[No.427] スパイダーマン:ホームカミング(Spider-Man:Homecoming) <77点>

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キャッチコピー
・英語版:Homework can wait. The city can't.
・日本語版:unknown

 スパイディ vs サカウラミー。
 威信をかけた再々起動は、紛う事なき”原点回帰”。

三文あらすじ:ニューヨークで繰り広げられたアベンジャーズとチタウリの戦いの後、解体工事を任されていたエイドリアン・トゥームス(マイケル・キートン)は、トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)と政府が結成した組織“ダメージコントロール”によって職を奪われてしまったため、政府に未提出だったチタウリの残骸を再利用し、ハイテク兵器を売ることで利益を得ることを思いつく。それから8年後、スタークに見出された高校生のピーター・パーカー(トム・ホランド)は、スタークから与えられたスーツを身にまとい、“スパイダーマン(Spiderman)”として街の犯罪行為を阻止するために活動を続ける一方、学校の授業や自身の片思い相手のリズ(ローラ・ハリア)も所属するアカデミック・デカスロン(学力コンテスト)の部活動への参加が疎かになるなど、私生活との両立に右往左往しながらも、アベンジャーズ入りを夢見てヒーロー業に勤しんでいた。そんなある日、ハイテク兵器を持った強盗を阻止したピーターはその出所を探るが、彼によって兵器売買を邪魔されたトゥームスこと“ヴァルチャー”にその命を狙われることに・・・


~*~*~*~


 今夏の目玉として全世界が期待していた本作『スパイダーマン:ホームカミング』。アメリカでは7月7日から、日本では8月11日から公開されているが、今のところ日米を問わず大成功している、と言っていいだろう。「また『スパイダーマン』やるん?!」とか、「『アベンジャーズ』シリーズ観てないから付いて行かれへんわ…」といった声が多い中でのこの大ヒットは、素直に凄いとしか言いようがない。

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 本作の見所をいくつか挙げるなら、まずはやっぱりスパイダーマン・スーツであろう。トビー・マグワイヤ版、及びアンドリュー・ガーフィールド版とは異なり、本作は"マーベル・シネマティック・ユニバース"に属している。したがって、トム・ホランドが身に付けるスーツはトニー・スタークが作成したものという設定になっているのだが、これは良い。アメコミっていうのは、とかく"原作ではこうだから"というのが重視されがちだが、やっぱり一介の高校生がものすごくカッコいいデザインのスーツをむちゃくちゃ綺麗に自ら仕立てるというのは、非現実的だ。サム・ライミ版以降、ウェブ・シューターの自作問題についてはしばしば議論になるが、みんなピーター・パーカーの裁縫能力に関しては不問にしすぎ。理科が得意な高校生が強度と軟性を兼ね備えた凄い糸を作った、よりも、特に家庭科好きでもない高校生が超カッコいい全身タイツを作った、の方が、絶対にヘンだ。

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 まぁ、そういう揚げ足取りはいいとして、やっぱりトニー・スターク製作のスーツはカッコいい。肝は当然、アイアンマンにも搭載されているディスプレイとナビゲーション。特にナビゲーションは最高である。ピーターによって"カレン"と名付けられた彼女は、言ってみればジャービスのニヒル化に伴う我々の喪失感を瞬時に埋めてくれたあの"フライデー"に相当するキャラクター。女性型人工知能というのは、やっぱり良いな。トニーとのやり取りでは大人の男女のセクシーさを醸し出していたが、ピーターとの会話では一転"お姉さん"といった趣。今がチャンスよ、告っちゃいな、とアドバイスしてくれたりして、世のボンクラ男たちのハートを鷲掴みにするには十分すぎるギミックであろう。あと、ウェブ・シュートの技が何百通りあって…とか、○○モードを起動しますか?とか、その辺りのディテールも最高だ。結局一度も実戦で使用されず、いわばギャグ・ギミックとなっていた"即死モード"は、今後の作品でぜひその真価を披露してほしい。

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 もう一つ、近年の『スパイダーマン』と一線を画した設定は、高校生感の強化である。サブタイトルの『ホームカミング』というのも、アメリカの高校では一般的に行われている卒業に際した行事のことらしく、言ってみれば"プロム・パーティ"のイメージだろう。もちろん、大人への憧れからがむしゃらに"ここではないどこか"を夢見ていたピーターが、結局は真の"ヒーロー"、すなわち"スパイダーマン"として故郷に帰ってくる、という意味もある。

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 この辺りのテーマ設定と処理も中々上手い。スパイダーマンというヒーローは、"Your Friendly Neiborfood"というキャッチコピーが付いているだけあって、その本質としては、ニューヨークの"ご当地ヒーロー"である。沖縄における琉神マブヤーみたいなもんだ。近年節操なく立て続けに映画化した他の『スパイダーマン』との差別化を図り、かつユニバース内の他のヒーローたちとの差別化を図る上で、"スパイダーマン"というヒーローの本質に今一度立ち返り彼のローカル感、ジュブナイル感を全面に押し出したのは、間違いなく正解だろう。そもそも“スパイダーマン”というヒーローは、これまで映画化されたイメージより本当はもっと“ガキっぽい”んだよな。原作コミックなんかだと、アクションの最中でもペチャクチャペチャクチャとしょーもない独り言をずっと言っていたりする。「俺は…“スパイダーマン”だ!!」というクライマックスの見せ場からも明らかなように、本作は、節操のない再々リブートに際してしっかり“スパイダーマン”というヒーローの原点を意識して作られているように思う。

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 また、ピーターの高校生活により焦点を絞った話運びは、昨今のヒット作に必要不可欠なある要素を提供する。それは"チーム感"だ。もっと厳密に言えば"ボンクラたちの仲良し感"。つまり、本作におけるピーターの親友であり、スパイダーマンというヒーローのサイドキックかつ"イスの男"であるボンクラ高校生ネッド(ジェイコブ・バタロン)。こいつとピーターとの"ダチ感"、あるいは"ブロマンス感"が最高。このキャラは言ってみれば、『アイアンマン』におけるローディなんだな。または、『アントマン』のルイスとか。一応、あの“クイズ部”(でいいのか?)の面々も今後の展開次第ではある種のチームとして機能していくかもしれないが、やっぱり、“男”と書いて“ボンクラ”と読ますあの感じが、我々にはたまらないのである。

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 このように良かった点が多い新生スパイダーマンであるが、よくよく考えれば杜撰な点も多いように思う。個人的に一番納得しかねたのは、ヴィランの描き込み不足だ。“バードマン”ことマイケル・キートンが鳥人間を演じているという楽屋落ちは中々楽しいが、こと彼のキャラクターという点では描写が浅い。ヴィランというのはいわゆる“悪者”であり、悪者とはいわゆる“道を外れてしまった人”のことであり、それはすなわち“普通ではない正義を持つに至った者”のことである。したがって、ヴィランのキャラクターを描き込むには、まず以てその“普通ではない正義”が何なのか、言い換えれば、彼はなぜ“普通の正義”を信じられなくなったのか、を掘り下げれば足りる。本作のヴィラン“ヴァルチャー”は、この点の設定・描写が浅い。

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 彼が“悪”の道に逸れてしまった切っ掛けは、今から8年前、つまり『アベンジャーズ』の戦闘後の復興作業…というか後片付け作業をトニー・スターク率いる組織(インダストリーズでは無かったように思う。)に理不尽な形で奪われたことにある。仕事を奪われ、このままでは家族や社員を養っていけないという焦りもあって、彼は既に手元にあったチタウリの武器から兵器を量産、闇のブローカーとして暗躍することになる。ここで重要なのは、“家族や社員を養っていけないという焦り”の部分だろう。本作限定のヒロインであるリズ(ローラ・ハリアー)の父親であるという結構おもしろい設定(とはいえ、公開前にネタバレしていたことだが)からも明らかなように、ヴァルチャーというキャラクターにとっては“家族”こそが最大の正義なのだと理解される。したがって、ヴァルチャーは、主に経済的な観点から家族を守ることを第一義とし、そのための手段として違法な武器売買に手を染めてしまった男なのだ。これならしっくりくる。

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 しかし、本作ではこの“経済的な観点から”の部分が弱い。つまり、復興作業を奪われてしまったらもう家族も社員も路頭に迷ってしまうんだよ…!という切実さが微塵も感じられない。家庭の懐具合に関しても会社の経営状況に関しても、全く描写が無い。よって、現状では、ただただ自分の現場を奪っていったお役人の偉そうな態度に怒っている“逆恨みの現場主任”でしかないのである。もちろん、上映時間の都合とか、その他に描きたいこととかとの関係上やむなくカットしたのかもしれない、いや、きっとそうに違いないと筆者は思っているのだが、せめて台詞だけでもいいから、あの復興作業がヴァルチャーにとってどれくらい一世一代のものだったかを示しておくべきだったのではないだろうか。

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 あと、これは編集の話だが、ピーター・パーカーのPOVのシークエンスはあの位置で良かったのだろうか。『シビル・ウォー』での混戦をピーター・パーカーのスマホ動画で見せ直すというあのシークエンス自体はおもしろい。確かにPOVなんて今どき珍しくもなんともない手法だが、それをアメコミヒーローもので用いた例は過去にないし、ピーターの"今どきの若者感"を強調する上でも非常に効果的だ。予告編で観たとき、筆者は世の多くの映画ファン同様、すごくワクワクした。しかし、本作では、そのシークエンスが序盤で突然始まり、そして、突然終わるのである。“突然終わる”と言っても、全く違うシーンがその後始まるわけではない。むしろそっちの方がまだ良かったと思う。実際は、ピーターの動画がずーっと続いて、ハッピー(ジョン・ファブロー)の運転する車内でトニー・スタークと喋っているところまでいって、で、“普通のカメラ”でその続きが始まるのである。これはマズイよ。POVっていうのは、観る者にカメラマンの存在を意識させる手法なのである。“これはピーターが撮った映像なんだ”と心のどこかで思いながら、我々は鑑賞を続ける。そのまま連続で“普通のカメラ”に切り替わったらどう思う?“あれ…じゃあこれは誰が撮ってる映像なん?”と、そうなってしまわないだろうか。“普通のカメラ”なんてさっきから言っているが、映画においては本来そんなもん存在しない。ヒーローたちの活躍を、我々は“神の目”を通して観ているんだ。だから、まぁ例えば、アヴァンを丸々ピーターの動画にするとか、ピーターの動画が終わったら彼が映像を観返しているところだったとか、そういう感じにしてほしかったなぁ、と思う。

点数:77/100点
 いくつか不満はあるにせよ、全体としてはとっても満足な作品だった。マーベル作品に対してはちょっとハードルが上がりすぎている部分があるのかもしれない。あ、あと最後にペッパー・ポッツが登場したのはうれしかった。やっぱりグウィネス・パルトロウは可愛いわ。それと、ゼンデイヤ演じるミシェルが最後に「M.J.って呼んで」って言うのも良かったな。『スカイフォール』のマニーペニーの二番煎じだが、やっぱり「おぉ!」ってなる。あと一つだけ。日本版の予告編、あれは最悪中の最悪だった。日本版の予告編と一口に言っても数パターンあるが、関ジャニが出ている「CHA…CHAWANMUSHI?」のやつである。そんなことせな客入らんのか…少なくとも、日本の宣伝担当はそう思ってんのか…と筆者は憤った。まぁ、別に筆者に怒られる筋合いはないだろうから、逆恨みするのはやめておこう。

(鑑賞日[初]:2017.8.16)
(劇場:MOVIXあまがさき)


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