早々、実は『ヴァレンシア』は偽タイトルで、本当は『10 クローバーフィールド・レーン』という作品である旨が突然発表された。

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 こういった宣伝展開は、やっぱり良い。もちろん、J.J.エイブラムスのドヤ顔やあのパーティーグッズみたいな鼻が得意気にヒクヒク動く様を想像して少し悔しくもあるが、それでも我々はゾクゾクする。真タイトル公表時も、公表されたのはあくまでタイトルだけであって、それが『クローバーフィールド』の正式な続編だとは明言されなかったりしたので、色々な映画情報系ブログがオロオロしていたのを覚えている。

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 まぁ、そんなことを言っておきながら、筆者は本作公開後一週間も経ってから鑑賞しており、まずはその点を恥じなければならないのだが、とりあえず、本作鑑賞後の第一報を一言でまとめると、「こいつは、“超”が付く“トンデモ映画”だぜ!」となる。

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 本作は、ソリッド・シチュエーションのサスペンスエイリアン侵略系のSFをくっ付けた作品だ。つまり、ミシェルと同じく気付いたらシェルター内のシーンからスタートさせられる観客は、彼女と一緒に、本当にハワードが言っている“世界の終焉”が訪れたのか?という点に集中して鑑賞していく。そして、本作開始後7~8割はずっと密室でのサスペンスが続くのである。で、結局ハワードは狂っていた、ということは、必然的に“世界の終焉”もウソなんじゃないか!というわけでミシェルは脱出するのだが、そこで機械と有機生物が融合したようなエイリアンに遭遇。ハワードは狂っていたけれど、彼が言っていた“世界の終焉”(エイリアンの侵略)は本当だった…というのが、本作のオチである。

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 このプロットって、まんま『デビルズ・フォレスト 悪魔の棲む森』と一緒だな。まぁ、ゴリゴリのB級モンスターパニックである同作と本作のような人気大作シリーズ最新作を比較するのもどうかと思うが、『デビルズ~』も、狂犬病の羅漢をきっかけにトチ狂って「この森には…ジャージー・デビルがいる…」なんてほざきながら家族を皆殺しにしようとする父親の“虚言”が、実は真実で、ラストでは、伝承の怪物が本当にその姿を現す。命題の真たることを主張する者がキ○ガイだったことから直ちに命題の偽を導いてしまう、という人間心理を上手く利用している点で、『デビルズ~』と本作は共通しているのである。

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 しかし、このようなプロットの描き方という意味では、本作よりも『デビルズ~』の方がちゃんとしていたように思う。『デビルズ~』では、“ジャージー・デビルは実在する”という命題を提示し、終始その真偽を観客に考えさせたわけだが、本作で提示される命題はあくまでも“世界は終焉した”というものであって、厳密に考えれば、オチである“エイリアンの侵略”ときっちり対応しているわけではない。一応、世界が終焉した理由の予想として、ハワードが“エイリアンによる攻撃”をチラッと挙げはするのだが、その際も同時に“ロシアの新兵器”とか言っていたりもするので、オチでのエイリアン登場がやや唐突に感じられ、これは“トンデモ映画”だなぁ、という読後感になる。外の世界は“エイリアンに支配された”というヒントをもうちょっと直接的に散りばめて、登場人物たちに向けられる命題も“エイリアンが侵略してきたのだ”というストレートなものにした方が、全体のまとまりは良かったのではなかろうか。

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 とはいえ、それは、あくまでも本作を“一本の映画”として観た場合。実のところ、観客の大半は“世界の終焉”と言われただけで、その原因が何らかのモンスターの手によるものと察知している。なぜなら、本作があの『クローバーフィールド』の続編だと事前に知っているからである。だから、まぁ、そういったいわば“作品外の事情”(本作に限っては“続編”なので“外”と言い切って良いか微妙だが)をも考慮するなら、別に本作が提示した命題もそこまで説明不足ではなかったのかもしれない。

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 ところで、本作の公開に際して、特に日本では、“ネタバレ”という点が大変な物議を醸した。すなわち、日本版のトレイラーポスター侵略者たるエイリアンを思いっきり映しているのである。

<日本版公式トレイラー>


<日本版公式ポスター>
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 これは…まぁ…もはや言い逃れの余地なく“ネタバレ”であろう。本作の実に7~8割は、ここに映っているエイリアンたちのための“前座”と言っても間違いではないのだから。だから、このような予告編とポスターを公開前にリリースしたことへの激高は理解できる。

 でも、筆者個人としては、本作で“モンスターが登場すること”をバラされたからと言って、それを直ちに“ネタバレ”として非難して良いものか判断付きかねる。他の作品ならいざ知らず、本作『10 クローバーフィールド・レーン』に限っては、何らかのモンスターが登場することなど自明だったのではないだろうか。だって、“あのクローバーフィールド”の続編なんだぜ?あのモンスターパニック史に残る傑作の続き物なんだぜ?こんなもん、モンスターが出てこないわけがないのである。もし、本作のオチが、やっぱりハワードの言っていたことは一から十までウソで、外の世界は平穏そのものだった、人間って怖いよね…みたいなものだったら、それこそ筆者は大怪獣がごとく激高し、世界の一つや二つ終焉させてから劇場を後にしていたことだろう。

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 まぁ、モンスターが出てくることは分かってるけど、そのビジュアルは楽しみなんだから伏せとけよ!という怒りなら、良く分かる。でも、いくつかの感想を読んでいると、そんな雰囲気でもないんだよな。やっぱりみんな、モンスターが出てくるってなんで言っちゃうんだよ!と怒っているようだ。

 とはいえ、確かに、本作鑑賞後の今となっては、モンスターの出現を知らぬ方がハラハラ出来たのかもなぁと思える部分もある。というのも、本作の大部分を占めるサスペンスパートでは、本当にモンスターがいるかいないか分からないよう描いているからである。だから、モンスターの登場を確信して鑑賞していると、その描き方に若干白けてしまう感じもあるのである。もちろん、サスペンス部分の描き方が単純に丁寧なので、それ自体としてもそれなりに楽しめるのだが。

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 つまり、結局何がいけなかったのだろう。我思うに、“クローバーフィールド”の名を冠した作品でモンスターの存在・不存在を焦点にするべきではなかったのではないだろうか。何度も言うが、分かってるんだよ、モンスターが出てくることは、もう分かり切ってるんだよ。“クローバーフィールド”がモンスター不在のサスペンスになるなんてことは、絶対にあり得ないんだよ。モンスターは出てこないといけないんだ。“クローバーフィールド”なんだから。

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 ちなみに、本作の大オチは、バカ映画好き要チェックである。ここ数日の監禁状態や疑心暗鬼から解放された直後にも関わらず、極めて臨機応変にエイリアンを倒したメアリー・エリザベス・ウィンステッド演じるミシェルは、カーラジオから流れる「避難する人は○○(地名忘れた)へ。戦闘経験や医療経験のある者はヒューストンへ来てくれ!」という無線を聞き、しばし逡巡の後、男前な目つきで車をヒューストンへ向ける。さっきまでの正統派サスペンスがウソのようなローランド・エメリッヒ的男気展開。おまけに、エイリアンを倒すときも、大型宇宙船みたいなボスのボディ下部の開いた口へ即席の火炎瓶を放り込んで爆散させる、という、まるで飲んだくれ戦闘機乗りのような男気戦闘法が披露される。まさか『ID4 2』の公開を前に被せてきたわけではないだろうが、とにかく、この大団円を以て、本作はトンデモ映画を超えた“超トンデモ映画”への昇格を果たしていると言って良いだろう。

点数:68/100点
 結局のところ、何がやりたかったのだろう。ひょっとしたら、“クローバーフィールド”の名を冠した作品では、モンスター系作品を新たな角度から描く、という試みをやっていくのだろうか。まぁ、仮にそうだったとしても、本作はなんだか失敗だったように思う。前作では、POVという撮影手法とモンスターパニックというジャンルが美しいまでに融合していたのだが、本作ではサスペンスとSFがただごちゃっとくっ付けられただけ、という印象。筆者の敬愛するメアリー・エリザベス・ウィンステッド嬢が最高にセクシーで可愛いから点数は甘めにしておいたが、前作に多大なる感銘を受けた筆者としては、本作は少しがっかりな続編であった。

 ちなみに、本作ではメアリー・エリザベス・ウィンステッドがジョン・マクレーンよろしく喚起ダクト内を這いずり回るシーンがある。アングルもまんま『ダイ・ハード』。同シリーズの4及び5でジョン・マクレーンの娘ルーシーを演じたメアリーだけに、このシーンは、『ダイ・ハード』ファン要チェックである。

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(鑑賞日[初]:2016.6.24)

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