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キャッチコピー
・英語版:Evil takes many forms
・日本語版:闇だけが彼女を救う…

 辛い、くだらない。
 もう、魔女になるしかない。

三文あらすじ:1630年、ニューイングランド。ウィリアム(ラルフ・アイネソン)とキャサリン(ケイト・ディッキー)の夫婦は、敬けんなキリスト教生活を送るために5人の子どもたちと森の近くにある荒地へとやって来た。しかし、赤ん坊のサムが何者かに連れ去られ、行方不明となってしまう。家族が悲しみに沈む中、父ウィリアムは、娘のトマシン(アニャ・テイラー=ジョイ)が魔女ではないかとの疑いを抱き、疑心暗鬼となった家族は、狂気の淵へと転がり落ちていく・・・


~*~*~*~


 2016年の2月にアメリカで公開され、ホラーファンから絶賛された低予算映画。正確に言うと絶賛したのは批評家だけなのかな。今日付けのRotten Tomatoesを見てみると、批評家の評価が91%なのに対して、一般観客は57%の低評価という"『最後のジェダイ』現象"が発生している。確かに日本でも昨年2017年7月の公開後、映画好き以外の口からその話題を聞いたことはなかった。そんな中、個人的には、シャマラン復活の大傑作『スプリット』アニャ・テイラー=ジョイが初主演した作品ということで注目していたのだが、ブルブルと怖がっている内にすっかり忘れてしまっていたので、新年明けましてのこのタイミングでやっとこさ鑑賞してみた、というわけだ。

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 要は、魔女怖ぇぞ!というお話。1600年代のヨーロッパ(イギリス?)が舞台なので、それこそシャマランの『ヴィレッジ』みたいな"大どんでん返し"を期待しかねないが、本作で哀れな一家が呪われる忌まわしき土地は、どこぞの自然保護区などではもちろんない。むしろ、シャマランがプロデュースした『デビル』と同様、魔女おる…?魔女おる…?魔女……おっっった!という身も蓋もないホラー・ストーリーである。しかしながら、安っぽさは微塵も感じられない。昨今の"魔女演出"として我々が思い浮かべるのは、まぁ"耳元で囁く無数のコショコショ声"と"ぶっきらぼうなバイオリンの不協和音"で、確かにその二つはそのまま使われているものの、その他の演出が実に丁寧で同時に(良い意味で)不親切なため、全体としては極上の恐怖を感じることができる。

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 あとなんと言っても"アニャ力(りょく)"は度外視し得ない。『スプリット』でもそうだったのだが、序盤の内こそ、ワォ…すごく離れ目で魚みたいなオナゴだわ…と思うものの、中盤を過ぎるとすっごく可愛く見えてくる。でも、やっぱり最後までどこかしらの不気味さは維持されている。なんか…"無表情"なんだよな。まぁ、それはアニャ嬢がまだ経験を積んでいないため、感情表現の起伏があまり無いからなのかもしれないし、あるいは、本作も『スプリット』も結局は"被害者転じてスーパーナチュラル"な話だから、あえてそういう演技をしているからなのかもしれない。いずれにせよ、アニャさん、筆者は非常に好きです。

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 そんなアニャさんは、結局は本作ラストで魔女になってしまう。要は、いないいないばぁの"いない"の隙に赤ちゃんを魔女に連れ去られ、そのこともあって母から辛く当たられ、弟と森に行ってはぐれた隙に弟が魔女に呪われ、挙げ句に弟は死んでしまい、ソリの合わない双子の妹と弟から魔女呼ばわりされ、それを信じた母と父からも後ろ指を指され、最終的には、家族全滅の末、魔女の門を叩くことになる、そんな顛末。言ってしまえば、よくある"周りの愚か者に振り回される内、無垢な主人公がダーク・サイドに堕ちてしまうもの"である。そういう意味では、思いきって『スター・ウォーズ』のプリクエルみたいな映画!と言ってしまってもいいだろう(余談だが、たぶん、双子が先行して悪魔と契約した、というのは事実なのだろうな。タイトルの「W」が「VV」になっているのは中世に使われていた字体だからということらしいが、同時に"双子"のモチーフにもなっているのではないだろうか。)。

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 そんな系譜の作品として、本作は持って行き方が抜群に上手い。ここは『スター・ウォーズ』との大きな相違点だ。まぁ、確かに両親がアニャさんを魔女だと断定する瞬間は、若干論理や段取りが飛んでいるようにも思える。弟の死亡だけではなく、ポルターガイスト的な恐怖現象を畳み掛けた上でないと、両親が導き出すアニャ=魔女の方程式は、さすがにやや説得力を欠くと言わざるを得ない。しかし、結局アニャさんが悪魔と契約し魔女の仲間になるというその決断は、相当に説得的だ。なぜなら、アニャさんは、もうどうしようもないから。そもそも、アニャ家は、元いた村の宗教戒律に従わず追放されたのだから、家族が全滅し独りぼっちになったとはいえ、余程合理的な理由がないと受け入れられないだろう。では、この現状をどう説明する? 両親も弟や妹たちも、みんな魔女に殺されてしまったのよ…。それじゃあ、お前も魔女だな!の繰り返しになるに決まっている。疫病が蔓延して…。それも当時の医療水準では、パンデミックを防ぐために追い出されるのがオチだろう。クマに襲われまして…というのも、村の男たちが馬をひとっ走りさせればたちどころにバレる浅はかなウソだ。

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 というわけで、個人的にアニャ家の追い込み具合には若干の甘さを感じたものの、そもそもの孤立をしっかり建て付けられていたため、総体的には非常に満足なダーク・サイド堕ちだった、というのが、アニャさんに送る筆者なりの追悼の感想である。

点数:72/100点
 本作は、ゴリンゴリンにキリスト教を下敷きにした作品なので、本当に楽しみたいならその辺りの造詣が必須である。愚かにも筆者はキリスト教的な教養がほぼ皆無なので、実は本作を語る資格など元から無いのかもしれない。しかしながら、人の集団からはぐれるということ、その先に待つ過酷さ、自らの"正義"、"真実"、そういったファクターは、我々の現代社会においてもそう変わるものではない。早い人では今日から、遅くとも大抵は明日(日付変わって昨日、今日)からまた"仕事"なるものが始まるようだが、神無き無慈悲な同調圧力に苦しむ"社会人"のみなさんは、ぜひ本作をご覧になり、新たな年の振る舞い方をご一考いただきたい。ちなみに、実は筆者は、アニャ嬢同様、ずいぶん前から"ダーク・サイド"に堕ちてしまった者の一人だったりする。

(鑑賞日[初]:2018.1.4)

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Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

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