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2016

[No.392] ONE PIECE FILM GOLD <85点>

CATEGORYアニメ




キャッチコピー:『この男に、賭ける。』

 黄金の大勝負!

三文あらすじ:世は大海賊時代、“麦わらのルフィ”ことモンキー・D・ルフィ(声:田中真弓)率いる“麦わらの一味”が“偉大なる航路<グランド・ライン>”後半の海“新世界”で上陸したのは、世界最大のエンターテインメント・シティと称される巨大船“グラン・テゾーロ”。この世のものとは思えないほどの華やかな空間に興奮する一味の前に、船の主にして世界政府をも動かす権力を持つ“黄金帝”ギルド・テゾーロ(声:山路和弘)が現れる。一見豪華絢爛な街の裏で民たちを奴隷として支配するテゾーロは、一味に“命がけのギャンブル”を持ちかけるのだが・・・“ひとつなぎの大秘宝<ワンピース>”を巡る海洋冒険ロマン!


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 2016年7月23日から絶賛公開中の劇場版『ONE PIECE』最新作『GOLD』。オープニング成績とか観客の満足度とかで軒並み1位を獲得しているようだから、ご多分とは異なり本当に“絶賛公開中”のようである。本作の目玉は、やはり原作者である尾田栄一郎自身が総合プロデューサーとしてストーリーやキャラクター設定に関与しているという点。つまり、2009年の『STRONG WORLD』、2011年の『麦わらチェイス』を飛ばして2012年の『Z』、この2作に続き、原作者が関与するのは3作品目ということになる。言い換えれば、本気で動員と興収を狙いに来た3つ目の作品ということになるだろう。

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 さて、原作漫画をこよなく愛していながら劇場鑑賞が非常に遅くなってしまった筆者だが、本作の鑑賞後第一報を一言で言うと、めちゃ良かった!となる。これはまぁ、個人的にいくつかの理由がある。初の原作者関与&主題歌Mr. Childrenにハードルを上げまくって観た『STRONG WORLD』、その反省の元でハードルを極力下げて観た『Z』、その2つを経て筆者のハードルがちょうど良い高さになっていたという部分もあるだろう。とはいえ、やっぱり本作自体の出来が良かったという事実も見逃せない。

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 筆者が一番良かったと思うのは、何といっても“シンプル”だったという点である。本作には、『STRONG WORLD』において“無駄な要素”だったメルヴィユの民のような“しっかり描かれるサブキャラ”がいない。全編を通して、麦わらの一味 vs テゾーロ軍団の死闘に注力している。リッカ(声:坂本千夏)、テンポ(声:渡辺菜生子)の兄妹と彼らが働くステーキハウス「WILD COW」の店主ダブルダウン(声:竹中直人)にルフィたちが介抱され、彼らと友情を育むという展開はありがちだが、本作はそんなことで貴重な時間を無駄にはしない。しかし、それでいて、彼らの存在により、自らの野望のために敵を排除するルフィが結果的に民衆の“ヒーロー”になっているという『ONE PIECE』お決まりの展開が自然に演出されている。

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 そもそも、テーマがシンプルなのが良い。そのため、リッカ、テンポのバックグラウンドやルフィとの交流を詳しく描かなくても、我々はグラン・テゾーロの民衆にすんなり感情移入することができる。つまり、本作のテーマとは、金による支配からの自由であるが、富裕層による貧困層の支配は、万人が即座に理解できるテーマであり、かつ、自由を描く『ONE PIECE』との親和性も高い良テーマである。ちなみに、これは筆者の妄想であるが、本作は、金で“神(GOD)”になろうとする支配者に自由の体現者である“ルフィ(Luffy)”という海賊が一撃をお見舞いし、金はしょせん“金(GOLD)”でしかないという事実を突きつける、そういう話なのである。

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 また、本作は全体としてシンプルでありながら、実はこれまでの2作に比べて少し捻った趣向がいくつか採用されている。それでも結局は違和感なくシンプルにまとめたという点において、本作は前2作より良くできていると言ってもいいのではないだろうか。

 まず、敵との騙し合いという趣向。かつてナミ(声:岡村明美)とライバル的な関係にあった女泥棒“女狐”カリーナ(声: 満島ひかり)を軸としたクライマックスの二転三転は、もちろん映画作品としての新規性があるというわけではない。まぁ、言ってみればベタベタである。しかしながら、“金しか頭にないテゾーロの固定観念を逆手に取ったトリック”は説得力があるし、“テゾーロのルールに従わずぶっ飛ばすための作戦”だったという点が重ねて素晴らしい。“金が全て”という発想でありルール自体を否定したいのに、それに沿って戦うのは、ある意味で自家撞着だ。

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 なお、このクライマックスの騙し合いは、控えめな“どんでん返し”と言ってもいいだろう。なぜなら、麦わらサイドの作戦には実は裏がある、というオチのヒントが最初から一応提示されていたからである。それは、ルフィの服装だ。潜入作戦時のルフィの服装は、シックな黒の戦闘服。しかし、その他のメンバーは全員ど派手な衣装を身にまとっている。対人を想定したチームBは変装衣装として理解できるが、隠密を旨としたチームAのフランキー(声:矢尾一樹)までルフィ同様の戦闘服でないのはなぜか。それは、ネタばらし時にナミの口から説明された通り、作戦の真意をルフィだけ知らなかったからである。つまり、フランキーだって不慮の事態に際して臨機応変に対応する必要があるが、そしてまた、臨機応変に対応できるのだが、作戦の本当の目的を知らないルフィにそんなことはできない。よって、ルフィだけは、ただただテゾーロをぶっ飛ばすことだけに特化した戦闘服をハナから着させられている、というわけだ(ちなみに、ゾロ(声:中井和哉)が最初から戦闘服を着ていたのは、彼が“戦闘狂”だからだろう。彼はいまだテゾーロと敵対する前から、漠然とした万が一に備え、白ジャケットの下にブラックの戦闘服を着用している。)。

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 それから、騙し合いの軸となる存在、“女狐”カリーナ。こういったゲスト・キャラクターというのは、ともすれば作品全体の趣を破壊するやっかいな“不純物”となり得る。例えば、小栗旬主演の実写版『ルパン三世』。同作に登場したゲスト・キャラクター、マイケルは、本当にクソだった。あいつがいなければまだ百歩譲って容認する余地もあったのに。しかし、本作のカリーナは、極めて良く造形されたキャラクターだ。

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 個人的には、このカリーナ関係で2回、え、やめてよ…?と思うことがあったのだが、どちらも綺麗に帰着されていた。まず一つは、かつて14歳のナミと13歳のカリーナが、ジャラジャラの実の能力を宿す最強のトレジャー・ハンター“マッド・トレジャー”(声:小栗旬)に捕まった際のカリーナの裏切り。作戦前に屋上でナミ、カリーナが話すシーンで回想が入るが、この時点における説明では、それはもう完膚なきまでにカリーナが悪い。過不足無き“裏切者”である。だから、屋上シーンのラストで「今度裏切ったら承知しないわよ。」なんて言って拳をゴツッとするナミが酷いマヌケに見えてしまう。かつてのナミがどうやってマッド・トレジャーから逃げきったのかも皆目分からないままだし。

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 しかし、この点に関しては、実はカリーナはナミも自分も二人とも助けるために一芝居打ったのだ、ということが後々ちゃんと説明される。まぁ、よくよく考えれば、というか本作のクリエーターを信用していれば、カリーナの裏切りエピソードについては何かしらの裏があるな、ということも予想の範囲内なのだが、あいにく前々回、前回とやや肩透かしを食らった筆者としては、製作者への信頼があまり無かった。要は、ハードルが下がっていたわけである。これは、筆者自身が愚かだったわけだが、同時にそのおかけで楽しめる部分でもあった。

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 それから、カリーナ関係でヒヤヒヤしたもう一つは、ラストにおけるカリーナの自己犠牲である。こっちに関しては、もはや気付かなかった筆者を白痴と呼ぶべきかもしれない。突如始まったカウントダウン(カリーナが仕込んでいたのかな。)を自爆への秒読みだと偽り、結局、グラン・テゾーロごと盗み去ったカリーナ。船内の全員をパニックに陥れ、なんやかんや麦わらの一味を洋上まで逃がしたのだとすれば(まぁ、それが無くともいつも通り逃げ切ってはいただろうが。)、カリーナの自己犠牲は回想での裏切り同様、ナミもカリーナも2人とも逃がすための一芝居だったのであり、映画の構成としては、いわゆる“天丼”だったわけだ。しかし、製作者への信頼が低下していた筆者は、あぁ頼むから安直なお涙頂戴はやめておくれやす…。と神に祈り、颯爽と去るカリーナの後ろ姿に万感の拍手を浴びせかけたのであった。

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 さらに、安直なお涙頂戴の危機という意味では、本作のヴィラン、テゾーロのバックボーンにもややヒヤヒヤした。若かりし16歳のテゾーロが“ヤバめのカジノ”から逃げ出した先で出会う美女ステラ(声:魏涼子)。テゾーロ同様、父親のギャンブルが原因で身を落とし、今はヒューマン・ショップの“商品”として陳列されている彼女にテゾーロは恋をする。自ら彼女を買い受ける決意をしたテゾーロは、真っ当な仕事を昼夜問わず続け、3年後、あと少しでステラを買えるというところまで金を貯める。しかし、すんでのところで天竜人がステラを購入。必死に抵抗するテゾーロだったが、結局、ステラは連れていかれ、天竜人に刃向かったテゾーロもマリージョアへ連行、その後、自らも天竜人の奴隷となってしまう。屈辱の日々を過ごす彼が26歳のとき、タイガー・フィッシャーの奴隷解放事件が発生。命からがら逃げだしたテゾーロは、以前より過激な悪事に手を染めるようになり、ドフラミンゴからゴルゴルの実を奪ったりなんやかんやして現在に至る…。

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 とまぁ、そんな顛末である。詳しくは、鑑賞特典として配布されている777巻に載っているのだが、とにかく、テゾーロに関するこのようなバックボーンが、作中でけっこうしっかり描写される。もちろん、仰々しい回想シーンでみっちり描くということはないのだが、それでもヴィランの悲しみをお伝えするというのは、『ONE PIECE』の悪役にあるまじき趣向である。当ブログでも何度か言及しているが、『ONE PIECE』の悪役は謝らない。そこがカッコいいんだ。そして、だからこそ、筆者は本作のテゾーロに一抹の不安を感じていた。しかし、それは杞憂であった。これが、もしラストでテゾーロに「ステラ…俺が欲しかったものは、もう俺が持っていたんだな…」みたいなことを言わせていたら、筆者は劣化の如く怒り狂い、劇場でバインバインと跳ね回ってやろうと思っていたのだが、その必要はなかった。

 ちなみに、テゾーロの最期については、作者自身が設定画で言及している。

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 そう、これなんだよ。くちゃっとした字で読みにくいけど、「テゾーロに迷いはない。」と書かれている。決して後悔しない悪役、これなんだよ。例え、ゴチャゴチャした不要な展開が満載になったって、例え、ワチャワチャしたしょうもないギャグで溢れかえったりしたって、これがある限り、『ONE PIECE』は死なないのである。

 とうわけで、筆者がハードルを下げすぎていた部分とか、単に筆者が愚か者だったという部分は多々あるものの、総じてシンプルにまとまっていたため、個人的には本作に大満足したのである。あと、一点だけ付け加えるなら、ウソップ(声:山口勝平)がラキラキの実の能力者バカラ(声:菜々緒)を倒すシーン、これは最高だった。極めて合理的である。もっとも、この“スロットマシーンで大当たりを出し「運」を使い果たしたため直後の攻撃が当たる”という展開については、その前の“コイン一枚でウソップたちにダメージを与える”というシーンとの比較で若干の検討が必要であろう。つまり、コイン一枚でピタゴラスイッチ的に“幸運”を引き寄せたシーンでは、先々の因果まで含めて能力が発動しているのに対し、最後のスロットマシーンのシーンでは、ジャックポットという直近の“幸運”のみが帰結されているからである。まぁ、これは“運”とは何かという哲学的な命題に発展する可能性があるので、ここでは詳述しない。

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 筆者が決定的にダメだと感じたのは、サボ(声:古谷徹)とルッチ(声:関智一)のバトルである。つまり、これは、暴走し始めたテゾーロに対し、天竜人を守るためCP0(サイファー・ポール・イージス・ゼロ)が攻撃を仕掛けようとし、それをサボが「弟の喧嘩を邪魔するな。」という理由で止める、という展開である。あくまでも個人的な見解ではあるが、この展開は、麦わらの一味という“ヒーロー”の本質を何も分かっちゃいない。

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 “麦わらの一味”は、“海賊”である。ルールを逸脱する者であり、政府に盾突く者であり、法を犯す者であり、要は“犯罪者”なのである。しかし、彼らはまた同時に“ヒーロー”である。圧倒的な強さで以て人々の希望になる存在。つまり、彼らは、バットマンと同じく“ヴィジランテ”なのである。

 バットマンにしろスパイダーマンにしろ、ヴィジランテが活躍する作品の肝であり最高に漢の魂が完全燃焼する展開は、公的機関では対処できない敵とヒーローが対峙するという、その瞬間である。先ごろ公開されたリブート版『ゴーストバスターズ』では、政府及びニューヨーク市の関係者を全員昏睡状態にしてしまったクライマックスがダメダメだったわけだが、本作はそれより酷い。CP0が対処しようとしているのにそれを押してテゾーロに噛みついていく麦わらの一味は、単におせっかいな集団である(もちろん、ルフィたちには“ゾロを奪い返す”という個人的な動機があるし、CP0の砲撃を事前に知っていたわけでもないのだが。)。一応、海軍は「ここからの砲撃では市民に被害が出る。」というようなことを言ったもののルッチが強硬な手段に出た、というフォローはあったように思うが、それだけじゃあダメだ。もっと積極的に「悔しいが、今のテゾーロを止められるのは“麦わら”だけだ…。」ってしてくれないと。

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 まぁ、それだとサボを出せないというデメリットは理解できる。今やサボはものすごい人気キャラクターらしいからな。確かに、麦わらの一味の活躍を削らずサボを登場させるなら、本作以上のプロットは無いだろう。そういった意味では、サボ vs ルッチの展開も100%ダメだったというわけではない。しかし、もしサボもルッチも登場させず海軍の無力描写のみを採用するという"大勝負"に出ていたなら、本作はまさに“鬼に金棒”な傑作になっていた気がして少し残念だ。

点数:85/100点
 確かに、『ONE PIECE』の劇場版として見るなら、前2作の方がワクワク感は上だったのかもしれない。やはりぽっと出の守銭奴では、“伝説の空飛ぶ海賊”や“伝説の元海兵”というボスに見劣りする。しかしながら、一本の映画として観るのであれば、シンプルにまとまった良作と言っていいだろう。あまり期待せず鑑賞した筆者にしてみれば、まさに“金は湧き物”を実感するような思いがけない収穫であった。

(鑑賞日[初]:2016.8.15)
(劇場:TOHOシネマズ伊丹)










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Tag:劇場鑑賞作品 海洋冒険ロマン

3 Comments

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2017/01/21 (Sat) 00:49 | EDIT | REPLY |   

Mr.Alan Smithee  

Re: No title

それは確かにおっしゃる通りですね。
テゾーロに関しては多くの悪役と違い、特定の女性への思い、つまり“愛”が根底にあるため、ハートウォーミングな過去話の存在は避けて通れないでしょう。
ただ、そのバック・ボーンを作品内で詳述せず、設定本での補完に徹したという点では以前評価に値すると思います。

2017/03/08 (Wed) 19:19 | EDIT | REPLY |   

Mr.Alan Smithee  

Re: No title

確かに仰る通り、テゾーロは今わの際(まぁ、『ONE PIECE』のことですから、テゾーロは死んでいないと思いますが)、ステラとの思い出を想起しています。悪行の果てに敗れ、自らの原点、すなわち、悪に染まる前の自分を振り返ったのなら、それはイコール、これまでの悪しき行いを恥じ悔い改めた、つまり、『ONE PIECE』の悪役であるにもの関わらず、テゾーロは“後悔”した、とも言い得ると思います。

そして、実は筆者も本作に関しては、今回はちょっとギリギリだったなぁ、と思いました。

まぁでも、明確に“後悔”あるいは“謝罪”するようなセリフを吐いたわけではないので、多めに見る余地は十分にあるのではないでしょうか。

個人的には、動機の原点とその後の行いはある程度切り離して考えられるのではないか、と思ってもいるのですが、それを客観的、及び説得的に論じるには少しアルコールを摂取し過ぎておりますので、ここでは「ん~・・・じゃあ、『銀魂』の悪役と比べてみてよ」くらいに留めたいと思います。

2017/08/06 (Sun) 05:05 | EDIT | REPLY |   

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