[No.418] ラ・ラ・ランド(La La Land) <86点>





キャッチコピー:『夢をみていた』

 We'll Always Have Los Angeles.

三文あらすじ:何度もオーディションに落ちてすっかりへこんでいた女優志望の女性ミア(エマ・ストーン)は、ピアノの音色に導かれジャズ・バーに立ち寄る。彼女はそこで売れないジャズ・ピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会うが、その第一印象は最悪なものだった。それからしばらくの後、ミアはあるパーティ会場のプールサイドで不機嫌そうに80年代ポップスを演奏をするセバスチャンと再会し・・・


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 先日2/26(日本時間だと2/27)に授賞式が行われた第89回アカデミー賞において、まさかまさかの作品賞非受賞となった本作『ラ・ラ・ランド』。しかもしかも、プレゼンターが間違って「作品賞は『ラ・ラ・ランド』!」と発表するなんていう前代未聞の珍事が発生したもんだから、世界中の映画ファンはみな「な・な・なんと?!」と目を丸くしたわけである。

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 さて、さっそくだが、本作を観た筆者はこのように感じた。これはまさに『カサブランカ』エピソード0”だ、と。前提として、本作では、1942年公開の映画史に残る名作『カサブランカ』について、度々言及される。ミアの自室にはイングリッド・バーグマンの特大ポスターが貼られているし、ミアが働いているワーナーのスタジオ内カフェの向かいの窓は、同作でハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマンが使用したあの窓だ、と語られる。これに合わせて、セバスチャンはミアに「君のボガード(つまり、彼氏)は何て言う名前だったっけ?」と問うたりするし、終盤でミアが挑む大作映画の舞台たるパリは、『カサブランカ』でリックとイルザが出会い、忘れられないひとときを過ごした運命の場所。同作のクライマックスにおいて、夫と共にイルザを逃がすため、リックが「We'll always have Pris.(俺たちにはパリの思い出がある。)」と言う名シーンは、余りにも有名だ。もっと言うなら、ミアがオーディションを受ける大作映画は、前もっての脚本は無くて毎日その場でその日に撮るシーンの脚本を作るんだ、と語られるが、これなんかはそのまんま『カサブランカ』の制作現場を意識した設定であろう。また、最後に出る「The End」の字体も『カサブランカ』そっくりだった気がする。

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 そんな『カサブランカ』オマージュたちが見事に結実するのは、もちろんラスト。すなわち、パリに旅立ってから5年が経ち、セバスチャンでない男性との結婚を経て子供まで設けたミアが、夫と共に偶然セバスチャンの経営するバーを来訪するシークエンスである。ここはつまり、『カサブランカ』の冒頭と同じシチュエーションなんだよな。かつて真に愛し合った恋人たち。明確な離別の意思表明無きまま違う道を歩んできた両者は、運命のイタズラによって再び出会う。男はバーを営んでいて、女は新しい伴侶に寄り添っている。二人だけの思い出の曲が、彼らの封印した過去を呼び覚ます。『カサブランカ』の冒頭も本作のクライマックスも、どちらもそんな感じである。

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 もちろん、ディティールをつぶさに観察していけば、両作の趣はことごとく違う。そりゃあ、かたや戦時中に制作された白黒の純恋愛映画、かたや2016年に制作された極彩色のミュージカル映画なのだから当たり前だ。でも、作中これ見よがしに配置された『カサブランカ』のオマージュから推して量れば、セバスチャンとミアはまさに現代版・L.A.版のリックとイルザだということが理解されるだろう。さらに、希望的憶測に基づいた邪推を推し進めるなら、本作終了後、セバスチャンとミアはさながらリックとイルザのように再びかつての恋を燃え上がらせ、あたかも『カサブランカ』のようなめくるめくロマンスに立ち向かっていく、という展開も予想し得る。まぁ、イルザとは違いミアには子供という枷が設定されているし、ラストでセバスチャンが見せたあの最高の笑顔と頷きを台無しにするなんて愚の骨頂であるから、両者は本作以後もそれぞれの道を歩み続けると考えるのが正解ではあろう。本作ラストは、まさに"美しい友情の始まり"なのである(思えば、ゴリゴリの恋愛映画にも関わらず、セバスチャンとミアのベッドインが一度も明確に描写されなかったという事実にも、何らかの意図があるのかもしれない。)。

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 その他、映画的な技巧の部分については、今さら筆者がとやかく言うなどそれこそ愚の骨頂であるからやめておく。本作が未だかつてないほど各国の映画賞を総ナメにしたということは、既に誰もが知るところであろう。で、あるにも関わらず、本作は映画界最高の権威であるアカデミー賞において、作品賞を逃した。これはなぜか。その正解を提示することなど、素人映画鑑賞者である筆者には到底不可能なので、ここではアカデミー賞の採点方式について、かいつまんで述べておきたいと思う。

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 まず、作品賞を除く各賞では、アカデミー会員の内、それぞれの分野のスペシャリストによる投票が行われる。主演男優賞なら俳優たちが投票し、撮影賞なら撮影監督たちが投票する、という具合だ。最優秀外国語映画賞なんかも、そのための選考メンバーというのが決まっている。これに対し、作品賞は、それらスペシャリストたち全員をひっくるめたアカデミー会員全員の投票によって決せられるのである。作品賞に投票する際、アカデミー会員はその年の全ノミネート作品を1位から順にランキングする。今年なら全9作がノミネートされていたから、アカデミー会員たちは、1位から9位までの順位付けを行って投票したわけだ。その結果、1位に挙げた者の人数が全会員数の過半数を獲得した作品が、晴れて作品賞の栄冠を手にすることになる。

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 しかしながら、一発の投票では過半数を獲得する作品が無い、というパターンだってある。その場合は、再投票を行うのではなく、次のような手順を踏むことになる。まず、1位に挙げた人数の最も少なかった作品を、その作品を1位に挙げた人のランキングから除外し、2位だった作品を1位に繰り上げる。その上で、再び全員のランキングを合算し、以降、1位に挙げた人数が過半数となる作品が出るまで、同様の操作を続けるのである。

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 こういった仕組みを採用しているもんだから、アカデミー賞においては、結局はまんべんなく2位から3位あたりにランクインしていた作品が、結果として多くの1位票を獲得する、という事態がしばしば起こる。圧倒的なセンスとエンターテイメント性で多くの映画ファンを絶賛に駆り立てた本作が受賞を逃し、完成度は折り紙つきながらも地味な作品だなぁと思われていた『ムーンライト』が受賞に至った背景には、そんな事情もあるのである。まぁ、アカデミー賞にはアカデミー賞なりに、全ての作品が可及的平等に評価されるシステムなのだ!という自負もあるようだが、映画ファンたちの熱狂を素直に反映しづらいという点では、そろそろ見直してもいい仕組みなのかもしれない。特に今回に関しては、発表時のミスも重なったため非難ごうごうだそうだ(とりわけ情報の早さに命を懸けている映画情報ブログの運営者たちは、自身の勇み足を棚にあげて怒り狂っている。)。

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 ま、いいさ。"権威ある賞"なんて取っても取らなくても、我々が劇場で感じた興奮にはさして影響しない。筆者を含め、本作を傑作だと感じた人たちは、今回の非受賞にあまり落胆せず、「俺たちにはL.A.の思い出がある…」なんて、訳知り顔でうそぶいておけばいいのである。

点数:86/100点
 古き良き映画たち、特に『カサブランカ』への愛情と尊敬をひしひし感じる傑作ミュージカル。もっとも、鑑賞後、耳をそばだてていると、「泣くと思ったけど全然泣かへんかったなぁ」といった不満や「隣の人泣いてたんやけど、泣くとこあった?」といった疑問が漏れ聞こえてきた。映画の評価というものは、すべからく"何を期待して観るか"に左右されるのであって、本作に関しては、例えば"感涙必至の比類無き傑作恋愛ドラマ"などをイメージすると肩透かしを食らうだろう。本作のストーリー・ラインは驚くほどにベタで、言ってしまえばありきたりだ。本作の本質というのは、実はストーリー・ラインではなくて、ストーリーの上に乗っかった各種技巧の妙であったり、ストーリーの奥にある古き良き映画への愛であったりするのだと、筆者は思うのである。

(鑑賞日[初]:2017.3.3)
(劇場:TOHOシネマズ梅田)


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Comment

  • yaman
  • URL
No title

ち・ち・ちんぽがかゆいのはかぶれたんか
そうか

  • T
  • URL

店名がチキン&スティックじゃなくなってるやん。とか言ったらセブは「そんな店誰も来ないさ。」って言うんやろな。

  • Mr.Alan Smithee
  • URL
Re: No title

君は何を言っているんだ

  • Mr.Alan Smithee
  • URL
Re: タイトルなし

間違いなく、

寸分違わず、

そう言うでしょうね。

  • centaurus-no.1
  • URL
うまい!

はじめまして。
高得点のセンス良いし
文章はうまいし
素晴らしい!

  • Mr.Alan Smithee
  • URL
Re: うまい!

ありがとうございます!

本作のようにおもしろい映画はなるべくおろしろく、そうでもない映画はそうでもなく、そんな感じで今後も書いていきます。

評論ではなく感想ですから、そんな感じで頑張ります!

今後ともどうぞよろしく!

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