[No.398] アース・トゥ・エコー(Earth to Echo) <90点>





キャッチコピー:『全ては、謎のメッセージから始まった。』

 俺たちは、ここにいる。

三文あらすじ:ネバダ州に住む少年タック(ブライアン・“アストロ”・ブラッドリー)、アレックス(テオ・ハーム)、マンチ(リース・ハートウィグ)の仲良し三人組は、降って涌いた高速道路建設計画に伴う立ち退き命令により離れ離れになってしまうため、憂鬱な日々を過ごしていた。ある日、突然スマートフォンに表示された謎の画面が砂漠の地図であることを突き止めた3人は、いよいよ立ち退きを明日に控えた夜、“一緒に過ごす最後の思い出”として、家から抜け出し地図が指し示す数十キロ先の地点を目指す。目的地で地球に不時着した機械生命体を発見した彼らは、途中強引に仲間入りした同じ学校の美少女エマ(エラ・ワレステッド)と共に、“エコー(Echo)”と名付けたその宇宙人をなんとか故郷に帰してやろうとするのだが・・・


~*~*~*~


 夏、土砂降りの日差しを全身に浴び、立ちふさがる蝉しぐれをかき分けて、世の少年たちはみな“冒険”へと出発する。舞台がネバダなので季節感はあまり無いけれど、本作の少年たちだってその例外ではない。後に『ミュータントタートルズ2』というブロックバスターの監督に抜擢される期待の新生デイブ・グリーンが長編デビュー作として監督した本作『アース・トゥ・エコー』は、少年たちが繰り広げる一夜限りの“冒険”を通して、彼らの“友情”、すなわち“絆の在処”を描いた珠玉の青春ドラマである。

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 まず、特筆しておくべきなのは、まぁ今さら特筆すべき手法でもないかもしれないが、本作は全編POVで撮影されている、ということ。行方不明になった少年たちが撮影したテープが後日発見された…みたいな作品ではないから、厳密な意味の“ファウンド・フッテージ”ではないだろう。ユーチューバーであるタックが始終記録していた一連の映像を後日“映画”として編集した、という本作の“てい”を他の作品に例えるなら、ベッカとタイラーの自主製作映画というスタンスでまとめられた『ヴィレッジ』に似た作品だと言えそうだ(ちなみに、タックが本作に付けたタイトルは『Echo』。)。

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 次に、本作を観た者、特に80年代~90年代中ごろくらいまでを少年として過ごした大人たちが真っ先に思い出す作品は、巨匠スティーブン・スピルバーグの傑作青春SFドラマ『E.T.』であろう。少年たちが迷子の宇宙人と交流を深め、なんとか故郷に帰してやろうと奮闘する。その過程では公的機関の大人たちによる妨害があるが、少年たちは、固い絆と純真さで以て困難を乗り越え、ラストでは無事に地球を飛び立つ宇宙人と涙の別れを交わす。『E.T.』も本作も、かいつまんで言えばこういうプロットである。つまり、思い切って言ってしまえば、本作は『E.T.』のリメイクなのである。

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 とはいえ、“『E.T.』のリメイク”なんて、そうおいそれと口にできるものではない。あれほどの大傑作のリメイクと豪語するからには、それはそれは、よほどの出来でなければならないだろう。しかして筆者は、本作を鑑賞して、“よほどの出来”と感じたのである。つまり、あくまでも個人的な感想を言えば、本作は青春SFドラマの傑作である。

 前述の通り、大まかなプロットは『E.T.』を踏襲している本作であるが、そこには本作独自のテーマがしっかり盛り込まれている。本作の主人公である3人の少年(及び1人の少女)は、社会、つまり“大人たち”が勝手に決めた高速道路建設により、離れ離れになってしまう。しかし、いよいよ離れ離れになってしまう前夜、彼らは、宇宙人を巡る冒険を繰り広げ、自分たちの“友情”を確かめ合う。

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 もちろん、少年たちが友情を再確認するという話はそれこそ星の数ほどある。その点、本作は、物理的な距離に着目している点が特徴である。まず、前述の通り、本作の少年たちは、立ち退き命令によって遠くバラバラに散ってしまうことが確定しているという設定。また、その前夜の冒険では、宇宙船の部品を集めるため、ネバダの砂漠をあっちに行ったりこっちに行ったり、お前らようチャリンコでそんな走れるなぁというくらい移動を繰り返す。しかも、その過程でマンチが政府関係者に拉致されたため、残りのメンバーは彼を取り返さんと再びえっちらおっちら戻っていくのである。このように、本作では、“物理的な遠さ”というものが、繰り返し強調される。

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 これを前提として描かれるのが、少年たちと宇宙人“エコー”との友情であり、少年同士の友情である。つまり、本作は、離れ離れになってしまうことを嘆いていた少年たちが、たとえ物理的に遠く離れてしまっても変わることのない自分たちの“絆の在処”を確認するという、『ONE PIECE』の空島編みたいな話。個人的にだが、これは『E.T.』の新解釈として非常に素晴らしい視点だと思った。“宇宙人”というのは地球外から来た訪問者であって、現在の人類からすれば“遠地に住む者”の究極形みたいなものである。そういった意味で、離別を憂う少年たちの成長を宇宙人との交流の中で描き出すプロットは、尋常でなく説得的だ。つまり、SF的ギミックとドラマ部分がしっかりリンクしているというわけである。

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 そして、同様の役割を持ったギミックが、本作にはもう一つ登場する。それは、本作の宇宙人が有する能力、すなわち、金属を分解し再構築するという特殊技能である。これも本当に巧い設定だ。もうお分かりだろうが、この能力が象徴するのは、離れ離れになっても壊れることのない絆という本作のテーマに他ならない。加えて、この能力は、本作が有する青春ドラマとしての側面もSFとしての側面もいっさいがっさいを凝縮した最高の見せ場を演出する。

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 研究材料としてエコーを解体しようとする政府関係者から少年たちが車で逃げる道中、衝突寸前のトラックをエコーが分解するこのシーン。個人的にここが本作で一番巧いところだと思った。つまり、このシーンは、まず、エコーの能力が真価を発揮するSF的な見せ場である。また、同時にエコーが少年たちを助けるシーンでもあることから、ドラマ部分のテーマであるをも表象している。さらに、このシーンが素晴らしいのは、『E.T.』のオマージュにもなっているから。誰もが知る『E.T.』の有名シーンと言えば、もちろんE.T.をチャリンコの前かごに乗せたエリオット少年が空を飛ぶ場面であろう。この場面は、スピルバーグが設立した製作会社アンブリン・エンターテイメントのロゴマークにもなっている。本作のトラック分解シーンは、まさにこのオマージュ。作品のテーマを端的に表すとともに過去作へのオマージュをも取り込み、さらにSFXの進化をも見せつけることでSF映画としての本分も忘れない。予算の関係からか、たしかにCGは若干粗いのだが、このトラック分解シーンの巧さを目の当たりにして、筆者は思わず「おお!」と叫んでしまったほどだ。

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 筆者が一点だけ「はて?」と首をかしげたのは、“エコー”というキャラクターである。POVを使用したリアル路線のSFにしては少しアニメチックな見てくれだなぁ…とまず思ったのだが、何やら胸に残るモヤモヤの原因は既視感だと思い至った。そう、本作で少年たちと一夜の交流を持つこの機械生命体は、2000年の夏に公開された日本の青春SF映画『ジュブナイル』で少年たちと友情を育む高性能ロボット“テトラ”に酷似しているのである。

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 まぁ、純粋な見た目だけなら、なんか両方ともフクロウっぽいなぁくらいなもんだが、テトラとエコーは、共に部品を集めてパワーアップしていくというスペックも類似しているし、少年たちと友情を育むという作品自体のプロットも似ているのである。かつて、『ロボコップ』の製作陣が『宇宙刑事ギャバン』のデザイン使用許諾をわざわざ得たということを思い起こせば、盗作だと非難されても仕方ないくらい両キャラクターはそっくりだ。これはひょっとしたら後々法廷闘争に発展したり……おっと。なんだか“大人みたいなこと”を考えてしまった。例えおっさんになっても、純粋だったあの頃の“少年心の在処”は忘れないようにしたいものである。

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点数:90/100点
 めちゃくちゃに完成された傑作青春SFドラマ。もしかしたら点数はちょっと高めかもしれないが、“心の在処”、言い換えるなら“自らのルーツを忘れない”というテーマが個人的にものすごくツボだった。“社会”というものは本当にくだらないが、誰しもが飛び込んでいかなければならない場所でもある。だから、あのとき、筆者は、絶対に“自分の魂の在処”だけは忘れないでおこうと固く誓ったのである。本作は少年たちのドラマであるが、本当は、くだらない社会で日々奮闘する大人たちにこそ、ときおり思い出して自分自身を再確認するツールが、呼べばこだまする“エコー”のような存在が、必要なのかもしれない。

(鑑賞日[初]:2016.8.21)

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