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2016

[No.402] スーサイド・スクワッド(Suicide Squad) <62点>

CATEGORYアメコミ




キャッチコピー:『史上最強の“悪カワ”ヒロインと10人の悪党たち』

 11人の優しい極悪人。

三文あらすじ:鋼鉄の超人“スーパーマン”が死去した後の世界。アメリカ政府の高官アマンダ・ウォーラー(ヴィオラ・デイヴィス)は、来るべき厄災への備えとしてあるチームを組織する。それは、死刑や終身刑となって服役している悪党たちを集めた前代未聞の特殊部隊タスクフォースX、通称“スーサイド・スクワッド(Suicide Squad)”だった・・・


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 アクション映画ファン、アメコミ映画ファンにとっては2016年を代表する期待の一本『スーサイド・スクワッド』。マーベルに後れをとるな!とばかりに始まった“DCエクステンデッド・ユニバース”の3作目(1作目:『マン・オブ・スティール』、2作目:『バットマン vs スーパーマン』)にあたる作品である。アメリカでは一月前の8月5日から公開され、空前の大ヒットを記録。その一方で、作品の内容に関しては、批評家やアメコミファンから燦々たる酷評を受けている(9月14日時点のRotten Tomatoesでは26%の低評価。)。これは中々不思議な事態だが、日本での公開初日である9月10日に鑑賞してきた筆者の感想としては、まぁそれも納得という感じであった。

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 まず、良いところとしては、ストーリーの明快さを挙げることができるだろう。本作の物語は分かりやすい。『バットマン vs スーパーマン』のような“ん?こいつは結局何がしたいんだ?”という疑問は比較的沸いてこない。ハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)はジョーカー(ジャレッド・レト)が大好きなビッチ、デッドショット(ウィル・スミス)は娘が大好きな暗殺者、彼らをメイン・キャラとした凶悪犯のチームが政府に強制され、人類を抹殺せんとする魔女エンチャントレス(カーラ・デルヴィーニュ)に戦いを挑み、ところどころでハーレイ・クインを救出しようとするジョーカーの横やりが入る。それぞれのキャラクターの行動原理は(良い意味で)ステレオタイプであり、特にブレることもなくみなその通り行動する。

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 また、プロットも極めてシンプルである。特筆すべきは、部隊が招集されてからのお披露目的ひとくだりが無いという点。スーパーヒーローものでは、主人公が特殊能力を得てからまずそのキャラクターや能力を端的に披露するためのワン・シークエンスがあって、その後クライマックスへと連なる本格的な敵に挑んでいくという構成がベタだ。しかし、本作では、結成された部隊の初陣が対ラスボスの作戦なのである。この構成に関しては個人的に一家言あるのだが、ストーリーをあっちゃこっちゃ移動させずどっしりとメインの作戦のみを描くという趣向は、広く色んな観客に分かりやすく観てもらう上での好判断だったと言えるだろう。ちなみに、本作のメイン・ミッションたる“要人救出作戦”は、ジョン・カーペンターの代表作『ニューヨーク1997』へのオマージュだと思われる。オマージュというか、プロットの借用かな。フル・アーマー状態のデッドショットを“隻眼”と捉えるなら、彼とスネーク・プリスキンとの類似性についても議論の余地がありそうだ。

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 それから、これはもはや改めて述べるまでもないが、やっぱり“彼女”が良い。グロテスクな天使。コケティッシュな悪魔。悪のカリスマ“ジョーカー”の伴侶“ハーレイ・クイン”である。演じたのは、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のナオミ役で一躍有名になった女優、マーゴット・ロビー。彼女にとって、本作のハーレイ・クインは、どう穿って見ても“ハマり役”と言わざるを得ないのではないか。予告編のバージョンによって同じシーンなのに彼女のショートパンツの丈が違う!なんてファンの間で話題沸騰だったように、大抵の男性、あるいは、女性ですら彼女のセクシーな魅力の虜となる。チームのリーダーであるデッドショットと並んで主役級の扱いもされており、バックボーンも割ときちんと描かれる。

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 あとは、やっぱりジャレッド・レトが演じた新生ジョーカーの話題性であったり、ユニバースの一環であることからくるワクワクであったり、まぁ色々理由はあるだろうが、端的に言えば、作品としてある程度の引きがあって、かつ、実際に観てみると比較的明快な構造だったため、ヒットしているのではないだろうか。

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 とはいえ、本作には悪いところもいっぱいある。というか、個人的に思った本作の一番悪い点は、皮肉にも“あんまり悪くない”というところだった。つまり、極悪人であり凶悪犯でありほとんど狂人の寄せ集めであるはずの“スーサイド・スクワッド”の面々は、総じてただの“人情集団”なのである。これは決定的にダメ。本作のように悪者が正義の味方として戦う系の話、いわゆる“アンチ・ヒーローもの”の肝というのは、悪人がゆえの“説得力”なんだと思う。より分かりやすく言うと、綺麗ごとを言わないということだ。純然たる“正義の味方”として存在するヒーローは、鉄壁の大義名分の下、正しいことを行い、そして、正しいことを言う。しかし、彼らが主張する“正しさ”は、ときとして“押しつけがましさ”になってしまうことがある。それを回避するための手段こそが“アンチ・ヒーロー”。他者の救済に対して大義名分を持たない彼らの行動原理は“合理性”なのであって、そこから導かれる大団円も当然“理由”ありきの合理的なものになる。それがカッコいいんだ。

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 しかし、本作の“アンチ・ヒーロー”たちは、クライマックスで突然「俺は仲間を見捨てない!」みたいなありきたりで陳腐な義理人情のセリフを吐き始める。これは本当に良くない。こいつら本当に悪人か?なんだかただの“同好会”みたいになっているではないか。別に“仲間のため”という行動原理がダメなわけではない。生粋の悪人たちがついさっき出会ったばかりの顔見知りのためになぜ奮起するのか、という“説得力”がまるで無いのである。

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 そもそも、公開前からせんぞ言われていたことだが、本作はウィル・スミスのヒューマン・ドラマに尺を割きすぎだ。彼が演じるデッドショットは、天才的というか超人的というか、もはや神がごとき凄腕のガンマンであり、なおかつ、極悪非道の殺し屋であるはずなのに、序盤から娘との絆をすっごくウェッティに描いていくため、全然“悪人”に見えない。言ってしまえば、彼は、子煩悩なダメ親父なのである。

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 そして、デッドショットのヒューマン・ドラマをガッチリ描いてしまったことからくる大問題は、デッドショットとハーレイ・クイン以外のキャラがほとんど描かれないという不備である。両者以外のメンバーは、もう本当に“お付きの者”くらいの存在感の無さ。こういうところが、やっぱりマーベルとの格の違いなんだろうな。マーベルのヒーロー集合もの、つまりは『アベンジャーズ』シリーズは、本当にキャラクターの交通整理が巧い。各ヒーローの特性をきちんと打ち出し、それぞれの魅力がちゃんと際立つ舞台を用意して、ばっちり見せ場を作る。『バットマン vs スーパーマン』のラスト・バトルでバットマンが完全なる“お荷物”になっていたことも記憶に新しいが、DCコミック側もこれからは各キャラクターの立て方というものにもっと専心した方がいいように思う(ちなみに、本作に限っては、いっぱい犯罪者を捕まえて珍しくちゃんと仕事をしているバットマンを見ることができる。)。

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 あと、マーベルとの比較という意味では、アクションシーンの昼夜にも注目すべきであろう。たいていのマーベル作品は、アクションシーンが分かりやすく、見ごたえがある。そこには、アクションの構成力だったり先述の“交通整理”だったり、まぁ色んな理由があると思うが、意外と重要なのは、時間が昼間という点だ。やっぱり、はっきり見えるというのは、けっこう重要。無自覚的であったとしても、くら~いシーンばかり続くと観客は微細なフラストレーションを蓄積していくものなのである。

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 ところが、本作では、メイン・ミッションがずーっと夜なのである。まぁ、『ニューヨーク1997』も夜だったのだけれど、本作はアメコミ映画でありブロックバスター作品なのであるから、最新のCG技術による大アクションシーンを心行くまでしっかり見たいという願いは、観客の大半に共通のものであろう。しかも、あろうことか魔女とのラスト・バトルを土煙というか霧というか、なんだか非常に霞んだ演出で見せてくるというに至って、観客のイライラも遂に閾値を越える。そういった点で、やはり本作の『ニューヨーク1997』的構成は少しまずかったのでなはいかな、と思う。仮にカーペンターへのリスペクトを捨てきれないにしても、やっぱりチームが組織されてから一発目のお披露目的ミッションを白昼でしっかり描くべきだったんじゃないだろうか。

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 また、『ニューヨーク1997』的一本道に終始した構成には悪いところがもう一つある。先ほどから何度も言及している通り、本作ではチームが結成されてからそっこーでメイン・ミッションが始まってしまうわけだが、チーム・メンバーの最低限のキャラクター紹介の時間は、どこかで設けなければならない。もちろん、メイン・ミッション中に上手いこと各キャラクターの見せ場を盛り込んでいくのが理想的だが、本作にはそれほどの力量が無い(まぁ、監督のデヴィッド・エアーは実力ある男だと思うが。)。というわけで、本作では物語が始まったばかりの序盤、フラッシュ・バックによってチーム・メンバーのキャラクターを紹介するパートが描かれることになる。

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 個人的に、これはまずかったんじゃないかなぁ、と思う。もちろん、各キャラクターはそれなりに魅力的で、映像はある程度スタイリッシュなのだけれど、その間、ストーリーが完璧にストップしているのである。これもアクションシーンの昼夜と同様、あまり明確かつ直接的に観客に訴えかける要素ではないのかもしれないが、ストーリー進行自体の爽快感というものが、映画には確かに存在する。ことにアクション映画の序盤なんてもんは、パッパパッパと風呂敷を広げる様こそが痛快と言ってもいいだろう。全体としてはバカ監督であるマイケル・ベイを筆者が愛しているのは、序盤の風呂敷広げに魅了されるからだ。

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 しかしながら、本作では、序盤で繰り広げられるキャラクター紹介中、物語が一切前に進まない。ストーリー上は、黒人のおばちゃんがずーっと晩飯を食っているだけだ。まぁ、ストーリーが止まっているからといって、別に映画的な論理性が壊れるとか作品のテーマがブレるとか、そういうわけではないけれど、やっぱり期待のブロックバスターである以上、序盤の掴み的シークエンスでこちらのハートを鷲掴みにしてほしい。そういった意味でも、やはりチーム集結後、各キャラクターの紹介も兼ねた爽快な白昼のワン・ミッションを入れた方が良かったように思う。

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 まだまだ他にも言いたいことはいっぱいある。おばさんがやってきたよ、でタイトル・バックとはいったいどういう了見だ!とか、エル・ディアブロ(ジェイ・ヘルナンデス)の能力解放は最後の最後の一発まで取っておいた方が良かったんじゃないの?とかさ。あと、チームの中でも抜きん出てその出生が気になるキラー・クロック(アドウェール・アキノエ=アグバエ)についてほとんど触れないなんて酷い!とか、最愛の夫の魂が収まっている剣に切り伏せたチンピラたちの魂をどんどん送り込むなんてカタナ(福原かれん)は何を考えているんだ!とか、キャプテン・ブーメラン(ジェイ・コートニー)の“ヌイグルミ・フェチ”の設定は結局何の伏線でもなかったじゃないか!とか、スリップノット(アダム・ビーチ)の扱いは…まぁあれでいいよ、とか。まぁ、とはいえ、文句ばっかり言っていても始まらない。ユニバースはまだまだこれからなんだから、筆者も彼ら“義理人情部隊”のような優しい気持ちで、今後の続編を待ちたいと思う。

点数:62/100点
 随所に粗の見える作品ではあるものの、まぁ“祭り”としては十分に楽しい“DCエクステンデッド・ユニバース”最新作。ちなみに、エンドロールの後に同ユニバースの次回作『ワンダー・ウーマン』の予告編が流れるので、途中で席を立たないように。予告編自体は大したものではないけどな。とはいえ、ガル・ガドットの凛々しき美貌と、そして、なんといってもハンス・ジマーのあの楽曲!今から非常に楽しみである。

(鑑賞日[初]:2016.9.10)
(劇場:TOHOシネマズ西宮OS)










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Tag:劇場鑑賞作品 後天的ヒーロー

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