04
2016

[No.399] シャークネード(Sharknado) <57点>

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キャッチコピー:『人喰い鮫<シャーク>×巨大竜巻<トルネード>!!史上最凶の瞬間最大風速が日本上陸!!』

 この愛は“サメ”やらぬ。

三文あらすじ:メキシコ湾で発生した未曽有の嵐が、海中のサメを巻き込みながらロサンゼルスに上陸。海辺のバーを営む元サーフィン・チャンピオンのフィン・シェパード(イアン・ジーリング)は、従業員のノヴァ・クラーク(キャシー・スケルボ)、友人のバズ・ホーガン(ジェイソン・シモンズ)、常連客のジョージ(ジョン・ハード)と共に命からがらサメの急襲を逃れる。フィンの元妻エイプリル(タラ・リード)、娘のクラウディア(オーブリー・ピープルズ)、息子のマット(チャック・ヒッティンガー)を救うため、彼らはサメが飛び交う阿鼻叫喚の中、一路ビバリー・ヒルズを目指すのだが・・・


~*~*~*~


 2013年に製作されたB級サメ映画。これまで当ブログではいくつかB級映画の感想を書いてきたが、実際のところ、厳密な意味でのB級映画となるとその数はそう多くない。演技はグダグダ、脚本はスカスカ、予算はカツカツ。そんな中でただ下品さとバカバカしさがごちゃっと詰め込まれたようなどーしようもない映画というのが、厳密な意味でのB級映画である。そう考えると、筆者が既に感想を書いた中では、『プラン9・フロム・アウタースペース』とか、『深海からの物体X』とか、『巨大毒蟲の館』くらいしか“紛うことなきB級映画”と呼べる作品は無いのかもしれない。では、本作『シャークネード』は、というと、比較的そういった意味でのB級映画に近い“真のバカ映画”と言っていいだろう。

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 そもそも、本国アメリカにおいて本作はTV映画として製作されている。日本でもたぶん劇場公開はされていない。どうやらテレビ東京で放映されたようである。近頃の洋画は本当にクオリティが上がっていて、TSUTAYAなんかで「お、こんなB級映画があるのか」と思って借りてみると、実は元々TV映画だったということがよくある。上述の3作品はTV映画ではないけれど(『深海からの物体X』はビデオストレートだが。)、例えば、ピラニアとアナコンダを組み合わせたバカ映画『ピラナコンダ』なんかは、あの名優マイケル・マドセンが出演しているにも関わらずTV映画であった。

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 さて、筆者はつい先ほど「ピラニアとアナコンダの組み合わせがバカだ」という趣旨のことを言ったが、本作も同様の趣向で以て愛すべきバカさを醸し出している。すなわち、「あ、サメとトルネードを組み合わせてみよう!」という奇想天外なコンセプトである。確かに、たぶん星新一が言っていたのだと思うけれど、ストーリーの創作に行き詰ったクリエーターはとりあえず“あり得ない組み合わせ”を考えることがあるらしい。本作の製作者も、もしかしたら、既に飽和状態にあるサメ映画の新作に行き詰り、サメと最もあり得ない組み合わせは何か?…竜巻だ!となったのかもしれないな。仮にそうだったとすれば、日本を代表するショートショートの名手と同様の発想で生み出された“サメ×トルネード”という組み合わせをあまりバカにはできないだろう。

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 まぁ、サメが竜巻に乗って空を飛ぶというバカバカしさは百歩譲るとしても、本作にはその他あまりにも多くの突っ込みどころが存在している。真のB級映画というのはえてしてそうなのだが、ココとココがおかしい!みたいな生半可な突っ込み方では、とてもじゃないが間に合わない。それはもう、ココとココだけまともだなぁ…。というくらい全編が突っ込みどころのオンパレードなのである。

 ウソみたいにちゃっちいCG、未曽有の嵐の中でもときたま映り込むカラカラの地面、演者の“寄り”ばかりで何が起こっているか分からないカメラワーク、自力で飛行しているわけでもないのに拳銃で撃たれるとバラバラ落ちていくサメたち、サメの存在を知らなかったはずなのになぜか隠れて怯えていた飛行訓練所のメンバー、どう考えたって届くわけないのにすんなり竜巻の中心に到達する手製の爆弾、そして、素人が有り合わせの物資で作った程度の爆弾でいとも簡単に消滅する巨大竜巻

 挙げだせば本当にキリがない。もっとも、転がる観覧車に追われる人々がなぜか横に逃げない、という展開は、巨匠リドリー・スコットのSF超大作『プロメテウス』でも描かれていた謎の味わいであるから、あまり目くじらを立てるのは感心しない。

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 筆者が個人的に突っ込みたかったのは、主人公のおせっかいさである。本作の主人公フィンは、およそあらゆるモンスターパニックの主人公がそうであるように、不合理の塊のようなキャラクター。サメが本格的に襲来する前から一人だけ異常な警戒ぶりを見せるくせ、いざというときは結構あっさり死人を出したりする。そして、おせっかい。本当におせっかいだ。本作において、フィンはサメとの激闘の末トルネードを消滅させた“ヒーロー”になるのであるが、警察や軍隊を差し置いてなぜ彼が事態に対処しなければならないのか、という点が、全く分からない。

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 まぁ、孤立したスクールバスの子供たちを助け出すというシークエンスは、状況だけ見ればまだ納得の余地も無いではない。バスの周囲は水に囲まれていて、その水位は刻々と上昇している。警察や消防が駆けつける前に幼気(いたいけ)な子供たちがサメの餌食になる可能性もあっただろう。とはいえ、今はとりあえず一刻も早く我が息子の安否を確認しなければならないというのに、しかも、そのことをモロに元妻から指摘されるのに、彼は「やっぱり見過ごせない!」などというサメも食わないような正義感を振りかざし、(少なくとも)小一時間ほど救出作業にいそしむ。自分の家族すら満足に守れない男を“ヒーロー”と呼べるのだろうか。当然、フィンの息子は結果的にサメ嵐から生き延びるから、やはりフィンは正しかったようにも思えるが、よく考えればそれは結果論でしかない。

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 とはいえ、である。TV映画でありながらアメリカの“バカ映画好き”たちを熱狂させただけあって、本作は、決めるところを決めてくる。まぁ、それはほんのワン・シーンなんだけどな。本作においては、クライマックスでさえ、概ね陳腐とチープが乱舞する。しかし、その中で抜群に輝いているワン・シーン、それは、フィンがチェーンソーでサメと対峙するシーンである。

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 これ。これはやっぱり興奮してしまった。まずはやっぱりチェーンソーという武器選択が良い。もちろん、この電動刃物は、『悪魔のいけにえ』であったり、『死霊のはらわた』であったりという古き良きホラー映画で数々使用されてきた定番武器であるから、今さら斬新さなど皆無に等しい。でも、やっぱりドルルルル…!と振動するブレードを見ると、B級映画好きの血が騒ぐのである。そんなホラー映画界の“神器”を携えたフィンがサメの口内にすっぽり突入していくのだが、ここばっかりはCGのクオリティも悪くない(ただ見慣れただけかもしれないけれど。)。スローモーションも効果的だ。何より、フィンは食われてしまったのか?!というプロレス的なハラハラ感が心地いいし、木の葉のように舞い狂うサメの一匹に空中で食べられたはずのノヴァが奇跡的にまだサメの腹の中で生きていて、偶然にもその同じサメがフィンも丸飲みにしてしまう、という圧倒的なご都合主義にテンションが上がる。その上で、フィンが内側からチェーンソーで巨大鮫の腹を切り裂き生還し、ノヴァを引っ張りだすに至り、我々は恥も外聞も忘れて「よっしゃー!」という拍手喝さいを浴びせかけるのである。

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 まぁ、要はバカバカしいけどカッコいいんだな。“バカバカしさ”というのは不思議なもので、カッコよさが閾値を超えるまでは“嫌悪”の火種となるのだが、いったんカッコよさがバカバカしさを上回ると“愛しさ”を加速させる最良の起爆剤へと変化する。“バカ映画”っていうのは、そういうものなんだ。稚拙な脚本でもいい。ゴミみたいなカメラワークでもいい。ウソみたいなバカバカしさを最高のカッコよさで以て“愛”へと変換させる熱量。我々が魂を完全燃焼させるのは、そんな作品なのである。本作の白眉たる“フィン丸飲みシーン”は、そういった意味で本当に素晴らしい。

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 最後に、これも“バカ映画”の醍醐味の一つ、“オマージュ”についていくつか。いわゆる“サメ映画”ということで、本作には史上初の“サマー・ムービー”として映画史に燦然と輝く傑作モンスター・パニック『ジョーズ』へのオマージュが随所に盛り込まれている。まずは、序盤、フィンのバーを襲ったサメの倒し方。バズがサメの口にエア・タンクを噛ませ、フィンがそのタンクを銃で撃って爆散させる。これは『ジョーズ』のクライマックスにおいて、マーティン・ブロディ署長が巨大鮫を倒した方法と全く同じである。

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 それから、終盤、マットとノヴァがヘリに乗って果敢にも竜巻へと向かっていくシーン。人喰い鮫の乱舞を目の当たりにしたノヴァは、このように発言する。「We're gonna need a bigger chopper!(もっと大きなヘリがいるわ!)」。これはもちろん、のほほんとした船上描写から一気に恐怖の深遠へと観客を引きずり込む『ジョーズ』のあの巨大鮫登場シーンでブロディ署長が呟いた「We're gonna need a bigger boat…!(もっと大きな船がいるぞ…!)」へのオマージュである。

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 あとは、まぁ、ノヴァがかつてサメに襲撃されたという過去のトラウマを語るシーンは、鮫狩りの名手クイントが一人語るシーンに重ねることができそうだ。とにかく、こういったオマージュの数々も本作の味わいの一つであり、総じていえば、本作は、やっぱり我々の“バカ映画”への愛は冷めやらぬ、ということを再度実感させてくれる良作なのである。

点数:57/100点
 このように本作は総じて真っ当な“B級映画”であり、紛うことなき“バカ映画”なのであって、個人的にはすごく良い作品だと思った。とはいえ、やっぱりおせっかいな輩は最低だし、健全な映画鑑賞者からすれば映画かどうかもギリギリというレベルの珍作には違いない。したがって、大手を振ってオススメはしないものの、これからバカ映画にチャレンジしてみようという人がもしいるなら、夏の終わりの思い出としてぜひ一度鑑賞してみてもらいたい。

<おまけ>
 本作にはちゃんと“テーマソング”がある。その名も『(The Ballad of) Sharknado』『ピラナコンダ』にもすごく素敵なテーマソングがあったけれど、TV映画っていうのはやっぱりこういうところが魅力的だよな。ちなみに、この曲を歌っているアーティスト名は“Quint(クイント)”というのだが、これもまた『ジョーズ』へのオマージュであろう。



(鑑賞日[初]:2016.8.23)






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Tag:サメ映画 バカ映画 ディザスター

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