27
2016

[No.408] ボーン・アルティメイタム(The Bourne Ultimatum) <75点>

CATEGORYアクション




キャッチコピー:『最後通告。』

 Bourne was born to TAKE IT, PARK IT.

三文あらすじ:CIAの“トレッド・ストーン作戦”によって作られた人間兵器ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)は、ある任務がきっかけで記憶を取り戻し、CIAを離反。これにより同作戦は放棄されるが、イギリスの新聞記者サイモン・ロス(パディ・コンシダイン)がこの作戦の内容を世間に暴露しようとする。ロスがCIAに暗殺される直前、“トレッド・ストーン作戦”の発展版“ブラック・ブライヤー作戦”の存在を聞き出したボーンは、またしてもCIAに追われながら、全ての真相に迫っていく・・・


~*~*~*~


 ジェイソン・ボーンの“自分探しの旅”もひとまず最終章。本作『ボーン・アルティメイタム』は、アイデンティティーを持たぬ一人のスパイが有終の美を飾る作品として、そして、監督であるポール・グリーングラスの魅力が炸裂した作品として、中々の秀作である。もちろん、前回、前々回と述べたように、筆者的なボーンの物語は既に1作目で終了しており、第2作及び本作は単なる“蛇足”ではあるのだが、それでも本作は、1作目が持っていたあるポイントを抽出し極限まで誇張した一種の完成形になっている。

bourneultimatum1.jpg


 そのポイントとは、ずばり“テキパキさ”である。そもそも、本シリーズ1作目からの大きな魅力は、最新鋭の装備と巨大な組織を有するCIAの包囲網を、着の身着のまま行き当たりばったりのボーンが実に華麗に、かつ、淡々とかいくぐっていく様であった。この“淡々と”というところがけっこう重要。この場合は別に“冷徹に”という意味ではなく、どちらかと言うと“真面目に”という感じ。つまり、007のような「おりゃー!」「うりゃー!」という到底スパイには見えない非実用的なアクションではなく、実直で効率的で、ある種“事務的”とも形容できそうなアクションや段取りが気持ちいいのである。

bourneultimatum2.jpg


 で、この“テキパキさ”を演出する手法として、ポール・グリーングラスお得意の早いカット割りが抜群に効果を発揮している。肉弾戦時には、“ワン・アクション、ワン・カット”を超えた“ワン・ムーブ、ワン・カット”で以て、極めてテキパキした戦闘シーンが紡がれていく。それはもう“ホイ!ホイ!ホイ!はい次!ホイ!ホイ!ホイ!はい次!”という感じ。まぁ、007に比べれば画的に“地味”ではあるのだが、逆にリアルだし、本当に強そうに見え、アクション・シーンの説得力としては相当なものを実現できている(お馴染みの“文房具アクション”も楽しい。)。

bourneultimatum3.jpg


 また、圧巻なのは、ジャーナリストであるロスをボーンが誘導する駅構内でのチェイス・シークエンス。ここは抜群に良い。まず、CIAがボーンを追い詰めていく段取りの快感を楽しみ、その上でその包囲網を無駄なくテキパキと突破していくボーンの手腕に舌を巻く。しかも、ボーン自身が直接CIAと対峙するのではなく、携帯からの指示のみでど素人を操っているというところがニクい。一介のジャーナリストですらボーンの手に掛かればアメリカが誇る諜報機関を煙に巻けるというスゴさ(もちろん、CIAのドタバタぶりはかなり“映画的”ではあるが。)。

bourneultimatum4.jpg


 ところが、ボーンのテキパキさこそが魅力であるという性質上、本シリーズには、ボーンを手負いにできないという制約がある。一応、2作目ではボーンがけっこう重めの傷を負う展開があるが、それ以外は、ジェイソン・ボーンが受傷するシーンがほとんどない。負傷して動きが鈍ってしまえば肝心の“テキパキ”が出せないのだから、これはある意味で仕方のないことなのだが、そうは言っても、主人公の“劣勢感”は物語の起伏としてある程度必要だ。この点、2作目と本作では、ボーンの代わりに自動車をボロボロにするのである。2作目ではタクシー、本作ではパトカーに乗ったボーンが街中で壮絶なカー・チェイスを繰り広げるシーンがあるのだが、そのどちらもで彼の乗る車はこれでもか!というほどボロボロになる。確かによくよく考えてみれば、カー・チェイス中、観客は追っ手と逃げ手が乗る車自体をキャラクターとして認識していると言ってもいいから、車をボロボロにすることで十分に“劣勢感”は演出できるんだ。それでいて、結局はほぼ無傷で勝利するボーンを見せつけ、彼のただ者ではない強さ感も損なわない。これは中々巧い手だと思った。

bourneultimatum5.jpg


 そもそも、ジェイソン・ボーンの物語は、ハナから車と縁があった。運命の女マリーとの初対面は「(2万ドル)持っていく?」「乗っていく?」だったわけだし、そのマリーが死んだ際も自動車の運転中だった。言ってみれば、ジェイソン・ボーンという男は、生まれ変わってからずっとカー・チェイスしているようなせわしない人生を送ってきたわけで、そんな彼が一応とはいえいったん停車する完結編として、本作は申し分のない出来だったのではないだろうか。余談だが、2作目で車中のマリーが狙撃され絶命する展開は、『女王陛下の007』へのオマージュなのかもな。スパイが真剣に愛した女が、車中で、主人公のまさに傍らで銃殺される、という点において、同作のラストと2作目のマリー死亡シーンは共通している。

bourneultimatum6.jpg


 あと、というのも、本シリーズ共通のキーアイテムであろう。1作目において、ボーンは海を漂っているところを発見された。彼の新たなる人生は、まるで赤ん坊のように水の中で始まったのである。無事にアイデンティティーを見つけた彼は、しかし、再び赤子に戻されてしまう。それが、マリーが死亡する川の中のシーンだ。そして、本作ラスト。ジェイソン・ボーンとしての自らの出生の秘密を解き明かした彼は、1作目開始時点と同様、背中に銃弾を受けて水中に没する。しかし、彼は、1作目のときのように無力ではない。2作目のときのように絶望してもいない。しっかりと自分の手足で泳ぎだす彼の姿は、デイヴィッド・ウェッブ aka ジェイソン・ボーンが、今度こそ自我を持った存在として生まれ変わった象徴であろう。こういうところも巧い。

bourneultimatum7.jpg


 巧いで言えば、もう一つ。本作冒頭は、時系列的に前作終盤から始まる。言ってしまえば、前作ラストの“焼き直し”をしているわけだが、本作は単なるリピートからの一工夫がおもしろい。まぁ、モスクワのシーンはほぼ焼き直しであるが、その後のパメラ・ランディ(ジョアン・アレン)のオフィスでのシークエンス。オフィスのパメラを監視しながら電話を掛けたボーンが、最後に「少し休め。顔が疲れている。」と言ってすかさずテーマ・ソング、というのが、2作目の見事な終幕だった。本作では、実はこのくだりが単にボーンとパメラ2人だけの会話でなく、CIA中がアタフタしているシークエンスの一環だったことが明らかになる。しかも、パメラがボーンに伝えた彼の誕生日が、実は本作クライマックスの舞台を示す暗号だったというギミック。基本的に筆者は前作のシーンを続編で異なる方向に再解釈してしまうことに反対しているのだが、本作に限っては、全く以て前作の趣を壊さない極めて秀逸な趣向だと感じた。

bourneultimatum8.jpg


 このように、ボーン・シリーズ一応の最終章として抜群の出来栄えと言える本作であるが、個人的には、やっぱり納得しかねる部分も多々ある。最たるものは、当然、マリーにまつわるエトセトラ。こともあろうに、本作では、シリーズ皆勤賞のニッキー・パーソンズ(ジュリア・スタイルズ)をマリーとオーバーラップするキャラクターに据え、あまつさえ、ニッキーとボーンの過去の恋人関係まで匂わせるのである。ニッキー曰く、「だって、あなた、“全部”忘れているんだもの…。」 いやあああああああ…。

bourneultimatum9.jpg


 ダメダメ。そういうことをされると、そっちが気になってその後の話が全く頭に入ってこない。でも、確かに、過去の自分を探すっていうのは、そういう“副作用”もあるわけだよな。最新作『ジェイソン・ボーン』の予告編を見ると、まぁ写真だけの登場なのかもしれないけれど、ちゃんとニッキーが映っている。恐いなぁ、ニッキーだけじゃなく次々とボーンの昔の女が湧いて出てきたりしたら。ボーンにはずっとマリーがいるのだから、アクションだけでなく女関係もテキパキと清算していってほしいものである。

点数:75/100点
 2作目から始まったジェイソン・ボーン“新章”の完結編としては、文句なしの秀作。とはいえ、やっぱり“蛇足”の延長ではあるだろう。次回は、足どころか蛇からムダ毛が生えてきたという噂の番外編『ボーン・レガシー』の感想を書こうと思う。

(鑑賞日:2016.9.22)










ボーン・アルティメイタム [DVD]

新品価格
¥960から
(2016/9/24 00:20時点)


The Ultimate Bourne Collection [Blu-ray] [Import]

新品価格
¥5,920から
(2016/9/24 00:20時点)


テキパキ!時間上手になりました! 頭のモードを切り替える22の方法

新品価格
¥1,080から
(2016/9/24 00:21時点)


昔の女

新品価格
¥540から
(2016/9/24 00:22時点)



関連記事
スポンサーサイト

Tag:男には自分の世界がある スパイ大作戦

0 Comments

Leave a comment