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・英語版:An adventure too big for the real world
・日本語版:準備はいいか、ニッポン。

 泣きじゃくる準備はできたか?

三文あらすじ:2045年、荒廃した現実を生きる人々の希望は、誰もが理想の人生を楽しむことができるVR世界"オアシス"だった。ある日、"オアシス"の創始者ジェームズ・ハリデー(マーク・ライランス)が「"オアシス"に眠る三つの"イースター・エッグ"を見つけた者に遺産と"オアシス"の全てを与える。」との遺言と共にこの世を去り、その日から世界中で壮絶な争奪戦が始まる。現実では冴えない生活を送る17歳の青年ウェイド・ワッツ(タイ・シェリダン)は、"オアシス"での親友"エイチ"や戦いの中で出会ったミステリアスな美女"アルテミス"らと協力し、ハリデーの残した試練に挑むのだが・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 4月も終盤となり、世間はすっかり『アベンジャーズ』モード。TOHOシネマズでは全国5箇所で本日4/26(木)の19:00から前夜祭公開をやるらしく、その座席指定券が去る18日(木)の24:00から購入開始だったのだけれど、まぁ、あのときの勢いはスゴかった。準備万端だったんだぜ? 筆者は、お風呂に浸かりながらスマホで『Bloodborne』のゲーム実況を観つつ、同時に刻一刻と明滅するデジタル時計をもまた注視していた。で、00:00の瞬間にTOHOシネマズ梅田のサイトにアクセスしたんだ。しかし、その時点で既に6割ほどの席がオキュパイド。なんとか空席をクリックして利用規約に同意するも、「そこは既に取られました。」と戻される始末。再度座席選択画面に入ると、もう最前列の右と左、両ウィング一番端の2席しか空いていなかった。ファック! 絶対"テンバイヤー"だ! IOIみたいな愛無き組織が、営利目的で買い漁ったんだ! いや…しかし、逆か? 本当の愛を持ったウェイドのような"プレイヤー"たちが、ラックとガッツで勝ち取った? だったらいいな。…というわけで、今回は、『アベンジャーズ』目前の今、映画、アニメ、ゲームのオタクたちが忘れちゃいけないもうひとつの祭り、『レディ・プレイヤー1』のお話。

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 まず、何を置いても言いたいのは、スピルバーグ…ありがとう。という感謝の言葉。個人的に、最近の映画で瞬間最大涙量を記録したのは、『リメンバー・ミー』でミゲルがココに演奏してあげるシーンなのだが、本作は、なんと個人的な観測史上の落涙最長記録を樹立した。要は、掛け値なしに、本作開幕直後から終幕まで、ずっと泣いていたのである。冒頭、いきなりの『JUMP』にウルウル。ヴァン・ヘイレンが歌うこの往年の名曲は、予告編で最高の使われ方をしていたのだが、それをきちんと本編でも、しかも、ド頭にいきなり使ってくるか!という感動。言ってみれば、『マイティ・ソー:バトルロイヤル』のオープニング・バトルでいきなり『移民の歌』が流れた、あの感動である。

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 暗闇に曲先行で製作会社のクレジットが浮かび上がるという演出も、真にクラシックで、しかし、本当にシビれるカッコ良さ。まぁ、確かに、この『JUMP』は、いわば"ためにする演出"だ。明転後、ウェイドがスラムを歩いていくシークエンスのどこにも、『JUMP』が実際に、例えばラジカセとかから流れているような描写は無いため、厳密に言えば、客を盛り上げるためだけに監督が無根拠で挿入したBGMということになる。でも、これは一緒に観に行ったうちの弟が気付いたのだが、『JUMP』って、まさに本作のテーマソングなんだよな。つまり、ハリデーが出来なかった"JUMP"、しかし、ウェイドは見事成し遂げてみせた"JUMP"。その辺りを象徴しているんだよ。だったら、百歩譲るまでもなくオッケーだ。どこからも流れていないはずの曲が流れているという"映画のウソ"は、敢えてメタ的な視点を採用することで強調された"監督からのメッセージ"なのだと解釈できる。

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 その後、赤子の児戯かと目を疑うほど無造作に積み上げられた"スタック(集合住宅)"の外見的フレッシュさや、上層の居室から地上に降りるための(そしてまた、帰りは登っていくための)ロープを自転車よろしくチェーンで繋ぐというアイデアのフレッシュさ。そして、いよいよ訪れる"オアシス"内の世界。冒頭で潤んだ目頭も渇かぬ内に、筆者は、ここから繰り広げられる怒濤のレース・シーンで泣いてしまった。もちろん、このレースは予告編でも大々的にお披露目されていて、そこで既に一回(…本当は2、3回)泣いてはいる。でも、やっぱり無理だよ。我慢できない。幼少期、そして、おっさんになった今でも俺たちの"ヒーロー"であり続けるデロリアンが、あんなにも生き生きとカッコ良く爆走している様を見せつけられたら、そんなもん泣くしかないじゃあないか。他にも、『AKIRA』の金田バイクとか、『怪鳥人間バットマン』のバット・モービルとか、『ジュラシック・パーク』のT-Rexとか、『キング・コング』のキング・コングとか、あれも!あれも!と目を回している内にあれよあれよと畳み掛ける"「大好き」の洪水"。万感の思いと溢れ出る涙で窒息しそうになりながら、筆者は、どうかこの時が終わりませんように…と願った。

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 そう言った意味でやっぱりどうしても特筆したいのは、先日感想を書いた『パシフィック・リム:アップライジング』でもフィーチャーされていた、日本が世界に誇る最高のポップ・アイコン『機動戦士ガンダム』である。もちろん、"おっさん仮免中"の筆者は、ファースト直撃世代ではない。『Z』も、『ZZ』でさえ、後追いで観た世代だ。でもね、ファーストの劇場版三作を小学生の頃に観て以来、筆者はやっぱりなんだかんだガンダムが大好きなんだ。ガンダム・デスサイズやシェンロン・ガンダムのプラモデルを夢中で作ったし、『逆シャア』を鑑賞してチェーンの死亡に心底落ち込んだりもした。全シリーズをきっちり観てはいないけれど、『スパロボα』をやり込んだり、弟がドはまりしていた『SEED』を横から眺めて「やっぱガンダムっていいよなぁ。」と悦に入ったり、ワンルームの薄暗い下宿で『UC』を観てむせび泣いたり。"ライト・ユーザー"を自覚している筆者でさえ、その人生には、常にガンダムがいたのである。そんな"人生の伴侶"が、遂にスピルバーグの手によるハリウッド超大作に登場する。事前の期待値はマックスだ。でも、それじゃあいけない。できるだけ下げなきゃ。ガンダムなんて、絶対にリップサービス的にしか出てこないに決まっている。アイアン・ジャイアントとは違うんだよ。だから、ハードルは出来るだけ低く保たないといけない。そんなことを勝手に考えて、鑑賞前の期間、筆者は独りで葛藤していた。

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 それがどうだい。我慢しろと? 平静を保てと? 落涙を堪えろと? 出来るわけがない。ボスであるノーラン・ソレント(ベン・メンデルソーン)が繰り出す最強兵器は、『ゴジラ×メカゴジラ』と『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』に登場した"3式機龍"メカ・ゴジラ。このゴジラ界における"新参者"をラスボスとして自信満々に送り出すスピルバーグの心意気にまずひと泣き。まさか…まさかな…。とソワソワしながら、なぜか瞑想にふけるトシロウ(森崎ウィン)に期待する我々は、スピルバーグに優しく肩を叩かれる。大丈夫、心配いらない。そう、スピルバーグの辞書には、リップサービスなど存在しない。今や世界中の誰もが知る『ゴジラ』を使うにしても、看板怪獣たるゴジラではなく、その宿敵であるメカゴジラ、しかも、日本人でも筆者のような"ゴジラは『vs デストロイア』で卒業した世代"には初見の"3式機龍"を登用する。欺瞞があってはならないのさ。本当にその作品が大好きな人たちに訴えかけるなら、リップサービスなんかクソ食らえだ。だから、ガンダムは、待ちわびた"最終兵器"として、俺たちにとっての最高の"ヒーロー"として登場する。ナメック星の悟空さながら、ギリギリの土壇場でカッ!と目を見開くトシロウ。「俺は、"ガンダム "で行く。」という台詞の圧倒的(に予想外)な"コレ感"。直後、彼の装着するVRヘッドセット・ディスプレイに表示されるファーストのタイトル・ロゴ。後はもう言わずもがな。公共の場でなければ、きっと筆者は声の限りに絶叫し、卒倒していただろう。

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 みなさんは、本作におけるガンダムの扱いをどのように見ただろう。まぁ、プレイヤーが"搭乗"するのでなく"変身"するとか、変身時間に数分のタイム・リミットが設けられているとか、その辺りの違和感は、元々原作ではウルトラマンだったポジションをガンダムに置き換えたのだから、ある程度は仕方なかろう。でも、使用する武器のバリエーションについては? 本作で登場するRX78-2"ガンダム"は、結局ビーム・サーベルしか使わない。鑑賞直後の筆者は、この点が少しだけ不満だった。頭部バルカンとかさ。ジャベリンとかさ。攻撃のレンジや火力から言えば、ビーム・ライフルを撃った方が良くないかい? そんな風に考えていた。しかし、弟と盃を交わしながら語らっているとき、筆者の額にピキュキュキューン!と電気が走ったのである。そう、トシロウがサーベルしか使わなかったことには、次の2つの理由がある。

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 まず一つは、彼が侍キャラであるということ。ガンダムは元々武者をモチーフに造形されており、ビーム・サーベルは日本刀に相当する武器だ。したがって、トシロウは、彼なりのロマンとして、あるいは、武士の嗜みとして、その他の武器、特に飛び道具は使わないのである。しかし、これは、むしろ理由ではなく結果とも考えられる。つまり、サーベルしか使わないこととの整合性を取るため、トシロウは敢えて強烈な侍キャラとして設定されたのではないか。では、彼がサーベルしか使わない本当の理由とは? 答えは、『ガンダム大地に立つ!!』オマージュだと筆者は考える。1979年4月7日、『機動戦士ガンダム』第一話として放映された『ガンダム大地に立つ!!』には、故郷であるサイド7に奇襲をかけられ逃げ惑うアムロ・レイが、偶然にも連邦の最新鋭試作モビルスーツ"ガンダム"に搭乗し、右も左も分からないまま(まぁ、戦場であるにも関わらず、休日のOLかというくらい地べたでアンニュイにくつろいで手引き書を眺めはいたが)、なんとかジオンのザクⅡ二機を撃破する、という展開が登場する。

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 ここでアムロにとっての懸案事項だったのが、いかにしてサイド7を破壊せずザクを撃破するか、という問題であった。『ガンダム』は"リアル"なロボット・アニメだ。ザクの爆発は"やられたー!"の記号ではなく、物理的破壊力を持った衝撃である。したがって、アムロは、宇宙コロニーである自身の故郷に風穴を開けず、ザクのコックピットだけを狙わなければならなかった。この状況は、実は本作のクライマックス・バトルでも同じなのである。『ロード・オブ・ザ・リング2』さながら、敵も味方もワチャワチャの大合戦となった惑星ドゥームでガンダムがビーム・ライフルを「ドゥウゥゥゥゥウウウン!」とぶっぱなせば、確実に味方側にも死傷者が出る。だから、飛び道具は使えないんだよ。よって、なぜか瞑想に耽っていたトシロウは、戦地をシミュレートし、「ど…どうする…? 3式機龍だけを狙えるのか…?」という自問の中で、仲間の巻き添えを回避するための戦術を組み立てていた、と筆者は考えている(もちろん、ガンダムはオアシス内でも最強兵器の部類に入るハイ・スペックなキャラクターだからロード時間が長い(同時に起動時間にも制限がある。)、よって、瞑想して機を待っていたのだ、という説も気に入ってはいるが。)。

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 話がやや脱線気味になってしまったが、筆者が特に感銘を受けたもう一つのシークエンスは、『シャイニング』鑑賞会のくだりである。ここは、別に号泣したわけじゃない。映画ファンとして、ただただ「やったぜ!」と高まったのである。おそらく、現代映画史上、最強に完璧主義者な変態映画監督スタンリー・キューブリックが、1980年にリリースしたホラー映画史に残る大傑作『シャイニング』。ロンドン王立大学の研究チームによると、理論(数学的計算)上、ホラー映画史上最も恐い作品というだけあって、やはり何度観てもビリビリ痺れる匠の一本である。で、そんな『シャイニング』自体が第二の試練だということが判明し、ウェイドらは、同作の中に入っていく。ここでまず最高なのは、映画の中に入っていくというコンセプト。映画ファンなら誰しもが、究極的には一度くらい大好きな作品の登場人物になりたいと願っている。それに加えて、スピルバーグが天才的なのは、やはり原作の設定を改変し、主人公らが入っていく作品を『シャイニング』にした、という点である。

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 原作における映画世界での試練、いわゆる"ムービー・シンク"の対象は、1983年に公開されたSFサスペンス『ウォー・ゲーム』と、1974年(日本だと1979年)に公開されたイギリス産コメディの金字塔『モンティ・パイソン・アンド・ホーリーグレイル』。実は筆者は原作を未読なので、この二作の必然性だとか、ストーリー内での情緒とかは分からない。しかしながら、これらをバッサリ切って『シャイニング』にした判断は天才的だと思う。まず、『シャイニング』が史上最恐のホラー映画であるという点。往々にして、映画ファン(特に、ジャンル映画好きのボンクラ映画ファン)ってのは、最終的にはホラー映画好きになっていく。筆者なりの言い方をすれば、それは、我々が映画に非日常性を求めているからである。TOHOシネマズでの鑑賞時には、本編開始前に東宝シンデレラ・ガールの山崎さんが、「夢のある映画のひとときを、お楽しみください。」と言ってくれるが、映画ファンは、映画に対して現実では決して見たり体験したりできない"夢"を求めているのである。

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 そんなムービー・ギークたちの非日常憧れは、鑑賞本数の増加に比例してどんどん高密度化していき、遂には究極にまで振り切ってしまう。そう、安穏と暮らす我々の日常から最も遠い事象、すなわち、生命の危機である。もちろん、映画好きではないけれどもホラー映画は大好きなんていう変態紳士も一定数存在するが、少なくとも筆者に限っては、昔はホラーなんて恐くて観られたもんじゃなかった。それが次第に、もっと見たことがないものを、もっと純粋で高密度な驚きを、となっていったのである。なんだかまた話が脱線しつつあるが、ことここに至って、ボンクラ映画ファンは、ある自家撞着に気付く。すなわち、映画ファンである以上、大好きな映画の中に入り込みたい気持ちはマウンテンマウンテン。しかし、同時にその大好きな映画というのは、自身の身には決して起きてほしくないことを描いているというわけだ。そして、本作は、そんな作品の極みと言っても過言ではない『シャイニング』に我々を放り込むのである。"楽しくて狂っちまいそう"という作品は数多あるが、映画好きが本質的に孕んでいる上記矛盾をここまで的確に利用した作品を、筆者は他に知らない。

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 また、このシークエンスで我々は、"映画の次世代"というものの片鱗をビンビン感じることができる。公開前、筆者の友人は、本作への期待をこんな言い方で表現した。「『アバター』と同じで、『レディプレ』は映画の "革命 "やから、俺は楽しみにしてる。」 つまり、彼は、『アバター』が3Dという変革をもたらしたのと同様、本作を"VR映画"として捉えた上で、新たなる"映画の魔法"に期待していたのである。しかしながら、そのときの筆者は、彼の意見に疑問を持った。筑波で研究者をしている彼は、なんやかんやと講釈を垂れようとしたが、それを制止し、本作はあくまでVRを作中ギミックとして扱っただけであり、サイレントからトーキー、モノクロからカラー、そして、2Dから3Dといった映画表現の技術革新とは一線を画している、とぶったわけである。しかし、それはいささか愚かであった。鑑賞後の今、この場を借りて筆者は謝罪したい。

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 本作の『シャイニング』鑑賞会は、VRの本質である"臨場感がもたらす感動"を、ものの見事に表現している。つまり、うわ!ホンマにそこにおるやん!という感動。もちろん、本作は厳密な意味での"VR映画"ではないから、我々が真にその空間に入り込んだ感覚を味わうことはできない。しかし、この点、本作は、舞台を『シャイニング』に設定することで、極めて同質的な感情の喚起に成功している。パーシヴァルらが仮想空間内の劇場の扉を開き、目の前に展望ホテルのホールが広がった瞬間、筆者は息を飲んだ。カラ咳でごまかしたが、本当に周囲に聞こえるくらいハッ!と音を立ててしまった。それくらい、圧倒的な再現度。俺たちの分身たるパーシヴァルは、まさかまさか、本当に展望ホテルに入っていったのである。

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 ここでポイントなのは、我々が散々見返して既に馴染みとなっている展望ホテルが舞台、という点。これはVR映像ではない。しかし、もはやその間取りや意匠自体が強靭なポップ・アイコンとして機能している展望ホテルをいきなり突き付けられた我々は、うわ!ホンマに展望ホテルやん!との感動を覚える。加えて、もちろん、我々に視点の自由度など無いながら、本作は、VR映像さながらにきちんと『シャイニング』本編では見えなかった部分を見せてくれる。それは、例えば、あまりにも有名な"エレベーターから血ぃドバー!"のシーン。本編では幼いダニーが驚きすくんで凝視するだけだったそのシーンで、仮に目線を動かしたらどんな感じだったのか。そんな我々の"夢"を、当該シークエンスは叶えてくれる。他にも、別作品でここまで露骨に『シャイニング 』やるんや!というクロス・オーバーの感動とか、第二の試練のヒントとして提示されていた"作品を嫌う作者"スティーヴン・キングだと思い出したときのしてやられた感とか、案内人が念押しで「本当によろしいのですね?」と発言したときの「そうそう…大丈夫か? あの『シャイニング』だぜ?」というニヤニヤとか、色んな点に思いを致しても、やっぱりスピルバーグのチョイスは天才的で最高だと思う。

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 ずいぶん長くなってきた。『アベンジャーズ』までには書き上げたいので、その他の感動ポイントを駆け足で挙げていくと、例えば、ふりとオチの爽快感とか。仮想現実と聞いてみんなが真っ先に興味を持つエロ事情を、パーシヴァル側で見事にすくってみせた「股関にマイクロ・ファイバー」が、まさか終盤では敵への一撃として意味を持つとは、誰も思うまい。それから、やっぱり、25セント玉は、本当にぐうの音も出ないほど最高だったよな。賭けに勝ったパーシヴァルが案内人から頂戴した25セント玉は、その時点から露骨な前ふり。でも、それを杜撰と考えるのは、極めて早計である。きっちり前ふって良い。その前ふりに対応するオチは、圧倒的にフレッシュであり、仮に予想できた人がいたとしても、一切の反論を霧散させる最強のロジックを備えているからだ。

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 惑星ドゥームでの合戦の最中、パーシヴァルは、最後の試練たるゲーム『アドベンチャー』に到達するも、ソレントがやけくそで繰り出した"全滅爆弾"的な最強武器で、敵も含めたマップ上の全プレイヤーと共に消滅してしまう。しかし、パーシヴァル復活! なぜ? また"時間戻しキューブ"を使ったのか?なんて、愚かな筆者と同様の想像を巡らせた人もいるだろう。そんなバカみたいに稚拙なアイデアをスピルバーグが採用するかい? パーシヴァルは、実は"EXTRA LIFE"だった25セント玉で復活したのである。マジでヤバい。理にかない具合がエグい。ご都合主義じゃないよ。これは"ゲーム"なんだ。使途不明のアイテムが"1UP"(敢えてあの頃のように"イチャップ"と読ませてくれ。)である可能性は、我々が当然想起してしかるべきだった。かつて本作同様にゲームを題材にし、そして、本作とは違って失敗してしまった『ピクセル』にこの理屈があれば、同作はたちどころに傑作へと変貌していたことだろう。

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 あとは何だ。そうだ、ラスト、現実世界でウェイドを追い詰めるも、結局撃てなかったソレントが最高とか。あれは、端的に言って"思い出した"んだろうな。あいつは、絶対に子供の頃ゲーム大好き少年だったはずなんだ。でも、他人とのコミュニケーションが下手で、ゲームの強さでしか自分を表現できなかったから、あいつと遊んでもつまんねー、とだんだん敬遠されていったに違いない。その後、屈折したまま大人になったけれど、でも、やっぱり根底にはあの頃の少年がいる。それは、彼のアバターが、利益のみを指向する会社人間にしてはややカスタマイズされているように見えることとか、他プレイヤーを消去する最強の殺し屋ではあるが、その裏返しとして実はゲームをやり込んでいる=実はゲーム大好きなんじゃない?とも思えるキャラクター、アイロック(T・J・ミラー)と"連んでいる"こととかから、推して図ることもできよう。

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 そんなソレントは、遂に宝を手にして涙を流すウェイドの姿を目の当たりにして、引き金を引けなくなった。注目して欲しいのは、ここでソレントが少しだけニヤッとした、というところ。その瞬間の彼の感情を台詞にするとどうなるかな。筆者は「はは…スゲーや…。」がいいのではないかと思っている。「スゲーや」の前に「やっぱ」を付けても良いし、もっと親切にするなら「ゲームって」を足しても良い。とにかく、幼少の頃大好きだったゲームが逆に自分を孤立させる原因だと責任転嫁し、その後、現実世界でのし上がることで「ゲームは所詮ゲームだ。現実では役に立たない、くだらないガキの遊びだ。」と考えるに至ったソレントは、本作でのアレコレを通じてゲームの持つ"力"を知った。いや、思い出した。そして、ダメ押しとして、"ただのゲーム"に一人の人間が涙を流す様を目の当たりにすることで、"ゲームの力"に気圧され、思わず笑ってしまったのである。

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 挙げつらうポイントがざっくバラバラになるが、ウェイドらがソレントからサマンサの監禁場所を聞き出すシークエンスの説得力も尋常ではない。要は、ログアウト直前にソレントのアカウントをハッキングし、現実そっくりに構築した仮想現実内のソレントのプレイルームに転送することで、現実だと錯覚させる、という、どっかの機動隊がやりそうなやり口。"現実と見紛うほどリアルな仮想現実"という本作の大前提を華麗に活用している点が見事であり、なおかつ、"ゲームは所詮ゲーム"などと考えている愚かなソレント(や、もしかしたら、"大人"になってしまった我々)に対して、その"力"を具体的に提示してみせる。確かに、おいおい、そもそもIOIのセキュリティを突破するほどのハッキング・スキルには具体的な理由が無いじゃないか、エイチは一体何A級のハッカーなんだよ?という突っ込みは可能だが、そのモヤモヤを補ってなお、おつりの25セント玉がジャラジャラ返ってくるくらいの説得力を筆者は感じた。

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 まだまだ良いところはあるのだが、ちょっと割愛して、最後に三点ほどの不満を述べておきたいと思う。大まかに言って、擁護可能なものが二つと、擁護できない決定的なものが一つである。まず、擁護可能な一つ目は、主人公が第一の試練の攻略法に至った理由、である。ウェイドは、ハリデーがエッグ・ハントの開幕を告げると同時に出現したものの、今ではオタクしか訪れないというハリデー記念館で、ハリデーの過去の言葉から"後ろ向きに全速力で走る"というヒントを発見する。しかし、なぜ今まで誰もそれを試さなかったのだ? 5年前に出現して以降、記念館は誰でも入場可能で、今では誰も訪れないくらいしらみ潰しに調べられている。ましてや、IOIにはそのスケール・メリットを活かした実に様々な分野の専門分析チームが存在するようだから、"ハリデーの発言分析チーム"がとっくの昔に気付いていてもよさそうなものだ。まぁ、でも、これくらいの緩さは、むしろチャーミングだよ。後々、先述したソレント詰問シーンで圧倒的な論理力を見せつけるのだから、序盤の一ヶ所くらいは充分許容できる。

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 次に、擁護可能な二つ目の不満。それは、惑星ドゥームにおけるパーシヴァル演説シーンである。本作は、全体として"実写版『サマーウォーズ』"と形容されることが多いが、その例えになぞらえるなら、当該シーンは、花札でのバトル・シークエンスからドイツの男の子登場辺りに相当するだろう。まず、パーシヴァルの演説を他の場面とのカットバックで見せていくため、エモーションがぶつ切りになっている点がいただけない。『サマーウォーズ』に演説は無かったが、例えば『ID4』での大統領演説みたいに、きっちりとワン・シーンで描ききった方が、漢の魂は圧倒的に完全燃焼だ。そして、世界中のプレイヤーが集結する瞬間。その前のタメは中々良い。ソレントのアバターが「ふ…所詮は児戯よの。」という感じで踵を返し、仲間たちも諦めて視線を落とす。すると、何かに気付き振り返るソレント。ここは、音とかじゃない。気配だ。一拍の静寂の後、地平線を覆い尽くすほどの遊軍が「うおー!」と現れる。

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 筆者が不満なのは、遊軍の現れ方である。ワサワサと群れで出現させるやり方は、別に間違ってはいない。充分にインパクトもあろう。でも、この場合の正解は、誰が何と言おうとやはり"ドイツの男の子方式"である。すなわち、何かの気配に気付いたソレントが振り返ると、広大な平野に例えばキティちゃんがちょこんと立っている。「ハァイ、私キティよ。」みたいな感じで可愛らしく手なんか振らせて、いったん間を外そう。一瞬は警戒したソレントが再び勝利を確信しかけたその瞬間! シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!と平野を覆い尽くすほどのアバターが、ドゥーム・フィールドに出現するのである。こっちの方が絶対に燃える。まぁ、ただこれはシンプルに『サマーウォーズ』が完璧すぎるのである。たぶんだけど、劣勢の主人公が人々に対して(何らかの形で)呼び掛け、感化された人々が集結する、という展開において、『サマーウォーズ』の花札バトル以上のものは、これまでも無かったし、これからも無い。あれが完成形なんだよ。だから、仕方ない。

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 あと、本作は『サマーウォーズ』と違って、悪役の目的を大衆は正確に知らない。敵がラブ・マシーンのような破壊神なら、誰もが仮想空間の危機を一発で理解できるが、本作のIOIみたいな敵だと、一義的にはただ経営主体が替わるだけだ。よって、例えば、エイチがいつの間にか撮っていたというソレントの自白動画なんかをクライマックス前に披瀝しておく、などの工夫が必要だったように思う。ただ、これも『サマーウォーズ』が完璧すぎる、の一言で納得可能だし、『サマーウォーズ』との比較では、実は本作には、より秀でている部分もある。それは、現実と仮想のリンク(もしくは、対比)だ。『サマーウォーズ』でも、一応ラストでは人工衛星落下の危機を演出することで仮想が現実とリンク(あるいは、前者が後者を侵食)するが、全体的には、あくまで既に現実がOZに移行した世界というていで語られる。一方の本作では、前述の通り、随所で仮想は現実を侵食し得る存在として機能している。これは、本作がより我々の魂を熱くたぎらせる部分であり、しかして、実は『サマーウォーズ』ではできなかった部分でもあるのだと、筆者は思うのである。

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 つまり、仮に『サマーウォーズ』で現実と仮想の対比を行ったとしても、アニメーション作品である以上、そこには少なからずうすら寒さが漂ってしまうというわけ。言い換えれば、アニメーション作品内の現実世界は、現実を生きる生身の我々から見て、既に虚構なのである。もちろん、実写だってフィクションなのだし、ましてや本作のような近未来SFでは、描かれる現実もずいぶんとファンタジックだ。しかし、同じ構成を採用したアニメが仮にあったとしたら、我々の"ノれる度合い"は、実写の方が圧倒的に上だと筆者は信じる。そういった意味で、現実と仮想の対比をがっつりテーマにした本作は、『サマーウォーズ』ができないことをやったという点で秀でており、逆に言えば、その辺りをやんわりかわした『サマーウォーズ』は、やっぱり超えらいのである(まぁ、実写映画で言えば、本作より遥か昔に『マトリックス』という先駆者がいたのだが。)。

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 また脱線した。これで本当に最後。本作に対して真心からの賛美と感謝の気持ちを持っている筆者だが、一点だけどうしても擁護しかねるのは、ハイタッチの不在である。主人公であるウェイド aka パーシヴァルは、作中何回か目の前の相手とハイタッチしようとする。エイチと一回、アルテミスと一回、それから、案内人と一回。もっとあったかもしれないが、少なくとも三回あったことは確実だと思う。そして、その全てにおいて、パーシヴァルはハイタッチを断られるのである。どう考えても、これはふりだろう? 例えば、なんやかんやの末、本当の仲間となったみんなと大団円で遂にハイタッチする。最高じゃないか。そんなことをぼんやりと考えている間にパーシヴァルは宝を手に入れ、めでたしめでたしの後処理タイムに突入。ここで明かされるのである。パーシヴァルにあの25セント玉を託し、一方で「私はそのようなことはいたしません。」なんて言ってハイタッチを拒否した案内人が、実はハリデーと共にオアシスを開発した男オグデン・モロー(サイモン・ペッグ)のアバターだったことが判明するのである。

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 じゃあ、当然ハイタッチだろう? お宝争奪戦に人生をかけた誰よりもハリデーを愛し、理解し、その結果、見事エッグを手にすることでハリデーの後継者となったウェイド。同じく誰よりもハリデーを愛し、理解していたはずなのに、ひょんなはずみで道を違え、しかし、そのことを心底後悔し、かつてハリデーが、そして何より自分自身がなし得なかったことをウェイドに託したモロー。そんな二人が遂に合間見えた大団円にハイタッチが無いってのは、一体全体どうゆう了見なんだよ。無かった、と言っても、また断られた、みたいなジョークですらない。全く無いんだ。ハイタッチの件は、黙殺されたんだ。これはダメでしょう。その他のふりとオチは、さすがスピルバーグといった秀逸なものばかりだったというのに…。そんなわけで、個人的には、このハイタッチの不在だけが、本作の唯一にして決定的な欠点に思えてならない。

点数:92/100点
 なんだか不満を吐露して終わってしまったが、本当に本当に最高の作品だということは、既にボンクラのみなさんがご存じの通りである。にしても、最近頓(とみ)に"俺たちの物語"が多いよな。その代表格は、やっぱり『シェイプ・オブ・ウォーター』だと思うんだけど、同作がいわば俺たちの"魂の叫び"だったのに対して、本作には、俺たちの"パーティー"って感じの言い様の無い爽快さがある。敢えて例えれば、「おい!みんなで『スマブラ』やろうぜ!」みたいな。しかも、かつての俺たちみたいに隣近所のガキだけの集会ではなく、オンラインで世界中のまだ見ぬ"俺たち"と一緒にプレイできる『スマブラ』。…あぁ、また長くなる。とにかく、筆者と同種の琴線の持ち主なら、間違いなく号泣必至の大傑作。業務用のティッシュやハンカチを用意し、しっかりと泣きじゃくる準備を整えてから、劇場へ足を運んでほしい。

(鑑賞日[初]:2018.4.21)
(劇場:TOHOシネマズ梅田)

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Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

Comments 1

There are no comments yet.
T  

ダイトウの瞑想については、2分間の制限を考えるとあのタイミングでなければZを目的地に到達させられなかったから必然性がある。

2018/05/02 (Wed) 20:11 | EDIT | REPLY |   

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