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キャッチコピー
・英語版:What did she see?
・日本語版:人はひとを殺したことを忘れられるのか?

 妖艶な“姉妹”の共演。

三文あらすじ:毎朝同じ通勤電車に乗る女性レイチェル・ワトソン(エミリー・ブラント)。離婚したばかりの彼女は、かつて夫トム(ジャスティン・セロー)と暮らした家を車窓から眺めるが、今そこでは彼が新たな妻アナ(レベッカ・ファーガソン)と暮らしている。つらい記憶を忘れようとするうちに、その家の近くに住む理想の夫婦(ヘイリー・ベネット、ルーク・エヴァンス)が気になり、どんなに完璧な生活を送っているのかと思いを巡らせる彼女は、車窓から思いもよらぬ光景を目撃し、次第に理想の夫婦の人生に巻き込まれていくことになる・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 2015年に発刊されるや瞬く間にベスト・セラーとなったサスペンス小説『ガール・オン・ザ・トレイン』。その映画化である本作は、今をときめく実力派女優たちが共演した正統派サスペンスに仕上がった。さすがに原作小説ほどのセンセーションはなかったものの、2016年10月の公開当初は、確か興行収入1位になっていたんじゃなかったかな。

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 本作の見どころとして、まずはやはり、美しい女優たちを挙げたい。アル中バツイチで元夫の幸せ家庭に固執する病み病み主人公レイチェルを演じるのは、トム・クルーズ主演の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』でヒロインを務めたエミリー・ブラント。原作でのレイチェルはぽっちゃりタイプだからエミリー・ブラントは適役じゃない!なんて言われていたけれど、全然そんなことはなかった。髪はボサボサ、肌はガサガサ、眼球は血走り、唇はバリバリ。アル中ストーカーである"ヤベェ女"にきちんと説得力を持たせている。

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 そんな彼女と対比される存在が、これまたトム・クルーズ主演のシリーズ最新作『ミッション・インポッシブル:ローグ・ネイション』でヒロインを演じたレベッカ・ファーガソン。なんでも、Xメン・シネマティック・ユニバースの一環として企画されているチャニング・テイタム主演作『ガンビット』のヒロイン役を断って本作に出演したのだとか。確かに、本作のアナは、彼女にハマっている。『ローグ・ネイション』の孤独な強さとは対照的に幸せいっぱいの新妻。しかして、クライマックスでは………後述。

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 そして、本作のサスペンス的メイン・ギミックとなる魔性の女メーガンを演じるのは、へイリー・べネット。正直、筆者は彼女の過去の出演作をあんまり観ていないのだが(『マグニフィセント・セブン』は、愚かにも観逃してしまった。)、本作の彼女は素晴らしい。もうとにかくエッロ!当初、メーガン役は、失敗した方の『ファンタスティック・フォー』とかリドリー・スコットの『オデッセイ』とかのケイト・マーラにオファーされていたらしいのだが、いやいや、べネットさんで良かったんじゃないか。どことなくジェニファー・ローレンスに似ている彼女のチャーム・ポイントは、やはりそのふてこさ。挑戦的なその視線が、男のトレインを急発進させる。

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 作品全体に目を向けてみると、まず印象的なのが、随所にふりかけられた"ヒッチコック・テイスト"であろう。主人公が窓越しに他人の生活を盗み見ているというのは『裏窓』感があるし、電車というガジェットと女性の失踪という展開の組み合わせは『バルカン超特急』を思い起こさせる。一番大きいのは、金髪美女が物語の起点になるという部分だろう。やはり正統派サスペンスというものは、セクシーブロンド美女の死が焦点でないと締まらない。

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 というわけで、本作は全体として見どころのたくさんあるちゃんとしたエンターテイメントなのである。にもかかわらず、残念ながら世間の評価は決して高くない。本日時点のRotten Tomatoesだと、批評家、一般観客とも50%未満の低評価。たぶん、大人気の原作と比較されているからだとは思うのだが、とはいえ、原作を未読の筆者も、本作に対して、こいつはとっちらかってるなぁとの印象を持った。

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 序盤から中盤、後半くらいまではすごく良い。役者の演技も、演出も、すごく丁寧で、同時に不穏で、グイグイ引き込まれる。ところが、クライマックス以降、本作はドンドン雑になっていく。というか、それまでの過程での前フリが不十分だと思うんだよな。レイチェルの元夫でありアナの現夫であるトムが、実はかつてのレイチェルに根も葉もない"酒癖悪いエピソード"を吹き込み、彼女を追い詰めていたのだ!そして!あろうことか、今では新しい妻子がありながらにして隣人の妻であるメーガンと浮気し、その上、彼女を殺害していたのである…!というのが本作の"大どんでん返し"なのだが、それを聞かされても、な…なんだって?!トムこそが全ての元凶だったのか!!というパンチ力が無い。

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 確かに、メーガンを殺害したことについては、一点の疑問の余地なくトムが悪かろう。浮気した上、相手の女を妊娠させ、おまけに殺してしまった自身の夫に、妻であるアナが愛想をつかすのも当然。しかし、このことと、レイチェルがトムからかつて酷い扱いを受けていたことは、厳密に言えば全くの別問題だ。つまり、クライマックスでトム邸に押し入って真相を暴露し、トムとアクション映画さながらの大立ち回りを繰り広げたあげく彼を殺害したレイチェルは、筆者の大嫌いな"おせっかい野郎"に他ならない。

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 もちろん、トムはレイチェルの元夫で、レイチェルはトム(とその家庭)に固執していた。でも…だから?作中で周囲の色んな人からレイチェルは言われる。「トムはもうあなたの夫じゃないのよ。」「あそこはもうあなたの家じゃないのよ。」全くもってその通りだ。これまでの自堕落さを反省し、加えてトムの悪性が明らかになったことで、レイチェルは、あたかも"真っ当なヒーロー"であるかのように振る舞い始める。しかし、よくよく考えれば、彼女に"メーガン失踪事件"を"捜査"する大義名分などないのである。

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 もちろん、以上を前提とした上で、あえてレイチェルの空回り具合や、より広く"女の虚しさ"みたいなことを表現したっていいだろう。しかし、本作はそうは描かない。トム邸の屋外に逃げ出したレイチェルは、鬼の形相で追っかけてくるトムを、こっそり持ち出していたワイン・オープナーで振り向き様に刺殺する。これまで散々色んな女にねじ込んできたトムが自身の首元にオープナーをねじ込まれてしまう、という展開はやや皮肉で楽しいが、驚くのはその後。確かにトムの忌まわしい性質が判明したとはいえ、彼の妻であるアナは、瀕死の夫を心配しない。それどころか、駆け寄ったアナは、夫の首元に突き刺さったオープナーをむんずと掴み、グリグリグリグリとその本来の用途通りに回転させながらより深くねじ込み、まだかろうじて残っていた彼の息の根を止めてしまうのである。ワオ!男になんて生まれなきゃよかった!

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 その後、警察に連行された二人は、「あれは正当防衛だった」と暗黙の内に口裏を合わせ、ラストは、無事釈放されたのであろうレイチェルのモノローグ。彼女は、メーガンの墓に参った後、アル中時代の序盤でも訪れていた"3人の女性が手を繋いで踊っている"ような銅像の前で、「私たち3人の絆は壊れない。私たちは、同じ物語で繋がっている…。」とひとりごちる。はぁ?繋がってる…?いやまぁ、チンコでな!

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 クライマックスに至るまでで本作が描いた描写だけでは、このラストのモノローグが全く説得力を持たない。トムの死に際でこれ幸いとばかりに突然結託したレイチェルとアナの関係も釈然としなければ、ことメーガンに至っては、残りの二人を"浮気相手の嫁"くらいにしか思っていないはずだ。女にとって、男とは、子供とは、家庭とは、いったいどういったものか。そして、それらを持てない女は、果たして本当にただ惨めな存在なのか。そういう味わい深い問題を提起しそうな雰囲気で進んできた本作は、クライマックスで一転、ただただ"竿姉妹たちにむりやり「浮気男被害者の会」を結成させる話"になってしまったように思う。

点数:58/100点
 ここからは筆者の妄想だが、この話、"レイチェルが列車内で見ていた夢"と考えた方が、まだ座りが良い。"浮気男被害者の会"の3人の内、なぜかレイチェルだけ黒髪なのだが、ここが取っ掛かりになりそうだ。つまり、『めまい』なんかを観ても分かるように、ヒッチコック作品における金髪美女は"夢の女"を象徴している。加えて、「私はよく想像力が豊かだと言われる…」という冒頭のモノローグと、その直後にメーガン夫妻を目撃するレイチェル。また、『裏窓』の結末には、いまだに根強く"実は主人公の妄想説"が存在しているということを考えると、アル中のレイチェルがずっと車内で本作のような物語を妄想している、あるいは、車内で寝てしまったレイチェルが本作のような夢を見ているという顛末も、仮説としてはあり得るだろう。仮に、本作ラストでレイチェルがはっ!と目覚め、冒頭のようにボロボロのまま、またタンブラーに入れたウォッカをちびちびやり始めたら、筆者はあまりの切なさに発狂していたかもしれない(あるいは、これまでの顛末が全部レイチェルのスケッチに書かれていて、あ…全部妄想やったんや…と分かるとか。)。結局、ある女性が電車の中で想像しただけの悲しい物語、それがMr.Alan Smithee版『ガール・オン・ザ・トレイン』である。

(鑑賞日[初]:2017.9.7)

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Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

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