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キャッチコピー
・英語版:This Summer 3D Shows Its Teeth
・日本語版:朗報!この衝撃映像で奇跡のR15指定!全国350万人の高校生諸君。さぁ、大人への階段を駆け上がろう!

 さぁ、"パーティー"を始めよう。

三文あらすじ:大勢の若者で賑わうアメリカ・アリゾナ州のヴィクトリア湖。突如発生した地震によって生じた湖底の亀裂から現れたのは、200万年前に絶滅したはずの凶暴なピラニアの大群だった。宴に盛り上がる湖畔が、瞬く間の内に血に染められていく・・・


~*~*~*~


 神無月。セミたちはしんと静まり返り、太陽はとうの昔にいきり立つことをやめた。神の慈悲無きこの季節、農家の人々は収穫に精を出し、食通は冬眠を控えた熊のように食べ歩きに精を出し、パーティー・ピーポーたちは来るべきハロウィンに向けてせっせせっせとコスプレ選びに精を出す。というわけで、今回感想を書きたいのは、神に見捨てられ、秋どころか夏も迎えられぬまま凶悪なモンスターの餌食となってしまったパリピーたちのお話。スプラッター映画界の若き天才アレクサンドル・アジャが2010年に監督した『ピラニア3D』である。

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 ホラー映画、あるいは、モンスター・パニック映画ファンなら当然ご存知の通り、本作は、『ハウリング』や『グレムリン』で有名なホラー映画界の巨匠ジョー・ダンテが1978年に監督した『ピラニア』のリメイク作品である。B級映画界のレジェンド、ロジャー・コーマンのお膝元で『ジョーズ』の二番煎じとして製作された同作は、"ピラニアもの"というひとつのジャンルを築いた金字塔。また、ロブ・ボッティンやフィル・ティペットなど、後に映画界の至宝となる特殊効果の達人たちが若手時代に手掛けた作品でもあるから、モンスター・パニック好きなら鑑賞必須のクラシックでもある。

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 では、ホラー映画の新時代を担うアレクサンドル・アジャは、そんな名作をどうやって現代的に蘇らせたか。筆者が一番称賛したい大胆な改変は、冒頭でも少しだけ触れた通り、犠牲者をパリピーにしてしまったというところである。確かにオリジナルにおいても、小さな悪魔に食い散らかされるのは、川開きに浮かれる市井の一般人だった。しかし、彼らは、主人公らの忠告を無視した市長(市長じゃなくてただの有力者だったかも。)が川開きを強行した結果、軍が極秘裏に誕生させたモンスター・ピラニアに食べられた、という"哀れなる被害者"であった。しかし、本作の犠牲者たちは違う。

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 彼らは、心技体揃った"パリピー"だ。ところ構わずおっぱいをさらけ出し、酒と薬に溺れ、昼夜を問わずドンチャンと騒ぎまくる。あろうことか、保安官の忠告にも関わらずパーティーを中止しなかったのは、他でもない彼ら自身。つまり、こういうことだ。本作の犠牲者たちは、およそ"ホラー映画"という枠組みにおける倫理観から言えば、完全なる"罪人"なのであって、ピラニアによる捕食・殺害は、罪深きパリピーに対する"鉄槌"なのである。

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 この"罪の集約"は、本当に上手いと思う。およそ全ての"モンスター・パニック・マニア"が欲しているものは、実は"モンスターの勇姿"である。主人公の勇敢な活躍でもなければ、極限状態で露になる人間の本質なんかでもない。モンスターが人を喰う。これを観たいんだ。それは、裏を返せば、犠牲者に同情の余地など必要ないということに他ならない。浮かれポンチの"リア充"や浮かれチンポの"パリピー"たちが絶叫しながら食い殺されていけば、もう他には何もいらないのである。

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 また、このように市長や軍(やマッド・サイエンティスト)といった"帰責性ある第三者"を省いた構成は、実は極めて"現代的"な改変でもあると筆者は思う。オリジナル版が公開された70年代後半から80年代という時代は、"悪者は政府"という風潮が強かった。強大な権力は理知的な一般人になど耳を貸さず、それどころか"極秘の研究"や"陰謀"によって、彼らを危険に晒している。当時の映画は、そんなのばっかりだ。しかし、あらゆる個人が"情報発信源"となり、ラップトップ一台あれば莫大な富も強大な権力も手にし得る21世紀の現代において、そんな単純な善悪の対立構造は説得力を持たない。権力も自由もあまねく分散され、その当然の帰結として"責任"もまた、万人それぞれに帰属する。本作がオリジナルを改変し、犠牲者自身に罪を集約した背景には、そんな社会状況の変化もあるのではないかな。

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 あぁ、なんだかトンチンカンなことを小難しそうに言ってしまった。次のように言い直そう。本作は、心置きなくピラニアによる大虐殺を堪能できる傑作である。本作の評価なんて、もうこの一文だけで十分だ。上記改変は言うに及ばず、いかにして人体を損壊するかという課題への飽くなき探求心も素晴らしければ、いざ具現化されたアイデアたちのフレッシュさには心踊らされっぱなしだ。おっぱいの出し惜しみなんて決してしないし、きちんと童貞が成長して終幕するし、ラストでは「あのピラニアたちはまだ"子供"だったんだ…。」という最高のオチが用意されている。"純粋悪"たるパリピーたちの破廉恥な姿を愛で、彼らに嫉妬の念を覚え始めた頃には、その悲鳴と血しぶきを存分に堪能できるなんて、こんなに素晴らしい"パーティー"は有史以来他に類を見ないだろう。

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 加えて、本作には映画ファンへのサービスも随所に詰まっている。端的なのは、やはりキャスティングだ。まずは何と言っても、遥か古代から甦った殺人ピラニアの記念すべき犠牲者第一号となるマシュー・ボイドという老人。彼を演じるのは、モンスター・パニック史上最高傑作である『ジョーズ』において、巨大鮫と勇敢な死闘を繰り広げるいぶし銀な海洋学者マット・フーパーを演じたリチャード・ドレイファスである。ちなみに、彼が釣り針を垂らしながら口ずさんでいる曲『Show Me The Way To Go Home』は、『ジョーズ』において、ロイ・シャイダー演じるブロディ、ロバート・ショウ演じるクイント、そして、フーパーの三人が、オルカ号で大合唱していたあの歌である。さらにちなみに、ボイド老人が飲んでいるビールは“AMITY BEER”。もはや説明は不要だろうが、“アミティ”とは、『ジョーズ』の舞台である町の名前だ。

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 それから、タイムトラベルものの最高傑作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズからも、二人ほど参戦している。ひとりは、映画史上最も愛すべき科学者"ドク"ことエメット・ブラウン博士を演じたクリストファー・ロイド。本作では、殺人ピラニアの出自や生体を解説してくれる老人カール・グッドマンを好演している。そして、もうひとりは、時を駆けるロックンローラーの伴侶ジェニファー・パーカーをシリーズ2作目から演じたエリザベス・シュー。本作では、主人公を含む三人の子を育てながら町の平和も一手に担うシングル・マザー保安官ジュリー・フォレスターを熱演。ちなみに、この二人が共演するのは、『BTTF3』以来初めてのことらしい。

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 さらに付け加えるなら、残虐ホラーファンが大好きな映画監督イーライ・ロスの(カメオ)出演にも注目すべきであろう。『ホステル』、『アフターショック』、『グリーン・インフェルノ』などなど、"調子乗りがしっぺ返しをくらう系作品"のパイオニアであり、オーソリティーである。本作で彼が実に生き生きと演じているのは、湖畔で開催される"ウェット・Tシャツ・コンテスト"の司会者。みなさんはこのコンテストをご存知だろうか。白のTシャツを着た女性(Tシャツの下はノーブラが望ましい。千歩譲ってブラジャー、億歩譲ってビキニである。)に目掛けて放水し、Tシャツがスケスケになるのを楽しむという最高のイベント。筆者が敬愛する雑誌『映画秘宝』のアート・ディレクターにして悪魔主義者でもある高橋ヨシキ氏は、「日本の"ウェット・Tシャツ・コンテストの父"と呼ばれることが夢」と語っていたが、せっせとコスプレ衣装を選んでいる暇があるなら、我が国のパリピーたちも白のTシャツ一丁で湖に繰り出すべきだと筆者も思う。

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点数:89/100点
 エロ、グロ、痛快。時代遅れのプロットを大胆に改変し、およそホラー映画に必要とされる三拍子のみを純粋に追求した本作は、紛れもなく同ジャンルの傑作である。ルックスなんて関係ない。金も名声もここでは意味をなさない。飛び交う手足に興奮し、おぞましいモンスターの雄姿に喝采を送る“ボンクラたち”こそが、このパーティーの参加者。それでもまだまだ騒ぎ足りない"パリピー"の諸君は、次回、再び開催される死のパーティー『ピラニア リターンズ』でお会いしましょう。

(鑑賞日[初]:2017.10.2)

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Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

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