[No.426] ライト/オフ(lights out) <75点>





キャッチコピー:『電気を消したら、“それ”は来る』

 You Can(not) Save The World Alone.

三文あらすじ:ひとり暮らしのレベッカ(テリーサ・パーマー)は、幼い義理の弟マーティン(ガブリエル・ベイトマン)から、「電気を消すと、何かが来る」と打ち明けられる。実はレベッカが数年前に家を出たのも、"それ"が原因のひとつだった。脅える弟のため今度は逃げずに"それ"の正体を突き止めようと決意したレベッカは、沢山の電気を用意して実家に乗り込むが、母ソフィー(マリア・ベロ)が隠していたあまりにも残酷な秘密が明らかになった時、ひとつ、またひとつ、電気が消えていく・・・


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 昨年2016年の夏ごろ公開されたホラー映画。公開前からホラー映画ファンの間で話題沸騰だったのだが、怖がりの筆者は当然映画館で鑑賞できないので、レンタル開始を待つことに決めた。その内すっかり忘れてしまっていたのだが、先日ふとNETFLIXをザッピングしていたら見つけたので、この度恐る恐る鑑賞してみたという訳だ。

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 まぁ、怖い。映画館での鑑賞を諦めた筆者は、とりあえず本作の元になったショートフィルムを先に観ていたのだが、デヴィッド・F・サンドバーグなる男が生み出した端的かつ効果的な恐怖描写は、長編になってもその真髄を全くぶらしていない。すなわち、本作の肝は、いきなり映り込む描写の進化にある。古来より、ホラー映画の肝は、いかにして観客をビックリさせるか、という部分にあった。そのために製作者は毎回苦心する。例えば、物音がして、主人公が恐る恐るそこに近づいていくと猫が飛び出してくる、キャー!・・・まったくもう・・・。すかさず本物のオバケがギャー!!!なんてのが、ホラー映画におけるベタな驚かせ方である。

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 当然、ホラー映画にとって“ベタ”は天敵だ。賞味期限の切れた演出では、観客は驚かない。よって、ホラー演出は時代と共にどんどん進化していくことになる。そんな中、昨今のハリウッドにとってメイン・ストリームになっているのが、ジャパニーズ・ホラー、いわゆる“Jホラー”の手法を取り入れた演出だ。Jホラーの肝は、言ってみれば“違和感”。いるはずの無いところに、いるはずの無い存在が、ふいに映り込む。心霊写真研究に端を発したと言われるJホラーの恐怖表現は、我々の日常の一部として極めて自然に不自然を演出する。それが、怖いんだ。

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 そういった手法を大々的に採用してヒットしたのが、最近では『インシディアス』シリーズであろう。元々は『SAW』のクリエーターとして、近頃だと『ワイルド・スピード7』の監督として有名なジェームズ・ワンが生み出した同シリーズでは、カットが切り替わると"それ"がそこにいる、という演出が多用されていた。まぁ、主人公が何かこの世のものではなさそうな影を目撃し、いったん目線をそらせて(カットが変わって)また同じところを見ると既に何もいない、という演出は、オカルトにしろスラッシャーにしろ、ホラー映画の伝統的な手法ではあろうが、『インシディアス』では、何か得体のしれない影、とかではなく、パッと切り替わったらモロにそこにおる!というのが本当に怖かった。

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 本作の特筆すべきところは、そういったオバケの出現と消失をワンカットでやってみせた、という点である。これは本当にフレッシュなビジュアルだし、電気の点け消しは、我々にとって非常に日常的な作為であるから、まるで我が事のような恐怖に見舞われる。点けて、消して、点けて、消して・・・って、たぶん自分でもやっちゃうよな。で、3回目・・・だとベタだから一回間を外して4回目でちょっと近づいてきてる・・・!って分かっててもやっぱり怖い。めちゃくちゃ怖い。しかも、この演出は別に特殊な編集方法を必要としない。ただ単にフィルムのツギハギだけでできるはずだ。したがって、本作のこの手法は、ホラー演出の新たなる進化であり、発明と言っていいだろう。

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 筆者が本作で少しだけ釈然としなかったのは、悪霊の撃退法である。本作でレベッカらの家族を苦しめるダイアナという悪霊は、レベッカの母ソフィーの弱った心につけこみ、彼女を媒介として現世に実体化しているという怪異。したがって、本作のオチのようにソフィーが自殺すれば、当然ダイアナは、(少なくとも)現世からは消失する、ということになろう。その理屈には納得だ。

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 しかし、物語的には、本当にそのオチで良かったのだろうか。本作のテーマは、『インシディアス』がそうであったように、そしてまたその他多くのホラー映画がそうであるように、“家族の絆”である。ソフィーがダイアナにつけこまれたのは、抽象的に言えば、家族の絆が崩壊したことによる喪失感が原因である。鬱の気があるソフィーの元から夫が出ていき、娘であるレベッカも出ていった。そして、本作でレベッカはそのことを悔い、今度こそは母も弟からも逃げず、きちんと向き合い、団結し、憎き怪異を打倒すると決心したはずだ。このテーマはもちろん作中でセリフとしても表現されているし、弟であるマーティンの部屋のポスターにも表れていると思う。彼の部屋に貼っているポスターというのが、『ジャスティス・リーグ』なんだ(昔のコミック版の)。D.C.エクステンデッド・ユニバースの最新作としてももうすぐ公開されるジャスティス・リーグ。先ごろ発表された最新版ポスターのキャッチコピーが“YOU CAN'T SAVE THE WORLD ALONE”だったように、このヒーローチームの本質は“団結”にある。だったら、本作のオチも、やっぱり家族が団結して怪異を退治する、とした方が良かったのではないだろうか。せっかく“ブラック・ライトなら怪異の物理的な存在を保ったままで可視化できる”という設定まで持ち出したのだから、ラストは家族総出で焼き切って殺し(直し)てしまえばよかったのに・・・。

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 なんだかこの釈然としない感じは、以前感想を書いた『MAMA』というホラー映画の読後感にすごく似ている。同作では、最終的に小さい妹が怪異に連れ去られてしまうのだが、その展開も、少なくとも筆者的には“物語上の必然性”が欠落してるオチだったように感じた。そういえば、『MAMA』と本作には、その他の共通点も多い。ショートフィルムの長編化という点も一緒だし、ヤンキー系の若いビッチが幼い子供を守るため徐々にしっかりした女性へと成長していくというプロットも共通。また、怪異のルックスもかなり似ている。興味のある方は、ぜひ両作を鑑賞し比較してみてほしい。まぁ、立て続けにこんな怖い映画を2本も観る肝っ玉があなたにあれば、であるが。

点数:75/100点
 ホラー映画はアイデアだ。いかにして観客を怖がらせるか、その手法こそが一番の肝であり、その鮮度の探究こそがホラー映画の歴史だと言ってもいい。そういう意味で、本作は間違いなくホラー映画史にその名を残す名作になるだろう。ちなみに、オチが釈然としないことから少し邪推してみたのだが、ひょっとしたら、やはりダイアナは退治されていないのではないだろうか。本作には、マーティンがレベッカに対して「ママの精神病は僕らにも遺伝するの・・・?」と問うシーンがある。当然レベッカは「そんなわけないじゃない。」と答えるのだが、ここ、少し間を持たせている。まぁ、本作の怪異は結局のところ、人が弱ったときに頼ってしまう悪しき物全般(例えば、ドラッグとか)のメタファーなんだろうから、広い意味でダイアナが死んでいないのは当たり前かもしれないが、なんだかんだで家族の団結を実現できなかったレベッカ自身が今度は怪異に付かれるという続編が、もしかしたら作られるのかもしれない。

<おまけ>
 本作の元になったショートフィルム。なんか本作の宣伝文句で“実際の恐怖映像が元になっている・・・!”と謳われているが、元になったのはショートフィルムなんじゃないかな。日本版公式ホームページから飛んでもこのショートフィルムが出てくるし。なんだかよく分からないウソ宣伝である。ちなみに、このショートフィルムのおばさんは、監督の奥さんである。本作でも冒頭で初めてダイアナを目撃するおばさんであるエスターを演じている。団結してホラー映画作りに勤しむなんて、本当に最高の夫婦だ。





(鑑賞日[初]:2017.8.7)






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