[No.425] ザ・マミー/呪われた砂漠の王女(The Mummy) <76点> 【ネタバレ感想】
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Mr.Alan Smithee

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・英語版:Welcome to a New World of Gods and Monsters
・日本語版:5000年封印された“究極の悪”が解き放たれる
ミイラ再生・・・なるか?
三文あらすじ:古代エジプトの王女アマネット(ソフィア・ブテラ)は、王位を継承するため父である王とその子を殺害するが、神官たちに捕えられ、生きたままミイラ(The Mummy)にされる。現代のイラク、任務にかこつけて盗掘を企てていたアメリカ軍の軍曹ニック・ノートン(トム・クルーズ)は、偶然発見した牢獄からアマネットのミイラを解放してしまう。アマネットに呪いをかけられたニックは、考古学者ジェニー・ハルジー(アナベル・ウォーリス)と共に、自身の呪いを解くため、そして、アマネットの脅威から世界を救うため奔走するのだが・・・
2017年のサマーシーズンに際して、かの大手映画制作会社ユニバーサル・ピクチャーズが自信たっぷりにリリースした本作『ザ・マミー』。1932年公開の古典的名作『ミイラ再生』の(再)リメイクなのだが(本作の前のリメイクは、みんなご存知『ハムナプトラ』である。)、何と言っても、マーベルの“シネマティック・ユニバース”、DCの“エクステンデッド・ユニバース”、そして、ゴジラを軸にした“モンスターバース”に続くユニバースものとして同社が仕掛ける“ダーク・ユニバース”の第一弾作品なのだから、当然気合いも入りまくっているわけである。ただ、日本に先んじて公開されたアメリカでは、これがむっちゃコケた。あまりの失敗具合に、関係者(ユニバーサルの重役だったかも)が「もうダーク・ユニバース企画はお終いだ」と発言したとかしないとか。鳴り物入りで封切られた期待の超大作は、なぜウケなかったのだろう。

この点、RHYMESTERの宇多丸師匠は、本作には鑑賞者が汲んでやらないと分かりづらい演出・描写が多すぎる、と指摘していた。この評を聞いてから観たからかもしれないが、個人的には、別に他の作品と比較して(特にこの手の超大作の中では)、本作の脚本が取り分け杜撰だとは思わない。筆者の私見によれば、本作が受けなかった理由は、取りも直さずコレだ。すなわち、地味すぎる、暗すぎる。コレに尽きる。

ハリウッド映画、特に大作映画には、その時々の流行がある。『スターウォーズ』の後はお気楽宇宙活劇ものばかりが製作されたし、『マトリックス』の後はワイヤーアクションを使った映画ばかりが世に溢れた。もっと最近なら、『ダークナイト』以降の“根暗ヒーローブーム”が記憶に新しいところだろう。では、今現在のメイン・ストリームは何か。答えはもちろん、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のような明るい作品である。ポイントは、以下の3点だ。すなわち、色使いは極力派手に、音楽はノリノリの懐メロ、そして、良い感じのチーム感。この3点に注目して現在公開中、または、これから公開される作品を観てほしい。映画会社が金と気合いを入れてプッシュする大作は、少なくとも一つ(多くは"ノリノリの懐メロ")は当てはまっているから。

そういう観点から本作を観ると、まぁそらヒットせんわなぁ、ということがすぐに理解されるだろう。色使いはくら~いし、音楽はほとんどがクラシックなオリジナルの劇伴だし、孤軍奮闘するトム・クルーズからはチーム感の欠片すら感じられない。トム・クルーズ自身が“ミイラ男”の能力を手にしたダーク・ヒーローになる、というオチは中々ヒロイックな展開なのだが、せめてここは、破れた衣服がまるで包帯のようにトムの体に巻き付いているとか、なんかそういう感じのドーン!という画を見せてくれないと、全く盛り上がれない。だいたいからして、古のモンスター映画再生企画の第一弾なのに、ミイラ女とかジキル博士とか、そういう肝心のモンスターたちの見せ場がショボいのはどうかと思う。ミイラ女はせっかくソフィア・ブテラをキャスティングしているのに、『キングスマン』で見せたあの軟体アクションを全く披露しないし、ラッセル・クロウ演じるジキル博士はハイドに変身しても顔の色が変わるくらいなもん。ましてや、せっかく覚醒したトム・クルーズの雄姿も満足に見せてはくれない。序盤で輸送機が墜落するシーンの画は確かに迫力があったし、終盤でトムが水中アクションを繰り広げるところは「おー、相変わらず頑張ってるなぁ」という感じだったが、それはただのおっさんの活躍でしかないのだし、だいたいからしてどちらも『ローグネイション』で既に見たやつだ。

悪口を言ったけれど、筆者は決して“ダーク・ユニバース”の終了を望んでいるわけではない。ミイラの能力と人の心を持ったヒーローとしてのトム・クルーズなんて最高にカッコいいキャラクターだし、復活した(正確にはトムが生き返らせた)サイドキックとのバディ感にも今後期待したい。次回以降、おそらくはもっとチーム感を盛り込む軌道修正を施すのではないだろうか。実際、予告編については、上記3ポイントの内、音楽の部分について軌道修正しているように思える。まぁ、次作は確か『フランケンシュタインの花嫁』のリメイクだったはずだから、チーム感を出すのは中々難しいかもしれないが、トムのミイラ男、ラッセル・クロウのジキル、ハビエル・バルデムのフランケンシュタインの怪物(もしかしたら、フランケンシュタイン博士を演じるのかもしれないが)、ジョニー・デップの透明人間、そして、その他、ドラキュラ、半魚人、それから…ノートルダムのせむし男だったか、これらモンスターたちが結集したヒーローチーム“モンスタンジャーズ”の活躍を筆者はすごく楽しみにしている。
点数:76/100点
夏のブロックバスターとして悪かったわけではないが、“ダーク・ユニバース”第一弾作品に抱く期待値を満足させる作品ではなかったかもしれない。やっぱり暗くて地味なんだよな。古のモンスターたちの再生が成功するかは、次作にかかっていると言っていいだろう。
(鑑賞日[初]:2017.8.8)
(劇場:MOVIXあまがさき)
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