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2017

[No.420] パッセンジャー(Passengers) <58点>

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キャッチコピー:『乗客5000人 目的地まで120年 90年も早く 2人だけ目覚めた 理由は1つ―。』

 Have a nice LIFE.

三文あらすじ:未来の地球、5,000人の乗客(Passengers)を乗せた宇宙船アヴァロン号が、人類の新たなる居住地“ホームステッドⅡ”を目指し120年の旅に出発した。しかし、冬眠装置で眠る乗客の中で、なぜか2人の男女、ジム・プレストン(クリス・プラット)とオーロラ・レーン(ジェニファー・ローレンス)だけが到着から90年も早く目覚めてしまう。新天地を見ることなくその生涯を終える絶望の中、2人は次第に惹かれていくのだが・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 主演俳優に『ジュラシック・ワールド』と『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で一躍世界のトップスターに躍り出たクリス・プラットを、主演女優に『ハンガー・ゲーム』シリーズでこれまた一躍世界のトップ女優にのし上がったジェニファー・ローレンスを迎えたSF大作が、本作『パッセンジャー』である。個人的には、嫌いになれない作品であった。しかし、世間ではきっと激怒している人がいっぱいいるだろう。

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 それはなぜかというと、ひとえに詐欺まがいの宣伝のせいである。つまり、本作の肝というのは、たった一人目覚めてしまった主人公が、あまりの寂しさから見ず知らずの女性を無理矢理起こしてしまう、という点にある。目的の惑星まではまだ90年もあり、なおかつ、再度冷凍睡眠状態に復帰する術が無い以上、主人公たるジムという男は、ヒロインの人生を奪ったと言っても決して過言ではない。まともな観客が有する価値観からすれば、それは絶対の禁忌であり、そんなことをしてしまった真正のクズ男がSF大作のヒーローになるなんてことは、まずあり得ない。まぁ、映画好きからすれば、設定の時点で既に通常の物語論を逸脱しているそんな作品がいったい全体どんな結末を迎えるのか、興味が無いと言えばウソになる。

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 とはいえ、テレビCMを見て主演の美男美女に興味を持ち、宇宙版『タイタニック』のようなイメージで鑑賞に臨んだ通常の観客たちは、本作の突飛な展開をどう思うだろう。そこにあるのは、極めて変則的ないわば"正義無き恋愛"であり、逆にキャッチコピーにも語られているような"彼らだけが目覚めた理由"なんてもんは無い。たまたまの事故で男が目覚めてしまい、一目惚れのストーカー状態で勝手に自分の意中の女性を巻き込んだだけだ。まぁ、それでただちに万人がブチ切れるとも思わないが、それでもたいていの観客は「これはバカ映画ではないか」と感じるのではなかろうか。

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 もちろん、設定がぶっとんでいるからと言って、それだけで作品がバカ映画になるわけではない。主人公としては異例とも言えるマイナスのスタートからしっかりと物語を紡ぎ、最終的には感動の結末を迎える可能性もある。しかしながら、本作に限ってそんな期待は禁物だ。無理のある展開、都合の良いギミック。言ってしまえば本作は、ありし日の90年代大作アクションのような大雑把な作品なのである。

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 中でも目を丸くすべきは、ローレンス・フィッシュバーンの扱いであろう。彼が演じたガス・マンキューゾというアヴァロンのクルーは、うっかり早起きしてしまった第三の登場人物として、中盤から終盤のストーリーを牽引する重要キャラだ。個人的には、ヒーローとヒロインの“2人だけの孤独”がぶれてしまうため、彼の登場にはいささかガッカリしたのだが、それでも専門的知識と権限を持った彼の存在は、故障箇所を修理して船と乗客を救うというクライマックスには必須の要素である。しかし、一方で、彼がその後も生き残り、ヒーローとヒロインと3人で余生を全うするというのでは、やっぱり座りが悪い。というわけで、筆者などは彼が登場した瞬間から、どーせラストのアクションで死ぬんやろ…と冷めていたのだが、実際はもっと酷かった。なんとモーフィアスは、冬眠ポッドの故障で気管支全体に壊死が進行しており、主人公たちに必要な情報と権限を与えたらソッコーで死んでしまうのである。この使い捨て感…!ここまでいけばもう逆に潔い!と誉めてあげても良いだろう。

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 そんなわけで、こと一本の映画としてはあまりに大雑把な本作であるが、冒頭でも述べたように、筆者個人としては決して嫌いになれない作品だった。もちろん、個人的にバカ映画とか90年代のゆるゆるアクションとかが大好きという部分もあるが、最も大きな要因は、やはり主演2人の魅力である。

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 クリス・プラットに関しては、とにかくカッコいい。そして、チャーミング。あろうことか、誠実。そんな彼の魅力は、完全なるわがままで一人の女性の人生をズタズタにしたことへの免罪符に充分なり得る。一方のジェニファー・ローレンス。彼女は筆者のタイプではないし、個人的に『ハンガー・ゲーム』でのクソ女っぷりを許すつもりはないのだが、本作ではただただ可愛い。そして、気丈。あろうことか食堂で騎乗位に及ぶシーンを始め、とにかくエロい。こうなっては、頼むからこの船内を新たな"目的地"にして、クリス・プラットと幸せになっておくれやす…と祈らざるを得ないではないか。

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 そして、そんな彼らの魅力を前提に好意的な目を向ければ、本作は、目も当てられないほどの駄作というわけでもない。最後まで観れば、"人生の目的"というテーマに目頭がやや熱くなる。要は、我思うに"目的地"なんて大抵の場合、幻想だ。新婚旅行でハワイに行くつもりが、行きの空港で足止めを食らい、結局そのまま帰国したとしよう。それでも、その間に夫婦の絆が深まったのなら(往々にして大喧嘩になるだろうが)、それは歴とした"新婚旅行"なのだし、その新婚旅行は大成功と言って良い。つまるところ、"目的地"は本来"手段"であるにも関わらず、"目的"と混同されやすい概念だということである。

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 本作のヒロインであるオーロラが新天地に求めていたもの、それはきっと"自分の存在価値"だろう。往復240年(プラス、ホームステッドⅡでの1年間)の後、彼女は、かつての自分を知る者など誰もいない地球で、植民惑星での体験を綴るただ一人の作家になろうとしていた。それが当初の"目的"であり、だからこそホームステッドⅡは"目的地"だった。でも、本当はそうじゃない。彼女の友人がビデオレターで言っていたように、別に偉業を為さなくったって意味のある人生を送ることはできる。植民惑星に行くことは、彼女が存在価値を得る唯一の手段ではないんだ。同じようなことがジムにも言える。彼は、技術者である自分が必要とされる場所を求めて、ホームステッドⅡへの入植を決意した。でも、彼を必要としている人はここにだっている。この無機質な宇宙船内にも、彼をかけがえのない存在とする大切な人がいるんだ。夢だった家作りもできるわけだし。

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 要は、ホームステッドⅡに辿り着けなかったジムとオーロラが不憫なわけではないし、無事辿り着けたその他の乗客が幸せなわけでもない。"目的地に辿り着けなかった人は可哀想な人"という一義的なレッテルは、我々愚かな地球人のエゴに満ちた決めつけにすぎない。ジムとオーロラの"人生"という名の旅は、溢れんばかりの満足の中でしっかりと完遂されたのだし、逆にホームステッドⅡに着いたからといってその他の乗客の旅が終わったわけではないのだから。そんな素晴らしいテーマを感じ入ることができたため、本作はやっぱり大局として 「心底酷くはなかったなぁ」と思える作品だったのだが、ラストはもう一工夫あっても良かった気がする。

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 本作のラストとは、つまり、ジムとオーロラがアヴァロンを救ってから88年後、"目的地"に辿り着いたクルーと乗客たちが、いよいよ起き出してくるシーンである。アンディ・ガルシアがほぼカメオ出演の形で演じたノリス船長を筆頭にメイン・コンコースへと歩みを進めるクルーたち。彼らは、そこで生き生きと茂る草木とこじんまりした木造の一軒家を目撃し、唖然とする。おそらく、一軒家の中には、ベッドで仲睦まじく横たわるジムとオーロラの白骨死体があるだろう。

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 ここでオーロラのモノローグ。起き出してきたクルー&乗客に向けられたこの文章は、ジムの裏切りを知って一度は匙を投げていた自伝をオーロラが無事に書き上げたことの証明。その内容は、確か「みんなが寝ている間、本当に大変なことがあったのよ…(笑)」から始まり、なんだかとりとめなく本作をまとめるようなものだったと記憶している(つまり、あんまり記憶に残っていない。)。でも、それじゃあダメだよな。ホームステッドⅡに辿り着けなかったジム&オーロラも辿り着いたその他の人々も、みんな"人生"の旅人なんだ。これから新天地での暮らしを始める者たちは、ただアヴァロンという宇宙船からホームステッドⅡという惑星へ、船を乗り換えただけ。だったら、締めのセリフはこうだろう。

 「乗客のみなさんも、引き続き良い"旅"を。」

 すかさず、タイトル『Passengers』、ドーン!これなら、きっと筆者は号泣していた。

点数:58/100点
 作品の出来自体はお世辞にも誉められたものではない。プロットの肝を秘匿した宣伝展開によって、悪印象がより増幅される可能性もある。でも、今が旬の若手スターの魅力を堪能し、自身の"人生"に今一度思いを馳せることができる作品だったりもする。映画はいろいろ、感想はそれぞれ、そして、春はうらうら。無理して映画館で観る必要は無いかもしれないが、映画ファンの映画人生をより楽しくし得る一本であることは、間違いないだろう。

(鑑賞日[初]:2017.3.24)
(劇場:TOHOシネマズ梅田)






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