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キャッチコピー
・英語版:Her Legend Begins
・日本語版:謎が私を駆り立てる。秘宝が私を欲してる。

 その"愛"よ、安らかに眠れ。

三文あらすじ:普段はごく普通の女子大生ララ・クロフト(アリシア・ヴィキャンデル)。資産家の令嬢として生まれた彼女は、冒険家だった亡き父リチャード(ドミニク・ウェスト)の遺志を受け継ぎ、"最初の任務"にトライする。それはなんと、神話上の島に隠された、世界を滅ぼす“幻の秘宝”を封印することだった・・・

※以外、ネタバレあり。


~*~*~*~


 日本では去る3月21日の春分の日から公開されている『トゥーム・レイダー ファースト・ミッション』。世界中から良く言って"凡作"、デリカシーの希薄な人からはこぞって"駄作"の烙印を押されていた本作を、実は筆者は大変心待ちにしていた。というのも、筆者が生まれて始めてお付き合いした恋人と、生まれて始めてしたデートらしいデートが、前シリーズにあたるアンジェリーナ・ジョリー版『トゥーム・レイダー』の劇場鑑賞だったのである。ま、恋なんて所詮は刹那的な情動だ。前シリーズが2作で終わってしまったように、そしてまた、本作がいわゆる"リブートクエル"(要は、シリーズ化を前提としたやり直し。)として鳴り物入りで公開された割には、おそらくこれで終わってしまうように、誰かの思いは儚く散って眠りにつく。それが、世の常ってもんだ。

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 さて、前シリーズの良かったところというのは、まぁ端的に言って"突き抜けたバカ映画"だったという部分ではないだろうか。ブリブリにセクシーなアンジーが、ゴリゴリにゴージャスな感じで登場して、バリバリに荒唐無稽なアクションを繰り広げる。それはまさに"女版インディー・ジョーンズ"であり、インディーの発想の原型であるあのスパイで例えれば、"女版007"だったのである。そのコンセプトを本作は、大胆かつ退屈に改変した。ララ・クロフトは、『ファースト・ミッション』という日本版サブ・タイトルに恥じぬ小娘であり、父の遺産相続を拒んで極貧生活を営んでいる。かつてのララ・クロフトを忘れられない我々からすれば、それだけでもストレスなのに、加えて、冒頭で繰り広げられる彼女の紹介エピソードが、イケてないくせにしつこいのである。

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 まず、ララ・クロフトが総合格闘技のジムでスパーリングに挑む場面。勝てるか…勝てるか…ダメだぁ…!というありきたりな勝負の行方。まぁ、父の死を受け入れられず、したがって、自らの存在意義も見出だせない、そんなまだまだ"未熟"な主人公のイントロダクションとして、ここでの敗北が間違った選択とは言い切れないだろう。粋な主人公こそが持て囃される昨今の水準からすればイケてないとは思うけど、それでもとりあえずそこからスタートするのは、百歩譲って良しとする。しかし、本作は、直後にもう一回同じ事をするのである。チャリでのデリバリーを生業とするララは、悪ガキ(というか、チンピラというか)が街中を舞台に繰り広げる"賭け自転車鬼ごっこ"の追われ役に立候補する。確か、見事逃げ切ったら6万ポンドとか、そんなんだったかな。で、ここでも、いやっほー!逃げ切ったぞー…いや、ダメだぁ…!ってなっちゃう。格闘技も鬼ごっこも、結局は、ララの性格や特技や経済状況を伝えるためのパートだ。だったら、二回も繰り返さなくていいよ。スマートじゃない。チャリの技術が終盤で活きることもないんだし。

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 本作には、この後も同じように同じようなことを二回繰り返す展開がいくつか出てくる。まずは、父の消息を辿って香港に到着したララが、地元の悪ガキたちにリュックを盗まれるくだり。さっきの鬼ごっこ仲間よりもっとガキ感が強く、もっともっとモブっぽい三人組が、探し人の見つからないララに親切に声をかける。我々は、既に分かっている。香港というアジアの異国で、こんなにも"スリ感"の強い少年たちが近寄ってきたら、そりゃあ、スラれるに決まってる。案の定、リュックを奪われるララ。青天の霹靂!とばかりに驚き、その後を追うララ。しかし、我々には、もうひとつ分かっていることがある。こんなにもモブ感の強い"ザコキャラ"に時間を割くはずがない。きっと少しの追いかけっこの後、地の利で圧倒的に不利なララは少年たちを取り逃がしてしまうが、そこを探していたまさにその人が助けてくれるんだ。

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 …と、思うじゃん? 長いのである。モブ悪ガキとララの追いかけっこが、こちらの想像を遥かに凌いで長尺なのである。そして、もちろん、そこに目を見張るような新規性は無い。"異国でのスピーディーな追いかけっこ"というジャンルでは、最近の007に勝てるはずもないのだし。ドンドコドンドコと重厚かつ大層に鳴り響くBGMが、展開と画ズラのショボさをより際立てちゃってるのも癪に触る。とはいえ、恋が始まればいつかは終わるように、この緩慢な追いかけっこも遂には終演を迎える。ところが、さぁ、出でよ、探し人!という我々の期待など空しく、なんとなんと、ここからナイフを取り出したモブ悪ガキとララのセカンド・ステージが始まるのである。いやいや、もうえぇって…とため息をついたのは、きっと筆者だけではあるまい。

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 しつこい繰り返し展開はまだある。古の邪神"卑弥呼"が眠る孤島で悪の秘密結社トリニティに捕まるも、なんとか逃げ出したララが、滝のてっぺんで朽ちた飛行機の上をチョコマカするくだり。予告編のメイン・アクションにもなっている本作の目玉である。前半は、まぁ良い感じ。パリパリと今にも崩れそうな翼から間一髪で胴体に飛び移るシーンは、確かにいささかハラハラする。胴体の中で一息つくも束の間、お次は翼を失ってバランスを崩した胴体自体が川に流され落下の危機。ここまでは良いよ。うわあぁ!まだだったか!ってな感じで、間一髪陸地に飛び移る。そういうサラッとしたギャグとアクションの中間くらいのバランスならよろしい。しかし、本作は、ここでも同じことを仰々しく繰り返すのである。すなわち、胴体がひっくり返ったか何かで、飛行機の窓らしきガラス面にうつぶせになってしまうララ。眼下には、ゴウゴウと唸りをあげて落つ濁流。僅かな筋肉の動きも逃すまいと、ピキピキ音を立てる窓ガラス。…いや、それ、さっき見た! 窓ピキピキ自体も、我々は既に『ロスト・ワールド』で見たことがあるのだし、なぜ敢えて二回繰り返すのか、理解に苦しむ。

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 あと、冒頭でララが敗北した決め技である首締めを、先述の悪ガキとのバトルで一回、孤島に着いてから誰かとのバトルで一回、そして、確かラスボスとのバトルで一回、というように何回も繰り返すのも良くない。どうせ主人公を未熟者であり敗北者としてスタートさせるなら、その敗北の象徴たる決め技は、最後の最後で彼女が華々しく開花するときまで温存した方が美しい。それと、細かいことだが、エンドロールでのタイトル表示。本作は、後述の通り、いったんエンドロールが始まって、途中でもうひとくだり入るという"MCUスタイル"が採用されている。ここで発生する二回のエンドロール突入時、なんと二回とも同じロゴマークがバーンッ!って感じで出てくるのである。そんなもん、絶対一回じゃないと成立せぇへんやろ。またか!の天丼が多過ぎて、二回目のロゴどーん!の際、劇場にも関わらず、筆者はマジで小さく吹き出してしまった。

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 そういった演出や構成面でのグダグダさもさることながら、本作で一番酷いのは、やはりキャラクターの魅力不足であろう。まずはもちろん、主人公であるララ・クロフト。前シリーズのララは、先述の通り、ブリブリゴリゴリバリバリのアンジーが、まさにゲームの主人公って感じの清々しい荒唐無稽さを醸し出していた。一方の本作。演じるアリシア・ヴィキャンデルには、何の不満も無い。出世作『エクス・マキナ』で、最高の人口知能=完全生物という存在に説得力を持たせたその完璧な美貌は、もちろん健在。おまけに、すさまじいワーク・アウトの末作り上げたムキムキの肉体が放つ健康的なセクシーさ。腹筋なんか、バッキバキのモッリモリだし、本作がベースにしている2013年のゲームを象徴する"弓使い"も、本当に様になっている。本作を一度見れば、みんなヴィキャンデルに恋してしまうだろう。これは、請け負っても良い。

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 しかし、ことララ・クロフトというキャラクターに関しては、本当に残念。決定的なのは、やはり"考古学愛"が無いという点である。2013年版のソフトを持っているにも関わらず筆者は失念していたのだが(まぁ、途中で止めちゃったんだけど)、ゲーム版のララは、きちんと考古学とかアドベンチャーにも興味のある女の子だった(らしい)。これは、アンジー版でも大きくは変わらない。彼女は、女版インディーとして、何より女版007として、冒険やスリルを愛する女だった。これがキャラクターの奥行きに繋がる。ところが、本作のララが危険極まる大冒険を繰り広げる動機は、"父親に会いたい"の一点張り。その動機が悪いとは言わないよ。でも、それだけじゃあ、彼女の魅力も、実在感もてんで伝わらない。

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 そもそも、アドベンチャーってのは、すべからく考古学に纏わるサムシングが焦点になるべきであり、そして、考古学ってのは、それすなわち"ロマン"なのである。過去の残骸から当時を推測し、実在したかどうかも怪しいものについてケンケンガクガク語り合う。そんなもん無かったんちゃう? 仮にあったとして、それ、今の私たちや今後の子供たちに役立つことは無いんちゃう? そういった批判に対し、「 "無い "ことを証明できた奴はいねぇだろ! だから、俺はやるんだよ!」というモンブラン・クリケット・イズムで立ち向かう心意気。それが、"ロマン"である。よって、およそアドベンチャー作品の主人公は、すべからく"ロマン"の探求者でなければならないんだ。だのに、ただただ父親に会いたいだけの寂しがり屋の小娘にしてしまうなんて、そんなのは言語道断である。

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 しかも、しかもである。ララは、卑弥呼の孤島への旅費を調達するため、(その時点では)父の形見であるいわくありそうなペンダントをニック・フロスト演じる質屋に差し出してしまう。まぁ、ラストで無事にペンダントを取り戻し、陳列されていたヘッケラー&コッホのハンドガン二丁を「二丁とも貰うわ。」と言って暗転する終幕は、確かにアガる。その二丁拳銃は、アンジー版ララ・クロフトが使用していたのと同じものだからだ。でも、やっぱり質入れ展開自体は、本当にゲンナリ。父性への憧れという、僅か一点だけ残された最後の動機にすら矛盾が生じているじゃあないか。まぁ、じゃあ、最初はそんな感じで"父親大好き<=守銭奴"だったララも、ナンダカンダの末、冒険と考古学の楽しさに目覚め、最後には父親の残した遺産を使って、続編へと続く大冒険を企み始めるのか。それなら良いよな。でも、そうじゃない。結果、トリニティが隠れ蓑にしてるっぽいパトナとかいう会社がクロフト社のグループ会社だったことが判明し、その黒幕が、クロフト社の実質No.1にしてララの乳母でもあるおばさんアナ・ミラー(クリスティン・スコット・トーマス)だと断定される。そして、ララは、クロフト社に、そして、クロフト家に課された"使命(ミッション)"を遂行するため、パトナ=トリニティ=クロフト自身との戦いを決意するのであった…。

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 …いや、それ、『アイアンマン』で見たやつ! ワイヤー・フレーム調のエンドロール演出も同作のそれに酷似しているし、なんなんだ一体。確かに、ララの属性は"女版トニー・スターク"と言っても過言では無いかもしれないが、まさか、ゆくゆくはMCUみたいな人気ユニバースにしていきまっせ!というMGM(とワーナー)の恥知らずな気概が現れているのか? それじゃあダメだよ。やっぱり、"考古学愛"は必要だ。では、どうやってそれを表現すべきだったか。答えは一つしか無い。かつて父と過ごした思い出の日々のフラッシュ・バックで、父が話す考古学の逸話をララが楽しく聞いている。これですよ。本作のララは"父親愛"のみを動機としているが、その割には、先述の質入れ展開を含めてその部分の描写が決定的に不足している。最大の問題は、父親との在りし日の回想が、全て"お別れ悲しいエピソード"のみ、という点。しかし、お別れ悲しいよー嫌だよーだけでは、厳密に言って"父親大好き"の根拠にはなり得ない。お別れが悲しいのは、"父親大好き"という感情の結果であって、理由ではないからだ。"大好き"を根拠付けるためには、きちんとその礎たる"楽しいエピソード"を描く必要がある。これを"考古学にまつわる楽しいおしゃべり"にすれば、問題は一挙に解決だろう? 父親への喪失感や執着のみを原動力に冒険したララは、その果てで父の愛を知り、あるいは、思い出し、父が残した本当の"遺産"、すなわち、考古学への飽くなき愛と探求心と"ロマン"を胸に、父の"遺志"を継いで更なる大冒険を企てる…。これなら最高だったのになぁ。

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 他にも、本作のボスであるマサイアス・ヴォーゲル(ウォルトン・ゴギンズ)が、いくらなんでも"小物"過ぎる、とか。ララのお相手であるルー・レン(ダニエル・ウー)が、いくらなんでも"人種にもちゃんと配慮してますよー"の看板過ぎる、とか。キャラクターの魅力がことごとく乏しい。まぁ、死を司る"魔女"と恐れられていた卑弥呼が、実は未知の病原菌のキャリアーであり、彼女は封印されたのではなく、自らを封印することで世界を救おうとしていたのだ…。というカラクリは、割りとおもしろかった。言ってみれば、『レイダース』のラストに"リアル"な理屈を付けた、みたいな感じか。ただ、これも、いや…"トゥーム・レイダー"なんですよね…? これから山のように墓を暴いていくんですよね…? だったら、墓を暴くことが眠っている者の無念を晴らす、みたいな展開にしといた方が良くないですかね…? なんて、思わなくもない。

点数:65/100点
 ユニバース全盛の昨今、"リブートクエル"と大々的に銘打ってリリースするには、どうしたってお粗末と言わざるを得ない作品。ヴィキャ姉が可愛すぎるから点数は甘めだが、"ゲーム原作映画はあたらない"のジンクスを払拭する出来ではないように思う。やっぱり、過去の人気作なんて、軽々しく掘り起こすもんじゃない。古の魔女のように、あるいは、始めての恋人との思い出のように、そっと安らかに、眠らせておくのが正解であろう。

(鑑賞日[初]:2018.3.21)
(劇場:MOVIXあまがさき)

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Posted byMr.Alan Smithee

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