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キャッチコピー
・英語版:unknown
・日本語版:扉を開ければ、死が待っている

 柳は緑…にはならない。

三文あらすじ:売れないパンク・バンド"エイント・ライツ"は、ようやく決まった出演のため、オレゴンの僻地にある名も無きライブ・ハウスに出向く。殺伐とした雰囲気の中、なんとか無事に演奏を終えたバンド・メンバーたちだったが、楽屋(Green Room)で運悪く殺人現場を目撃してしまう。ライブ・ハウスを運営する冷酷なネオナチに命を狙われるメンバーたちは、楽屋に立て籠って打開策を模索するのだが・・・


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 アメリカだと2016年の春先から初夏に、日本だとかなり遅れて昨年2017年の2月に公開され、ホラーファンから絶賛された本作『グリーンルーム』。確かアメリカでは初登場1位になったんじゃなかったかな。また、その内容はもちろんのこと、主演のアントン・イェルチンがアメリカでの公開後に27歳という若さで死亡したというニュースでも話題になっていた作品。なんでも、自分の車と自宅の門(に設置された郵便受け)の間に挟まって死んでいたという中々ミステリアスな最期。まぁ、現場は割と急な下り坂になっていて、なおかつ車のギアはニュートラルだったらしいから、単純にうっかり押し潰されたというのが真相のようだ。近年では『ターミネーター4』のカイル・リース役に抜擢されたり、リブート版『スター・トレック』ではパヴェル・チェコフ役で3作全てに出演するなど、大作シーンでの活躍も目覚ましかっただけに、その死が惜しまれる(別に活躍してない人は死んでもいいというわけではないけれど。)。

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 さて、本作は、ファンたちの絶賛に違わず本当におもしろいホラー映画だ。大枠としては、スラッシャー・ムービーの定番である"田舎行ったらヤバいやつおったもの"。例えば、当ブログで既に感想を書いた作品だと、『悪魔のいけにえ』とか、『グリーン・インフェルノ』とかが当てはまるだろう。実際、主人公を含む若者たちがバンで長距離移動しているというのは『悪魔のいけにえ』の冒頭と同じだし(道中"スリム"な兄ちゃんに出会うのもある意味で共通。)、真上から森を空撮するシーンは、『グリーン・インフェルノ』のタイトル・バックを想起させる画作りだ。ただ、本作は、そんなベタな枠組みの中にも、"柳は緑、花は紅"の定石を外すいくつかの特筆すべきギミックが盛り込まれていて、本当に楽しい。

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 まず筆者が感銘を受けたのは、"主人公"である。"被害者"という意味では、パンク・バンド"エイント・ライツ"のメンバー全員が当てはまるのだが、実際に最後まで戦い続け生き残るのは、アントンさん演じるパットというキャラクター。もちろん、アントンさんの登り調子なフィルモグラフィーを知っていれば予想できたことだろうが、事前情報を一切入れずに観た筆者は至極ビックリした。つまり、パットという男は、一見しておよそホラー映画の主人公らしからぬキャラなのである。なんかナヨナヨしていて、モゴモゴしていて、今後の伸びしろもあまり無さそう。ネオナチ、つまり、狂信的な人種差別者集団(かつ、ヘロイン密造組織)が運営するライブ・ハウス兼密造所の楽屋(英語で言うと"Green Room")に立て籠ってからも、早々に負傷して"お荷物"状態になったり、"元気の出る話"と称して"ペイント・ゲーム"(ペイント弾を使用したサバゲのこと。)の話をし始めるも途中で邪険に中断されたり(この話は監督であるジェレミー・ソルニエの実体験そのままらしい。)。そんな脇役然とした立ち居振舞い。

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 しかしながら、彼は徐々に覚醒し、実弾をこめて、命を賭けて、真のサバイバルに挑んでいく。もちろん、後から考えれば、消去法でも彼が主人公であることは導けたかもしれない。武闘派のリース(ジョー・コール)は生き残らないだろうし、エイント・ライツ唯一の女性メンバーであるサム(アリア・ショウカット)は、あくまで"ヒロイン"として見るなら少し…ブサイクすぎる。緑髪のタイガー(カラム・ターナー)はまだ芽がありそうだが、序盤でのキャラ付けがやや弱い。というわけで、パットが獅子奮迅の活躍を見せることも自明の理だ。とはいえ、それでも筆者は、まぁ一人ぐらい死んで他は生き残るやろ、と思っていた。甘っちょろい。パット以外のエイント・ライツはバタバタと全滅し、彼は、事件の発端としてメンバー内で殺人を犯した他のバンド"カウキャッチャー"の女性メンバーであるアンバー(イモージェン・ブーツ)と生き残る(実際に殺人を犯したのはまた別のヤツ。)。この取り合わせも、ボーッと観ているとそれなりに衝撃。『キャビン』ほどのツイストではないにせよ、個人的には、あぁおもしろい展開だなぁと驚いた。

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 また、ホラーファン絶賛の玄人好みな一本ということで、本作では人体損壊描写も見所のひとつ。花火のように頭部が爆散したり、豆腐のように四肢が切断されたりといったスプラッター描写は無い。この手の作品では必需品であるはずのチェーンソーもとんとその姿を見せない(カッターナイフは出てくるけど。)。つまり、本作のグロは、現代的なスラッシャーとしてあまりにも地味なのである。第一、刃物が皮膚を切り裂く瞬間や猛犬が喉笛を食いちぎる瞬間などがほとんど映らず、損壊後の受傷結果だけを見せるシーンが多い。果たして大丈夫かな? これで我々は十分な戦慄を感じることができるのだろうか…? もちろん、できるのである。

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 特に筆者が身悶えするほど恐れおののいたのは、パットが左手をグサグサに切られたシーン。楽屋に立て込もったエイント・ライツ&アンバー嬢は、室内に1丁だけある拳銃と引き換えに電話を渡すというライブ・ハウス・オーナー ダーシー(パトリック・スチュワート)の提案を飲む。ドアの隙間からパットが拳銃を差し出した瞬間、罠だ!ということが判明。急いで手を引っ込めようとするも室外の猛者たちと(おそらく)引っ張り合いになったパットをカメラは室内から撮る。ぬああぁぁぁ!と喚くパット。銃は取られてしまったものの、やっとのことで室内に戻った彼の左手は、なんとグサグサに切られているのである。手首なんか、ほぼ直径の半分くらいが切断されていてブランブランしている。そんな我が手を直視し、目も当てられないくらい泣き叫ぶ哀れな男…。これは激烈に怖い! 室内から見ている我々の預かり知らぬところで、パットは何をされていたのか。そして、ギタリストであるパットは変わり果てた左手に何を思うのか。あからさまに描写はしない。しかし、我々の想像は明確な一方向に誘導される。敢えて見せないことで、当該シークエンスは近年稀に見る絶望のどん底に我々を叩き込むのである。

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 あと、地味に感銘を受けたのは、今だかつてこんなにも消火器が活躍したホラー映画ってあったかしら?という点。確かに、消火器っていうのは、およそ色んなホラーやアクションにおけるわりかしメジャーな武器だ。こと何らかの施設内での攻防では、手近な鈍器として消火器が抜群の攻撃力を発揮する。しかし、本作が見せる消火器の使い方は、より本来の用途に近い。つまり、敵を殴るのではなく、敵に向けて噴射し、怯ませたり、煙幕にしたりするのである。まぁ、よくよく考えてみれば、よほど訓練されたプロの精鋭でない限り、突然に消火器ブシャー!されたら怯むわな。合理的だが斬新という素敵な見せ方で以て、本作における消火器は、全体的にやんわりとグリーンがかった雰囲気の中、まさに万緑叢中紅一点の存在感を発揮しているのである。

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 物語の終幕も非常にクールだった。ネオナチのボスであるダーシーをぶち殺し、警察を待ちながら呆(ほう)けているパットとアンバー。バンのラジオからは、序盤でエイント・ライツが受けたインタビュー音源が流れている。あのとき、インタビュアーであるモヒカンでスリムな兄ちゃんの「無人島に連れていくとしたらどのバンド?」という問いに対し、モゴモゴと考えあぐねたパットは結局答えられなかった。パットの主人公化が決定的となった時点で、さすがの筆者もきっとこの先この前フリが効いてくるのだろうな?と予想していたのだが、その落とし方は、筆者の浅はかな予想を越えて粋。「やっと分かったよ…。無人島に連れていきたいバンド…。」とパットが語り始めるや、アンバーが「どうでもいいし。」と断ち切って終幕。すかさず、Creedence Clearwater Revivalの『Sinister Purpose』がノリノリで流れ始める。これがパットの"無人島バンド"なのだろうか。ちゃんと"パットの話はつまらない"という点も回収されているし、本当に最高のオチだ。

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 少しだけ釈然としなかったのは、数多のホラー映画(特にモンスター・パニックもの)に顕著な、主人公が序盤で見せる予知能力者ぶりだろうか。つまり、たまたま楽屋に忘れ物をしたので取りに戻ると、カウキャッチャーのでくの坊が同じメンバーの一人を殺していた、という状況から、エイント・ライツの面々が立て籠りを決意するまで、この間がやや早急、あるいは、若干の論理的欠落があるように見受けられるということ。まぁ、元々ライブ・ハウス側はヤバめなネオナチたちという前提はあるものの、現場保存や後の捜査協力という観点からすれば、ライブ・ハウス側がエイント・ライツを楽屋にいったん閉じ込めることも、直ちに非常事態ではないように思える。まぁ、作品の印象を左右するほど引っ掛かるわけではないのだが。

点数:80/100点
 日本では『IT』とか『ゲット・アウト』とかのセンセーションが強烈だった2017年に公開されたため、少し印象が薄くなってしまった感じもあるものの、極めて秀逸なホラー作品であることは間違いない(上で書き忘れたけど、楽屋の扉を一枚隔てた攻防というX軸方向のアクションから、終盤で楽屋とその床下にあるヘロイン密造所というY軸方向のアクションに切り替わる構成も見事。)。そういえば、タランティーノが絶賛したということでも話題になっていた。きっと、人種差別野郎をぶっ殺せ!という展開が、彼の琴線に触れたのだろう(『イングロ』『ジャンゴ』で似たようなことやってたし。)。ホラーが苦手な人には決してオススメできないが、新緑待ち遠しいこの時期にこそ、身を震わせながら観てもらいたい秀作である。

(鑑賞日[初]:2018.1.11)

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Posted byMr.Alan Smithee

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