[No.442] 2048:ノーウェア・トゥ・ラン(2048:NOWHERE TO RUN) <68点> 【ネタバレ感想】

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・英語版:unknown
・日本語版:unknown

 プロレスラーは"少女"の夢を見るか?

三文あらすじ:時は2048年、人造人間“レプリカント”のサパー(デイヴ・バティスタ)は、酸性雨降りしきるスラムの片隅で逃亡生活を送っていた。しかし、ある少女の身に危険が迫ったとき、押し殺していた彼の凶暴性が発露する。再び住処を失ったサパーには、もはや逃げ場など残っていないのだろうか・・・

<本編(5分16秒)>



~*~*~*~


 こないだ感想を書いた短編『最後の晩餐』及び『2036:NEXUS DAWN』に引き続き、巨匠リドリー・スコットの御曹司ルークくんが監督したショートフィルム。『最後の晩餐』は、先日やっとこさ日本でも公開された『エイリアン:コヴェナント』の前日譚だったわけだが、『2036:NEXUS~』及び本作は、来月公開予定の『ブレードランナー 2049』の前日譚である。近ごろ、自作のリメイク(リブート)の前日譚を息子に監督させるという巨匠ならではの方法で遺産の生前贈与を行っているリドリー御大。しかも、『ブレードランナー』の前日譚は、この後さらにもう一本あるそうだ。親バカなおじいちゃんだなぁ、と微笑ましく見守りたい反面、あまりの同族経営感に客が引いてしまって、期待の最新作が不入りなんてことになるのでは?と少し心配でもある。

 さて、前作では、本編で大々的に悪役として活躍するであろうウォレスさんのエピソード0を描いたルークくんだが、彼が本作で描くのは、哀愁漂う人造人間サパーの物語。演じるのは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で一躍映画界の人気者となったプロレスラー、デイヴ・バティスタである。同じくプロレスラー出身のアクション俳優ザ・ロック様が開拓した道の上とはいえ、中々堂々たる歩きっぷり。『ガーディアンズ1』のときは控え目だった演技も、『2』の頃にはより"陽"の方向にパワーアップし、本作ではついに"陰"のシリアスな演技まで本格的に披露するようになった。もし本編で彼のシリアス演技が評価されれば、能天気マッチョ・スターのロック様とはまた違う独自のキャリア・ラインが見えてくるだろう。そういった意味でも本編公開が非常に楽しみだ。

 本作の内容であるが、要は、逃亡者としてスラムで貧しい隠遁生活を送っていたサパーが、小さな友達とそのお母さんの危機に際して自身の凶暴性を解放、彼女らを救うことこそできたものの、もはやそこにはいられず、彼はまた流れていく…。そんな感じかな。ラストで「ヤツを見つけたぜ!」と電話で報告する男が登場するが、これはやはり"ブレードランナー"である本編主人公Kへの密告なのだろうか。前日譚シリーズの最終作では、いよいよ動き出したKの雄姿、すなわち、今をときめくライアン・ゴズリングの活躍が垣間見えるのかもしれない。

 最後に、サパーがお友だちの女の子にあげたプレゼントだが、これはグレアム・グリーンが1940年に出版した『権力と栄光(The Power and the Glory)』という書籍である。Amazonに載っているこの本のあらすじは、こうだ。

戒律を冒した神父はそれでも神聖なのか?酒を手放せず、農家の女と関係を持ち私生児までもうけてしまう通称「ウィスキー坊主」は、教会を悪と信じる警部の執拗な追跡を受け、道なき道を行く必死の逃亡を続けていた。だが、逮捕を焦る警部が、なじみの神父を匿う信心深い村人を見せしめに射殺し始めた時、神父は大きな決断を迫られる―共産主義革命の嵐が吹き荒れる灼熱の1930年代メキシコを舞台にした巨匠の最高傑作。



 この物語は、骨組みだけ抜き取ればそれままレプリカントという存在にスライド可能だな。人類の定めた戒律に背き過剰な自我を持ってしまった人造人間。彼らを処分しようと迫るブレードランナー。大切な人々が危険に晒されたとき、レプリカントは、優しさと凶暴さ、すなわち、人間性と機械性(または、その逆)の間で思い悩む…。広く『ブレードランナー』というフレームでもそうだろうし、より具体的に本作のストーリーを見てみても、しっかりとこの骨組みは踏襲されている。

 中々良い引用じゃないか、ルークくん。まぁ、もしかしたら、『権力と栄光』というガジェットはリドリー御大が思い付いたのかもしれないけどな。ひょっとしたら、ルークくんもまた、親の偉大さと自身の凡才さの間で思い悩む子羊の一人なのかもしれない。

点数:68/100点
 前作に比べてより本質的な部分で『ブレードランナー』に近づいた気がするので、3点アップの68点。

(鑑賞日[初]:2017.9.17)

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