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キャッチコピー
・英語版:Rise up.
・日本語版:戦いは[新世代]へ

 デル・トロにありがとう。
 デナイトにさようなら。
 そして、全ての"俺たち"におめでとう。

三文あらすじ:巨大人型決戦兵器"イェーガー"を駆る人類とカイジュウとの死闘から10年が経過し、平穏が戻っていた地球。進化を遂げたカイジュウが再び姿を現し、世界を絶望の淵へと突き落とす。よりスタイリッシュに洗練されパワーアップを果たした新世代のイェーガーに乗り込む若きパイロットたちは、迫りくるカイジュウを撃ち滅ぼすことが出来るのか・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 先週末の4/13(金)から公開されている本作『パシフィック・リム:アップライジング』をご覧になり、皆さんはどのような感想を持っただろうか。前作をサラッとしか観ていない観客、彼らはおそらく「こいつは酷い!」と激昂していることだろう。そして、一方のモンスター・パニック好き、あるいは、ロボット好き、はたまた、ギレルモ・デル・トロ好きだって、実は「こいつは酷い!」と思っている。きっとそうだ。それくらい本作は、前作が構築した類希無き"夢の世界"を華麗に裏切っているのである。まぁ、最近『Bloodborne』というゲームにドはまりして映画鑑賞をサボっている筆者に偉そうなことなど言えないが、個人的には、やはり皆さんと同様、いくばくかガッカリした。しかしながら、筆者の感想を正確に言えば、こうだ。こいつは酷い!でも、おめでとう。

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 まずは、本作の酷いところから。抽象的に言えば、"軽々しく"なっている。逆に言えば、前作は"重々しかった"んだ。巨大ロボット"イェーガー"たちの重厚な"鉄(はがね)感"。デザインは概ね無骨で、その動きはすべからくノロノロしている。速さが売りの必殺技"エルボー・ロケット"(要は、ジェット推進を駆使した"高速"パンチ。)でさえ、ジェット点火!…ブシュ~~~…シュシュシュシュシュ…グオーーーーーーン…………ドカーーーーン!! そんな感じだった。端的に言って、これは、デル・トロの"ロボット愛"の結晶だろうと思う。巨大ロボットが本当に存在したら、どんな質感だろうか。彼らは、小さな我々から見てどれくらいのスピードで動くのだろうか。そんな"バカバカしいこと"を日々モゴモゴと考えている"ロボット・オタク"の重苦しい愛が、前作のイェーガーたちに"リアルな不器用さ"を与えていたのだと思う。そして、だからこそ、同じくロボットを愛して止まない我々ボンクラたちは、ははぁ!こりゃめでてーや!デル・トロありがとー!と浮かれ騒いだのだ。

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 対する本作のイェーガーたちは、みな"軽い"。良く言えば"シュッとしている"とも取れるが、質感はツルツルで、武器はスタイリッシュで、意匠はオシャレで、ムーヴはムニムニである。つまり、イェーガーは、前作のような兵器、機械、あるいは"鉄"ではなく、"ロボット"というキャラクターになってしまったということである。この点にガッカリした観客は多かろう。『パシフィック・リム』は、『トランスフォーマー』じゃない。イェーガーは、人智を越えたエイリアンたるオートボットではなく、人類が、いや、ロボットが本当にいたらいいなぁ…なんて、仕事もサボって日々妄想ばかりしている俺たちが作ったメカなんだ。『君の名は』の瀧くんに俺たちが感情移入出来なかったのと同様、ボンクラの手を離れたイケメンのロボットなど、俺たちは認めない。この点に失望し、もうお前はえぇわ…デナイト監督さようならー!と踵を返したボンクラもたくさんいるだろう。

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 それから、設定とかストーリー展開の部分。こいつはもっと酷い。一番酷いのは、やっぱり、カイジュウたちは実は富士山を目指していたんだ…という"後付け設定"である。そもそも、過去作の展開に後続の作品が違った意味付けをしてしまうことが筆者はあまり好きではないのだが(例えば、『インシディアス2』とか。)、本作ではなんと、前作で次々と現れたカイジュウたちには、実は意図した進路があったのだという意味付けがなされる。まず以て、その真相解明の瞬間が実にアッサリ。前作から10年経ってテクノロジーが進歩したという設定なのかもしれないが、ただ単にカイジュウたちの予想進路を延長して繋いだだけにしか見えず、したがって、前作でこんな重要なことを見逃していたペントコスト(イドリス・エルバ)たちが酷くバカに思える。

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 では、カイジュウたちは、なにゆえマウント・フジを目指すのか。答えは、自らの血液とレア・アースを混ぜ合わせ、環太平洋全域に大爆発を引き起こすため、である。この設定に付随するいくつもの「?」よ! カイジュウの血液とレア・アースの接触が爆発を起こすという"後付け設定"は、一応、本作の序盤でサラリと前振られていたとはいえ、だったら富士山なんかじゃなくて、シンプルに深海から出現した瞬間にちょこっと穴掘って自傷すればいいんじゃ…?なんて思う。百歩譲って、環太平洋造山帯の陸上火山でないとダメと考えても、別に富士山じゃなくてもええやん。もっとデカい火山あるやろ(あるいは、富士山って実は地球上で最もレア・アースが豊富な火山なのか? 本当に?)。本作はゴリゴリに中国資本が投入された作品なので中国が大々的にフィーチャーされているのだが、そんな中、なんだが無理やり日本へのリップサービスを入れ込んだようにも思っちゃう。東京でのクライマックス・バトル時、あからさまに映り込むガンダム像とか、"アナハイム(ANAHEIM)"の看板とか、そういうのも安直だ。

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 そんなことをマゴマゴと考えている内に、首都決戦は最終局面へ。ロケット・ブースターを使用して成層圏まで上昇、そこからの落下速度を利用することで、ハクジャ、シュライクソーン、ライジンのカイジュウ三体が合体した現状最強クラスのカテゴリー6"メガ・カイジュウ"(名前ダセェ…)に止めを刺すというプランに、我々はいささかのワクワクを抱く。つまり、これは前作のvsレザーバック&オオタチ戦ですよ。あのときの展開は、オオタチにむんずと掴まれ、期せずして成層圏まで上昇してしまったジプシー・デンジャーは、果たして無事に帰還できるのだろうか…?!というピンチとして演出されていた。その展開を土台に、本作のジプシー・アベンジャーは、"成層圏からの落下"というガンダムシリーズお決まりのピンチを逆にチャンスとして利用し、文字通りの"逆襲"をぶちかますわけである。

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 俺たちのアマーラ・ナマーニちゃん(ケイリー・スピーニー)の親友イェーガー"スクラッパー"の活躍もあり、見事メガ・カイジュウを撃破したジプシー・アベンジャー。富士山頂付近に積もった雪をキャッキャキャッキャと投げ合うジェイク・ペントコスト(ジョン・ボイエガ)&アマーラちゃん。ふむ、東京を舞台としたこの一連のシークエンスは、確かに「?」も多いが、結果的には中々よろしい。何より、このシークエンスは、まだまだ中盤の盛り上がりなんだろうし。さぁ、敵の目的は分かった。あとは、満を持してラスボスが登場し、満身創痍の人類がそれでも寄せ集めチームで立ち向かい、現時点ではあろうことか裏切り者になってしまっているニュートン・ガイズラー(チャーリー・デイ)が復活し、愛しのハーマン・ゴッドリーブ博士(バーン・ゴーマン)と往年のナイス・バディを復活させ、ジェイクの父親コンプレックスとか、死んでしまった義姉、森マコ(菊地凛子)への思いとか、アマーラちゃんのパイロット憧れとか、"少女"から"女性"への成長とか、そんなあらゆる前振りを一切合切かき集め、怒濤のラスト・バトルに雪崩れ込んでいくのだ。

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 って、思うよな? 終わっちゃうのである。「雪なんて初めて見たー♪」キャッキャキャッキャ……終幕!なのである。これにはマジで驚いた。っていうか、ちょっと引いた。え…暴走イェーガーとのバトルは一応あったけど、肝心のカイジュウとのバトルは、この一回きり…? やっと結成されたジェイク&アマーラちゃんタッグの本格始動は…? ジプシーしか残ってねぇが、俺たちならやれるさ…! おぉい、ちょっと待て!マコの弔い合戦なら、俺たちも誘うのが筋ってもんじゃねぇのか?で登場する前作の各国パイロットやそのゆかりの者たちは…? アマーラちゃんがスクラッパーを改造し、ジプシー・アベンジャーと"漢の合体"を見せるっていう完全燃焼展開は…? そんな様々な期待を嘲笑うかのように、本作はシレッと幕を下ろす。さすがに声こそ出なかったが、終幕の瞬間、筆者は、劇場にも関わらず大きく目を見開き、本当に0.1馬身くらい前のめりになってしまった。

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 かいつまんで述べればそんな感じで、本作は、『パシフィック・リム』の続編としても、一本の映画としても、本当に情けないないくらいグズグズで薄味の作品だと思う。でも、実は筆者は、あまり怒っていない。というか、むしろちょっとデナイトに感謝すらしている。それは、ひとえに本作の中に"あの頃の俺たち"を垣間見たから。端的に言えば、嗚呼…90年代のロボット・アニメってこんな感じだったよなぁ…としみじみできたのである。

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 70年代終盤に誕生したファースト・ガンダム、その後、80年代いっぱいを使って展開されたZやZZのような正統的な続編たち。筆者は、ファーストを筆頭にこれら初期のガンダムたちが大好きだが、幼い頃、直撃リアルタイムで鑑賞していたのは、実はこの後の世代のロボットたちなのである。すなわち、ガンダムWとか、熱血最強ゴウザウラーとか、超魔神英雄伝説ワタルとか、ビーストウォーズとか、エヴァンゲリオンとかなんだよ。で、こういった90年代のロボット・アニメってのは、ツルツルしてたんだよ。機能美を度外視したバリエーションが増え、ロボットが、あたかも人格を持っているかのようにキャラクタライズされていったんだよ(まぁ、エヴァは、90年代ロボット・アニメに対するある種のカウンターの要素も含んでいるのだが。)。それはもちろん、本当にコアなロボット・ファンからすれば、一笑にふすべき冒涜なのかもしれない。でも、あの頃の俺たちにとって、それらは紛れもなく"憧れ"であり、"人生の全て"と言っても過言ではなかったのである。

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 デル・トロは言わずもがな、デナイトだって、熱烈なジャパニーズ・ロボット・ファンを公言してはばからない。だから、もしかしたらデナイトは、本作をわざと"こういう風"に作ったのだろうか? ブレイクスルーだが不器用な初期作品を土台にして、後続の最新作たちはどんどんシュッとしていき、その反面、ある意味で杜撰かつ薄味になっていく。そんなロボット・アニメの変遷を再現したのか? あるいは、「ロボットはファンタジーじゃない!本当にいるんだってば!」という観点を突き詰めたデル・トロに対し、「分かる!でも、やっぱりファンタジーとしてのロボットも、俺たちは大好きだ!」と高らかに宣言してみせたのかもしれない。たぶんいずれも違うけど。でも、例えただの力量不足だったのだとしても、久々のノスタルジーで束の間現(うつつ)を忘れることができた筆者は、デナイトに感謝したいのである。

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 では、最後に、本作中、件のエヴァをオマージュした(のではないかと邪推できる)展開について。まずは、中国企業シャオ産業が社運を賭けて送り出した無人のドローン・イェーガー。新たに無人機の有用性がフィーチャーされ、既存の有人機の存在意義が疑問視される、というこの展開は、まさにエヴァテレビシリーズ第7話『人の造りしもの』の再現。案の定暴走してしまうドローン・イェーガーは、JA(ジェット・アローン)さながらである。しかして、ドローン・イェーガーの暴走原因がカイジュウ細胞による"侵食"であるという点に着目すれば、これはまさに第18話『命の選択を』に登場した第13使徒バルディエル(新劇では第9の使徒)へのオマージュとも取れる。または、『EOE』に登場したエヴァ・シリーズを想起しても良いだろう(筆者がネットで読んだ監督インタビューでは、量産型とのシンクロについて「たまたまだよ。」と発言していたが。バカめ、素直に認めておけ。)。

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 それから、さっきはケチョンケチョンに文句を言った"カイジュウ、富士山を目指す"の展開。これもエヴァを念頭に置けば至極当然。つまり、使徒は、日本を、東京(箱根)を、セントラル・ドグマを目指すんですよ。で、リリスと接触したらインパクトを起こすんですよ。なぜ日本かって? そこに理由なんていらない。たまたま黒い月が箱根に落ちただけさ。まぁ、そんなせめてものエクスキューズすらない本作の富士山設定は、やっぱりオマージュとしてあまりにも薄っぺらだが、まぁ、いいじゃないか。都心と富士山の距離がいくらなんでも近すぎる!(確かに、どう多目に見積もっても10kmくらいしか離れていないように見える。)とか、そんな突っ込みも野暮だ。本作は、前作から10年後の未来の話だぜ? 当然、都心の人口は増加し、あるいは、先の戦いでオニババ等のカイジュウに壊滅され、今は富士の裾野辺りに第三新東京市ができているんだろう? そうだろう? …さすがに、ここまでの妄想は、おめでたすぎるかな…。

点数:56/100点
 何度も言うが、本作は、一本の映画として、そして何よりあの『パシフィック・リム』の続編として、何ともゆるゆるで軽々しい"駄作"だと思う。まぁ、言っちゃえば、ロボット・アニメ大好きオタクが往年のそれを真似て作った二次創作って感じか。でも、それだって、あるいは、それこそが"俺たち"の姿だったりするんじゃないのか? 『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞を取ってしまったデル・トロは、もはや"俺たち"じゃない。俺たちの"神"だ。だから、闇雲に批判だけを展開するのではなく、うれしそうに神の真似事に勤しむ"俺たち"の門出をめでたく祝ってやるのも、また一興だと思う。前作のときに筆者が続編展開として予想していた"変形機構"と"合体"も、一応出てきたしな(変形はスクラッパーのコロコロ・モード。合体は、まさかカイジュウ側でやるとは思わなかった。)。…ま、次作があるなら、やっぱりデナイトにはさよならして、神の手に委ねたいのだけれど。

(鑑賞日[初]:2018.4.13)
(劇場:MOVIXあまがさき)

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Posted byMr.Alan Smithee

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