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キャッチコピー
・英語版:Get the hot girl. Defeat her evil exes. Hit love where it hurts.
・日本語版:ゲーム、ロック、イケてる彼女、それがぼくの人生の必勝アイテム!

 女は、人生で一度や二度はワルい男を愛してしまうの。
 でもだからこそ、イイ男に出会ったとき、感謝する気持ちになれるのよ。
  ― マージョリー・キナン・ローリングス

 仮に七度だったとしても、それは変わらないわ。
  ― Mr.Alan Smithee

三文あらすじ:友人とバンド活動にいそしむ無職の青年スコット・ピルグリム(マイケル・セラ)は、中国系の女子高生ナイヴス・チャウ(エレン・ウォン)と交際しているにも関わらず、あるパーティで出会ったミステリアスな美女ラモーナ・フラワーズ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)に一目惚れしてしまう。ナイヴスそっちのけでラモーナにアプローチをかけ、なんとか良い感じになるスコット。しかし、彼女と真の交際をスタートさせるためには、彼女の邪悪な元カレ軍団7人を倒す必要があった・・・


~*~*~*~


 2010年に公開された本作は、今や映画オタクや映画マニア、まぁいわゆる"ムービー・ギーク"たちの心を掴んで離さないイギリスの映画監督エドガー・ライトの4本目の監督作である。この男はやっぱりスゴい。そもそも初監督作が『ショーン・オブ・ザ・デッド』というのがエグいのだが、その後も『ホット・ファズ』、本作『スコット・ピルグリム』、『ワールズ・エンド』、そして何と言ってもこないだの『ベイビー・ドライバー』と、立て続けに良作傑作を排出し続けている。

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 しかも、その合間合間で『銀河ヒッチハイク・ガイド』だったり、『アタック・ザ・ブロック』だったり、『アントマン』だったりといった良作の製作総指揮や脚本も務める大活躍。おまけに、『デス・プルーフ』『プラネット・テラー』の2作からなる『グラインドハウス』において『Don't』というウソ映画のウソ予告を監督するなど、オタクの王タランティーノとの親交も深い。要は、2017年現在、こと"ジャンル映画"に限って言うなら、世界中の映画ファンから最も信頼されている最強のクリエーター。それが、エドガー・ライトという男なのである。

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 さて、そんなエドガー・ライトが監督した本作はいったい全体どんな映画なのかと言うと、これがまたなんとも言いようのない不思議な映画なのである。とはいえ、そんなあやふやな表現に終始するのも電脳空間の無駄遣いなので、頑張って筆者なりの言い方で表現するなら、本作は、『エターナル・サンシャイン』に『ストリート・ファイター』を混ぜてもみくちゃにしたような映画、となる。

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 物語の推進力となる縦糸は、すこぶるピュアでこの上なくセンシティブなラブ・ストーリー。ナイーブな青年が、コロコロと髪の毛の色(しかも、ビビッドな色ばかり)が変わるセクシーな美女に一目惚れして、両者の恋路が焦点となっていく。大掴みすぎるきらいはあるものの、『エターナル・サンシャイン』も本作も、一応どちらもそんなお話である。

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 その上で、『エターナル・サンシャイン』は、物語を伝えるためのギミックとして"記憶消去屋さん"を登場させたり、"時系列バラし"を行ったりと工夫を凝らしていた。一方の本作が採用したのは、前回感想を書いた『ピクセル』と同様、"ゲーム"である。特にカプコンの『ストリート・ファイター』だ。まぁ、『DEAD OR ALIVE』とか、なんかまた違う格闘ゲームを引き合いに出す方がより正確なのかもしれないが、ゲームに疎い筆者は、真っ先に『ストリート・ファイター』を思い浮かべた。

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 つまり、『vs.邪悪な元カレ軍団』という謎のヘンテコ邦題にある通り、本作では、主人公のスコットがヒロインであるラモーナの元カレ7人と"ストリート・ファイト"を繰り広げていくのである。しかも、この場合の"ストリート・ファイト"は、『ファイト・クラブ』みたいなリアルなやつじゃない。物理法則は無視され、電子的な演出が施され、勝利するとコインが獲得できる。そんなマジの"ゲーム"だ。

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 始めの内は、本作を鑑賞する誰もがこのゲーム演出に面食らうだろう。もちろん、例えば『エンジェル・ウォーズ』みたいに、実際に起きている現実的なやり取りのメタファーとしてのファンタジー描写と捉えたい気持ちは分かる。しかし、本作は、そんな高慢で生真面目な映画的解釈など許さない。スコットは本当に突然カンフーを使い始めるのだし、マシュー(サティヤ・バーバー)は本当に空を飛べるのだし、トッド(ブランドン・ラウス)は本当に超能力を持っているのである。しかもそこには、そんな超人たちが存在し得るためのお膳立てが何も無い。同じような物理法則無視のバトルを描くため、"この世界は人間を培養するために機械が作り出した仮想現実なんだよ"、という理由付けを行った『マトリックス』なんか、「マジメか!」と恫喝されそうなぶっ飛び具合。

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 しかし、これが良いのである。我々は、本作の超現実的な不親切さに置いていかれる。でも、それで心が離れてしまうようなことはない。あの…これ以上めんどくさいこと言わないから、どうか側に置いてください。そんな、あたかもクズ男に入れ込んでしまった女子高生のような心境で、鑑賞を続けてしまうのである。なぜなら、そうさせるだけの圧倒的な才気を本作は発しているから。『ベイビー・ドライバー』で痛烈に実感したが、やはりエドガー・ライトという男は、本当にカッコいい映画監督だなぁ。

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 もう一つ、ギリギリのバランスで本作を映画として成立させている要素は、マイケル・セラとメアリー・エリザベス・ウィンステッドの魅力だろう。メアリーは、もちろんかの有名なジョン・マクレーンの娘なのだし、エイリアンの宇宙船を即席の火炎瓶一本で撃滅してしまうほどの女だから、その魅力のほどは当然熟知しているつもりだった。しかし、本作の彼女もまた良い。作中、"デブの白人女"と揶揄されるように、本作での彼女は明らかに『エターナル・サンシャイン』のドリュー・バリモアを意識しているように見えるのだが、やっぱりこの影のある眼力。これが最高だ。主人公を演じるマイケル・セラとの化学反応もバッチリ。二人の恋を心から応援したくなる、こと恋愛映画に限っては、この点をクリアできていれば概ねオッケーなのである。

点数:79/100点
 ともすれば物語としての体裁を崩してしまいそうなぶっ飛び演出満載ながら、心の底から楽しめる異色のラブ・ストーリー。ちなみに、本作には格闘ゲーム以外のオマージュもたくさん登場する。例えば、スコットが所属するバンド"セックス・ボブオム(Sex Bob-omb)"は、"ボム兵"として我々に馴染み深いあのキャラクターから名前を頂戴している。ボム兵は英語だと"Bob-omb"っていうらしいんだな。それから、作中、ラモーナの髪色は"赤→青→緑"と変化するが、IMDbのトリビア・コーナーによれば、これはなんと『ゼル伝』の三女神、ディン、ネール、フロルのテーマ・カラーになぞらえているとのこと。ホンマかいな?って感じもするが、ラモーナを"女神のような女性"として象徴するためのオタク的ギミックなのだとしたら、この上なく粋で最高だ。あと、音楽とかバンドとかにまつわる小ネタもいっぱいあるみたいだが、筆者はゲーム以上に音楽には疎いので、今回は割愛する。とにもかくにも、どうかラモーナの八度目の恋が、末永くネールの愛で包まれますように。

(鑑賞日:2017.9.12)


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Posted byMr.Alan Smithee

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