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キャッチコピー
・英語版:How do you survive the world's greatest predators?
・日本語版:ようこそ死のスキューバダイビングへ。戦慄の深海パニックスリラー解禁!

 海の底に何を見る。

三文あらすじ:彼氏にフラれて落ち込む姉のリサ(マンディ・ムーア)とその妹のケイト(クレア・ホルト)は、休暇でメキシコを訪れる。リサを元気付けるため考えを巡らすケイトは、檻に入ったまま海中に潜りサメを観賞する"ケージ・ダイビング"の話を地元の青年から聞きつけ、リサを誘う。気乗りしないリサもケイトの説得に意を決するが、二人が潜行した矢先、ケージを吊るすウインチが故障し、姉妹は獰猛なサメが群れる海底47m(47 Meters Down)に取り残されてしまう・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 実を言うと、筆者はダイバーである。まぁ、せっせと潜っていたのはもう何年も前の話で、しかも、それだって大学のクラブ活動として受動的にやっていただけだ。したがって、本気で取り組んでいる潜水野郎たちからすれば、筆者など犬かきを覚えたての赤子でしかない。それでも、経験本数120本、ライセンスも一応"アドバンス"の保持者であるから、本作のリサやケイトのような体験ダイバーたちと比較するなら、少しだけ胸を張ってもいいだろう。一方、筆者の敬愛する"モンスター・パニック"というジャンルでは、その最高峰が『ジョーズ』であることからも明らかな通り、海を舞台にした"サメもの"が大黒柱の内の一本である。当然、筆者もサメがガブガブと人を食べる映画が大好きなのだが、正直なところ、サメの恐ろしさに加えダイバーであるがゆえの恐怖も付いて回るため、二倍恐い。というわけで、昨年2017年の夏に公開された本作についても、観たいなーでも恐いなーと逡巡している内に、劇場鑑賞の機会を逸してしまったというわけだ。

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 さて、筆者がビビろうがビビるまいが、1976年の『ジョーズ』以降、"サメ映画"は毎年夏の風物詩として多くのファンを楽しませる。本作の前年2016年には、デッドプールの奥さんブレイク・ライブリーが主演した『ロスト・バケーション』というサメ映画が公開された。同作についてはまた折を見て感想を書くが、本作の設定は、割と同作に似ている。『ロスト~』の主人公ナンシーは亡き母親の思い出を胸に、一人で秘密のビーチにやってくる。対する本作の主人公リサは、彼氏にフラれた傷心旅行で妹と共にメキシコへ。リサについては傷心旅行が当初の目的ではないものの、何か(誰か)を失った女性が主人公という点では、どちらも同じ設定である。また、巨大ザメが回遊する浅瀬の岩場に主人公が取り残されてしまう『ロスト~』と、47mもの深い海底に主人公が取り残されてしまう本作は、深度の差こそあれ、ソリッド・シチュエーションという点でも共通している。さらに付け加えるなら、主人公のLINE(的なもの)でのやり取りを中空に表示する演出方法も両作に共通だ。

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 ところが、世間からの好評とスマッシュ・ヒットを獲得した『ロスト~』とは違い、本作の評価はとっても低い。これはなぜだろう? ひとつには、おそらく本作を観た誰しもが物議を醸したくなる"夢オチ"問題がある。お約束通り、やっとのことで引き上げられかけたリサとケイトは、クライマックスのスタートを高らかに宣言すべく再び落下。その際、リサは海底と檻の隙間に足が挟まって動けなくなる。海面より投下された追加のエア・タンクをゲットすべく檻の外に出たケイトは、無情にもサメの餌食に。絶望するも、強く気を取り直してなんとかタンクを引き寄せたリサは、ケイトからの無線を受信。瀕死の重症でもかろうじて生きていた妹を救うため、これまでの人生を彼女へのコンプレックスの中で過ごしてきたリサは、今、真のお姉さんとなるべく、気合いで足を引き抜いて泳ぎ始めるのである。

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 ケイトとランデブーしたリサは、危険な緊急浮上を決行。案の定、中層でサメの急襲を受けた二人は、安全停止も満足でない中、遂に海面へと浮上する。ボートを目指して必死に水をかくも、冷酷な海の悪魔はかっこうの獲物を逃さない。すんでのところで噛みつかれ、水中へと引きずり込まれたリサは、『ディープ・ブルー』の信心深いコックさんよろしくサメに目潰しをお見舞いし、無事ボート上へ。二人とも満身創痍だが、確かに生きている。応急処置を施されながら笑いあう姉妹。太陽にかざした左手の出血箇所を見つめ、"生"を実感するリサ…。

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 残念なことに、"サメもの"として極めて真っ当に思えるこのオチは、ほとんど全てがリサが海底で見た幻覚であった。どこからが幻覚かと言うと、なんとリサが追加のタンクでエアを吸い始めてから全部。つまり、哀れな妹は死んでしまっているし、このジャンルの白眉たるサメの急襲も実際には無かったということになる。これはマズいよな。確かに、同じ"底"でも地底探検パニックものの傑作『ディセント』は、本作とほぼ同じ"夢オチ"を採用していた。しかし、同作は、仲間内での疑心暗鬼を経て徐々に狂っていく主人公の心境が前ふられていたため、まだ本作よりは"夢オチ"の必然性があったんだと思う。一方の本作には、なにゆえ哀れな姉妹がこんなにも悲惨な末路を辿るのか、その点に対するエクスキューズが見受けられない。

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 『ディセント』の主人公は、最終的に追い詰められて仲間を殺害する"悪者"だった。あんな極限状態に置かれたら誰だって疑心暗鬼の内に同じことをするさ!という擁護は可能だから"悪者"は言い過ぎにしても、やはり彼女は、我々が有する通常の倫理観を逸脱した"応援できないキャラクター"だったのであり、そんな彼女の脱出を否定する"夢オチ"は、ある意味で"勧善懲悪"だったのである。あるいは、『ライフ』というエイリアン・パニック作品を引き合いに出してもいい。あれだってラストでは、それまで散々頑張ってきたミランダ検疫官が無惨にも宇宙の彼方へと消えて行き、人類のために奮起したジェイク・ギレンホールの自己犠牲が空しく無駄になってしまうというバッドエンドだった。しかし、筆者に言わせれば、同作は『ゼロ・グラビティ』のような"人間讃歌"を敢えてコケにした"B級ホラー"なのであり、そこにはちゃんとバッドエンドに対する意気込みが見受けられたのである。本作には、そのような"バッドエンドを導くための筋道"が、決定的に不足している。

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 また、リサが幻覚を見た理由が"窒素酔い"っていうのもピンと来ない。もちろん、ダイバーにとっては耳馴染みのある症状だが、そうでない人にとっては「なんですか、そのご都合主義的な病は?」ってなもんだろう。もちろん、ダイバーの目から見ても、リサほど鮮明な幻覚を見る窒素酔いなどあり得ない!と思っちゃうし。まぁ、そこは、リサがボヤボヤと見ている幻覚を映画的に誇張して鮮明にしたんだよ、ということで納得できなくもないが、せめて前フリとして、同じように二本目のタンクを使用したケイトが軽い幻覚を見る、というシーンを入れておかないといけなかったのではないかな。個人的には、"夢オチ"というだけで直ちに駄作の烙印を押す知ったかぶり野郎が嫌いだが、以上を勘案すると、本作に限っては、安直な悲劇、すなわち、バッドエンドのためのバッドエンドと捉えられても仕方がないように思う。

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 それから、全体的にサメ不足という問題もある。もちろん、ここぞという数ヵ所に絞って大変リアルなサメが登場するのだが、肝心の人を襲う場面が、ことごとく誤魔化されているのである。つまり、助けに来た地元の青年とかケイトとかが食われる瞬間は、過剰に寄った速いカットでしか見せてくれないということ。確かに、海中の向こうの方からサメがぬっ!と飛び出してくる際のビジュアルとか、暗闇で発煙筒を点けると『ピッチ・ブラック』のクリーチャーさながらにサメがわっ!と露になる瞬間のビジュアルとかは、結構ゾクゾクする。が、やはり人を食うシーンに気合いが入っていないのだから、"サメもの"としては物足りない。リサが海面でかじられるシーンだって、物語的には"無かったこと"なんだし。

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 では、サメの活躍が満足でない本作は代わりに何で帳尻を合わせるのかと言うと、それはなんとダイビングの恐怖である。冒頭で筆者は「ダイバーだからサメ映画は二倍恐い。」なんて偉そうに発言したが、実は、多くのサメ映画における主戦場は海面付近である。確かに『ジョーズ』でフーパーが襲われるシーンを始め、ダイビング中の登場人物がサメと対決する展開はたくさん存在している(『サンゲリア』の水中シーンは…あれは違うか。)。しかし、姉妹が潜ってからラストの幻覚シーン手前まで一貫して海中で展開する本作のように、ダイビングというアクティビティががっつり主題になるのは、意外と稀なケースだ。これは、海中ではサメに制約を与えづらいからであろう。たいていのモンスターには、行動範囲の制約がある。逆に言えば人間側には"安地"があるということであり、例えば、いくら獰猛だろうが『ジョーズ』のサメはサメである以上、ヒョイヒョイとオルカ号に上がってきたりはしない。しかし、皆さんご存知の通り、クライマックスで彼は、"安地"であるはずのオルカ号にのし掛かり、クイントを引きずり下ろす。これが抜群に恐いのである。

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 つまり、およそモンスター・パニックにおけるスリルだったり、サスペンスだったりの本質は、"安地"を前提として如何にそれを壊すか(人間側からすれば如何に守るか。)にあると言っていいだろう。その点、本作のストーリーが一応成立したのは、海中というサメの独壇場にケージという"安地"を持ち込んだためである。では、果たして"安地"をめぐる攻防が本作において上手く機能したかと言えば微妙な部分もあるが、サメ映画でダイビングを主軸にする上では、中々頭を捻ったギミックだと筆者は思う。ちなみに、同じくダイバーがサメに襲われる系作品である『オープン・ウォーター』を筆者は未見なのだが、同作では"モンスターの制約問題"をどのように処理しているのだろう? 今度観てみることにする。

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 そういった工夫を凝らして成立させただけあって、"ダイビング映画"としての本作には、ダイバー的な見どころがいくつかある。例えば、中々近寄って来ない救助者の元へリサが単身向かうシークエンス。岩影に隠れたりしながら海底を這うように移動していくリサは、"崖"にぶち当たる。それは、目の前に立ち塞がる陸の裾野ではなく、どこまでも下方に広がる広大な無の空間。ここでダイビング初体験の彼女は、「全然下が見えない!恐い!」とあわてふためくのだが、これ、実際に潜っていてもあるんですよね。一切の寄る辺無き、完璧な虚無と孤独。大地というものの存在が自分にとってどれほど大きかったかを、否応なく痛感させられる瞬間である。まぁ、実際に経験するほどの危機感を本作は描きこめてはいなかったが、何も無い中層は恐い、という観点を投げ掛けただけでも中々にフレッシュだ。

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 また、それよりもっとメインで描かれる恐怖が窒素濃度問題である。映画において深く潜行するシーンでは、大抵の場合、水圧こそが焦点になりがちだ。ダイバー閲覧禁止作品の筆頭に挙げるべきジェームズ・キャメロンの『アビス』でも、押し寄せる水圧こそが最大の敵だった。しかし、それはあくまで深海での話。本作のような47mというリアルな深さで我々が懸念すべきは、全てのダイバーが恐れおののく潜水病である。要は、潜っている内は押し潰されて血中に溶け込んでいた窒素が、浮上に伴う圧力の低下につれ気泡となり、間接に入って激痛を生じさせたり、酷いときには脳に侵入して死を招いたりするという恐ろしい病。『One Piece』のモンブラン・クリケットさんもこの病に苦しんでいたし、話を聞いていると、どうやらほとんどのインストラクターが一度は経験したことのあるやっかいな代物である。何を隠そう、一時はダイブ・マスターの資格を保有していたほどダイビング好きな筆者の実父も、一度この病を発症し、激痛でのたうち回っていたことがある。

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 したがって、47mもの深度に長時間留まっているリサとケイトは、浮上する際、実に細心の注意を払ってゆっくりゆっくり事を運ばなければならない。つまり、ちょうどTVアニメ『メイド・イン・アビス』で描かれていた"上昇負荷"と同じような呪いが、ダイビングという一見華やかなレジャーの対価というわけだ。そんな"ダイビングの暗部"がフィーチャーされるのは、筆者の記憶によると極めて稀、あるいは、こと"サメ映画"に限ってはほぼ始めてなんじゃないだろうか(ちなみに、多くのダイバーにとっての47mは、何か珍しいものがあるなら全然行くが、普段はそこまで潜らない、という程度の深さである。まぁ、筆者の実父のように、珍しいハゼを写真に納めるため、50~60mもの潜行を度々繰り返すマニアックな人種も一定数存在するが。)。

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 しかしながら、その反面、ダイバーだからこそ気になるアラもある。例えば、先述の通り、いくら重度の窒素酔いでもあそこまでの幻覚は見ないだろう、とか。あるいは、ダイバーにとって最も基本的なスキルであるにも関わらず実は最も難しい"中性浮力"を、ダイビング初体験であるはずのリサがいとも簡単に成し遂げているように見える、とか。"中性浮力"っていうのは、何にも掴まらず、BCジャケットのエアと自らの肺の空気だけで水中の一点に留まる技術である(正確には「中性浮力を取る。」などの表現が正しいのだろうか。)。これが難しいんだ。確かに、実際に潜るときには多少なりとも手足でバランスを取ったり、あるいは、手近な岩などを掴めば事足りるので、完璧に熟達する必要はない。しかし、リサとケイトのようにラダーも何も掴まるものが無い状況下で、長時間蓄積した窒素を抜くためきっちり停止するためには、かなり高度な中性浮力が要求される。彼女らは、これを平気な顔でやってのけるんだよな。下手くそダイバーである筆者の嫉妬も混じってはいるが、やはり納得いかん。

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 あと、47mもの深度では、おそらくエアが20分も保たないだろう、という文句もあるのだが、ひよっ子ダイバーの筆者がこれ以上偉そうなことを言うと痛い目を見そうなので、今回はこの辺でやめておく。

点数:60/100点
 個人的には、世間が言うほど酷くはなかったと思える作品だった。もっとも、ダイバーが否かによって、また見方も変わってはくるのだろうが。少なくとも、ケージはリサの"心の檻"を象徴していると捉えるなら、やはり安直な"夢オチ"ではなく、突進してくるサメをすんででかわしてケージ諸とも撃破する、みたいな、それこそ『ロスバケ』的な大味のラストの方が、分かりやすくて良かったんじゃないかなぁ、とか思ったりもする。

(鑑賞日[初]:2018.1.17)

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Posted byMr.Alan Smithee

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