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2016

[No.409] ボーン・レガシー(The Bourne Legacy) <52点>

CATEGORYアクション




キャッチコピー:『ジェイソン・ボーンは氷山の一角に過ぎなかった。』

 Aaron was born to be ADDICTED.

三文あらすじ:最強の暗殺者を生み出すCIAの極秘プログラム“トレッド・ストーン計画”と“ブラック・ブライアー計画”。その最高傑作として生み出されたスパイ“ジェイソン・ボーン”は、失った記憶を追い求めながら、自身の人生を大きく狂わせた同計画を白日のもとにさらそうと、CIAとの戦いに挑んでいた。その裏で、ボーンに匹敵する能力を秘めた暗殺者アーロン・クロス(ジェレミー・レナー)を巻き込むようにして、さらなる戦いと陰謀が動き出していく・・・


~*~*~*~


 クールでストイックな“スパイ像”とキュートでスウィートな“マット・デイモン萌え”を打ち出し、世間を熱狂の渦に巻き込んだ“ボーン・シリーズ”。第3作にて一応の完結を見たシリーズの続編、というか、いわば“番外編”のような形で製作されたのが、本作『ボーン・レガシー』である。

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 監督は、“ボーン・シリーズ”3作目までの全作に渡って脚本を務めてきたトニー・ギルロイ。なんでも、最初は前作までと同様、マット・デイモン主演、ポール・グリーングラス監督での第4作が構想されていたらしい。しかし、マット・デイモンが「いや、もう俺はやらない。」、あるいは、「もう俺に構うなって!」とそっぽを向いてしまい、ポール・グリーングラスも「マット・デイモンがやらないならこのシリーズの意味がない。」という真っ当な正論を吐き捨てて去ってしまったとのこと。そんなすったもんだの末、ポール・グリーングラスに代わる監督として話が回ってきたのが、トニー・ギルロイであり、マット・デイモンに代わる主役として担ぎ上げられたが、今や鷹の目の射手“ホークアイ”としてお馴染みのジェレミー・レナーだったわけだ。

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 まぁ、世間の評価は、公開前から決して良くはなかったと記憶している。そりゃあ、“旧3部作”の肝っていうのは、第2作から始まったポール・グリーングラス演出と、そして何を置いてもマット・デイモンの魅力だったのだから、その2人が抜けてしまった続編に期待を持つ方がバカというものだろう。特に、マット・デイモンのストイックさやキュートさが持つパワーは絶大だった。ポール・グリーングラスの言う通り、マット・デイモン抜きではやる意味がないのである。実際、本作公開時、筆者の周りで最も多く聞こえた感想は、「おい、“ボーン”関係ないやん!」であった。でもね、そんなことはハナから分かり切っていたんだよ。だから、筆者は、ここで敢えてジェレミー・レナーの悪口を言うようなことはしない。マット・デイモン亡き後の重責を、彼は可及的見事に切り抜けたと言ってあげてもいいのではないだろうか。

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 筆者が感じた本作の不満を一言で言うと「なんかダセェ。」ということになる。まず、主人公を始めとする“改造スパイ”たちは、みな定期的な薬物接種がないと体力及び知力を維持できないという“後付け設定”がかっこ悪い。原作にある設定なのかもしれないけれど、そんなこと前作まででは一言も言っていなかったじゃあないか。だいたい、前作までの決定的な魅力というのは、マット・デイモンがテキパキ頑張るというところにあったのである。だからこそ、前作まででは、ジェイソン・ボーンの“フィジカルな枷”というものを極力排した展開運びがなされていた。それなのに、本作では、主人公が常に薬切れを懸念するという体たらく。ストーリーだって、前作までの“自分探し”ではなく、単なる“薬探し”になっている。おまけに、薬をブルーとグリーンに二分した意味が全く無いという杜撰な設定。まず以て入口からダサいのである。

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 別に“薬探し”をあくまでもサスペンス上の引っ張りに使うのであればまだいいだろう。しかし、本作は、全部“薬探し”なのである。スパイが薬を探して美女を問い詰め、薬を求めてその美女と一緒にフィリピンに飛び、そこで薬を得て(正確には薬に頼らなくても良い体を得て)、マニラの町をぶち壊して洋上に逃げる。これだけの話。ジェイソン・ボーンのようなメンタル面でのドラマは極めて希薄である。まぁ、一応好意的に解釈するなら、薬を“枷”に見立てて主人公の“自由”を演出しているのかな、とは思うが、いまいち上手くいっているとは思えない。おまけに、主人公が薬いらずになってからのクライマックス的アクションが無駄に長い。“薬探しの旅”はもう終わっているんだ。したがって、本作のお話も既に終わっている。ストーリー的に何の進展も無い“ただのアクション”を長々と続ける様は、比較的スピーディなバイク・チェイスであるにもかかわらず、どこかダラダラした印象を抱かせる。こんなのは、本シリーズの魅力であった“テキパキさ”と対極のものであって、やはり上手くない。ヒロインにヘルメットを被せ、主人公にサングラスをかけさせるチェイス・シーンの始まり方も、「さぁ、ここからはスタントマン全開で行きますよ!」と宣言しているようで、かっこよくない。

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 “テキパキさ”が無くなったと言えば、本作では、これまた本シリーズの魅力であったCIAと主人公との“テキパキ合戦”が本当に下手。前作までなら、CIAが最新機器と数の論理で以て主人公をテキパキと追い詰めていくが、しかし、主人公がその上を行くテキパキさで逃げおおせるという構成が多用されていた。ここがかっこよかったのである。CIAはスゴいけどボーンはもっとスゴい。これが“ジェイソン・ボーン”というキャラクターの説得力だったわけだ。しかし、本作では、CIAが後手に回りすぎ。口封じし損ねた博士の家に刺客を送り込めー!逃げられた?あのアーロン・クロスと一緒?よし探せー!監視カメラだ、衛星だ!車、見つけました!でも、本人たちはいません!博士、見つけました!でも、既に国外に出た模様!薬を製造しているフィリピンの工場だ!あ!もう侵入された後でした!……全体的にそんな感じで後から後から追っていくだけの展開が続くのである。これがすごくダサい。プロフェッショナルさえも翻弄する真のプロフェッショナルという前作までの魅力が、全く感じられない。

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 それから、本作を観た万人が“ダサい”と感じる一番のポイント、それは、クライマックスで登場する最強の暗殺者“LARX-03”(ルイ・オザワ)のカッコ悪さであろう。彼は本当に“鳴り物入り”という感じで投入されるのだが、まずこの鳴り物の音がけっこう大きい。“トレッド・ストーン”も“ブラック・ブライアー”も凌ぐ最強の暗殺者…遂にヤツを出すしかないのか…的な煽りで登場する。その割に、取り急ぎ彼がする一番初めの行動は、警察署前での張り込み。つまり、自分ではアーロンの居場所を割り出せないため、指名手配写真を見た市民からの情報で出動する警察の後を付け、アーロンのところまで導いてもらおうというわけである。そんなヤツは、そもそもスパイとして基礎からやり直すべきではないか?

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 まぁ、とにもかくにも、まんまとアーロンのねぐらを突き止めた彼は、とりあえず野次馬にまぎれて状況を見守る。あぁ、一介の警察を華麗に巻いたアーロンの逃げる先を周到に予測し、奇襲をかけることで汚名を返上するつもりなのだな、と思ったあなたは甘い。アーロンが逃げ出した後、既にもぬけの空の部屋にノコノコと入っていった彼は、そこで残っていた警官に見とがめられ、なぜかその警官を蹴り倒し、なんとそのまま自分も追われ始めるのである。いや、なんじゃこりゃ!コメディか! その後もバッコンバッコンと暴れまわるばかりで全く“最強の暗殺者”らしさを見せてはくれず、アーロンとバイクで並走するラスト・シーンでは、アーロンが運転するバイクの後部座席に乗るヒロインに蹴っ飛ばされ、柱に激突して死亡するという、なんともマヌケな有終の美を飾るのであった。演じるルイ・オザワ『プレデターズ』でハンゾーを好演していた男だからあまり悪く言いたくないのだが、それにしたっていくらなんでもダサすぎるだろう。

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 そんなわけで、本作の良かったところと言えば、ヒロインであるマルタ博士を演じたレイチェル・ワイズの可愛さだけなのではないかと思う。IMDbのトリビアコーナーには、“アーロンが鏡に書いた「No More(もう追うな)」というメッセージは、マルタが偽名として使った「Monroe(モンロー)」のアナグラムである”と書かれているが、それも、うん…だから?という感じだしなぁ。ちなみに、同コーナーには他にも、“本シリーズはこれまで『The Bourne Identity』、『The Bourne Supremacy』、『The Bourne Ultimatam』とアルファベット順に並んでいたのに、本作『The Bourne Legacy』によってそのパターンが損なわれた”という“トリビア”が載っているのだが、これには笑ってしまった。これも、だから?という類の話なのだが、あまりにもくだらなすぎて「だからなんやねん(笑)!」と突っ込みたくなる“ボケ”の域に達している。よく考えてみれば、このトリビアは、本編以上におもしろかったかもしれない。

点数:52/100点
 前作の感想で、筆者は、本作を“蛇から足どころかムダ毛が生えてきたような作品らしい”と形容したが、いざ見てみるとムダ毛が生えたどころの騒ぎではなかった。無意味な蛇足に留まらず、前作の尊厳すら貶めかねないダメな続編。言ってみれば“蛇から牙を抜いて柿の種を詰めたような蛇足作品”であろう。そんな本作に対しては、先述した不満以外にも、例えば、ちょっとフィリピン人をバカにしすぎではないのか、であったり、LARX-03のマヌケっぷりも勘案するなら結局アジア人全体を見下しているんじゃないか、といった文句もあるのだが、アーロンも「No More…」と言っていたことだし、今回はこの辺で止めておこうと思う。

(鑑賞日[初]:2016.9.27)










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Tag:男には自分の世界がある スパイ大作戦 ダメな続編

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