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キャッチコピー
・英語版:unknown
・日本語版:未熟なり、五ェ門…!

 斬るのは未熟な我が心!

三文あらすじ:日本の伊豆沖を進む賭博船で、若き用心棒・石川五ェ門(声:浪川大輔)は、船を破壊しようとする大男、"バミューダの亡霊"ことホーク(声:土師孝也)を一旦は追い詰めるが、すんでのところで逃げられてしまった上、雇い主である鉄竜会の組長(声:菅生隆之)が死亡してしまう。一方、賭博船から大金を奪うことに成功し、アジトで祝杯をあげていたルパン三世(声:栗田貫一)、次元大介(声:小林清志)、峰不二子(声:沢城みゆき)の三人は、ホークの急襲を命からがらかわして逃げる。再びホークの前に立ちはだかるも敗北してしまった五ェ門は、過酷な修行の末、三度(みたび)最強の敵との死闘に臨むのだが・・・


~*~*~*~


 TVアニメ(1st)シリーズ放映開始40周年の節目からリブートされた新生ルパン三世。2012年のTVシリーズ『峰不二子という女』、2014年の劇場用作品『次元大介の墓標』、2015年(~2016年)のTV4thシリーズ『ルパン三世』に次ぐ劇場用作品が、本作『血煙の石川五ェ門』である。ルパン・ファンの端くれとして、筆者は公開日である2017年2月4日に実弟随伴の元で本作を鑑賞した。しかし、何やら友人の結婚式に際したオープニングやらプロフィールやら余興やらのムービー作りに忙殺され、感想を書き忘れていたのである。こんなことではダメだ。誰に強いられたわけでもないが、だからこそ観た作品の感想はきちんと書かなければ。まだまだ未熟な筆者の映画修行は、今年も続く。

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 さて、お馴染みルパン・ファミリーの中でも、石川五ェ門という男は意外と勘違いされがちなキャラクターではないかと思う。寡黙でストイックで時代錯誤な侍キャラ。最強の刀"斬鉄剣"であらゆる物を両断に切り伏せる(例外は、コンニャクとか、ベイルート銀行の金庫とか、パンドラの箱とか、あと個人的には"花"も加えておきたい。)。ルパン、次元、不二子の三人を縁の下からお守りする用心棒といったイメージもある。また、特にTVアニメ2ndシーズンやTVスペシャル以降は、硬派を装いつつことあるごとに一目惚れするハレンチ侍な一面も。しかし、元々の彼はそんな人ではなかった。例えば、TV1stシーズン第5話『十三代五ェ門登場』で"伊賀の死神"百地三太夫の愛弟子として登場した五ェ門は、ルパンの命を狙う最強の刺客だった。しかし、百地の裏切りやルパンの"粋"を目の当たりにし、次第にルパンと共闘し始めるのである。とはいえ、完全に馴れ合ったりはしない。あくまで"ルパンを他人に殺されたくない"という建前の元、彼はルパンを助ける。石川五ェ門という男は、言ってみれば"元祖べジータ"なのである(原作コミックだともうちょっとブレたキャラだが。)。

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 この点、本作は、中々見事な切り口で五ェ門を再定義してみせたと思う。鉄竜会の組長 稲庭牧男に見出だされて彼の用心棒を務めていた五ェ門は、その使命を全うできず、忠義に従って最強カウボーイ ホークへの仇討ちを開始する。しかし、居合抜きを見切られ完膚無きまでに敗北。ここで彼の胸中には、稲庭への忠義に加えて"アイデンティティーの奪還"という動機が芽生える。バラバラに破壊されてしまった刀を我々に馴染みある斬鉄剣のフォルムに修理した五ェ門がトボトボと去っていくとき、ルパンが「どうやら "命より大事なもん "を奪われたようだ…。」と発言するが、同じくルパン三世自身のアイデンティティー奪還譚であった『ルパン vs 複製人間』を魂のバイブルと位置付ける筆者のようなファンは、「そうそう…。」としみじみ感じ入る。

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 そして、ラスト・バトル。五感を全て捨て、"最速の感覚"を手に入れた五ェ門は、見事ホークを圧倒。修行中もバトル中も、慰めたり、助太刀したり、ましてや馴れ合ったりなんかせず、ただ"男"として五ェ門を見守ったルパンと次元。そんな彼らへの"借り"を返すため、駆け付けた銭形の前に立ちはだかる侍。確かに"借り"という表現が最もしっくりくるが、より広い意味では"恩義""忠義"と換言してもいいだろう。ルパンと五ェ門に主従関係なんて絶対に無いけれど、本作ラストでは、"男の美学"に則って"共闘"したルパンと次元に対し、五ェ門が"用心棒"として返礼した、と筆者は思っている。「ルパン クン!!」と言ってうれしそうに駆け寄ってきた原作版と比較すると、余程いぶし銀で現代的な"和解"である。

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 また、随所に散りばめられたオマージュも楽しい。例えば、賭博船から大金を盗み去ったルパン、次元、不二子がアジトでグレン・キースを酌み交わしていると、そこにオートバイに乗ったホークが飛び込んでくるシーン。屋外から突っ込んできたオートバイが壁に突き刺さるというビジュアルは、TVアニメのプレゼン用に製作されたパイロット・フィルムの一コマを想起させる。

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 そのオートバイを盗まれた地元の不良青年と彼の友人である"伊豆の青いイナズマ"が、海沿いの道で今度は白バイを駆るホークと遭遇するシーン。ホークの投げた葉巻がおでこに直撃したイナズマ氏はハンドル操作を誤り、車がガードレールを突き破る。ここは、TVアニメ1stシーズンのオープニングに似たようなシーンがある。

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 それから、ラスト・バトルでホークが寺を崩壊させるシーン。土煙の中から姿を現すのは、巨大な仏像である。ここで思い出すべきは、劇場版第1作『ルパン vs 複製人間』の冒頭。ルパンの検視報告が表示される際の背景は、同じく仏像であった。同作のストーリーに全く関係の無い仏像が冒頭で登場するのは、ルパンの死に落胆した銭形が山寺の寺男になるという本編ではカットされてしまったシークエンスの名残である、というのは有名な話だ。

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 そんな感じで個人的には今回も満足な作品だったわけだが、よくよく考えてみれば、五ェ門はなぜ稲庭にそこまでの忠義を感じていたのか、という点があやふやな気もする。物語は五ェ門が既に稲庭の用心棒に就任しているところから始まり、その後、回想シーンも台詞による説明も無いので、我々は、五ェ門が稲庭の用心棒を引き受けた経緯を知ることができない。おまけに、稲庭が部下に見捨てられて死んでしまうシーンでは、そもそも狡猾なキャラである西郷兄弟だけでなく、その辺のモブまで「あぁ、そうだな、見捨てよう。」と賛同するため、我々としては、あれ?ひょっとして稲庭って基本的に人望の無いしょーもない人なん? との疑問を抱いてしまう。

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 しかしながら、筆者はこのように解釈している。おそらく、稲庭は実際たいした人物ではないのである。五ェ門が彼の用心棒を引き受けたのは、まぁ、空腹で行き倒れそうになったところで握り飯をもらったとか、そのくらいの理由だろう。しょーもない施しに対して大げさに忠義を感じるというのは、往年の五ェ門にはまま見受けられたことだ。しかし、彼は、ホークとの戦いの中で自らを見つめ直し、稲庭への忠義というよりは自身のアイデンティティーのために命を賭ける。その結果、ルパンや次元に対して、男と男の真の"忠義"を見出だすのである。

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 もちろん、先述の通り、彼らの間には主従関係など無い。これは"忠義"というカビの生えた概念、あるいは、"侍"という時代遅れの戦士に対する現代的な再定義だ。かつて権力者の"家"に仕えていた侍たち。しかし、現代社会において"家"というシステムは機能しない。実際、五ェ門は新たに鉄竜会のトップになった若頭 稲庭Jr.との「3日以内に敵を取る。」という約束を反故にしてしまう。現代版の侍が寄って立つべきは、もっと個人的な繋がりだ。そして、我らが斬鉄の侍が信奉すべきは、もちろん稲庭というおっさんではない。おにぎりの贈与などという筆者の未熟な予想はさておき、稲庭と五ェ門との関係性がろくに描写されないのは、そのままズバリ、彼らにはろくな関係性が無いから、と解釈すべきであろう。では、五ェ門が真に"忠義"を感じるべき相手、すなわち、ルパンや次元との関係性。これは、しっかりといぶし銀に描かれている。付け加えるなら、古来より"忠義"などという動機を持たないメリケンの敵を設定したことも、本作のテーマを際立たせる上で一役買っていると見るべきだろう。

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 最後に今後の展開であるが、これはもうやっぱり『vs 複製人間』に繋がるとしか思えない。銭形が上司から「なぜこの件にそこまでこだわる?」と問われた際、彼は前作でヤエル・奥崎が作ったルパン、次元、不二子の墓標を想起している。それに、ホークの雇い主。これは誰だ? 決まってんじゃん、マモーじゃん。もちろん、あの広大な屋敷がマモー(あるいは、ハワード・ロックウッド)の持ち物だというヒントは無い。あんな幼女も『vs 複製人間』には出てこなかった(ジョルジョデ・キリコの絵画『通りの神秘と憂愁』を模したシーンで輪回ししていた少女だったりして。)。でも、やってくれ、頼むから。峰不二子とはいかなる"女"か、次元大介とはいかなる"ガンマン"か、石川五ェ門とはいかなる"侍"かという再定義を試みてきた新生ルパン三世。今後、銭形はいかなる"刑事"か(あるいは、銭形が信じるのはいかなる"正義"か)という作品をやって(既に鈴木亮平主演で銭形のドラマが放送されたみたいだが。)、その上で満を持してルパン三世とはいかなる"男"かを再定義する。やばい、考えただけでゲロ吐きそうなほど興奮する。まぁ、もちろんそれは筆者の独断による余りにも未熟な予想だが、なんとかやってくれないかなぁ。

点数:84/100点
 新生ルパンに外れ無しと思わせてくれる安定のクオリティ。基本的にちゃんと有能に描かれてはいるものの、銭形がところどころで渋そうだがなんかダサく見えるシーンがあること、そして、常軌を逸した修行描写でバランスは取っているものの、やはり五ェ門というシリーズ屈指のファンタジー・キャラクターを完璧には"現実"とマッチさせられていないのではないか、という点で、個人的には前作ほどの熱狂には至らなかった。しかしながら、これで新シリーズの縦糸が"アイデンティティー"にあることはほぼ確定。最近NetflixやAmazonでTVアニメばかり観ている(『クジラの子らは砂上に歌う』と『メイド・イン・アビス』がおもしろかった。あと『少女終末旅行』も。)自身の未熟を切り伏せて、来るべきリブート版『ルパン vs 複製人間』を心待ちにしつつ、今年も厳しい映画修行を続けることにする。

(鑑賞日[初]:2017年2月4日)
(劇場:梅田ブルク7)

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Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

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2018/03/16 (Fri) 23:46 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/16 (Fri) 23:47 | EDIT | REPLY |   
Mr.Alan Smithee  
Re: ルパン三世 GREEN vs RED

拙稿お読みいただきありがとうございます。

『Green vs Red』は、随分昔に一度だけ観ました。
仰る通り、幻の押井ルパンを実現させるんだ!と
言わんばかりに、"ルパン三世"という人物を、例えば
"ヒーロー"のような"概念"にまで昇華させた、非常に
意欲的な作品だと思います。
当時の若かりし筆者は、「ここまで抽象化されると
乗れんなぁ…。」と思ったのですが、今改めて観てどう
感じるのか、近々感想を書いてみようと思います。

今後ともどうぞよろしく。

2018/03/27 (Tue) 10:16 | EDIT | REPLY |   

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