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キャッチコピー
・英語版:Long live the king
・日本語版:国王として守るか? ヒーローとして戦うか?

 パーティー・フォーエバー!

三文あらすじ:若き国王ティ・チャラ、またの名を漆黒のヒーロー"ブラックパンサー"(チャドウィック・ボーズマン)。2つの顔を持つ彼の使命は、祖国である超文明国家ワカンダの秘密、すなわち、世界をも破壊するパワーを秘めた鉱石“ヴィブラニウム”を守ること。突然の父の死によって王位を継いだティ・チャラは、ヴィブラニウムの密輸を企てる武器商人ユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)と"キルモンガー(死の商人)"の異名を持つ元アメリカの工作員エリック・スティーヴンス(マイケル・B・ジョーダン)の脅威を前に、今、真の王となるべく戦いを挑む・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 先月の封切りから世界中を席巻しているマーベル・シネマティック・ユニバース最新作『ブラック・パンサー』。"全世界席巻!"なんて言うときは大抵誇大広告だが、本作に限っては混じりっ気無しのマジだ。実に26日間というとんでもない短期間で世界興収10億ドルを突破し、アメリカ国内に限っては、17日間という驚異的なスピードで5億ドルを突破した(最速は『フォースの覚醒』の10日間、その次は『最後のジェダイ』の16日間。ディズニーやばい。)。他にも、マーベル映画というくくりでは史上最高のオープニング成績を叩き出したり、『フォースの覚醒』が持つ月曜の最高興収記録を塗り替えたり。こんなことを誰が予想しただろう? 『シビル・ウォー』が公開されたとき、みんなクスクス笑っていたんだ。「"ブラック・パンサー"って誰よw」って。

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 この爆発的ヒットのカラクリとして、まずはもちろん、『ロッキー』シリーズのリブートを高らかに宣言し、コアなファンをも虜にした傑作『クリード』を世に送り出した男ライアン・クーグラーの見事な手腕、すなわち、端的に言って作品の高い完成度が挙げられる。そして、もうひとつ。昨今の映画界を見る上で極めて重要なファクター、そう、"マイノリティー・フィーチャー"である。先日の第90回アカデミー賞の作品賞で盛り上がっていた作品が『シェイプ・オブ・ウォーター』『スリー・ビルボード』、『ゲット・アウト』といずれもマイノリティーを扱っていたように、そしてまた、昨年のハリウッドを根底から揺るがしたムーヴメントが『ワンダーウーマン』大ヒットからのセクハラ親父狩りだったように、今、映画界は、黒人、ゲイ、女性などなどのマイノリティー・パワーを礼賛する空気感がミチミチに充満している。事実、アメリカ国内では、セレブリティたちが本作のチケットをしこたま買い込んだ上で箱を貸し切り、アフリカ系の"恵まれない子供"たち向けの上映会を催す、というのが流行りになっているそうで。筆者のような飽食のゆとり世代からすれば、人種問題なんてもうそこまで深刻ではないことのようにも思いかねないが、まだまだ、こと人種のるつぼでは、日々世の中を動かし得るホットなテーマなのであろう。

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 さて、肝心の作品内容であるが、これは確かに、映画史…とまでは仮に言えなくても、"アメコミ映画史"に限れば、確実に歴史に名を刻む傑作、ということになりそうだ。特に、個人的に感銘を受けた…というか、勉強になったのは、人種問題と向き合う前提的スタンスの部分。『シェイプ・オブ・ウォーター』のイライザもそうだったが、"いまどきのマイノリティー"は、別に表立ったゴリゴリの"差別"を受けているわけではない。みんな一応仲良しで、楽しそうに生きている。でも、薄皮一枚ひっぺがせば、なんのことはない。そこにはいまだ何の解決も見られず、世間が見て見ぬふりをしている問題が山積している。そんな前提。

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 この点、本作で最も端的なのは、アンディ・サーキス演じるクロウがいわば"噛ませ"として途中退場し(『最後のジェダイ』のスノークもそうだったし、アンディちょっと可哀想…。)、主人公と同じワカンダ人であるキルモンガーがラスボスになるという構成であろう。もはや白人との直接対決が問題となるフェイズではない。白人たちは、みな表向き"お行儀よく"振る舞っている。しかし、そこにはやはり白人社会から虐げられてきた黒人の問題があるんだ。出生こそ同じながら、"ワカンダ人"であるティ・チャラと"アメリカ人"であるキルモンガー。この二人の対比は、白人社会に翻弄されてきた黒人という存在をものの見事に浮かび上がらせる。また、今では人種問題なんかある程度解決したんじゃないの?なんて見て見ぬふりをする白人たちが"過去の代償"を突きつけられるという点は、ワカンダの"過去の過ち"に苦悩するティ・チャラとも重なる部分である。

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 それから、本作が本当にスゴいのは、ちゃんと"黒人"を魅力的に描いた、というところだと思う。そりゃあ、黒人ヒーローをやるんだからそんなことは当たり前にも思えるけれど、でも、やっぱりみんな鑑賞後には「ワカンダ・フォーエバー!」ってやりたくなったでしょう? 『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』が先駆者となり、『マイティ・ソー:バトルロイヤル』が継承した"極彩色のSF"を上手く取り込み、かつ音楽、ビジュアル両面で"民族感"との絶妙の調和を成し遂げた、圧倒的に魅力的な世界観。『シビル・ウォー』ではすました王子様だったティ・チャラ(だからこそ、我々は群がっていじったのである。)も、元カノであるナキア(ルピタ・ニョンゴ)と甘酸っぱい恋を繰り広げる童貞感溢るるボンクラに設定されており、好感度は極大。オコエ(ダナイ・グリラ)ら王族直下の戦闘部隊ドーラ・ミラージュが放つカリスマ性は言わずもがな、宿敵キルモンガーの立ち居振舞いも、MCU史上No.1のヴィランと豪語する人がいることも頷けるカッコ良さ。集合体恐怖症の人には辛かろう彼の全身のボツボツだって、極めて適切な演出だ。すなわち、彼の狂気と戦闘力を端的に示すとともに、実は殺人の度"痛み"を感じている、というギミック。そして、個人的には、黒人を越える"外見的嫌悪"を提示するための機能もあると考えている。

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 そう言うと誤解を生みそうだが、やっぱり外見的に異なる他者への"嫌悪感""恐怖"を度外視してはいけないと思う。それは、本作が否定する"見て見ぬふり"だ。近頃は梅田の街も外国人で溢れているが、それでも道端でばったりと黒人に出くわすとギョッとする。そりゃあそうだろう? それを否定するなら、あなたはティ・チャカ前国王や"白人"たちと同じだぜ。違いは前提的で、決定的。重要なのは、その上でどう考えるか。その答えを導くために、キルモンガーのボツボツは本当に効果的である。みんな「うわぁ、キッショ!」って思ったよな? でも、最後まで観てどう思った? そう、めっちゃカッコえぇやん!キルモンガー・フォーエバー! そうだろ?

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 見て見ぬふりをするな。俺たちは"カッコ良い"。そのメッセージが極に達するのが、エンド・クレジット途中の国連のシーン「これからは見て見ぬふりをせず、世界と分かち合います。」という王の演説を聞いた白人="数時間前の俺たち"は、無知な質問をぶつける。「貧しい農業国が、何を "分かち合う "っていうんだい?」 もう、台詞なんていらない。この物語を見てきた"今の俺たち"は、すっかりと理解している。"黒人"は、俺たちとは違う。俺たちとは違って真っ黒で、俺たちとは違って巨駆で、俺たちとは違って"変な"衣装とか風習とかがあって、俺たちとは違って"豊か"で、俺たちとは違ってクールで、俺たちとは違って本当にカッコ良い奴ら。無知な白人の質問を受けたティ・チャラが「ハッ!」と鼻で笑った瞬間暗転するという終幕は、そんな"今の俺たち"の心情と完全に合致した最高に最高にクールでファッキンな幕切れである。

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 そうだな、ふと思ったんだけれど、今年のアカデミー賞で『スリー・ビルボード』が作品賞を逃したのは、同じマイノリティーを扱っていても本作のような"アゲアゲ感"が無かったからなのかもしれないな。映画通は軒並み大絶賛の秀逸な作品だった同作は、どこか内省的というか、自己反省的というか、観た後に「う~ん…。」と唸りたくなる仕上がりだった。一方の『シェイプ・オブ・ウォーター』は、まぁ本作ほどアゲアゲの"パーティー感"があったわけではもちろんないが、それでも、最後にはちゃんとイライザをファンタジーの世界で救ってあげるというハッピーエンドであった。思い起こせば、トランプという"人種差別野郎"を自分たちが選んでしまって意気消沈している昨今と同様、ベトナム戦争に敗北してず~ん…と落ち込んでいた当時のアメリカを救ったのは、『スター・ウォーズ』という映画史に残るアゲアゲ・パーティーだったわけだし。

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 つまり、当時ベトナム戦争への反省から『フルメタル・ジャケット』とか『地獄の黙示録』とか『ディア・ハンター』みたいなシビアな戦争映画が蔓延していた状況で『スター・ウォーズ』という"ポジティブな戦争映画"が当たったように、人種差別的なリーダーを選んでしまったこととか、女性蔑視の伝統が露見したこととかへの反省も含めてシビアな批判を展開した『スリー・ビルボード』よりも、『シェイプ・オブ・ウォーター』であったり本作のような"ポジティブなマイノリティーもの"がウケてるんじゃないか?ということ。まぁ、筆者はその辺りの事情に無知だから、むむ…お前ら結局は自らの"業"を棚上げして"ファンタジー"に逃げてるんじゃないのか…?という非難は止めておこう(扱い辛いテーマをエンターテイメントに昇華させるっていうのは、"ファンタジー"や"映画"が持つ根元的な機能の一つのような気もするし。)。とにかく、気付いたらもう来月末に迫っている2018年最大級の話題作『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』で、陛下が今度はどんな活躍を見せてくれるか、今から本当に楽しみだ。"パーティー"は、まだまだ終わりそうにない。

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点数:88/100点
 "マイノリティー・フィーチャー"のブームも加味すれば、映画史を塗り替えんばかりの特大ヒットも頷ける非常に上質な作品。上で書き忘れたけど、監督自身が意識したと公言していた"007感"も割と良かったと思う。『カジノ・ロワイヤル』『スカイフォール』の折衷っぽい韓国のカジノはまぁ普通だったが、少女版Qとして造形されたであろうメカ担当、かつティ・チャラの妹君シュリ(レティーシャ・ライト)は、世の全てのボンクラ男子が恋すべき最高のおてんば娘。

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 この子ね。もちろん、おや?と思うところが全く無いわけではない。例えば、"ワカンダの解放"っていう答えが、ちょっと感情論すぎない?とか。結局、これまでのワカンダ王たちが危惧してきた侵略や戦争に対する説得的な解決策は、とりあえず棚上げされたままだよな? 彼らだって別にヴィブラニウムを独り占めしたいなんていう強欲で閉じ籠っていたわけではあるまい。世に知られれば搾取の対象にされ、仮に守ることができても、その戦いの中で少なからず国民の犠牲が出る。本作の描き方だけでは、ティ・チャラはその点を有耶無耶にして、"自分たちだけぬくぬくしているのは耐えられない!"という薄っぺらな正義感だけで結論を下したようにも見える。せめて解放の是非を問う国民投票くらいはすべきだったのではないだろうか。

 他にも、例えば、キルモンガーの"残虐性の具体例"がほとんど無い、とか。周到なキャラクター描写とマイケル・B・ジョーダンの素晴らしい演技によって、あぁ!コイツはヤベェやつやな!という説得力は、確かにある。ただ、作中、彼が決定的な惨殺(彼女であるリンダ(Nabiyah Be)を撃ち殺したあのシーン以上の、例えばオコエ隊長を殺害するくらいのインパクト。まぁ、ズリ(フォレスト・ウィッテカー)(とドーラ・ミラージュのモブ)が殺されているが、これを残虐描写として十分とするか否かは、個人の主観に寄るところが大きい。筆者は後者だった。)が無いため、個人的には、あれ?コイツまだ"こっち側"に戻って来れるんちゃう?と少し思ってしまった。結局は、ティ・チャラもキルモンガーも、閉じたワカンダを解放するという大枠では一致したわけだし。とはいえ、物語調で始まる冒頭は、実は少年時代のキルモンガーに父であるウンジョブ王子(スターリング・K・ブラウン)が語っていたのだと考えるなら(宇多丸師匠はそんな感じで言ってたけど、それって論理的に確定かな?)、本作はやはりキルモンガーの物語でもあったわけで、だとすれば、取り返しが付かないほど狂ってはいないという絶妙のバランスこそが、"もう一人の主人公"には適していたとも言えそうだ。

 とにもかくにも、本作をまだ観ていないという人は、ぜひ今週末にでも劇場に足を運んで、新たな王の誕生祝いと、来るべき『インフィニティ・ウォー』の前祝いを兼ねた宴なんかを催してみてはいかがだろう。

(鑑賞日[初]:2018.3.11)
(劇場:TOHOシネマズ梅田)

(鑑賞日[2]:2018.3.17)
(劇場:TOHOシネマズ梅田)

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Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

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T  

そうさせてもらおう!

2018/03/17 (Sat) 13:37 | EDIT | REPLY |   

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