07
2012

[No.53] バンク・ジョブ(The Bank Job) <84点>

CATEGORY銀行強盗
Bank Job



キャッチコピー:『奪ったブツは、キャッシュとダイヤと王室スキャンダル』

 ようこそ、変態紳士の国へ。

三文あらすじ:ロンドンで中古車販売店を営むテリー・レザー(ジェイソン・ステイサム)は、幼なじみの美女マルティーヌ・ラブ(サフロン・バロウズ)から、ベイカーストリートのロイズ銀行を襲撃する話を持ちかけられる。多額の借金返済に窮していたテリーは、友人のケヴィン(スティーヴン・キャンベル・ムーア)とデイブ(ダニエル・メイズ)、穴掘りの専門家バンバス(アルキ・デヴィッド)、”少佐”と呼ばれる詐欺師の老人ガイ(ジェームズ・フォークナー)、見張り役としてエディ(マイケル・ジブソン)を招集し、計画を実行。見事襲撃を成功させるテリー一味だったが、貸金庫に入っていたのは、現金やダイヤだけではなく、王女の淫行写真や政府高官の変態写真、娼館から警察への賄賂を記録した帳簿など、様々なスキャンダルの証拠だった・・・


~*~*~*~

 
 おもしろい!エンターテイメントクライムムービーのお手本のような良作である。以前筆者は”事実は映画ほどヒロイックではない”と豪語したが、事実の映画化である本作の主人公テリーは、なかなか堂に入った”ヒーロー”だ。この場を借りて”「原則として」事実は映画ほどヒロイックではない”と訂正したい。

 主人公テリーを演じるのは、ジェイソン・ステイサム
 『トランスポーター』シリーズ、『アドレナリン』、『メカニック』などのイメージが強く、彼が主演するとそれだけでB級アクションの臭いがしてしまう。そもそもジェイソン・ステイサムは、その容姿、かすれた声、疲れた感じの味のある演技のどれをとっても”2代目ブルース・ウィリス”にふさわしい素質を持ったいいアクション俳優なのに、B級イメージが付いてしまっているのは残念なところ。もう少し後の時代に出てきていたら『ダイ・ハード』のリメイクに出演出来たのに。

 本作の構成は、銀行強盗の過程を描く前半と3者(強盗一味、王室スキャンダルを隠蔽しようとするイギリス諜報局MI5、帳簿を取り返そうとする娼館組織)が駆け引きを繰り広げる後半に大きく分けることができる。

 まず、前半。

 銀行強盗が銀行を襲うスタイルはいくつかに分類できる。
 ポピュラーなのは、覆面をした強盗が正面から侵入し、銃を用いて行員が警報器を作動させる前にフロアを制圧するというタイプ。当ブログで既に紹介した作品では『ヒート』『ザ・タウン』『パブリック・エネミーズ』『狼たちの午後』がこのタイプに当たり、その数や実現可能性の点で最もスタンダードな方法と言えるだろう。
 次に『インサイド・マン』のようなトリッキーなタイプ。これは極めて映画的で非現実的な手段だ。
 そして、本作のような”穴掘りタイプ”。テリー一味は、銀行の2つ隣の閉店した店を借り切り、貸金庫室の真下まで地下を掘削していく。これはなかなかクラシックで楽しげな方法だ。いわば”ルパン三世タイプ”とも言えるこのような方法が、実際の事件として行われ、しかも成功したというのだから、やはり”事実は小説より奇なり”である。配給会社もテリーらのスタイルを”ルパン三世タイプ”と考えたようで、日本版予告編の冒頭は、ルパン三世TVシリーズのアイキャッチを意識したような演出になっている。

 そして、後半。

 三つどもえの取引合戦がおもしろい。
 テリーら7人の銀行強盗チームのメンバーは、みなこれまで小さな犯罪しか犯したことのないチンピラばかり。そんな寄せ集めの銀行強盗が、娼館主人率いる筋金入りのギャングや世界有数の諜報機関MI5に追われることになる。この展開自体が申し分なくおもしろいし、その描写も極めてよく出来ている。
 本作の監督ロジャー・ドナルドソンは、それほど有名な大作を撮っている監督ではなく、同監督作で筆者の記憶に残っているのは『スピーシーズ 種の起源』のエロさぐらいだ。そういえば、本作も冒頭から3Pに興じる英国王女の痴態がおっぱい丸出しでバンバン描かれており、この監督はどうやらエロ親父の可能性が高い。
 それと、”エロ”で言うなら、本作で描かれるスキャンダルの数々には本当に驚かされる。そもそも王女がドの付く変態だし、議員やMI5長官もコアなSMクラブに出入りしている変態揃い。ロンドンの警察も娼館から賄賂をもらい夜通し乱痴気騒ぎ。さすが英国は変態紳士・淑女の本場である。
 話がエロい方エロい方へ流れてしまったが、とにかく後半の展開は非常に緻密に組み立てられ、一級のクライムサスペンスとして成立しているということが言いたかった。

 また、ただ緻密なサスペンスというだけでなく、娼館サイドに囚われたデイブとエディを救うためテリーが知恵と勇気で一計を案じるという展開は、とてもヒロイックで熱くさせる。映画としてはベタだが、これが史実というからスゴイ。英国にいるのは、何も変態紳士ばかりではないのだ。

 さらに、取引を成功させたテリーが、家庭を取るのか幼なじみの美女マルティーヌを取るのかというラストも非常に良いまとまり具合。
 序盤でマルティーヌから銀行強盗を持ちかけられるシーンから、テリーは彼女に気があるということが描かれる。しかし、一方でテリーには美人の妻と可愛い2人の娘がいる。このテリーを取り巻く女性2人のキャスティングも絶妙。マルティーヌはそれこそ不二子ちゃんのような絶世の美女だが、対するウェンディ(キーリー・ホーズ)もかなりの美人。僅かにマルティーヌの方が”いい女”と感じられるものの、ブルネット美人のマルティーヌとブロンド美人のウェンディは共にタイプの違う美人で、男性の観客はなかなか甲乙付けがたいところだろう。このキャスティングの妙があるからこそ、ラストでテリーがマルティーヌではなくウェンディを取る展開も素直に感動できる。このような脚本には載ってこない説得力も本作を一級品に引き上げている要因と言えるのではないだろうか。
 まぁ、テリーはマルティーヌと貸金庫室で一発ヤッてしまうから、結局のところ、おいしいとこ取りではある。これも史実ならスゴイ。ってゆーか、やっぱり変態紳士やんけ!

 難点を挙げるなら、王女のスキャンダル写真を撮ったマイケルX(ピーター・デ・ジャージー)の根城にMI5のゲイル(ハッティ・モラハン)が潜入捜査するくだりは、少し蛇足感がある。史実としてそういうことがあったのだろうし、物語上決して不必要なパートではないのだが、これを無くしてロンドンでのやり取りに集中した方がもっと良いテンポの作品に仕上がっていたのではないか、と感じられる。

 それと、ラストシーンが若干パンチに欠ける。
 物語は大団円を迎え、ウェンディを選んだテリーは、家族と共に南国でバカンス。大型クルーザーで海に繰り出し、テリーがモリで仕留めた大きな魚に家族が和気あいあいとはしゃぐというシーンだ。そして、テリーがクルーザーのはしごを登りながら「今夜はフライだな。」と言ったところで終幕。テリーが”一お父さん”としての人生を選んだという表現なのかもしれないが、せめてもうちょっとクールなセリフで締めて欲しかった。もっとも、筆者はこのセリフの原語を聞き取れなかったから、日本語字幕がそうなっていただけで実はかなりクールなことを言っている可能性はある。

点数:84/100点
 文句なく良く出来た作品。誰に勧めてもヒンシュクを買うことはないだろう。穴掘りにワクワクし、美女達にドキドキし、スリリングな取引にハラハラし、そして英国紳士達の変態ぶりにはただただ驚愕して欲しい。

(鑑賞日:2012.3.6)










バンク・ジョブ デラックス版 [DVD]

新品価格
¥5,236から
(2013/3/24 23:35時点)


バンク・ジョブ [Blu-ray]

新品価格
¥9,500から
(2013/3/24 23:35時点)


エンジンオーガー(52ccエンジン/ドリル付き) アースオーガー穴掘り機

新品価格
¥29,800から
(2013/3/24 23:36時点)


恋愛45!紳士・淑女の性愛学 (小学館文庫)

中古価格
¥1から
(2013/7/3 22:55時点)



関連記事
スポンサーサイト

Tag:変態紳士

2 Comments

-  

しがないドロボーたちが各界の大物たちを翻弄するのがかっこいい。
すごいな、これ史実なんか。
ということは当時のイギリスは、おっぱいでいっぱいである。

2012/03/23 (Fri) 03:57 | EDIT | REPLY |   

Mr.Alan Smithee  

Re:

ジェイソン・ステイサム一味の手際を”ルパン風”と評したけど、
なんか今、ルパン三世の実写版の企画が動き出してるらしい。
ルパンが小栗旬、次元が妻夫木聡、五右エ門が松田龍平、銭形が阿部寛、
そして不二子が長澤まさみだそうで。

心配だなぁ。

2012/03/28 (Wed) 01:42 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment