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17
2016

[No.403] 君の名は。(Your Name.) <50点>

CATEGORYアニメ




キャッチコピー:『まだ会ったことのない君を、探している』

 まだこの世界は、新海を甘やかしてたいみたいだ。

三文あらすじ:東京の新宿区若葉に暮らす男子高校生、立花瀧(声:神木隆之介)と飛騨の山奥にある糸守町の女子高生、宮水三葉(声:上白石萌音)は、ある朝目を覚ますと互いの体が入れ替わっていることに気付く。いがみ合いながらも徐々に打ち解けていく瀧と三葉。しかし、三葉の暮らす糸守町は、1000年に一度の周期で地球に接近する彗星の墜落によって消滅する運命にあった・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 2016年8月26日から全国で公開され、日本中を席巻している本作『君の名は。』。“席巻”は少し言い過ぎかもしれないが、大ヒットしていることは間違いない。事実、筆者が鑑賞した回も、公開から既に2週間も経っているのに、しかも、21:30~という遅めのレイトショーにも関わらず、ほぼ満席という状況だった。客層は、主にカップル。ほとんど、カップル。そして、女性の2人組。少しだけ、一人で来た女性。そんな中、ど真ん中付近の席におっさん一人。こいつは相応の拷問であった。きっと周りの人たちは、孤独なおっさんを訝しみ、“誰そ彼?誰そ彼?”なんて囁きあっていたことだろう。

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 では、なぜおっさんが一人でうれしそうに劇場へ足を運んだのかと言うと、それはもちろん、本作に対して相当の期待を抱いていたからに他ならない。逆説的ではあるが、筆者は本作の監督である新海誠という男が大嫌いだ。筆者が彼を知ったのはもう10年くらい前の大学生の頃に遡るのだが、映画を観て感想を書くだけで楽に単位を取れる講義があるという甘い触れ込みに誘われた筆者は、そこで延々と『秒速5センチメートル』を観せられるという拷問を受けた。まぁ、早い話が、筆者は『秒5』が嫌いなのである。作品自体が不出来だったとかいうのとは少し違い、なんだか監督の甘ったれた性根みたいなところに腹が立ったのである。

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 しかし、そんな筆者も本作には並々ならぬ期待を寄せていた。正確には、公開後1週間で本作を観た周囲の人間たちから強くオススメされたのである。彼らが口々に言ったのは、「今回は辛気臭くないぞ。」という言葉だった。なるほど、あらすじを聞きかじるに、ある日突然体が入れ替わってしまった少年少女が徐々に関係性を深めていき、いつしか恋心と呼ぶべき感情が芽生え始めるが、そんなとき少女の住む町に隕石が落ちると分かる、なんとか少女を助けようとする少年は、物理的な距離、時間的な隔たり、立ちはだかる幾重もの障壁を乗り越え、そして、クライマックスでは各々の“名前”というギミックに、SF的な辻褄も物語的な情緒も、全てを乗っけて熱くぶちかます!と、そんな“エンターテイメント”を期待してもよさそうだ。

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 で、そういう意味では、まぁ概ね、あくまでも概ねだが、事前の期待を裏切られることはなかった。宛名の無いメールも無く、ぞんざいに扱われるメガネっ子もおらず、大枠では“エンターテイメント”として仕上げられている。三葉のパジャマ谷間チラやおっぱい揉み、自転車立ち漕ぎでのパンチラ、奥寺先輩(声:長澤まさみ)のスカート裂傷、からの「スカート脱いでください」、そして、オフショルダーの肩出しルックなどなど、エロ描写も充実している。

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 しかし、である。筆者としては、やっぱりこの新海誠という男は、生粋の甘ったれなのだと感じた。本作に限っては、映画を舐めていると言ってしまってもいいかもしれない。

 まずは、決定的なところから言いたいのだが、新海誠、タイムトラベルものを舐めるなよ。いわゆる“タイムトラベルもの”というのは、必ず“矛盾”が生じるジャンルである。俗に言う“タイムパラドックス”というやつだ。これは断言してもいいと思うが、この手のジャンルにおいて“完璧な作品”というのは存在しない。限りなく完璧に近い作品というものは存在するが、完璧は無い。だから、ある程度の矛盾は許す。しっかり考えた末、丁寧に糸を紡いだ結果での綻びならなんの問題もない。しかし、本作には決定的に杜撰な、タイムトラベルものを舐めているとしか思えない点がある。

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 つまり、あれよ。いやいや、カレンダー見たら3年ずれてるって分かるやん!っていうことよ。1週間に2~3日体が入れ替わっていたということは、隕石衝突までの間に瀧と三葉は1~2週間程度相手の生活を体験しているということになる。しかも、その間、特に瀧の東京での生活では、思いっきりスマホが使用されているのである。だったら、少なくとも三葉は一瞬で3年後であることに気付くはずだ。だいたい、三葉がなぜ瀧のスマホのロックを解除できたのかも釈然としないのだが、それはまぁこの際置いておこう。1日やそこらの入れ替わりならまだギリギリ納得できても、1~2週間過ごしてその時代の暦を認識しないというのは、いくらなんでも無理がある。そもそもこんなのは、“タイムパラドックス”とかいう以前の問題であり、製作陣がタイムトラベルものと真剣に向き合っていない証拠に違いない。

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 同じことが三葉の体に入った瀧にも言える。入れ替わりが突然終わってしまった後、瀧は三葉の町を探そうと必死に努力する。その際、彼は、なぜかシコシコと自らが記憶している町の風景をスケッチし続けるのである。いや、町の名前ぐらい知ってるやろ。だって、1~2週間もその土地の人として生活したんだから。高校の名前だっていい。神社の名前だっていい。固有名詞は全部忘れてしまう設定なんです!というのなら、JKが咀嚼した白米をうやうやしく祀る変態的な風習の残る田舎町程度の手がかりでもいい。糸守町を検索する上での効果的な方法は、他にいくらでもあるのではないか。

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 こういうことを言うと、たいてい「映画なんやからそんな細かいこと言わんと純粋に楽しんだらええやん」と反論される。実際、筆者の知人女性にも真っ先にそう言われた。その刹那、激昂したね、筆者は。逆だよ。真逆だ。映画だからこそディティールにはこだわらなければならない、と筆者は思うのである。映画は作り話である。特にSF作品は真っ向から天元を往く作り話だ。そして、その話を作っているのは、他ならぬクリエーターたち。もちろん、現実社会の常識、あるいは、明らかにその延長線上にあるギミックまでバカ丁寧に説明しろとは言わない。白米を噛みしだいたものが発酵して酒になる、だとか、そんな酒を神仏への貢ぎ物とする風習が残っている、だとか、その辺の設定に殊更の説明はいらない。本当にそんな地域があるのかもしれないしな。でも、物理的な身体の入れ替えが実は時間も跳躍していたという設定であったり、入れ替え時の記憶はどんどん忘れていってしまうという設定、こういった本作のSF的白眉とも言えるギミックに関しては、周到に作り込んで、ちゃんと説明する必要があると思う。

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 まぁ、別に本作は“SF映画”というわけではないんだよ、ということなのかもしれない。仮にそうだとしよう。本作における“SF”は、ただ単にその気のある人を少しワクワクさせるためだけの仕掛けでしかなく、本当に言いたいことは、空間や時間の距離を超えた人と人との繋がりみたいなものだとしよう。でも、それにしちゃあ、繋がりの土台の描写が希薄すぎやしないかい?

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 つまり、入れ替わりを観客に提示した後で始まる怒涛のダイジェストシーンである。ここは本来なら、まぁ本来というか一般的でベタなストーリーテリングなら、自分の生活をむちゃくちゃにされることに憤る両者が、やがて互いの良いところを知っていくというエピソードをしっかり描くべきパート。“身体の入れ替わり”という現象の性質上、瀧と三葉は、互いがどういった人間かということを本質的には知らないまま、それでも恋に落ちていくというキャラクターなのだから、なぜ恋に落ちるのかという部分の説得力は絶対に必要なんじゃないだろうか。それなのに、このある意味で最も大切な土台を描くべきパートが、ほとんどRADWIMPSのPVみたいな感じでお送りされていく。

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 なんだか、イケメン男子高校生と美人女子高生の運命が交錯すれば恋に落ちるのは当然なんだから、別に説明はいらないよね?と言われているようで不快だ。それはダメだよ、新海さん。そんな類型的な処理では、カタルシスの土台足り得ない。そもそも、新海誠という男は『秒5』のときからこの気があったんだよな。つまり、登場人物、特に主人公を極めて類型的に描くというきらいである。あたかも感情を抜かれたかのような主人公の佇まいは、もはや“記号的”と形容してもいいだろう。もちろん、この描き方が、逆に観客の共感を呼ぶという効果を生んでいるのかもしれない。先述した筆者の大学での授業では、筆者の友人女性が「主人公の感情の機微をしっかり描いていないのは、万人が自分を投影できるようにするためではないか」という感想文を書き、教授から誉められていた。でも、筆者はそのときからすごく釈然としなかったんだ。それは“甘え”だろう?映画は作りものだ。その主人公はクリエーターが作り出した架空の人物だ。だったら、教えてくれよ。あんたが産み出したこいつはいったい何が好きで何が嫌いで、いつ泣いていつ笑うのか。あんたが愛する主人公(やヒロイン)を俺たちも好きになるよう説得してみせてくれよ。

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 一応好意的に解釈するなら、まぁ、あくまでも筆者の妄想なんだけれど、ひょっとしたら新海誠は、体の入れ替えなんてやるつもりがなかったのではないかな。というのも、本作では、NTTドコモ代々木ビルが幾度となく印象的に描かれるからである。順に説明すると、まず、このNTTドコモ代々木ビルというのは、ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングに外観がそっくり。そして、このエンパイア・ステート・ビルディングというのは、1993年公開、トム・ハンクスとメグ・ライアン共演のロマンティック・コメディ『めぐり逢えたら』において、互いの顔も知らぬまま惹かれあう男女が初めて出会う場所として極めてアイコニックに登場する。また、同作の元ネタである1957年公開の『めぐり逢い』でも、同様にエンパイア・ステート・ビルディングがいわば“運命の待ち合わせ場所”として登場している。つまり、執拗にNTTドコモ代々木ビルを描写する本作は、本来的には『めぐり逢えたら』や『めぐり逢い』(または、そのさらにオリジナルの『邂逅』)にオマージュを捧げた作品なのかもしれない、ということである。

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 仮にそうだったとしたら、本作がこれ見よがしに描いている“体の入れ替え”は、正直蛇足である。特に、『めぐり逢えたら』においては、互いに顔も知らないのに恋に落ちた男女が“初めて出会う”というシーンが、クライマックスにして最高のカタルシス・ポイントだったからだ。まぁ、『めぐり逢い』ではエンパイア・ステート以前で男女が既に出会っているが、こちらは不倫ものでもあるから、本作の趣とは少し違ってくるだろう。そんなわけで、筆者は、新海誠は体の入れ替えなんていう突飛でありかつ古臭いギミックなんて使うつもりも無かったのに、初の製作委員会方式を採用したデメリットとしてゴチャゴチャと口出しされ、あげくやりたくもない体の入れ替えを盛り込んだため、そこの描写に手を抜いたのではないか、とやや好意的に解釈することにした。

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 とはいえ、他にも釈然としない部分はいっぱいある。日本の映画やドラマにありがちな“過剰な説明口調”とか。まぁ、実写映画ではないからある程度はオッケーなんだけれど、「涙…」とか別にはっきり言わす必要もないと思ったし、クレーターのふちで瀧くんが突如一人で叫び始めたときは、舞台劇が始まったのかと戸惑った。あとは、クライマックスで全力疾走する際は特別の突起がなくても転ぶ、というこれまた日本映画・ドラマの悪しきお決まりであったり、やっぱり「すきだ」はどう多めに見ても陳腐でダサいのではないか、とか、色々思うところはある。特に「すきだ」に関しては、何かしら前ふりを入れておいたほうがよかったんじゃないか。奥寺先輩とのデート時に三葉が瀧のスマホに仕込んでいた“女の子が苦手な瀧くんのためのリンク集”に「恥ずかしくても堂々と“好きだ!”と伝えましょう」と書かれているとかさ。

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 まぁ、筆者ごときがやいのやいのと騒いだとて、どうなるものでもあるまい。そもそも、“Alan Smithee”などという匿名性こそを本質とした名前を標榜する者が本作を語るとは笑止である。でもなぁ、やっぱりどうしても、こじゃれた“名”の部分のみが際立って、映画としての中身や本質といった“実”が疎かになっているように感じてしまう。まずはしっかりと土台を耕して、平らにする必要があったんじゃないか。新海さんはせっかく“誠”という名を有しているのだから、映画作りに対しても“誠実”であって欲しかったと、筆者は思ったのである。

点数:50/100点
 まぁ、本当はこんな些末な揚げ足取りなんて、本作の大ヒットの前では何の説得力もないだろう。嫌味ではなく、ヒットしている作品はおもしろいんだ。それに、本作を本当に評するのなら、監督が意識したという“3.11”との関連にも注目しなければならない。とはいえ、夜も更けてきたことだし、何より社会に不満を持ってしまった以上、筆者は耳と目を閉じ、瀧と三葉とは違って一人孤独に良い“夢”を見ようと思う。

(鑑賞日[初]:2016.9.9)










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Tag:劇場鑑賞作品 邦画 ディザスター 青春映画 タイムトラベル

2 Comments

T  

No title

オカルトマニアという設定によって友人Bが協力してくれる流れの自然さと、「この目で見た」という三葉のトンデモ発言に「見たのか・・・じゃあやるしかないな!」と返す場面はよかった

2016/09/17 (Sat) 05:36 | EDIT | REPLY |   

Mr.Alan Smithee  

Re: No title

テッシーが協力するところの説得力については完全に同意。
ただ、黄昏時終了後、作戦の内容を知らないはずの三葉がなぜそっこーで変電所に向かったのかは謎。

2016/09/19 (Mon) 12:48 | EDIT | REPLY |   

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