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キャッチコピー
・英語版:One of mankind's greatest wonders. 1700 years to build. 5500 miles long. What were they trying to keep out?
・日本語版:誇り高き仲間を信じて、"伝説 "に立ち向かえ。

 アジアの果てで、バカやっチャイナ!

三文あらすじ:時は宋王朝時代。黒色火薬を求めて過酷な旅を続けてきた欧州の傭兵ウィリアム・ガリン(マット・デイモン)とペロ・トバール(ペドロ・パスカル)は、馬族に追われ命からがら逃げる内、万里の長城に辿り着く。一旦は拘束されるも、折しも60年に一度現れる伝説の怪物"饕餮(とうてつ)"を一時撃退することに一役買ったウィリアムは、禁軍の隊長リン・メイ(ジン・ティエン)らと共に戦うことを決意するのだが・・・


~*~*~*~


 本作は、2007年に公開された"バカ・モンスター・パニック"である。まず、"万里の長城は、実はモンスターの襲撃を防ぐために建造されたのだ…。"という設定が、本当に目を疑うバカさ。思いきって"幼稚"と言ってしまってもいいんじゃないか? 事実、筆者は中学生くらいの頃に、本作とほとんど同じプロットを考えたことがある。もちろん、そういった妄想は、映画好きな少年少女なら一度はしたことのあるものだろうし、"既存のアイコンを再解釈する"という作業は、昨今の映画界を席巻するアメコミものでも、日々行われていることである。しかも、中国は、バブル期の日本同様、破格の経済成長によって今や(確か)世界二位の市場になっているのだから、中国大フィーチャーでいっちょ"バカ映画"作りましょうよ!というアイデアに対し、オッケー!やっちゃいな!とゴーサインを出した関係者の判断も理解できようというものだ。

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 ゆえに、本作には、東西を代表するスターが召集された。監督は、2002年の『HERO』なんかが日本でも大盛り上がりした中国の名匠チャン・イーモウ。主演には、今や押しも押されぬハリウッド・トップ俳優の一人であるマット・デイモン。そんな超一流のクリエーターたちがこの手の"ジャンル映画"に本腰を入れてくれるのだから、我々モンスター・パニック好き、ひいてはバカ映画好きからすれば、必然、血のたぎりを禁じ得ないわけである。もちろん、筆者もすこぶるワクワクしながら公開を待っていたボンクラの一人だったのだが、日本公開日である2017年4月14日前後は非常な多忙のため機会を逃してしまい、なんと7月にハワイ行きの機内上映で鑑賞したのだった。では、遠路はるばる中国を目指したウィリアムとは対照的に、アジアから時速800kmで遠ざかりつつ抱いた筆者の感想は、というと、数多の観客の酷評(Rotten Tomatoesだと批評家が36%、一般観客が43%)とは異なり、おぉ!ええやん!ということになる。

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 確かに、先述した"バカ設定"が災いし、本作は極めて取っ付きにくい作品となっている。それは、当然、アート系作品や古典文学の映画化のような"敷居の高さ"によるものではない。"バカ映画"なんだから、本作の敷居はむしろ低いんだ。そして、その低さは、我々の予想を遥かに凌ぐ。まずは、やはりマット・デイモンの異物感。『ロスト・イン・トランスレーション』…は、ちょっと趣が違うから、トム・クルーズの『ラスト・サムライ』を想像してもらえば分かりやすかろう。アンディ・ラウやジン・ティエンを始めとする中国人俳優の中にポコッとマット・デイモンが紛れ込む画ヅラは、やっぱりどうしてもどこか滑稽に見える。おまけに、彼が砂漠を逃げる冒頭がどこか『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』のパクリ臭い、とか、艶やかな5つの原色を身に纏う中国軍の出で立ちが『ラ・ラ・ランド』を意識している(少なくとも、同作以降の潮流を露骨に取り入れている)んじゃないか、なんて逐一気になり、序盤は中々身が入らない。

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 しかしながら、本作は尻上がりに盛り上がっていく。まず、モンスター・パニック好きとして注目すべきは、当然、モンスター造形である。これは中々良い。確かに、女王を頂点として統率された社会システムを持っているというのは、まぁ『エイリアン』(『2』以降)のパクリ。さらに、女王を倒せば全雑兵の活動が一斉に停止するという安直な一発逆転は、既にお腹いっぱいの陳腐なギミックではある。しかしながら、元は隕石に乗って地球にやってきた宇宙生命体だが、中国では古(いにしえ)の怪物として伝説になっている、という設定はナイス。安易にただの伝説にせず、モンパニでベタなエイリアンをかつての中国にはめ込んだらどうなるか、をきちんとシミュレートできている。これは、万里の長城の再解釈という本作の大枠とも符合するグッド・アイデアだ。

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 モンスターのルックスもオーケー。あたかも顔に見える部分が、よくよく彼の目の位置から逆算すれば実は鼻、という楽しげなデザインだ。一個体の強さも、強すぎず弱すぎず、ちょうど良い感じ。人類の叡智では太刀打ちできない完全生物、そんなのは、素直に『エイリアン』に任せておけば良い。本作のモンスターは、頑張ってボコボコにすれば当時の通常兵器でも倒せそうだし、弱点の目を射ぬけば弓矢でも駆逐可能。強さのレベルでは、ちょうど『世界侵略:ロサンゼルス決戦』のエイリアンくらいだろうか。そのため、「とはいえ、なにせ数が異常に多いのでやっぱり壁が必要、しかし、彼らが知恵を付ける本作以前には壁だけで防げていた」、というのも納得できる。磁石を近づけられると女王とのコミュニケーションが取れず大人しくなる、という設定も、"女王を倒せば一発逆転"の根拠に一応なっていて、好感度大だ。

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 マット・デイモン演じるウィリアムのキャラクターや彼のドラマも、観ている内に良く思えてくる。だって、マット・デイモンですから。強さと知性を兼ね備えた"インテリ・マッチョ"な佇まいは、まさに今どきのヒーロー像の象徴。おまけに、そんな中にもどこかしら微弱なボンクラ感を常時たたえているのだから、我々のようなジャンル映画ファンが好きにならないはずもない。加えて、(特に男性キャラでは)何かと冷遇されがちなという武器を中々カッコ良くフィーチャーできているのもポイント。一点を射ぬけば殺せる、というモンスターの設定が、きちんと弓矢キャラと整合しているわけだ。相棒であるトバールや、中盤から将軍にまで出世する麗しきリン隊長との友情もとても良い。特に、リンさんと安易な恋仲にせず、うしろ髪を引かれながらでもきちんと立ち去らせたラストは、非常に気持ちの良い英断であろう。まぁ、これもまた『怒りのデス・ロード』感をひしひしと感じる部分ではあるのだが。

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 色んなギミックとかガジェットとかを駆使したアクション面もよろしい。当時最強最先端だったであろう禁軍の兵器はどれも安っぽくないし、特に"ブルー・チーム"が担当する"バンジー・ジャンプ攻撃"は、けっこうフレッシュで説得的。終盤、都まで最短で到達するために満を持して出動する飛行装置(要は気球。)も良い感じだし、やっぱり『ラ・ラ・ランド』以降の流れ(正確には『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』以降の流れ)である過剰にカラフルな色使いも、ちゃんと各分隊の役割に応じた合理的な色分けなのでグッド。逆に、女王へのトドメの一撃は割とすんなりといった雰囲気だが、その淡々としている感じ、というか、冷静沈着な感じが、アーチャーという主人公のキャラとマッチしていて、筆者は嫌いになれなかった。

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 とはいえ、本作にはグズグズだったりユルユルだったりする部分が多々ある。そりゃあ、いくらチャン・イーモウと言っても、そもそものプロットが中学生でも思い付くレベルなのだから、ある程度は仕方なかろう。しかしながら、筆者が格別にガッカリしたのは、もやしっ子の厨房担当ポン・ヨンを安易に殺してしまった、という点である。ドジばかり踏んで厨房に追いやられていたポンは、勇気を振り絞り、友情とも師弟ともつかないやんわりした関係性が芽生えかけていたウィリアムと共に、都を目指す決意を表明する。こういう舎弟キャラというのは、本作のようなアドベンチャーものではよく登場するが(例えば『インディ・ジョーンズ3』とか。)、本作は、何も考えなしに丸パクリしたわけではないと思う。つまり、ポンが象徴するのは、"戦う理由"だ。

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 皇帝への忠義が絶対正義である禁軍の中で、下っぱに位置するポン少年。彼はすごく恐いんだ。鼻デカ怪獣の恐ろしさや自身の身体・生命に対する危機、もちろん直接的にはそれらが原因である。しかし、既に戦う"覚悟"を決めている彼が悩むべきは、もっと上位のフェイズ。おそらく生まれたときから叩き込まれてきたであろう"忠義"という概念は、いざ"己の命"と向き合った瞬間、疑問の対象になり得る。俺はいったい…何のために戦っているんだ…? ここで、彼に対して"漢気"を体現してあげるのが、忠義?何それデリシャス?な西洋の傭兵ウィリアムなのである。しかも、本作は、傭兵の個人主義だけを正当化し、中国の忠義を否定するわけではない。リンがウィリアムに教えてあげた"信頼(シンレン)"という言葉をかすがいにして、きちんと"個人主義"と"忠義'のハイブリッドな価値観を提示しようとしている。当時、あらゆる文化の集合地点だったであろう中国をフィーチャーする上で、この試みは非常に正しいものだ。また、"地球をなめるなよ…!"展開という意味でも、大変熱い。

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 だからこそ、塔に続く通路でウィリアムたちを行かせるため自爆する、などという陳腐な処理でポンを殺してしまった点が、非常に残念なのである。そうではなくて、ウィリアムらと一緒に塔の上階まで行って、そこに一匹だけ上り詰めてきたモンスターをくい止めるため戦い、生き残る、とすれば良かったのに。そうすれば、ちゃんと"受け継がれる意志"を表現できたんだ。東洋と西洋のハイブリッド戦士としてのポンの未来を想像できるからこそ感動的なのであって、彼を安易に殺してしまうのであれば、それは結局、大義のための犠牲は美しい、という古臭い"忠義"への逆戻りである。加えて、彼を生かしておけば、『怒りのデス・ロード』"種"みたいなニュアンスも帯びさせられたのに…とか、"恋人"や"夫婦"ではなくても、ある意味で二人の"DNA"を受け継いだ"子供"として、ウィリアムとリンにある種のロマンチック性を与え得ることにもなったのに…とか思ったりもする。

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 もう、爆風で片腕失ったけど生きてたで!とか、そんな無理矢理でもいいよ。実は王宮内に卵が産み付けられていた…っていうスタートから、バトル義手を装着したポンがかつての英雄ウィリアムを呼び戻し、共に戦うっていう続編…やっチャイナ!

点数:68/100点
 これは"バカ映画"だ、どうしたって。でも、変に高尚にせず、かと言ってこれみよがしの開き直ったバカさでもなく、個人的には、実に"ちゃんとバカやってる"、と感じた。今後ますます中国資本の作品が増え、中国人がメインで登場したり、中国が舞台になったりしていくだろうけれど(あろうことか『ゴジラ』も実質的には中国に取られちゃったし。)、こういう感じで丁寧にやってくれるならそれも悪くないかな、と思える良作であった。

(鑑賞日[初]:2017.7.22)
(ハワイアン航空機内で鑑賞)

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Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

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