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・英語版:unknown
・日本語版:あなたの嫌いなものは何?

 またはシャインバーグは如何にして執着するのを止めて観客の不満を破裂させたか。

三文あらすじ:クモが極度に嫌いなシングル・マザーのレネー(ノオミ・ラパス)は、見知らぬ男たちに拉致され、不気味な隔離施設に監禁される。目を覚ました彼女が知るのは、対象が最も嫌う物を与え続ける人体実験の被験者にされてしまったというおぞましい事実。執拗なクモ責めを受けるレネーの肉体は、恐怖と絶望の内に、やがて思わぬ変化を見せ始める・・・


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 本作『ラプチャー』は、2017年に公開された"拷問系ホラー"である。無実の一般人が否応なく監禁され、狂人の手によって問答無用の陵辱を受けるという"拷問系"の作品群。古くは『ミザリー』なんかもあったわけだが、世界中にパンデミックを引き起こす切っ掛けとなったのは、やはり『CUBE』『SAW』シリーズだろうか。そんなジャンルの最新作として、本作は愚直も愚直、何のテライも無く、"対象が最も嫌うものを与える"というド直球の拷問スタイルを採用した勇敢な作品である。

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 ただ、世間の評価は絶望的に低い。確かに、主人公への拷問が始まるまでがちょっとタラタラ長い、とか、結局主人公のトラウマ対象である"クモ"を使った拷問が、作中なんとたったの2回しか行われない、などのマイナス・ポイントが即座に思い浮かぶ。また、本作の監督スティーヴン・シャインバーグに期待するハードルの高さもあっただろう。シャインバーグといえば、2002年に『セクレタリー』を監督した男である。今をときめくジェイク・ギレンホールのお姉さんにして、筆者の大好きな女優でもあるマギー・ギレンホール(最近は"ジレンホール"と表記するのかな?)の代表作。弁護士事務所の秘書として就職した彼女が、ボスである弁護士からSMプレイを強要される内、次第にその快楽に目覚めていく…という世にも変態チックな作品である。これが批評家も含めた世間から評価され、ニコール・キッドマンを主演に迎えた次作『毛皮のエロス』も、一般観客からはそれなりの好評を得たわけだから、今度はどんなフェティシズムを描くのだろう?という映画ファンの期待は、至極真っ当なものと言える。

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 その点、本作は物足りない。実は筆者は『毛皮のエロス』を観ていないし、『セクレタリー』もエロ目的で飛ばし見しただけだから、あまり偉そうなことは言えない。それでも、やはり本作は、フェティシズムの先にある人間讃歌の要素がものの見事に欠落していると思うのである。ただエロいだけじゃなく、フェチという根源的執着から人間の本性を暴き出し、最終的には肯定してあげる。筆者が惰性の賢者モードでなんとなく観た『セクレタリー』のラストは、そんな感じになっていた(はずだ)。ところが、結局のところ本作が描くのは、そんな優しいお話ではない。恐怖の閾値を越えることで"G10-12X"なるDNAファクターが"破裂"し、人を超越した存在に進化できる。そんな妄言が実は真実で、あろうことか主人公も最後には"新人類"になってしまう。確かに、主人公が"あっち側"に行っちゃうという意味で両作は共通しているが、本作の導く結論は、"弱い自分の肯定"という『セクレタリー』とは真逆のものに思える。

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 また、この"主人公があっち側に行っちゃう"という展開は、『マーターズ』という拷問作品にも似ている。しかし、仮に人間ドラマを捨て拷問系にシフト・チェンジするのであれば、しっかり拷問描写に特化していた同作の方が、この手のジャンル・ファンにはウケて当然であろう。加えて、"新人類"がよく分からないというのが、SF的観点からは大いに問題。レネー他、数多の一般人を捕らえては拷問する"新人類"たちは、本作の描写だけを見るに、なんか変な眼球、バキバキと形を崩すことのできる顔面、視力・聴力の(若干の)向上、並びに、感情の欠落という特性しか有していない。確かに、変な眼球もバキバキの顔面もヤバいよ? でも、だから何? 現生人類は淘汰されるべき愚かな存在だ!と"新人類"たちは声高に叫ぶが、我々が見た限りにおいて彼らが勝っているのは、おそらくにらめっこの強さくらいのもんだろう。感情を捨てるから強い、みたいな説明もあったような気がするが、結局実験の成果に一喜一憂しているようにしか見えないため、そこまでポーカーフェイスなヤツらには思えない。それならいっそ、地球侵略を企むエイリアンという設定にしてくれた方がまだ座りが良かった気もする。果たして、シャインバーグはなぜ"人類の革新"にこだわったのだろう?

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 ひょっとするとひょっとして、彼は、恐れ多くも『2001年宇宙の旅』的な感じをやりたかったのだろうか。レネーが最後に閉じ込められた部屋の壁紙は、思いっきり露骨に『シャイニング』展望ホテルのカーペットと同じガラだった。そういえば、本作には、他にもキューブリック・オマージュとも取り得るギミックが随所にあった気がしないでもない。父親の写真と声を延々見聞きさせられるという拷問を受けていた男は、目が閉じられないように器具を装着されていたが、これは『時計じかけのオレンジ』でアレックスが受けた洗脳教育に似ている。全体的に人類の未来を憂いている感じは『博士の異常な愛情』っぽいと思えなくはないし、変態だが紳士的な秘密組織の存在からは、『アイズ・ワイド・シャット』を思い出してもいいのかもしれない。"新人類"たちが白色光を嫌うというのは…まさか全編自然光で撮影された『バリー・リンドン』か…? そういえば、リドリー・スコット版『2001年宇宙の旅』である『プロメテウス』で主役を張っていたノオミ・ラパスを主演に抜擢したことも、何かしら意味があるような気がしてきたぞ。

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 いずれもこじつけだし、肝心の『シャイニング』要素がどこに組み込まれているか分からないのだが、それでも、"人類の革新"という意味だけで言えば、"新人類"は"スター・チャイルド"と同種のキャラクターと表現し得る。しかしながら、あるいは、当然のことながら、両者ではキャラクター的な説得力に歴然たる隔たりがある。確かに、"スター・チャイルド"だって、作中の描写を参照する限りにおいては何がスゴいのか分かりづらいキャラクターだ。攻撃衛星を全て撃滅する描写は、結局カットされてしまったのだし。しかし、彼はその圧倒的に神々しいルックスによって、我々に対してきちんと畏敬の念を覚えさせた。つまり、デザインの説得力である。本作の"新人類"にはこれが無い。"バキバキ顔面"は確かにキモいが、今どきそれくらいのSFXでは我々は驚かない。結果として、中途半端なキューブリック・オマージュは、本作の低評価をより決定的にしてしまったのではないかと筆者は思う。

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 まとめると、みなが期待していたフェティシズムを満足に描写せず、安直なSF設定や天に唾吐くキューブリック・オマージュなどを盛り込むことで、観客の不満こそを"破裂"させた作品。それが本作『ラプチャー』なのである。

点数:45/100点
 決定的に不快な作品かと言えば、実はそんなこともない。まぁ、"拷問系"のくせに不快じゃないからダメなんだとも言えるが、少なくとも筆者程度の映画ファンであれば、鑑賞中逐一イライラするというほどでもないだろう(尾行シーンでのいちいち行って戻ってくるカメラ・ワークには少しイラッとしたが。)。せめても、レネー以外の拷問シーンをもっとバリエーション豊かに、かつ恐ろしく描けていれば、本作はまだ一応の面目を保てたのかもしれない。ただ、やっぱり"いっそ各々の嫌いなものを強要すればいいんじゃない?"という着眼点自体は中々良いと思う。作中でも、クモとかヘビとか父親とか高所とかが"トラウマ喚起ギミック"として登場するが、観た者それぞれで「自分ならどうだろう…?」と考えることができるからだ。筆者の場合は…そうだな…きっと『2001年宇宙の旅』を延々観させられたら、あまりの睡魔から"破裂"してしまうに違いない。

(鑑賞日[初]:2018.1.16)

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Posted byMr.Alan Smithee

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