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・英語版:Don't Let It Out
・日本語版:unknown

 ご子息は"モンスター・パニック"の夢を見るか?

三文あらすじ:シンセクト社の研究施設で開発が進められていた人工生命体の試作品L-9、通称"モーガン(Morgdn)"が、突如として研究者を襲い大怪我を負わせた。事態を調査するため、危機管理コンサルタントのリー・ウェザーズ(ケイト・マーラ)と心理評価の専門家アラン・シャピロ博士(ポール・ジアマッティ)が現地に派遣される。しかし、調査の最中にモーガンが再び混乱し始め・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 本作は、映画界、特にSF映画界の至宝リドリー・スコットの次男ルーク・スコットが監督したSFパニック作品である。確か本国では2016年に公開されたのだが、余りの低評価、低収益のせいで、日本では昨年2017年の春頃にDVDスルーでリリースされたのだったと記憶している。昨年はお父さんが監督を務めた『エイリアン:コヴェナント』とか、お父さんが製作総指揮を務めた『ブレードランナー 2049』が相次いで公開された"スコット・イヤー"だったのだから、それに絡めて本作も劇場公開してあげればよかったのに。まぁ、結果論から言えば、『エイリアン』も『ブレラン』も大コケしたんだけどさ…。

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 さて、話は本作『モーガン』についてであるが、世間の低評価とは裏腹、筆者は割と好きな作品だった。大枠としては、あらすじにも書いた通り、最新のテクノロジーによって生み出された"完全生物"が人智を超越した進化を見せ、創造主に牙をむく…というお父さんの十八番、かつ、今となってはややありがちなお話。モーガンを演じたアニャ・テイラー=ジョイの離れ目が印象的なクリーチャー造形も相まって、雰囲気はどことなくヴィンチェンゾ・ナタリの『スプライス』みたいな感じ。また、監督であるスコットくんがリドリー御大のご子息であるという事実を念頭に置くなら、当然『ブレードランナー』を想起してしかるべきだ。人の手で作り出された"レプリカント"のモーガン嬢は、果たして"電気羊の夢"を見るのだろうか。そんな固定観念を持って本作を鑑賞したSFファンは多いと思う。

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 そして、鑑賞を終えた数多のSFファンたちは、きっとこう思っただろう。何やってんのスコットくん。まんま『ブレラン』やん。 人里離れた研究施設のスタッフたちから心底愛されているという"娘属性"が強調されてはいるものの、モーガンちゃんは、言ってみればやはり"レプリカント"である。確かに、彼女はロイ・バッティのように明確な"本物思考"があるわけではなく、"お外に出て自由になりたい"という思春期の娘さんらしい願望の元で行動する。しかし、SF的テーマという意味において、それはまぁ、『ブレラン』の下位互換でしかない。また、本社から派遣されてくる主人公のリーさんは、まるでデッカード。モーガンの"査定"及び"処分"の使命を帯びた彼女の正体が、実はモーガンと同じ人造人間だった(正確には旧型のL4タイプ)というラストも、『ブレラン』ファンからすれば、うん、知ってた。という読後感しか生まれ得ないオチである。

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 つまるところ、本作は『ブレラン』以後のSF映画として何ら新規性を提示せず、あろうことか、同作を生み出した神の子が父の真似事おままごとで貴重な映画資源を無駄遣いした作品、とも言える。ただ、個人的には全然好感が持てた。まず、監督デビュー作であることを考慮するなら、演出が非常に丁寧と言ってあげて良いと思う。特に、リーさんがモーガンと初めて対面するシーンでは、ガラスの壁一枚を隔てて両者が会話するのだが、ここでモーガンとガラスに映るリーさんの像を重ねた演出を入れている、とか。ボンクラの筆者は、あぁ、これはリーさんとモーガンの"シンパシー"を象徴しているのであって、ひょっとしたら"ブレードランナー"であるはずのリーさんがゆくゆくモーガンに感情移入して逃亡の手助けをしたりするのかな…つまり…レズ版『ブレードランナー』か!などと邪推したのだが、実際はそうじゃない。要は、リーさんもモーガンと同じ人造人間だよ、という親切な示唆である(ちなみに、"モーガン"も"リー"もどちらも性別を越えて付けられる名だが、これは彼女(?)らがあくまで"人工物"であることの象徴らしい。)。同種の演出は、最終的にモーガンが唯一心を許したエイミー・メンサー博士(ローズ・レスリー)にも施されていたが、こちらが"シンパシー"を象徴しているのであろう。

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 更に、リーさんがレプリだったことの伏線という意味では、彼女がイケメン・コックのスキップ・ヴロンスキー氏(ボイド・ホルブルック)にいきなりキスされるシーンも上手かったと思う。明らかに美人で堅物なリーさんと明らかにヒーロー然としたイケメン・マッチョなスキップには、相見(あいまみ)えた瞬間からフラグが立っている。案の定、夜更けのポーチでのキス展開、そして、その際にリーさんが見せる戸惑いから、筆者のような愚か者は、おいおい…スコットくん…そんな安直な"リップ・サービス"は止めておくんなまし…と批評家風を吹かせる。しかし、これは、ラストで明かされる"リーさんはL9タイプのモーガンとは違い「感情」を排除した完璧な「製品」である"という事実の伏線。その瞬間はラブコメ・フラグにも見えたが、翻って考えれば、感情を知らぬアンドロイドが状況を処理するための"タイム・ラグ"にも見える。そんな絶妙の演技を披露したケイト・マーラ『オデッセイ』で既にお父さんとも仕事済み。)の貢献もデカい。

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 加えて特筆すべきは、ケイト・マーラは貢献だけでなく乳もデカい、という事実。髪型こそボーイッシュな短髪だが、リーさんは、パリッとしたスーツからこんもり浮き上がる圧倒的な巨乳の持ち主だ。ウツケな筆者などは、あぁ、彼女の乳を敢えて強調しているのは"母性"の象徴であって、やはりゆくゆくは彼女も他の研究者同様、モーガンを"娘"として愛し始めるのだな…?などと邪推していたのだが、これまた全くの的外れだった。彼女の美貌や巨乳は、リーさんが"完璧な女"であることの象徴だ。先述の通り、モーガンもリーも究極的には性別を超越した"製品"だが、あくまで"女型"である以上、女として最高スペックの外観を備えているのではないかな。

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 また、スキップ氏がリーさんになぜか吸い込まれるようにキスしたという事実、これも伏線と捉え得る。そもそも、研究者がモーガンに注ぐ愛情は、その熱意に比べて根拠がやや薄弱だ。もちろん、作中でしっかり彼らの交流を描けていないという脚本の落ち度なのかもしれないが、筆者は、彼らがモーガンに愛情を抱く原因は、人造人間が有する"魔性"なのではないかと思った。"完璧な生物"が持つ特性として、無条件に人を虜にする能力が備わっているというわけである。したがって、色気の無い軟禁生活だからつい…なんて言い訳していたスキップ氏は、恥じる必要など毛頭無い。彼はただ、リーさんの魔性に引き寄せられただけなのだから。

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 あと、本作を好ましく鑑賞する上でのポイントは、SF映画として観ないということじゃないかしら、と思う。現代科学の延長として思考実験を楽しむには、本作は明らかに新規性不足だ。しかし、モンスター・パニックとしてならどうだろう? モンパニには、斬新な概念も深淵な哲学も不要。人智を超越した存在に傲慢な人間がしっぺ返しを食らうというのが、このジャンルの大きな醍醐味である。その点、本作は十分に及第点だ。ラストで人造人間たることが判明したリーさんが、レストランで一人座っているシーン。モーガンやリーを"製品"として製造しているシンセクト社の重役は、L4タイプの完璧性に痛く満足していたが、物憂げなリーさんはおもむろに両手を前に出し、クルリと掌をひっくり返す。これは、モーガンが日頃の優しい少女から凶暴な"モンスター"へと変貌する際に行っていた仕草。つまり、奢り高ぶって"生命"を弄ぶ人類へのしっぺ返しを予感させる幕引きである。『ブレラン』だと思ったか? ちげーよ、ただの"ジャンル映画"さ!という監督からのまさに掌返しなメッセージ…なのかもしれない。

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 監督からのメッセージという点では、よりメタな観点からこのような邪推も可能ではないだろうか。一般に、初監督作にはその監督の"作家性"が端的に表れる、と言われている。では、七光りビカビカにデビューしたルークくんが本作で描いたこととは? "神"の子として"完璧性"の期待と共に生を受け、周囲から常に監視されるガラス張りの部屋で成長し、実の親や親面(おやづら)するヤツらを信用できず、なんとか自分らしく生きようともがくモーガン嬢。これはそのままルーク・スコット自身の投影にも思える。唯一心を許したエイミーは、それでも自分の監督性を評価してくれるかもしれない未来のファンたち、冷徹に追い詰めてくるリーさんは、"神"の偽物である自分を叩く批評家たち、と解釈しても良さそうだ。そう考えると、結局リーさんも人造人間だったというラストは、得意気に俺を批判するであろうお前ら批評家だって、所詮は人の作品に乗っかるだけの"偽物"なんだぜ…!という挑戦的な批評家批判にも思える。

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 まぁ、それは本当におせっかいな邪推だか、個人的には、"神"の子ルーク・スコットが、今後監督としてどんな"夢"を我々に見せてくれるのか、非常に期待が持てる一本であった。

点数:72/100点
 そこまで無理矢理擁護してやらなくてもいいのではないか、とも思うが、そうしてやりたくなる程度の丁寧さと気概を感じる中々良い作品であったと思う。リドリー御大のリブート作がことごとく不評を買っている現状(懲りずに、今度はよりAIを中心に据えたエイリアン・ユニバースの続編を作る、と息巻いているみたいだが。)、ルークくんには、もっともっと自分らしく、希代のモンスター・パニック・メーカーとして羽ばたいてもらいたい、なんて筆者は勝手に夢見るのである。

(鑑賞日[初]:2018.1.14)

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Posted byMr.Alan Smithee

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