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キャッチコピー
・英語版:You'll never know what bit you.
・日本語版:見たら、最期!

 台風一過。
 ま、いっか。

三文あらすじ:アメリカ、メイン州の湖で、ダイバーが謎の生物によって下半身を食いちぎられる事件が発生する。ダイバーの死体から爬虫類のものと見られる巨大な歯の欠片が発見されたため、ニューヨークの博物館から調査にやってきた女性研究員ケリー・スコット(ブリジット・フォンダ)。彼女は、地元の密猟監視員ジャック・ウェルズ(ビル・プルマン)らと共に謎の生物の正体を追うが、やがて姿を現したのは、体長10mを超えた想像を絶する巨大ワニだった・・・


~*~*~*~


 昨日の夜は荒れたね(関東だと今日の朝だろうか。)。大げさではなく、木々は吹き飛び、波は砕け散る。避難を勧告するアラートはひっきりなしにファンファン鳴るし、救急車は休む間もなくピポパポ走る。そんな騒がしい嵐の夜だった。というわけで、一夜明け静けさを取り戻した台風一過の今回は、モンスター・パニック界、特に"ワニ映画界"を代表する名作、"静かな湖"こと『U.M.A レイク・プラシッド』の感想を書く。

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 世紀末の1999年に公開された本作は、監督スティーヴ・マイナーの手によって世に送り出された。その名の通り、今となってはマイナーなスティーヴ監督だが、実は『13日の金曜日』というビッグ・タイトルのプロデュース及びPart2とPart3の監督を務めていたり、子役時代のイライジャ・ウッドを一躍有名にしたSFラブ・ロマンス『フォーエバー・ヤング』という佳作を監督していたりする。だからだと思うが、本作は、概ね"正しいモンスター・パニック"に仕上がった。言い換えれば、まぁ、ベタということである。平和な田舎の湖で最初の犠牲者が出て、都会の女研究者が調査にやってきて、現地の若干粗野だがたくましくイケメンなレンジャー(的な人)と出会って、始めの内は衝突しながらも徐々に心を通わせていって、すったもんだの挙げ句モンスターを倒して、最後は無事に結ばれて終わる。過去作で言うと『トレマーズ』とほぼ同じプロット。しかも、筆者の大好きな「私は絶対に…絶対に行かないわ。」 ⇒ 次カットでセスナに乗る主人公というお約束シーンまである。あぁ、もう他には何もいらないさ。

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 主演2人もとっても良い感じ。ヒロインは、ブリジット・フォンダ。ニューヨーカーらしいツンツン感もある程度様になっているし、何よりセクシー。『ジャッキー・ブラウン』での"不健康なセクシーさ"も大変魅力的だったが、本作のような"健康的なセクシーさ"も全く違和感なく表現できている。そんな彼女のお相手を務めるヒーローは、『インデペンデンス・デイ』の米大統領としてお馴染み、俺たちのビル・プルマン。彼もまたセクシーな俳優だが、ブルース・ウィリスとかマイケル・マドセンみたいなちょっと疲れたセクシーさが、彼の持ち味である。

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 ベタなプロットに魅力的な登場人物。立ちはだかる敵はモンスター・パニック界の重鎮、巨大ワニ。もちろん、陳腐なベタばかり並べ立てたわけではない。特に、ビッカーマン夫人(ベティ・ホワイト)というおばあさんが巨大ワニを"餌付け"していた、という展開、及び実際に餌を与える瞬間を盗み見た際のビジュアルは、中々にフレッシュ。これだけ揃っていれば、本作は当然押しも押されぬ傑作になっていてしかるべきだ。しかし、 残念ながら、本作は傑作ではない。良作だし、こと"ワニ映画"に限って言うなら確実にジャンルを代表する一本であることは間違いないのだが、いかんせんクライマックスの不合理さ。これが決定的に良くない。

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 端的に言うと、本作は、憎きモンスターを華々しく駆逐すべきクライマックスで、突然、動物愛護の精神を盛り込んでくるのである。まず、巨大ワニをペットとして捉えていたおばあさんが「あの子を殺さないで~」と懇願する。これは、まぁ良いだろう。おばあさんはハナから"ワニ側"のキャラクターだし、おぞましい生物への溺愛は、不気味さを醸し出す良ギミックだ。しかし、本作には、ワニと相対する主人公勢力にケリーという研究者と、大金持ちのワニ大好きおじさんヘクター・サイア(オリヴァー・プラット)というキャラクターがいる。こいつらが、クライマックスでワニの不殺生(と筋弛緩剤による捕獲)を声高に訴えるのである。

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 これ、萎えるんですよね。相手が自然だからこそ、人類はおごり高ぶらず、同じ"生物"として正々堂々と命を懸けて戦えばよろしい。本作と同様に"生物へのリスペクト"というテーマを内包していた『ジュラシック・パーク』だって、そうしたでしょうに(まぁ、『ジュラシック・ワールド』まではたぶん明確な恐竜殺害シーンは無かったと思うが。あ、『ロスト・ワールド』でイアンの娘に蹴り飛ばされたヴェロキ・ラプトルは、あの後死んでるかもな。)。もし、どうしてもどうしてもワニを生かしたいのなら、救援が到着するまでの3時間の間にヘクターが勝手に捕獲しに行った、とすべきだったんじゃないか。その尻拭いとして主人公らがてんやわんやし、なし崩し的にワニの捕獲に成功する。これでいいじゃない。せっかくヘクターはワニへの愛を越えてもはや神格化しているというクレイジーなキャラなのだから、これを利用しない手はないだろう。

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 あと、こちらは極めて個人的な苦情だが、本作には、無駄な色恋沙汰が多すぎる。こういうシンプルなモンスター・パニックっていうのは、ヒーローとヒロインの恋のみを帰結すればそれで良い。ヒロインたるケリーが博物館の上司であるケヴィン(アダム・アーキン)に浮気されていた、しかも、その相手は同僚であり友達でもある女性だった。そんな設定はいらない。この手の作品に必須のキャラクターであるクレイジー大金持ちが、地元の女性保安官となんかイチャイチャする展開。それもいらない。加えて、ケヴィンにしてもヘクターにしても、イケてないくせに美人にモテるのである。また"『タッカー&ゲイル』現象"だ。ダメだっつってんだろ、分不相応な恋愛は!

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 ってゆーか、先述の不合理なクライマックスは、よくよく考えてみればケヴィンの浮気展開のせいとも言えるんだよな。つまり、クライマックスの動物愛護が極めて唐突、かつ、うすら寒く感じられるのは、やはりケリーがワニ擁護派に回ってしまったからなんだと思う。ヘクターは別に良い。彼は元々"ワニ命"の変人だ。しかし、ケリーは違う。もちろん、彼女はニューヨークの博物館で研究員をしているから、古代生物や巨大生物に並々ならぬ興味があるだろう。しかし、少なくとも本作の描写だけでは、とてもそうは見えない。なぜなら、ケリーがメイン州の静かな湖に派遣されたのは、自らが熱烈に調査を希望したからではなく、浮気がバレたケヴィンが「頭を冷やしてきなよ」とばかりに送り出したから。また、その後、「危険だから君は帰った方がいいよ。」というジャックの親切な忠告に対しても、ケリーは、浮気されたという話を持ち出した上で「まだ帰りたくないの…。」と打ち明ける。よって、こんな恋愛脳丸出しのねぇちゃんがクライマックスで唐突に「ワニだって生きてるの!殺さないで!」なんて言い出しても、それは全く不合理な偽善にしか映らないのである。

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 では、主要人物、モンスター、各種演出と全てきちんとまとまっていた本作にそのような"不純物"を紛れ込ませた犯人は誰か。筆者の独断的な推理によると、それは脚本を担当したデビッド・E・ケリーである。まぁ、動物愛護展開とか、出過ぎた色恋設定とかは、余程監督が手直ししたのでなければ、おそらく脚本家のアイデアと思って正解だろう。加えて、このデビッド・E・ケリーという男は、どうやらドラマ畑の人物らしいのである。アメリカのドラマって…そうでしょう? そのときどきの世相とか、観客の指向とかをすぐに反映する。ときに物語の論理や情緒をぶち壊してでもだ。事実、デビッド・E・ケリーの代表作『アリー・MY・ラブ』を高校生のときに鑑賞した筆者は、まだナイーブだった度肝を根こそぎ引っこ抜かれてしまった。あまりにも直前の話を無きものにした展開、あまりにも尻切れトンボな最終回。当時は大学受験真っ只中だったから見逃したが、今だったら飢えたワニのごとく怒り狂っているところだ。

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 まぁ、実際のところは分からないけれど。もしかしたら、プロデューサーから無理矢理指示されたのかもしれないしな。荒れ模様の暇に明かして粗探しなどせず、あの頃のように「ま、いっか。」と見逃しておくのが正解であろう。

点数:80/100点
 モンスター・パニックというジャンルは、おおよそ次の7タイプにカテゴライズできる。サメもの、ヘビもの、昆虫もの、哺乳類もの、恐竜もの、架空の生物もの、そして、ワニものである(ピラニアものをどうするかは悩ましいところである。)。そんな中、本作は、同ジャンルの一翼を担うカテゴリーの代表作として充分に立派な秀作だ。脚本ばかりを責めるのではなく、マイナー監督マイナーさんの丁寧な仕事ぶりをぜひ誉めてあげてほしい。ちなみに、マイナーさんは本作にこっそりカメオ出演している。ケリーを湖まで送ってくれたあのセスナの操縦士が彼。

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 あと、本文で書き損なってしまったが、本作の巨大ワニを制作したのは、なんとあのSFX界のレジェンド、スタン・ウィンストンである。代表作は…例えば『遊星からの物体X』、『ターミネーター』シリーズ(1~3)、『エイリアン2』『プレデター』『リバイアサン』、『シザーハンズ』、『バットマン・リターンズ』、『ジュラシック・パーク』シリーズ(1~3)、あと『アイアンマン』などなど。ざっと挙げただけでもこのラインナップ。特に、筆者世代の映画好きにとっては感謝してもしきれない偉大な巨匠であり、"俺たちのスタン・ウィンストン"だ。彼は既に2008年にこの世を去っているが、その魂が静かな湖畔のように安らいでいることを、切に願うばかりである。

(鑑賞日:2017.10.22)

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Posted byMr.Alan Smithee

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